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雑誌目次

雑誌文献

medicina35巻7号

1998年07月発行

雑誌目次

今月の主題 腎・尿路系の問題とマネジメント 基本的診断法

尿検査

著者: 岡田敏春 ,   下條文武

ページ範囲:P.1150 - P.1155

ポイント
●試験紙法では偽陽性・偽陰性を認めるので,検査結果の評価には注意する.
●Bence-Jones蛋白などアルブミン以外の尿蛋白の検出には,スルホサリチル酸法を併用する.
●尿路感染症のスクリーニングは,亜硝酸塩と白血球エステラーゼの検出によって行う.
●血尿あるいは蛋白尿では血液円柱,上皮円柱,顆粒円柱,ろう様円柱などの病的円柱の出現および血尿の有無や,その形態に注意する.
●沈渣所見での変形赤血球,赤血球円柱の存在は,糸球体病変を疑う重要な所見である.

腎機能の評価法

著者: 池辺弥夏 ,   野々口博史 ,   冨田公夫

ページ範囲:P.1156 - P.1158

ポイント
●腎機能は,腎血流量,糸球体機能,尿細管機能の3面から評価される.
●簡便な腎機能評価法として1/Cr,簡易式Ccr法が有用であり,慢性腎不全患者の腎機能の評価とフォローアップには1/Crが最も用いられる.
●分腎機能の評価には,レノグラムが有用である。
●FENaは尿細管機能のみならず糸球体機能も反映する.

画像診断

著者: 津ヶ谷正行 ,   伊藤尊一郎 ,   梅本幸裕

ページ範囲:P.1159 - P.1163

ポイント
●腎・尿路系疾患において,超音波断層検査(US)では肋骨によって腎の十分な観察ができないこともあり,さらに中部尿管の観察ができないこと,また膀胱の観察には適度な尿の貯留が必要であるなどの診断上の限界がある.しかし,USによって腎・尿路系疾患の診断上の方向性を決めるのに有力な情報が得られる.
●尿管結石の診断には,結石による上部尿路の通過障害すなわち水腎症の確認が重要で,疝痛発作時にUSを行う.疼痛消退後では水腎症は消失することが多い.
●腎細胞癌は単純性腎嚢胞や多房性腎嚢胞に類似した画像所見を呈することがあるため,注意深い鑑別が必要である.
●腎血管筋脂肪腫の画像診断では脂肪成分の存在が重要で,USでhigh echo,CTでlowdensityな腫瘤として描出される.
●膀胱癌を発見するのにUSは有用である.一方,浸潤度の診断にはMRIが優れている.

腎生検

著者: 松村治 ,   御手洗哲也

ページ範囲:P.1165 - P.1168

ポイント
●腎疾患診療では正確な臨床像の把握を行い,その適応を判断して時機を逸することなく腎生検を行う.
●超音波ガイドによるbiopty-gunを用いた経皮的腎生検は,安全性と組織採取の確実性において優れている.
●得られた腎生検組織は,光学顕微鏡,蛍光抗体法を基本とした免疫組織染色,および電子顕微鏡の3法で評価する.
●臨床情報と腎生検からの組織情報をすり合わせて,より正確な病態把握に努める.
●腎組織所見と臨床所見を総合して最終診断を確定する.

腎障害患者の管理上の留意点

腎疾患と食事療法

著者: 田山宏典 ,   出浦照國

ページ範囲:P.1171 - P.1173

ポイント
●腎疾患における蛋白制限と食塩制限の意義をきちんと理解する.
●蛋白制限下では十分なエネルギー摂取が不可欠である.
●蛋白制限と食塩制限では治療用特殊食品の利用が必要である.

薬物投与と輸液

著者: 鈴木好夫

ページ範囲:P.1174 - P.1175

ポイント
●薬物作用も腎排泄も血中の遊離部分で行われるが,遊離濃度が低ければ効かず,高すぎれば有害事象を生じる.軽度〜中等度腎機能障害のときから薬物投与・輸液に工夫が必要である.
●腎機能障害では薬物の腎排泄量,蛋白結合率などが変化するので使用法の調節が必要となるが,その原則は①薬物量を減らす,②使用間隔を延ばす,である.
●抗生物質全般に共通する腎機能障害での使用法はないので,各抗生物質について知識をもつ.
●消炎鎮痛剤,降圧剤など日常臨床の薬物も一つ一つ調節の原則に合わせて投与法を知っておく.

診断・外科的手技

著者: 鍋島邦浩 ,   高山公洋

ページ範囲:P.1176 - P.1178

ポイント
●腎不全症例に対するヨード造影剤検査では,低浸透圧性造影剤で必要最小限の投与を心掛ける.
●代償性腎不全期では造影前に十分な輸液を行い,非代償性腎不全期では造影後,血液透析による造影剤の除去を行うこともある.
●手術療法に関しては,外科医,麻酔科医および透析医が密に連携して周術期管理を行うことが重要となる.
●非代償性腎不全期や透析期での体外循環下における開心術では,積極的に各種血液浄化法を並行する.

腎不全・透析患者の外来でのマネジメント

著者: 松山公彦

ページ範囲:P.1179 - P.1182

ポイント
●慢性腎炎,糖尿病性腎症による腎障害時の降圧剤は,腎保護の点からカルシウム拮抗剤とアンギオテンシン変換酵素阻害剤が第一に選択される.
●腎性貧血の治療はHt 30%を目標に,エリスロポエチンの投与量を細かく調節することが基本となる.
●透析導入では,透析施設や透析担当医師への円滑な引き継ぎと,患者へのインフォームド・コンセントが大切であり,高齢者の透析は極力計画導入とする.
●腎不全時の薬剤使用は常用量で思わぬ副作用が発生することがあり,特に抗生物質や強心剤などは減量して使用する.また使い慣れない薬剤使用にあたっては,必ず添書や成書に目を通す.
●透析患者の臨時受診の対応は,透析手帳や透析の特殊状況を参考にし,診療結果は速やかに透析施設へ情報提供する.

腎移植患者の外来でのマネジメント

著者: 吉村了勇 ,   岡隆宏

ページ範囲:P.1184 - P.1187

ポイント
●免疫抑制薬シクロスポリン(CsA)やタクロリムス(FK 506)使用で著しい成績の向上が得られた.
●早期の外来管理では,急性拒絶反応,感染症(ウイルス,カリニ,真菌など),高血圧,糖尿病などの疾患に注意する.
●長期の外来管理では,慢性拒絶反応,肝臓障害,大腿骨頭壊死,悪性腫瘍などに注意する.
●長期の経過患者では免疫抑制薬の減量が望ましい。
●腎移植を行うことで,血液透析よりもquality of lifeの向上が得られる.

外来でよく遭遇する腎・尿路系の問題のマネジメント

外来で血尿を見たらどうするか

著者: 菅原壮一 ,   高平修二

ページ範囲:P.1189 - P.1191

ポイント
●血尿の原因疾患は腎実質性,腎血管性,尿路性および全身性凝固異常に分類できる.
●十分な問診と診察により診断の方針を決める
●45歳以上の男性では,腎尿路系の癌を疑い十分な精査を行う必要がある.
●血尿に1g/日以上の蛋白尿を認める症例は糸球体血尿と考え,腎生検を行う.
●高齢者において感冒様症状が持続し血尿および蛋白尿を認めたときは,急速進行性糸球体腎炎を疑う必要がある.

外来で蛋白尿を見たらどうするか

著者: 猪芳亮 ,   橋本尚明

ページ範囲:P.1192 - P.1194

ポイント
●蛋白尿の多くは無症候性であり,そのなかには病的でないものも含まれ,かつ原因疾患は全身性疾患を有するものもあり,極めて多岐にわたっている.したがって,日常診療上適切な対処が必要となる.
●蛋白尿の測定は,起床時中間尿および来院時尿について行うことが望ましい.
●蛋白尿が生理的か病的か,また腎性か腎外性かを鑑別するには,尿蛋白を繰り返し測定し,その量や尿沈渣所見をみることが重要となる.
●0.5g/日以上の持続的蛋白尿,ネフローゼ症候群,急速性進行性糸球体腎炎などが疑われるときは腎生検の適応と考え,専門医にコンサルトする必要がある.

尿路感染症のマネジメント

著者: 北原光夫

ページ範囲:P.1195 - P.1197

ポイント
●尿路感染症の診断自体は困難ではないが,その治療にあたる場合,外来治療が可能か,入院治療を要するかを判断する必要がある.
●女性の症例か男性の症例か,あるいは複雑性尿路感染症なのかの判断をまず行うべきである.また基礎疾患,特に糖尿病の存在と妊娠の有無を考慮に入れる必要がある.

前立腺肥大—内科外来でのマネジメント

著者: 栗田孝 ,   西岡伯

ページ範囲:P.1198 - P.1200

ポイント
●前立腺肥大は前立腺内腺より発生する平滑筋および腺上皮の過形成である。
●前立腺肥大の症状は,遷延性・ぜん延性排尿や尿閉などの閉塞症状と,頻尿や尿意切迫などの刺激症状がある.
●薬物療法にはホルモン系薬剤,α1プロッカーおよび漢方生薬製剤が用いられている.
●外科的治療は経尿道的切除が一般的であるが,高温度治療など非観血的治療も多く試みられている.

尿路結石のマネジメント

著者: 矢後雅子

ページ範囲:P.1202 - P.1204

ポイント
●日本人の尿路結石のうち,カルシウム含有石が約80%を占めるため,KUBがまず診断に有効である.
●結石のサイズが長径10mm,短径5mm以下であれば,自然排石は期待できる.
●結石が大きい場合,仙痛発作を繰り返す例などでは,ESWLを行うのが一般的である.また,下部尿路の通過障害が推測される場合,PNL,TULが選択される.
●尿路結石症は尿路感染症の原因となり,敗血症を引き起こして致命的となる可能性がある.また逆に,慢性尿路感染症が感染結石を形成し悪循環となって腎機能低下を進行させうる,したがって感染対策は大変重要である.

外来で腎障害患者を見たらどうするか

著者: 塚本雄介

ページ範囲:P.1205 - P.1207

ポイント
●血清Cr値のモニターでおおよその腎機能の予測は可能である.
●無症候性の腎不全でも,高尿酸血症,高血圧,高K血症,貧血などの進行に注意し,治療を行う.
●血清Cr値>8.0mg/dl,BUN>100mg/dlは透析療法導入の適応である.
●乏尿がない限り飲水制限はしない.
●血清Cr値>2.0mg/dlで蛋白制限食を開始する.
●腎毒性のある薬物と脱水に注意する.

高齢者の尿失禁にどう対処するか

著者: 福井準之助

ページ範囲:P.1209 - P.1211

ポイント
●高齢者の尿失禁は他の疾患因子が混じるため,診断・治療が難しい.
●高齢者の尿失禁は保存療法を優先すべきである.
●尿失禁の治療は,まず一過性失禁を鑑別し治療する.
●腹圧性尿失禁の治療には,骨盤底筋訓練かBNSPとの併用療法がよい.
●切迫性尿失禁や不安定膀胱の治療には,排尿筋弛緩薬の与薬下に膀胱訓練法を行う.
●溢流性尿失禁の治療には,器質的閉塞の除去か間欠的自己導尿が選ばれる。
●機能的尿失禁の治療には,環境の変容で対応する.

尿路カテーテル—外来管理の問題点

著者: 岡裕也

ページ範囲:P.1212 - P.1215

ポイント
●尿路留置カテーテルは,高齢化社会に伴いその需要はますます増加すると思われるが,安易に長期カテーテル留置による尿路管理を選択することは慎むべきである.
●長期の尿道カテーテル留置症例では,尿路感染,結石,出血,カテーテルトラブルなどの合併症とQOLの低下が問題である.
●長期カテーテル留置を受けている患者に対して漫然とした抗菌剤の長期投与は不要であるが,発熱などの症状を有する場合は腎盂腎炎,前立腺炎などの尿路感染も考慮する.
●間歇的導尿法は尿路感染などの合併症が少なく,排尿の自立にも役立ち,社会復帰や性生活などのQOLの点からも優れている.

入院患者でよく遭遇する腎・尿路系の問題のマネジメント

急性腎不全への対処法

著者: 花房規男 ,   浅野健一郎 ,   深川雅史

ページ範囲:P.1216 - P.1219

ポイント
●入院患者での急性腎不全は合併症を有する例が多く,予後は比較的不良である.
●急性腎不全では腎前性・腎性・腎後性の鑑別が治療上重要であり,腎後性の鑑別には超音波検査が非常に有用である.
●急性腎不全では,保存的治療は対症療法の域を出ず,慢性腎不全に比べ,血清クレアチニンが比較的低値から血液透析の適応となる.
●不適切な輸液,腎毒性物質による医原性急性腎不全の予防が重要である.

糸球体疾患をどう考えるか—尿所見からのアプローチ

著者: 北島武之 ,   酒井紀

ページ範囲:P.1220 - P.1223

ポイント
●多くの糸球体疾患がchance proteinuria/hematuriaで発見される.
●糸球体疾患ではアルブミン主体の蛋白尿であり,通常,持続的に排泄される.
●尿中赤血球の形態から糸球体由来の血尿を鑑別できる.acanthocyteが認められれば,糸球体性血尿の可能性が高い.
●蛋白尿,血尿とともに白血球尿,円柱尿などが認められる場合には,活動性糸球体病変の存在が示唆される.
●糸球体疾患が疑われる症例に対しては,腎生検によって組織診断を下すとともに,障害の程度に応じた治療方針を選択する必要がある.

尿細管間質性疾患の症状をどう考えるか

著者: 佐野元昭 ,   守尾一昭

ページ範囲:P.1224 - P.1226

ポイント
●尿細管間質性疾患とは,病理組織学的な概念である.したがって確定診断は腎生検による.
●病因,発症機序は広範で多彩である.
●まず尿細管間質性疾患の存在を疑ってみることが重要である.
●急性尿細管間質性腎炎では薬剤性のものが多い.発熱,発疹,関節痛,赤沈の亢進などアレルギー症状とともに,腎不全(非乏尿性のことがある)の存在に気づくことが診断の入り口である.
●尿細管性蛋白尿,NAGの増加をチェックし,近位尿細管,遠位尿細管,集合管の機能障害を考える.
●血中,尿中好酸球,高IgE血症,腎の67Gaシンチが参考となる.

尿毒症のマネジメント—急性合併症の評価法とマネジメント

著者: 大澤源吾

ページ範囲:P.1228 - P.1230

ポイント
●尿毒症は急性あるいは慢性の経過で発生し,高カリウム血症,高度の体液貯溜,著明な代謝性アシドーシス,心不全などが緊急処置の対象となる.
●急激な高カリウム血症では,カルシウム塩,重炭酸ナトリウム,あるいはブドウ糖+インスリン静注で対応し,心電図の特徴的変化で血清カリウム値のおおよそを追跡する.無効ならば緊急透析を行う.
●尿毒症肺,顕著な代謝性アシドーシスも緊急透析の適応となる.
●高齢者や糖尿病患者では,心嚢炎,心筋梗塞の無症候性合併を警戒する.

腎・尿路系疾患—最近のトピックス

腎・尿路系疾患—最近のトピックス

著者: 深川雅史

ページ範囲:P.1232 - P.1235

ポイント
●腎臓に関係する様々な遺伝子がクローニングされており,病態が分子レベルでディスカッションされるようになった.
●しかし,その基礎には生理学的知見,さらに遺伝形式や症状などの臨床的知見が大きな役割を果たしている.
●今後,遺伝子の解析が実際の治療に結びつくまでには,臨床に立脚した研究が必要である.

腎・尿路系疾患のcontroversy

簡易Ccrによる腎機能評価は正確か

著者: 石田博

ページ範囲:P.1236 - P.1238

ポイント
●クレアチニンの尿中排泄の10〜40%は尿細管での分泌により行われ,腎不全時にはこの比率がさらに高くなる.
●24時間Ccrでは正確な蓄尿が必要であり,実際の臨床では測定値の再現性に問題がある.
●簡易式Ccrは血清クレアチニン値と年齢,体重をもとに算出されたものであり,腎機能が一定であることなど,その前提を熟知したうえで活用しなければならない.

糖尿病腎症にACE阻害剤(エナラプリル)は有用か

著者: 吉岡成人

ページ範囲:P.1240 - P.1242

ポイント
●糖尿病の慢性合併症の一つである糖尿病腎症は,糖尿病患者の生命予後を決定する重大な合併症である.
●日常臨床の場にあっては,早期糖尿病腎症の時期を的確に判定し,血糖や血圧のコントロールをはかることが重要である.
●血圧が正常であっても,早期腎症の患者に対してACE阻害剤は有用である.しかし,日本の健康保険での適用がない(糖尿病腎症の診断名では,尿中アルブミンの測定もACE阻害剤の投与も認められない)ことに注意が必要である。
●糖尿病腎症に対するACE阻害剤での治療のNNT(number needed to treat)は5〜20である.有効といわれる治療であっても,一定の限界をもった治療であることを忘れてはいけない.

ACEインヒビターは糖尿病以外の腎障害の進行予防に有効か

著者: 井村洋

ページ範囲:P.1244 - P.1246

ポイント
●ACEインヒビターによる腎障害を対象とした無作為化比較試験が行われていた.
●末期腎不全への進行抑制をエンドポイントにした臨床試験の結果は一定していなかった.
●各々の臨床試験のデータを統合したメタ分析では,ACEインヒビターの腎保護効果を支持する結果であった.
●いずれの臨床試験の結果も,ACEインヒビター群とコントロール群(他の降圧薬)との間に,安全性について有意な差を示していなかった.

造影剤を腎障害に使用して安全か

著者: 名郷直樹

ページ範囲:P.1248 - P.1250

ポイント
●腎障害の存在が,造影剤による腎機能悪化のリスクファクターであるという確実な証拠は見つからなかった.
●血清クレアチニン1.7mg/dl以上のレベルでも,クレアチニン上昇に伴って腎機能悪化のリスクが上昇するとはいえない.
●腎機能悪化は,低浸透圧製剤の使用によりその危険を半減させうるかもしれない.
●検査直前の利尿剤の投与は,かえって腎機能悪化の頻度を増加させる.

NSAIDsを腎障害に使用して安全か

著者: 須藤博

ページ範囲:P.1251 - P.1253

ポイント
●NSAIDsによる急性腎不全は健常人では稀であり,安全に使用できる.
●基礎に腎障害がある場合には,腎不全悪化のリスクは2〜4倍である.
●腎内でプロスタグランジンの血管拡張作用が拮抗的に働いていると考えられる病態(脱水,心不全,肝硬変,ネフローゼなどの有効循環血漿量の低下状態)では,腎障害の危険が高い.
●65歳以上の高齢者,腎毒性薬物の併用,冠動脈疾患の合併も危険因子である.
●スリンダク(クリノリル®)は腎障害の危険が少ないとされているが,腎障害に対して全く安全といえるNSAIDsは存在しない.

腎血管性高血圧をどのようなときに疑うか

著者: 尾藤誠司

ページ範囲:P.1254 - P.1256

ポイント
●すべての高血圧患者に対して腎血管性高血圧のための検査を行うことは合理的ではない.臨床所見により検査前確率の比較的高いと思われる高血圧症例に対し,診断のためのステップを行うべきである.
●高血圧患者において腹部血管雑音の聴取をした場合,腎血管性高血圧診断のためのスクリーニングステップを踏むことが望ましい.
●腎血管性高血圧診断のためのスクリーニング検査は,検査の精度と侵襲を考え,段階的に行う.

慢性腎炎(特にIgA腎症)に対して抗血小板薬は有効か

著者: 八森淳 ,   吉村学 ,   五十嵐正紘

ページ範囲:P.1259 - P.1261

ポイント
●抗血小板薬単独療法でのIgA腎症の予後改善のevidenceは今のところない.
●シクロホスファミド,ジピリダモール,ワルファリンのcombination triple therapyで尿蛋白量の減少を報告した2つのRCTがある.
●IgA腎症に対する抗血小板薬の予後改善効果を目的としたRCTが望まれる.

特発性ネフローゼ症候群治療に関する臨床決断分析

著者: 平憲二 ,   野口善令 ,   福井次矢

ページ範囲:P.1263 - P.1265

ポイント
●特発性ネフローゼ症候群の治療方針上,腎生検は有用ではあるが,出血などのリスクを伴うため,状況によっては腎生検を行わずにステロイド療法を行うこともある.
●どのような状況で腎生検を行うことが妥当なのかを例示するために,ステロイド療法と腎生検それぞれの死亡率を指標とした決断分岐図の作成と感受性分析を行った.

運動制限は腎疾患の予後に影響するか

著者: 岡田浩一

ページ範囲:P.1266 - P.1268

ポイント
●許容範囲内での運動負荷は,慢性腎疾患患者において短期的および長期的にも腎機能を悪化させない.
●動物実験では,運動負荷が腎障害の進行を抑制する可能性が報告されている.
●前向き研究による運動療法の慢性腎疾患の経過に及ぼす影響の評価が必要である.

理解のための27題

ページ範囲:P.1269 - P.1274

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.1279 - P.1284

図解・病態のメカニズム 膵疾患・7

膵性糖尿病の病態

著者: 中村光男 ,   梅田芳彦 ,   小川吉司 ,   山田尚子

ページ範囲:P.1275 - P.1278

 糖尿病とは高血糖症候群であり,最終的にはインスリン分泌不足かインスリン作用不足に基づいている.糖尿病病型からみると一次性糖尿病と二次性糖尿病とに分けることができ,二次性糖尿病のうち膵自体に原因のあるものを膵性糖尿病と呼んでいる.すなわち,膵全摘,膵切除,慢性膵炎,膵癌などがその原因としてあげられる1).本稿では,主に慢性膵炎に合併する糖尿病(膵性糖尿病)の発症機序,特徴と診断,病態に基づいた治療について述べる.

症例によるリハ医療—内科医のために・4

脳卒中患者のリハビリテーション(その4)—顕著な廃用症候群を伴った脳出血左片麻痺の1例

著者: 伊佐地隆 ,   大仲功一 ,   安岡利一 ,   大田仁史

ページ範囲:P.1289 - P.1294

 脳卒中や脊髄損傷のような急性発症疾患において,「“早くからリハビリ”を始めなければいけない」といういいかたが聞かれるようになって久しい.身内がそういう疾患にかかった家族が,「“早くリハビリ”をしてもらわないと治らない」と焦る姿をよく目にする.
 しかし,“早くから”といってもいつから行えばよいのか,“リハビリ”といってもどのようなことをすればよいのか,“早くからリハビリ”をしないとどのようなことになるのか,漠然と捉えられているのが現実ではなかろうか.漠然とわかってはいても,次々と入院する重症患者に追われて,落ちついてきた患者にはつい何もしないで,転院先探しに時間ばかりが過ぎてしまうこともまた現実ではないだろうか.

Drug Information 副作用情報・28

薬剤性ショック(6)—喘息患者に生じたアナフィラキシー・ショック—毎回皮内テストの重要性,薬剤の点滴セット通過時間の問題

著者: 浜六郎

ページ範囲:P.1303 - P.1307

症例
 14歳,男性.3歳頃から気管支喘息があり,9歳時よりA病院に通院治療していた.アレルゲンテストでハウスダスト(2+〜3+),ダニ(3+),ネコ上皮(2+〜3+),イヌ上皮(1+)であった.1987年初回入院以来,時々入院をし,アミノフィリン,ヒドロコルチゾンなどの点滴を受けていた.自宅で強い呼吸困難から意識消失したことが1度あったが,入院中に意識消失するようなことはなかった.2回目の入院時(1988年)からセフォチアム(ハロスポア®)の投与を受けた.8回目の入院時に受けるまで,合計7回にわたってハロスポア®の投与を受けていた.第1回目,2回目,4回目,6回目の投与前と,合計4回にわたって皮内テストを実施し,いずれも陰性であった.
 1989年の某休日,外来受診.アレベール®2ml+ベネトリン®0.2mlを吸入.500mlの輸液中にアミノフィリン,アンプル(250mg)を入れて点滴.酸素を2ml/minで吸入し,軽快しないために再度アレベール®2ml+ベネトリン®0.2mlを吸入したが,なお軽快せず,入院となった(15:00).入院時(15:10)起座呼吸あり.38.1℃の発熱あり.

CHEC-TIE—よい医師—患者関係づくりのために・19

診察室と服装が医師—患者関係を変える

著者: 箕輪良行 ,   柏井昭良 ,   竹中直美

ページ範囲:P.1300 - P.1301

 症例 高脂血症で心筋シンチを検査した女性
 56歳,女性.タナカさんは高コレステロール血症があって診療所に受診していた.普段着でかかれる診療所では,待合室も顔見知りや友人が多い.M先生は丸首に半袖の白衣と白ズボンのスタイルでいつも変わりない.
 食事療法と運動に努め,HMGCoA還元酵素阻害剤を服用してきた.それでもコレステロール値が高く,心電図でWPW症候群も認められた.ダブルマスター負荷心電図で息切れがみられ,偽陽性所見があったため心臓を精査することとなった.

続・アメリカの医学教育 スタンフォード大学病院レジデント生活・4

現代アメリカにおけるGood Doctorとは—Part 1:Compassionate Doctor

著者: 赤津晴子

ページ範囲:P.1295 - P.1298

 医学部を卒業した時点がDoctorの誕生であるとすれば,インターンシップ,レジデンシーといった卒後研修は“Good”Doctorになるべく,それをめざしての厳しいトレーニング期間といえよう.
 それでは「良い医師」とはどのような医師のことをいうのであろうか.画一的な答えがあるわけではない.この質問を10人に投げかけたら,日本,アメリカを問わず10通りの答えが返ってくるかも知れない.しかし,私が受けてきたアメリカの卒前・卒後医学教育では,少なくとも次の二つの要素が,現代アメリカにおける“Good Doctor”の必要条件であると教えられてきた.第一には“Compassionate”Doctorであること,第二には“Competent”Doctorであること.

医道そぞろ歩き—医学史の視点から・39

2000年前のローマの医学派

著者: 二宮陸雄

ページ範囲:P.1308 - P.1309

 ケルススの『医学について』は,10世紀の手書きの本が1426年にボローニアで,1443年にミラノの教会の図書室で発見された.ケルススは前25年ころに生まれ,後50年ころまで生きたローマ人で,医学の歴史と現状について美しいラテン語で書き残していた.ケルススのおかげで,2000年前の医学理論と医療の実際をわれわれは知ることができる.アレクサンドリア学派の生体人体解剖のことも書かれていて,これを残酷で不必要なものとしりぞけ,かつて哲学に属していた医学をそれから切り離したのはコス島のヒポクラテスであることも明記されている.ヒポクラテスを「もっとも記憶されるべき価値のある人」と讃え,至るところにヒポクラテス全集を引用し,「金言集」からはその半数以上に当たる210もの金言を引用している.
 当時のローマでは,主に3つの学派が,それぞれ独自の病因論をかざして勢力を分け合っていた.第一の学派はアレクサンドリアのエラシストラトスを継承する医者たちで,もとをたどればクニドス島で学んだクリュシッポスに発している.動脈には精気(プネウマ)だけがあり,静脈に血液がある.栄養過多などで静脈の血液が過多になったり,外傷などで精気が失われると,静脈の終末をこじあけて動脈内に血液が流れこむ.この血液が精気の動きを妨げて発熱させ,血液は動脈の袋小路に押しこまれて炎症が起きる.いわゆる血液過多病因論である.

medicina Conference・26

発熱,頭痛,意識障害を呈した69歳の男性

著者: 小山茂 ,   溝岡雅文 ,   朴載源 ,   徳田安春 ,   上野文昭

ページ範囲:P.1310 - P.1322

 症例:69歳,男性.沖縄県在.
 主訴:発熱,頭痛,意識障害.
 既往歴・家族歴:特記すべきことなし.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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