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雑誌目次

雑誌文献

medicina35巻8号

1998年08月発行

雑誌目次

今月の主題 循環器疾患の低侵襲治療 Editorial

循環器疾患治療の低侵襲化

著者: 山口徹

ページ範囲:P.1332 - P.1333

ポイント
●低侵襲的治療は,医療費削減,入院期間短縮,day surgeryなどの医療変革の流れと一致する.
●冠動脈疾患に対するカテーテル治療が代表的な低侵襲的治療手技で,ステントなどの新しい器具(new device)の導入で適応が拡大しつつある.
●心臓血管外科領域でも,小切開口から冠動脈バイパス手術(MID-CAB)や弁置換手術(MICS)など,手術の低侵襲化が試みられている.

虚血性心疾患

虚血性心疾患に対するカテーテル治療の現状と問題点

著者: 鈴木孝彦

ページ範囲:P.1334 - P.1336

ポイント
●病変に適切なニューディバイスの選択は,より高い初期成功率とより確実な結果をもたらす.
●その反面,適応病変の拡大は再狭窄率を必ずしも減少せしめるものではない.
●バルーン時代とは異なった合併症もあり,より習熟した技量が必要である一方で,適切な適応基準が求められている.

新しい穿刺法によるカテーテル治療—transradial approachとbrachial approach

著者: 落合正彦

ページ範囲:P.1337 - P.1339

ポイント
●冠動脈インターベンションにおける使用器機は近年急速に1ow-profile化し,術後安静度の軽減と出血性合併症の軽減が可能なtransradial approachが,6Frガイドカテーテルを用いて始められた.
●Transradial approachの成功率は従来の大腿動脈穿刺による冠動脈インターベンションと何ら遜色なく,少数の例外を除いてその実施が可能である.
●急性心筋梗塞や不安定狭心症などの緊急例は,むしろtransradial approachの良い適応と考えられる.
●今後のさらなる使用器機の進歩と一部の症例における7ないし8Frガイドカテーテルの使用は,その適応をさらに拡げるものと思われる.

外来でのカテーテル診断とカテーテル治療

著者: 齋藤滋

ページ範囲:P.1341 - P.1343

ポイント
●日帰り冠動脈造影,日帰り経皮的冠動脈形成術は限定された症例に対しては安全に施行可能である.
●現行の健康保険制度の下では,経済的なメリットはあまり多くはない.

狭心症に対するバルーン冠動脈形成術(PTCA)

著者: 野口輝夫 ,   野々木宏

ページ範囲:P.1344 - P.1346

ポイント
●1977年,Gr【u]ntzigにより経皮的冠動脈形成術(PTCA)が臨床に導入されて以来,機器の改善,技術の進歩とともにその適応が大きく拡大された.
●現在では,PTCAは薬物療法,冠動脈バイパス術(CABG)とともに,狭心症の三大治療法の一つとして確立している.
●しかし,PTCA後の急性冠閉塞と再狭窄は,未だ克服されておらず,今後解決すべき問題である.

狭心症に対するステント留置術

著者: 木村剛 ,   延吉正清

ページ範囲:P.1347 - P.1350

ポイント
●バルーンによるPTCAの問題点である急性冠閉塞や再狭窄の解決策として,冠動脈ステントの研究が進められてきた.
●初期成績の向上,大規模試験による再狭窄予防効果の証明,チクロピジン使用によるステント血栓症の頻度の激減などの進歩を受けて,冠動脈ステントは現在の冠動脈インターベンションにおいて不可欠なものとなっている.
●大規模試験により妥当と考えられるステントの適応は,固有冠動脈初回限局性病変,静脈グラフト病変,慢性完全閉塞病変,再狭窄病変などである.
●ステント治療における最大の課題は,難治性ステント再狭窄に対する予防・治療法の確立である.

狭心症に対するアテレクトミー

著者: 桐ケ谷肇 ,   相澤忠範

ページ範囲:P.1351 - P.1353

ポイント
●アテレクトミーには,方向性(DCA),回転性(ロータブレーター),吸引型(TEC)の3種類がある.
●各デバイスの切除原理はそれぞれ異なるため,標的病変の性状に応じた使い分けが必要である.
●慢性期再狭窄率はDCAでは約30%であるが,ロータブレーターとTECでは40~50%でPTCAとほぼ同等である.

TMRとPMR(レーザー心筋血行再建術)

著者: 中村正人

ページ範囲:P.1354 - P.1356

ポイント
●TMRおよびPMRは,レーザーを心筋表面から照射することで左室心筋を貫く小孔を作成し,心筋内に血管新生を導く間接的な血行再建術である.
●TMRおよびPMRは,冠動脈形成術や冠動脈バイパス術による血行再建が不可能な薬物抵抗性の狭心症症例が適応となる.
●施行例の約1/3の症例で症状が消失,約75%の症例でCCS分類による狭心症クラス2度以上の症状改善が期待できる.
●TMRおよびPMR後の症状改善は,灌流改善効果よりも早期である.
●作用メカニズムについては,未だ不明な点が多い.

低侵襲冠動脈バイパス術(MID-CAB)

著者: 小池茂文 ,   大川育秀 ,   松本興治

ページ範囲:P.1357 - P.1359

ポイント
●左小開胸での拍動下左内胸動脈—前下行枝バイパス術(低侵襲冠動脈バイパス術:MID-CAB)が,1995年にBenettiらにより報告された.
●低侵襲冠動脈バイパス術は,左開胸で左内胸動脈と左前下行枝を拍動下で吻合するものを中心としている.右胃大網動脈を右冠動脈に吻合するものを含める場合もある.
●1996年に日本でも初めて行われるとその低侵襲さが脚光を浴び,以来急速に普及しつつある.今後は心臓外科医にとって必須の手技となってくるため,熟練のための努力が必要である.

急性心筋梗塞に対する血栓溶解療法(IVTとICT)

著者: 水村恒雄 ,   斎藤穎

ページ範囲:P.1360 - P.1362

ポイント
●血栓溶解療法には経静脈的血栓溶解療法(IVT)と冠動脈内血栓溶解療法(ICT)があり,現在ではIVTが一般的である.
●血栓溶解療法の施行に際しては,①75歳以下,発症12時間以内,持続する胸痛に心電図上ST上昇を示す症例,または,②胸痛に新たな脚ブロックを呈する症例,が良い適応とされ,逆にST下降のみを示す症例には血栓溶解剤を投与すべきでない.
●血栓溶解療法の有害事象としては脳出血が最も重篤であり,血栓溶解剤の投与にあたっては禁忌事項の確認が重要である.

急性心筋梗塞に対するPTCAとステント

著者: 河越卓司 ,   佐藤光 ,   立石博信

ページ範囲:P.1364 - P.1366

ポイント
●急性心筋梗塞に対するdirect PTCAの初期再疎通成功率は高く,その有効性は確認されているが,急性再閉塞や遠隔期再狭窄などのいくつかの問題点も残されている.
●Rescue PTCAでは,成功例での有効性は確認されているが,不成功例の予後不良が指摘されており,rescue PTCAを行うにあたっては不成功例に対するbail outの対策が必要と思われる.
●急性心筋梗塞に対するステント植込み術の初期成功率は高く,急性再閉塞を減少させ,急性期の有効な再疎通療法と考えられる.

弁膜症

弁膜症に対する低侵襲治療の現状と展望

著者: 田村勤

ページ範囲:P.1368 - P.1370

ポイント
●弁膜症に対する低侵襲治療として,カテーテルによる弁狭窄の治療(MSに対するPTMC,ASに対するPTAV),弁形成術,胸郭に対してより小さい切開などの方法が行われている.
●PTMCや僧帽弁形成術は治療法として確立されつつあるが,さらに長期観察が必要である.
●低侵襲治療は今後も発展が期待される.

僧帽弁狭窄に対する経皮経静脈的僧帽弁裂開術(PTMC)

著者: 永田正毅

ページ範囲:P.1371 - P.1373

ポイント
●僧帽弁狭窄症の治療の一手段として,経皮経静脈的僧帽弁裂開術(PTMC)が確立された.
●PTMCの特徴は非開心術で低侵襲性でありながら,その効果は開心術とほぼ同等である.
●手技的には井上バルーンを用いた術式が世界的になっている.
●PTMCの良い適応は,開心術の交連切開術の適応となる症例である.
●PTMCの効果は長期間持続する.
●PTMCの合併症で注意を払う必要のあるものは,弁亀裂による高度の僧帽弁逆流と心タンポナーデである.

石灰化大動脈弁狭窄に対するバルーン弁形成術

著者: 玉井秀男

ページ範囲:P.1374 - P.1375

ポイント
●高齢者の石灰化大動脈弁狭窄症の内科的治療は予後不良であり,大動脈弁置換術も手術死亡率は高い.
●バルーン弁形成術は,高齢者石灰化弁狭窄症に対する非侵襲的治療法として手術リスクの高い症例に適応されてきた.
●現在は,術後の高い再狭窄率のために長期的有効性は疑問視され,手術リスクの高い症例に対して手術を前提として,主として心機能改善の目的に使用されている.

心タンポナーデに対するドレナージと癒着術

著者: 樫田光夫

ページ範囲:P.1376 - P.1378

ポイント
●心タンポナーデ症状は,心膜液の貯留量でなく,貯留速度に関係し出現する.
●心タンポナーデの原因疾患として最も多いのは悪性腫瘍である.
●心膜穿刺施行時には,右室を穿刺しないよう心エコー図で穿刺方向を頭に入れてから行う.
●心タンポナーデ症状のない癌性心膜炎例に,心膜穿刺術は施行すべきでない.

弁置換術に代わる僧帽弁形成術

著者: 江石清行 ,   川副浩平

ページ範囲:P.1379 - P.1381

ポイント
●僧帽弁形成術は人工弁置換術に比較し,抗血栓性,心室機能などquality of life(QOL)の観点から優れており,健康人同様のQOLを獲得できる可能性を秘めた術式である.
●粘液変性による僧帽弁閉鎖不全は,腱索の延長,断裂による弁尖逸脱がその原因であり,形成術の良い適応である.
●再手術は術後2〜3年以内の比較的早期に集中し,再手術率は5〜8%が一般的である.その後は安定し,10年後の再手術非発生率は早期も含めて80〜95%である.

低侵襲性人工弁置換術

著者: 川合明彦 ,   北村昌也 ,   小柳仁

ページ範囲:P.1383 - P.1385

ポイント
●低侵襲性人工弁置換術は,小さな皮膚切開と小開胸孔からの手術である.
●人工心肺を用いて心停止下に手術を行う点では,侵襲は変わらないとの批判もある.
●小切開という美容的利点に加えて,創痛,縦隔炎などの合併症の減少や呼吸機能の改善,早期退院といった術後の回復を促進することが証明されれば,この術式は広く認められていくと考えている.

先天性心疾患

先天性心疾患に対するカテーテル治療の現状と展望

著者: 越後茂之

ページ範囲:P.1387 - P.1389

ポイント
●先天性心疾患に対するカテーテル治療は多彩であり,外科手術に代わる第一選択の治療とされる手技もある.
●複雑心奇形では,カテーテル治療と外科治療との共同作業によって最終手術に到達する症例も少なくない.
●心房中隔欠損閉鎖システムや大血管に対するステントなどの体内留置デバイスによるカテーテル治療は,将来普及が期待される.

肺動脈弁狭窄,末梢性肺動脈狭窄に対する弁形成術,血管形成術

著者: 石澤瞭 ,   於保信一 ,   百々秀心

ページ範囲:P.1390 - P.1393

ポイント
●経皮的バルーン弁形成術は,肺動脈弁狭窄に対する治療法の第一選択である.適応は右室・肺動脈圧較差40〜50mmHg以上である.合併症も比較的少なく,成績は良好である.異形成弁に対する成績は悪いが,試みる価値はある.
●末梢性肺動脈狭窄に対するバルーン形成術の成功率は60〜70%であり,術後狭窄の治療法として有効である.
●複雑心奇形に対するstaged operationにおいて,外科治療との共同作業により,患者をより良い修復状態にもっていく治療法として,末梢性肺動脈狭窄に対するバルーン形成術の目的と意義がある.

経カテーテル心房中隔欠損閉鎖術(TASDC)

著者: 小林俊樹 ,   小池一行

ページ範囲:P.1394 - P.1397

ポイント
●閉鎖栓は数種類みられるが,閉鎖可能な心戻中隔欠損の大きさは2cm程度が上限と考えられており,全心房中隔欠損症例の30〜40%がその適応と推察される.
●経食道心エコー図検査が,適応決定および閉鎖術中のモニターとして重要であり不可欠である.

動脈管開存症に対するカテーテル閉鎖術

著者: 中西敏雄

ページ範囲:P.1398 - P.1401

ポイント
●近年,動脈管開存症に対するカテーテル治療の方法が発展してきた.
●デタッチャブルコイルを用いると,径3mm以下の動脈管は残存短絡なく安全に閉鎖できる.
●3mmより大きい動脈管でも,5mmまでなら複数のコイルで閉鎖できる可能性がある.
●3〜6mmの動脈管はRashkind閉鎖栓で閉鎖できる可能性があるが,現在はまだ使用認可待ちである.
●3mmより大きい動脈管の場合,手術の必要性が高くなってくる.

不整脈

不整脈に対する低侵襲治療の現状と問題点

著者: 庄田守男 ,   笠貫宏

ページ範囲:P.1403 - P.1405

ポイント
●低侵襲的不整脈治療として,ペースメーカー治療,カテーテルアブレーション,植込み型除細動器があり,開胸を必要とする手術治療に比較して侵襲度が低い観血的治療法として位置づけられる.
●ペースメーカー治療は,徐脈治療としては完成度の高い治療法であるが,今後の課題は,低心機能症例に対するペーシング治療,心房細動発生を予防するペーシング治療の確立などである.
●カテーテルアブレーションは,WPW症候群,房室結節リエントリー性頻拍,通常型心房粗動,心房頻拍,特発性心室頻拍などの根治療法として確立した方法である.
●植込み型除細動器は小型化と高性能化が進み,適応は拡大される傾向にある.

上室性頻拍に対するカテーテルアブレーション

著者: 杉薫

ページ範囲:P.1406 - P.1408

ポイント
●発作性上室性頻拍,通常型心房粗動がカテーテルアブレーションの良い適応である.
●多源性心房頻拍,心房細動のアブレーションによる根治は困難である.
●薬物治療と比較すると長期(生涯)服用が不要で薬物による副作用の心配はなく,手術治療と比較すると開胸しなくともよく,入院期間も短い利点がある.
●合併症は,血管心筋損傷による心タンポナーデ,血栓塞栓症,房室ブロック,穿刺部位の内出血である.
●高周波通電により安全性は向上しており,治療成績を把握して適応を守れば上室性頻拍の第一選択治療法となりうる.

心室頻拍に対するカテーテルアブレーション

著者: 鷲塚隆 ,   相澤義房

ページ範囲:P.1409 - P.1411

ポイント
●近年,致死的不整脈である心室性頻拍(VT)に対しカテーテル焼灼術が導入され,高周波通電による焼灼法が用いられるようになって適応が拡大され,VTの治療法の一つとして確立された.
●特発性VTではカテーテル焼灼術により,ほぼ100%の成功率が得られる.
●基礎心疾患を有する症例でも薬物療法や埋込み型除細動器との併用により,良好な予後が得られる.

植込み型除細動器(ICD)

著者: 竹下晃子 ,   三田村秀雄

ページ範囲:P.1412 - P.1414

ポイント
●心臓突然死の原因となるVT,VFといった致死性不整脈に対して,近年,植込み型除細動器(ICD)による治療法が臨床応用されている.
●ICDは致死性不整脈による突然死の回避のための最終選択の治療法となりうるが,原病の進行が抑えられない限り全死亡率の改善につながらない場合もある.
●今後さらなる有効性,安全性を確立し,患者の肉体的,精神的苦痛を軽減するよう努めるとともに,適応の拡大やhigh risk patientに対する予防的ICD植込み術への検討を進める必要がある.

新しいペースメーカー

著者: 鈴木章弘 ,   山口巖

ページ範囲:P.1415 - P.1417

ポイント
●ペースメーカーは徐脈性不整脈に対してほぼ確立された治療法であり,近年のペースメーカーには生理的な血行循環動態を維持すべく多種多様な機構が備えられている.
●頻脈性不整脈に対するペースメーカーも一部臨床応用されているが,アブレーション法の進歩,発展により適応は縮小化されつつある.
●ペースメーカー機能の複雑化と適応拡大に伴う合併症の可能性も増加してきており,ペースメーカーの種類,機構,電磁障害に熟知する必要がある.

心不全と心筋症

心原性ショックに対する経皮的心肺補助(PCPS)

著者: 野田聖一 ,   明石勝也

ページ範囲:P.1419 - P.1421

ポイント
●薬物治療の限界を越えた重症心不全や心原性ショックは補助循環法の適応となり,その重症度や目的に応じて使い分けられている.
●経皮的心肺補助(PCPS)は経皮的に装着し,ベッドサイドで簡便に施行できるVA bypassシステムであり,心臓ポンプ機能を補助し,全身の循環維持による臓器障害の予防が目的である.
●心原性ショック時におけるPCPSの適応には,心機能の回復が期待しうる病態であることが条件となり,PCPSによる循環の維持は,積極的な原因疾患の治療のための移行手段として意味づけられる.

心室補助装置と人工心臓

著者: 西村元延 ,   松田暉

ページ範囲:P.1422 - P.1425

ポイント
●人工心臓,特に補助人工心臓は,機器の改善,技術の進歩とともに様々な重症心不全に対する長期にわたる循環補助が可能となった.
●最近では,埋込み型補助人工心臓が末期的心不全患者に対する心臓移植までのつなぎ(ブリッジ)として用いられ,好成績をあげている.
●しかし,これら人工心臓装着後における感染症や血栓塞栓症の問題は,未だ完全には克服されておらず,今後解決すべき問題である.

心室縮小形成術(Batista手術)

著者: 須磨久善

ページ範囲:P.1426 - P.1428

ポイント
●ブラジル人外科医Randas Batistaが考案した心室縮小形成術(Batista手術)は,拡張型心筋症(DCM)に対する新しい治療の一つとして注目されている.
●DCMに対しては,薬剤治療か心臓移植治療というかけ離れた両極端な治療しかなかったが,このギャップを埋める治療法で,DCM未期患者に大きな福音となりうる.
●しかし,その機序,症例の選択など未だ不明な点があり,解明していかなければいけない課題も多い.

閉塞性肥大型心筋症に対する中隔心筋アブレーション

著者: 高山守正

ページ範囲:P.1430 - P.1434

ポイント
●進行した閉塞性肥大型心筋症に対する新しい治療法であり,経皮的冠動脈形成術(PTCA)の技術を用いて,閉塞部を形成する中隔心筋を灌流する中隔枝へ高濃度エタノールを注入し,局所的な心筋壊死をつくり狭窄を解除するカテーテル治療法である.
●合併症として三束ブロックによる完全房室ブロックが生じ,10〜20%に恒久的ペースメーカーの植込みを要する.
●治療法の歴史は浅く,遠隔期予後は3〜6カ月では良好な成績だが,さらに長期の予後は不明であり,今後DDDペースメーカー植込み,中隔心筋切除術と比較しての検討が必要である.

大動脈疾患と末梢動脈疾患

大動脈瘤に対するステントグラフト治療

著者: 石丸新

ページ範囲:P.1437 - P.1439

ポイント
●ステントグラフト治療の原理は,ステントグラフトを動脈瘤の中枢側と末梢側の健常部位に拡張固定して瘤内血流を遮断し,瘤の減圧と血行再建を同時に達成しようとするものである.
●本法の適応は,胸部下行大動脈瘤あるいは腎動脈分岐部末梢の腹部大動脈瘤であり,特に主要分枝動脈が瘤病変近傍にある場合には限界がある.
●本法の施行にあたっては,合併症に対応すべく緊急血管外科手術および麻酔管理が可能な施設に,高性能のX線透視および血管撮影装置を準備すべきである.

閉塞性動脈硬化症(ASO)に対する経皮的血管形成術

著者: 長谷川市郎 ,   成松芳明 ,   平松京一

ページ範囲:P.1440 - P.1442

ポイント
●近年,minimally invasive therapyが定着するなかで,interventional radiology(IVR)は発展してきたが,閉塞性動脈硬化症(ASO)の治療においても各種デバイスの開発により,IVRの発展はめざましい。
●ASOに対するIVRは,balloon PTA, metallic stent, atherectomyの臨床応用される頻度が比較的高く,それぞれに特徴がある.

頸部頸動脈狭窄性病変に対するステント留置術

著者: 西崎順也 ,   山形専 ,   光藤和明

ページ範囲:P.1443 - P.1445

ポイント
●ステント留置術が外科的治療の困難な頸部頸動脈狭窄性病変に対して行われることがあり,その有効性が報告されつつある.
●高齢者,高位病変,全身麻酔が困難な症例が,その適応になると考えられる.

動脈塞栓術

著者: 古井滋

ページ範囲:P.1448 - P.1450

ポイント
●動脈塞栓術は,カテーテルから塞栓物質を注入または留置して行う.
●塞栓物質には液体のものと固形のものとがあり,病変の種類や部位などによって塞栓物質を選択する.
●動脈塞栓術の対象となる末梢動脈疾患には,出血,動脈瘤,偽動脈瘤,動静脈瘻,動静脈奇形などがある.

新しい穿刺部止血法

著者: 西田隆寛 ,   山口徹

ページ範囲:P.1451 - P.1453

ポイント
●新しい止血法として,牛コラーゲンによる止血器具やポリエステル縫合糸による血管縫合器などが実用化されているが,従来の用手圧迫法に代わるほどの臨床的なスタンダードになる方法はない.
●新しい止血法により,用手圧迫法よりも止血・安静時間を短縮できるが,血管合併症の発生率は有意に減少しない.
●新しい止血法の使用に際しては,用手圧迫法よりも患者側や使用状況の制限がある.
●新しい止血法が普及するためには,医療経済の面でも利点を有することを示す必要がある.

理解のための32題

ページ範囲:P.1455 - P.1461

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.1479 - P.1484

図解・病態のメカニズム 膵疾患・8

膵外分泌障害と消化吸収障害

著者: 近藤孝晴

ページ範囲:P.1475 - P.1477

 消化吸収における膵の役割,および膵外分泌障害時の消化吸収障害発生の機序を中心に述べる.

演習 腹部CTの読みかた・10

低カリウム血症と高血圧で発症した31歳女性

著者: 小林利毅 ,   岩田美郎

ページ範囲:P.1465 - P.1473

Case
 31歳,女性.主訴:低カリウム血症,高血圧.
 生来健康であったが,会社検診で高血圧と低カリウム血症を指摘された.このため精査目的にて本院紹介となった.来院時,血圧172/100と拡張期高血圧を認めた.理学的所見では下肢の浮腫など異常所見はなく,神経学的にも問題はなかった.既住歴,家族歴とも特記すべきことなし.
 臨床検査所見:Na+140mEq/l,K+2.1mEq/l,Cl-94mEq/lと低カリウム血症を認めた.腎機能はCr 0.5mg/dl,BUN 8mg/dlと正常.内分泌検査では,血中アルドステロン494pg/ml(正常30〜200),レニン活性 0.1ngAI/ml/h以下(正常0.5〜3.0)の異常が認められた.腹部超音波検査で右副腎に腫瘤が認められたためCTを施行した.

続・アメリカの医学教育 スタンフォード大学病院レジデント生活・5

現代アメリカにおけるGood Doctorとは—Part 2:Competent Doctor

著者: 赤津晴子

ページ範囲:P.1485 - P.1488

 Good Doctorであるための第1の要素がCompassionate Doctorであるとすれば,第2の要素は“Competent” Doctorである.Competent Doctorとは,ひと言でいえぼ有能な医師のことである.では何をもって「有能」とするのか.画一的な答えがどこかに書かれているわけではない.また,社会や時代が変われば,有能という定義も変わりうるであろう.
 アメリカで卒前・卒後医学教育を受け,アメリカ臨床医療に身を置いてみて感じるのは,現代アメリカにおいて有能な医師と呼ばれるためにはevidence-based medicine(実証に基づいた医療)を実践できることが最低限必要である,ということである.

CHEC-TIE—よい医師—患者関係づくりのために・20

ゲートキーパー機能をもった主治医がない患者の場合

著者: 箕輪良行 ,   柏井昭良 ,   竹中直美

ページ範囲:P.1490 - P.1491

 症例 複数の診察科を紹介された胸水貯留例
 90歳,男性.マツモトさんは近くの病院から,ろれつが回らなくて左片麻痺がみられるとのことで救急外来へ送られてきた.全身状態は悪くなく,今まで自立生活も可能であった.来院時には片麻痺は軽快,消失しつつあり,脳外科へ紹介したところ神経学的所見はなく頭部CTも正常だった.
 数ヵ月前に心臓ペースメーカーを挿入されていた.37.4℃の発熱があるため胸部X線写真をとったところ,右胸水貯留が認められた.循環器科ではペーシング不全と判断され調節されて,心エコーで左室機能はやや低下,下大静脈の吸気時拡張を認めた.白血球数正常,CRP軽度上昇が明らかとなり,結核性胸膜炎の疑いで呼吸器内科へ紹介された.

医道そぞろ歩き—医学史の視点から・40

ローマ時代に対照試験を行ったガレノス

著者: 二宮陸雄

ページ範囲:P.1492 - P.1493

 第二次大戦後,アメリカのFDAを中心に発展した「臨床対照試験」は,無効な薬や危険な薬害を排除するのに大いに力があった.しかし日本では,科学的検討の及んでいない民間薬が安易に使われる民俗的土壌があり,新薬についても有効性と安全性の評価にはまだ厳しい姿勢が欠けており,そのために無効な薬や薬害があとを断たない.
 医学史をひもとくと,2世紀後半のローマの医者ガレノスが早くも比較対照試験を行ったことを,「精液について」という論考に書いている.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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