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雑誌目次

雑誌文献

medicina35巻9号

1998年09月発行

雑誌目次

今月の主題 腹部エコーToday 腹部エコーを使うにあたって

アーチファクトの把握—偽物と本物の鑑賞眼のために

著者: 東義孝

ページ範囲:P.1502 - P.1505

ポイント
●超音波画像は数種類のアーチファクトで修飾されており,虚像や歪みを含んでいる.
●超音波画像は超音波が体内で1回だけ反射する前提で作られているが,実際は何回も反射(多重反射)する.
●超音波ビームは先に行くほど拡がり,数本の側波(サイドローブ)を伴っている.
●超音波は組織の境界線を斜めに通過するとき,光と同じように屈折する(レンズ効果).

腹部エコーの適用と位置づけ

著者: 平田經雄

ページ範囲:P.1506 - P.1509

ポイント
●腹部エコーは,臨床検査法(超音波検査)としての位置づけに加え,生活習慣病の予防と早期発見のための健診や検診(超音波健診・超音波検診),理学検査の一環として(超音波診),動態監視(超音波透視)の下での各種処置・治療など,第一線の診療で広く適用されている.
●超音波健診と超音波検診は,がん・生活習慣病検診の中核をなし,今後ますます重視されよう.
●超音波診と超音波透視は,理学検査の一環として卒前教育での教授が望まれる.
●健康管理業や医療機関での検査に,学会認定超音波検査士の役割がますます重要になる.

腹部超音波検査のコツ

著者: 田中幸子 ,   押川修 ,   佐々木照子

ページ範囲:P.1510 - P.1514

ポイント
●装置を選ぶときには,実際に自分で扱ってみて画像の見やすさや操作性を確認することが大切である.学習意欲を持続させるためにも,初心者には中程度の価格帯の機種を勧める.
●超音波診断法を学ぶ基本は,装置の性能を十分引き出せるような操作法と,臓器をくまなく観察する走査法を身につけることである.次いで手術症例などについて,他の画像診断,切除肉眼所見や組織所見と超音波像とを対比することにより,読影能力を高めることである.
●おしきせの初期設定のままで装置を使用するのではなく,超音波の原理をある程度理解したうえで適切な使いかたをするべきである.

腹腔内臓器における腹部エコー法の役割

肝細胞癌

著者: 真島康雄

ページ範囲:P.1516 - P.1518

ポイント
●直径15mm以上ではnodule in nodule,隔壁エコーなどによるモザイクパターンや門脈,胆管内の腫瘍栓に注意する.
●直径15 mm以下ではbright loop,後方エコーの増強などの所見の判読でなく,描出がポイントである.それには7.5MHzプローブの使用が有用となる.
●最近では質的診断や経過観察に,カラードプラは不可欠で重要な位置を占めている.
●通常のエコーの現在における役割は,小さいものを(1cm以下)見つけて,サイズや内部エコーの変化を精密にフォローすることである.

転移性肝腫瘍

著者: 坂口正剛

ページ範囲:P.1519 - P.1523

ポイント
●大きさがほぼ揃った多発性の肝腫瘍は転移性の可能性が高い.
●腫瘍の肝転移は硬変肝には起こりづらいので,転移性肝腫瘍では肝細胞癌と異なり,慢性肝障害の所見に乏しい.
●bull's eye signは転移性肝腫瘍にdiagnosticな所見ではない.

肝内胆管癌

著者: 石田秀明 ,   小松田智也 ,   長沼裕子

ページ範囲:P.1525 - P.1527

ポイント
●肝内胆管癌自体は,周囲肝組織とほぼ同等のエコーレベルであり,エコーで捉えにくい.
●門脈血流障害により限局性肝萎縮をきたすことがあるが門脈の途絶を認めた場合,肝内胆管癌を念頭に入れる必要がある.
●門脈血流障害により,限局性肝萎縮をきたすことがある.
●原発性硬化性胆管炎や肝吸虫などの慢性胆管炎を母地に発生することがある.
●CA 19-9は肝内胆管癌の早期発見や他の肝腫瘍との鑑別に有用である.

肝血管腫

著者: 冨山剛 ,   上野規男 ,   田野茂夫

ページ範囲:P.1529 - P.1531

ポイント
●肝血管腫は,通常周囲との境界が明瞭で凹凸不整な辺縁を有する楕円形の腫瘍として描出される.内部エコーにより高エコー型,辺縁高エコー型,混合エコー型の3型に分類されるが,高エコー型の頻度が最も高い.
●体位変換や腹壁の圧迫により,エコー所見が変化する場合がある.
●慢性肝障害を合併している場合には,肝細胞癌との鑑別が重要である.
●血行動態が評価可能なカラードプラ法や造影エコー法は,肝血管腫と肝細胞癌の鑑別に有用である.

その他の肝腫瘤(肝膿瘍も含む)

著者: 竹内和男 ,   奥田近夫 ,   吉崎秀夫

ページ範囲:P.1532 - P.1535

ポイント
●肝腫瘤の診断では形態的特徴のみならず,外側陰影,後方音響増強など超音波特有の現象の有無が鑑別に役立つ.
●外側陰影(lateral shadow)は,表面の平滑な類縁形腫瘤で認められ,嚢胞,嚢胞性腫瘍,被包型肝癌などでよくみられる.
●後方音響増強(posterior echo enhancement)は,周辺肝実質よりも腫瘤内部の音響透過性がよいために生じ,嚢胞,嚢胞状腫瘤,肝膿瘍(膿汁が多量のもの)のほか,肝細胞癌,血管腫でもみられる.
●腫瘤後方の音響減衰〜陰影は,陳旧性肝結核腫,脂肪性腫瘤でみられるほか,肝切除後の肉芽,経皮的エタノール注入療法やTAE後の肝癌結節でも認められる.
●辺縁環状低エコー帯(halo)は,腫瘍性病変にしばしば認められるが,良性病変では稀である.

肝腫瘤の鑑別のポイント

著者: 林仁守 ,   小笠原鉄郎 ,   山下安夫

ページ範囲:P.1536 - P.1539

ポイント
●2cm以下の小腫瘤では早期の肝細胞癌を見逃さないことが肝要である.肝細胞癌は慢性肝炎や肝硬変を母地に発生し(それぞれの疾患のエコー像に注目すること),低エコーで内部は均一であることが多い.肝血管腫は頻度が多く,高エコーを呈するものが多い.
●2〜3cm以上の腫瘤では,肝細胞癌はモザイク状,側方音響陰影の増強などが,胆管細胞癌では腫瘤の末梢側の胆管の拡張が特徴的所見である.
●転移性肝癌では,大きさは大小様々で腫瘤像は多彩である.

びまん性肝疾患

著者: 福田浩之 ,   江原正明 ,   税所宏光

ページ範囲:P.1540 - P.1545

ポイント
●びまん性肝疾患の診断において,腹部超音波検査は高い診断能と簡便性,非侵襲性に優れている.
●超音波により,肝の大きさ,肝の形態,肝実質や肝内脈管の異常,腹水,門脈圧亢進症における門脈側副血行路が診断できる.
●肝硬変では,肝表面の凹凸,肝縁の鈍化,肝実質エコーの粗造化,肝静脈の狭小化などの所見がみられる.

胆嚢,胆管,脾臓

著者: 泉里友文 ,   羽木裕雄 ,   跡見裕

ページ範囲:P.1546 - P.1549

ポイント
●胆嚢はエコー検査で最も明瞭に描出される臓器であるが,よい像を得るには患者の呼吸と体位を工夫することが必要である.
●胆嚢は多重反射などのアーチファクトがよく出現する.
●胆嚢壁肥厚を呈する慢性胆嚢炎,胆嚢アデノミオマトーシスと胆嚢癌の鑑別が重要である.
●胆嚢小隆起性病変では,エコー像でコレステロールポリープか否かを鑑別する.
●胆石のエコー像により結石の性状が判断できる.
●胆管は門脈の走行に沿って描出される.
●胆管の狭窄,閉塞部位は,肝内胆管の拡張,胆嚢の腫大,総胆管の拡張の有無などで鑑別する.
●胆嚢からの落石による総胆管結石では肝内胆管拡張が軽度なことが多く,結石の診断率も50〜60%くらいである.
●胆管癌浸潤型は総胆管の途絶,先細り像を呈するが,胆管壁の肥厚像は稀である.
●胆管癌の壁浸潤範囲を判断するのは困難なことが多い.
●脾臓上方の前〜外側は肺がかぶるため描出しにくい.

膵臓

著者: 堀口祐爾 ,   今井英夫 ,   鈴木智博

ページ範囲:P.1550 - P.1552

ポイント
●代表的な膵疾患である急性膵炎,慢性膵炎,膵管癌,膵嚢胞性疾患について,体外式超音波検査(US)の診断的意義,診断のポイント,他のモダリティーとの比較などについて解説した.
●USは確かに膵疾患のスクリーニングとして,また膵疾患発見の契機としてなくてはならない検査法であるが,さらに精査法としても重要な役割を占めていることを改めて認識する必要があるように思われる.
●最近では,機器が日進月歩に進歩していて,また新しい手法(カラードプラ法やハーモニックエコー法)が次々と登場しつつあり,最も侵襲性の少ない画像検査法として超音波検査の今後に期待したい.

腎臓

著者: 平井都始子 ,   大石元 ,   打田日出夫

ページ範囲:P.1555 - P.1559

ポイント
●腎エコーはスクリーニングや血尿,蛋白尿,高血圧,腰痛などの精密検査として施行される.
●正常腎の超音波像をよく理解し,大きさ,形(辺縁),構造異常の有無,腫瘤像の有無,エコーレベル,結石様エコーの有無についてチェックしながら検査を進める。
●必要に応じてカラードプラ法を併用しより精度の高い検査を心掛けることが重要である.

副腎

著者: 棚橋善克 ,   豊田精一 ,   喜屋武淳 ,   章建全

ページ範囲:P.1560 - P.1563

ポイント
●正常副腎の解剖学的位置をよく理解しておく.
●左右の副腎とも,検側を持ち上げた斜位で,腹壁からの走査が基本となる.
●側腹壁からの走査,うつ伏せでの走査も加えて,見逃しを少なくする.
●存在診断,質的診断ともに,他の画像診断と組み合わせて精度の向上を図る.
●超音波はリアルタイムの描出が可能なので,副腎と腎との関係(特に呼吸による位置関係のずれ)を知るのに特に有効である.
●質的診断には,超音波ガイド下生検も有用となる.

後腹膜(リンパ節も含む)

著者: 柚木雅至 ,   國松奈津子 ,   河野敦

ページ範囲:P.1564 - P.1566

ポイント
●超音波検査は液体貯留,嚢胞性腫瘤,壊死部分の検出,血管の評価に優れる.
●後腹膜腔液体貯溜の原因としては,①膵炎,重症の腎孟腎炎,脊椎炎,消化管の腹腔外穿孔などに伴う滲出液や膿瘍,②外傷や動脈瘤破裂などによる出血,③urinomaなどがある.
●リンパ管腫は単房性あるいは多房性嚢胞のエコー像を呈する.
●大動脈解離では,剥離した内膜(intimal flap)が線状エコーとして描出される.
●悪性リンパ腫のリンパ節は,一見嚢胞のような球形の均一な低エコーを呈することが多い.

消化管腫瘍

著者: 山中桓夫

ページ範囲:P.1567 - P.1569

ポイント
●消化管腫瘍の超音波検査には,体表走査によるルチン検査,脱気水充満法を用いた検査,体内走査による超音波内視鏡検査,細径超音波プローブを用いた検査がある.
●ルチン検査で描写される腫瘍は悪性腫瘍の可能性が高く,部位をできる限り明確にするとともに,リンパ節腫大・肝転移の有無なども同時にチェックする.
●体内走査は精密検査法であり,腫瘍の局在部位・範囲の評価,腫瘍の質的診断もある程度可能とする.

腸管の炎症性疾患(急性虫垂炎,大腸憩室炎,腸炎,Crohn病など)

著者: 湯浅肇

ページ範囲:P.1570 - P.1579

ポイント
●腸疾患の超音波検査は,有症状のときに行うのが最適である.
●腸疾患の考えかたは,まず腸管の壁が肥厚しているのか拡張しているのかを区別することから始める.
●腸疾患の診断は,①超音波像の分析,②病巣の分布状態,③超音波像の経時的変化,④現病歴の4点に着目して疾患を推理する.

女性骨盤腔

著者: 作山攜子

ページ範囲:P.1580 - P.1585

ポイント
●女性骨盤腔の経腹的超音波検査を行うにあたっては,膀胱を充満してから行う.
●まず最初に子宮を同定する.大きさ,筋層および内腔のエコーを確認する.
●子宮の内腔は月経周期によって幅が異なるので,内膜の疾患と誤らないようにする.
●子宮以外に腫瘤が描出されるのは,卵巣の腫瘍の場合が最も多い.
●卵巣は嚢胞性構造物として描出される.子宮の右側,左側に描出されるとは限らないので,子宮の前方や後方も注意深くスキャンをして正常像か否かを判断する.正常卵巣の大きさは径が2〜4cmである.
●卵巣の良性・悪性腫瘍の鑑別のポイントについて述べた.

男性骨盤腔,膀胱

著者: 飯田明男 ,   渡辺泱

ページ範囲:P.1586 - P.1588

ポイント
●膀胱は経腹的走査にても描出可能であるが,前立腺に関して精密な情報を得るためには経直腸的走査が必要となる.
●超音波断層法は,尿路造影よりも効率的に膀胱腫瘍を検出することが可能である.
●経直腸的超音波断層法は前立腺疾患の診断に有用であり,前立腺の画像診断における主流となっており,最も信頼性が高い.

症状に応じた腹部エコーの活用法

スクリーニング

著者: 小野寺博義 ,   鵜飼克明 ,   鈴木雅貴

ページ範囲:P.1589 - P.1591

ポイント
●スクリーニングを受ける人は被検者であって患者ではない.
●超音波診断装置は画質のよい上位機種を選択のこと.画像は時間をかけて調節する.
●探触子は曲率半径40〜50 mm程度の,周波数3.5〜5.0MHzのコンベックス型を常用とする.
●臓器は最低二方向からスキャンして隅から隅まで観察する.フォーカス,ゲイン,STCはこまめに調節しながら検査をする.
●自分がその写真で何をいいたいのかが他人に伝わるような写真をとる.
●健診では超音波検査を導入することにより,指導や治療の対象となる疾患が発見されることから,超音波スクリーニングは意義があるといえる.
●追跡調査を実施して反省の材料とすること.

黄疸

著者: 佐藤通洋

ページ範囲:P.1592 - P.1594

ポイント
●超音波検査により,外科的黄疸(閉塞性黄疸)と内科的黄疸を鑑別する.
●閉塞性黄疸であれば,閉塞の部位診断,原因診断を行う.
●PTBDは超音波ガイド下に行うが,急性閉塞性化膿性胆管炎では早急に施行する必要がある.
●CT,MRIはもちろんのこと,MRCP,超音波内視鏡などの画像診断法は,適宜併用することによって診断と治療方針の決定に役立つ.

上腹部痛

著者: 靜間徹 ,   唐澤英偉 ,   林直諒

ページ範囲:P.1596 - P.1599

ポイント
●上腹部痛をきたす疾患・病態の診断において,非侵襲的かつ簡便に施行できる超音波検査の有用性は高い.
●上腹部痛に黄疸を伴う場合には,胆管の閉塞機転の有無を確認する.
●上腹部痛の超音波診断では,腹部臓器のみならず,腹水やfree airの有無も重要である.
●腹部超音波検査では,肝ドーム下,下部胆管,膵尾部などの描出が困難な症例がみられる.
●病変の描出が困難な場合には,CT検査を併用することが望ましい.

下腹部痛

著者: 秋本伸 ,   久保博嗣 ,   平野進

ページ範囲:P.1600 - P.1603

ポイント
●各種原因別の下腹部痛の特徴を知ったうえで,エコー検査を行い診断することは,正しい結論に早く到達するために有効である.
●異常臓器や該当診療科を絞り込むスクリーニングと,病態そのものを確認する精査の,双方の視点を同時にもって検査を行う.
●自分なりの検査手順をもって,広範囲多断面の走査を行い,動態観察を意識する.
●自分なりのdecision treeをもって,回り道の少ない診断の手順で結論に至るよう努める.エコー検査に拘泥しすぎてはならない.

腹水

著者: 宮本幸夫 ,   辻本文雄 ,   福田国彦

ページ範囲:P.1604 - P.1605

ポイント
●少量の腹水はMorison窩やDouglas窩に貯留する.
●超音波検査は,腹水の存在診断や質的診断に優れている.
●腹水の存在下では,通常の超音波検査では描出し得ない腹腔内構造が観察可能となる.
●腹膜炎では,腹水の腹腔内分布が異常となることがある.
●腹水中の胆嚢壁が肥厚していない場合は,癌性腹膜炎の存在を疑う.

腹部腫瘤

著者: 目崎一成 ,   西川徹 ,   久直史

ページ範囲:P.1606 - P.1607

ポイント
●局在診断としては,腫瘤性病変の発生部位の特定と進展範囲の推察を行う.
●質的診断としては,腫瘤性病変の境界,辺縁,内部エコーの観察を行う.

血尿

著者: 金田智

ページ範囲:P.1608 - P.1610

ポイント
●血尿をきたす疾患のうちで超音波検査が有効なものには,尿路の悪性腫瘍,尿路結石,腎の動静脈奇形などがある.
●若年者の肉眼的血尿では尿路結石と腎の動静脈奇形を,癌年齢者の血尿では尿路結石と尿路系の悪性腫瘍を考えて検査する.
●超音波検査では,通常腎から腎盂尿管移行部までと,尿管下端部から膀胱が観察可能である.尿管のスクリーニングとしては,経静脈性尿路造影が第一選択となる.
●腎動静脈奇形,腎動静脈瘻のスクリーニング検査法としては超音波カラードプラ法が有用であり,Bモード法による超音波断層像や通常の単純・造影CTは有効ではない.

急性腹症

著者: 入江健夫 ,   宮本幸夫

ページ範囲:P.1611 - P.1614

ポイント
●目的は,緊急手術の適応の有無を迅速に判別することである.
●単純X線検査,CTなど他の検査法と相補的に考える.
●日頃からの幅広く超音波検査に携わることが重要となる.

腹部エコーテクノロジーToday

カラードプラ

著者: 内藤久美子 ,   伊藤勝陽

ページ範囲:P.1615 - P.1617

ポイント
●カラードプラ法とは,ドプラ法にて得られた血流速度をカラー化し,Bモード像に重畳する方法である.
●カラードプラ法は血管性病変,腫瘍性病変,肝腎の機能異常の診断および治療効果判定,治療後の経過観察に応用される.
●将来的には,超音波造影剤や三次元表示との併用やパワードプラの普及により,情報量はさらに増すものと思われる.

パワードプラ法

著者: 佐々木勝己 ,   西田均 ,   石井誠

ページ範囲:P.1618 - P.1620

ポイント
●パワードプラの長所は,①シグナル・ノイズ比(S/N比)がよく血流検出感度が優れている,②角度依存性が少なく超音波ビームに垂直な血流もカラー表示できる,③折り返し現象がない,という点があげられる.
●パワードプラの短所は,①血流方向が判定できない,②モーションアーチファクトの影響を受ける,という点があげられる.

ハーモニックイメージングの展開

著者: 森安史典

ページ範囲:P.1622 - P.1625

ポイント
●送信した超音波が伝搬したり散乱するときには,受信信号に非線形成分が含まれているが,それを映像化する手法のことをハーモニックイメージング法という.
●ハーモニックイメージングの代表的な手法は,周波数フィルター法による基本波除去による二次高調波の映像化であり,これをsecond harmonic imagingと呼んでいる.
●コントラストハーモニックイメージングの臨床的な目的は,血管内血流の造影のみならず,造影CTや造影MRIのような実質の造影効果を得ることである.
●Tissue harmonic imagingの臨床上の有用性に関してはいまだ議論の最中である.
●造影ハーモニックにしてもtissue harmonic imagingにしても,今後の臨床においては超音波診断の不可欠な手法となりつつある.

三次元表示

著者: 中田典生

ページ範囲:P.1626 - P.1628

ポイント
●超音波診断においても,様々な三次元表示が可能な装置が市販されるようになり,現在その臨床適応について検討がなされている.
●三次元表示が可能な超音波診断装置には,三次元専用プローベを用いる超音波診断装置,磁気センサを用いた三次元超音波像表示装置,フリーハンドスキャンによる三次元表示が可能な超音波診断装置の3種類がある.
●超音波像の三次元表示については,現在も新たな研究開発が進んでおり,今後の発展が期待できる分野である.

理解のための23題

ページ範囲:P.1631 - P.1635

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.1637 - P.1642

図解・病態のメカニズム 膵疾患・9

慢性膵炎の治療

著者: 福屋裕嗣 ,   渡辺伸一郎 ,   西野隆義 ,   小山祐康

ページ範囲:P.1647 - P.1650

 慢性膵炎は,膵に線維化・実質の脱落,膵機能の低下をきたす非可逆的,進行性の疾患である.本疾患は時期により病態が異なることから,治療法を病期に分けて考えることが重要となる.病期は大きく代償期と非代償期に分かれ,さらに代償期は急性再燃発作時と間欠期に分けることができる(図1)1).従来より慢性膵炎の治療は食事療法,薬物療法が中心となるが,最近では,膵石に対してESWL(体外衝撃波結石破砕療法)や内視鏡を用いた新しい治療法も試みられている.本稿では,慢性膵炎の病期に応じた治療の要点を記し,さらに膵石症の治療を含めた最近のトピックスについて簡単に述べる.

症例によるリハ医療—内科医のために・5

嚥下障害のリハビリテーション

著者: 林拓男 ,   丸山典良 ,   吉田茂

ページ範囲:P.1651 - P.1655

 当院は総合リハビリテーション(以下,リハ)承認施設を持つ地域の中核的総合病院である.脳卒中患者に対しては,急性期から維持期(在宅)まで一貫したリハを行っているが,比較的高齢患者が多いことから,病巣が片側大脳半球であっても嚥下障害が遷延する例が少なくない.従来,嚥下障害に対しては,各病棟で看護婦がそれぞれの経験に基づいて対応していたが,誤嚥性肺炎を繰り返すと,客観的評価が不十分なまま経管栄養を継続することも少なくなかった.そこで嚥下障害に対するリハ科としての系統的対応の必要性を痛感し,videofluorography(以下,VF検査)を平成7年2月より開始,また言語療法士(以下,ST)を中心に,耳鼻科医師,歯科医師,歯科衛生士,看護婦,理学療法士(以下,PT),作業療法士(以下OT),栄養士が参加する勉強会を始め現在に至っている.本稿では,脳幹型の仮性球麻痺の一症例を通して,摂食・嚥下障害への当院の取り組みの経過と現状を報告する.

Drug Information 副作用情報・29

エパルレスタットの危険と利益のバランス

著者: 浜六郎

ページ範囲:P.1663 - P.1666

 エパルレスタット(キネダック®)は,アルドース還元酵素阻害剤(以下,ARI)に属する物質である.糖尿病性末梢神経障害治療剤として1992年から発売されている.推定市場は毎年230〜300億円.1995年まではインスリンの推定市場(約200億円)より多かったが,その費用に見合う効果と安全性はあるのだろうか.TIP誌では,1996年12月号で主に有効性の点について論じたが,今回,肝機能障害の副作用が報告されたので,改めてその危険/益比を検討し報告する2)

CHEC-TIE—よい医師—患者関係づくりのために・21

ロールプレイから医師患者関係を見直す

著者: 箕輪良行 ,   柏井昭良 ,   竹中直美

ページ範囲:P.1660 - P.1661

ロールプレイで肺癌患者を演じた医学生の感想
 BSLにきた5年生のキムラ君は,病棟で受け持ちの患者さんをシミュレートして患者役を演じた.56歳の男性,肺癌で手術予定の患者さん.診察するのは同じグループで別の病棟で実習中のカンダ君である.医療機関への初診時を設定し,30分間で面接と身体診察を済ませて診療を終了することが課題である.あらかじめ医療面接の講義とビデオを用いた演習を半日行った.AVで観察しながら,外来診察室でロールプレイしてもらった.「おはようございます.学生のカンダです.少しお待たせしてすみません.キムラさんですね.今日はどうなさいましたか」
 9カ月前の職場検診で,胸部X線検査で異常を指摘されたが放置.最近,咳と痰が増えて血痰も出現したため受診した.タバコは1日2箱35年間で,既往歴はなく父親を胃癌で亡くしたと話した.持参した検診の報告書によると,左中肺野に約1.5cmの腫瘍影がある.カンダ君は胸部などの診察を済ませて患者役のキムラ君に説明した.

続・アメリカの医学教育 スタンフォード大学病院レジデント生活・6

CCU(冠動脈疾患集中治療室)

著者: 赤津晴子

ページ範囲:P.1657 - P.1659

 アメリカでの死因の第一位は心臓疾患である.したがって,アメリカで一般内科医として仕事をしていると,心臓病を大変多く診る.特にスタンフォード大学病院では心臓内科・外科(心臓移植も含め)ともに力を入れている分野なので,カリフォルニア州の他の病院からの転院のみならず,全米,さらには世界各地からも特殊な治療を受けるために患者が集まってくる.
 CCU(冠動脈疾患集中治療室)および心臓内科病棟では,毎月新しく編成される「心臓内科チーム」が患者のケアにあたる.チームの構成は,内科インターン4人,内科レジデント4人,心臓内科フェロー1人および心臓内科専門のAttendingPhysician 1人の計10人である.インターンとレジデントがペアを組み,各ペアが4日に一度交代で当直を受け持つことになる.当直ペアは,その日に心臓疾患で入院してくるすべての患者の主治医となる.

医道そぞろ歩き—医学史の視点から・41

先入観を排除したマルピギーの腎糸球体

著者: 二宮陸雄

ページ範囲:P.1668 - P.1669

マルピギーは著書『腎臓について』(1666年)の中で,つぎのように述べている.「私が腎臓の構造のアイディアを得たのは書物からではない.長く忍耐強く顕微鏡をのぞいて研究し,私の流儀である推量帰納を慎重に先入観なく駆使してのことである.」
 ボローニャ近郊の農家に生まれたマルピギーは,17歳でボローニャ大学に入学した.ガリレオの死から3年後で,実験に推論を加えて真理に迫ろうとする新しい理論医学がようやく根付きつつあったが,まだ保守的な学者の支配がつづいていた.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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