けんさ—私の経験
凝固時間延長を伴わないループスアンチコアグラント症例
著者:
山崎雅英1
所属機関:
1金沢大学医学部第3内科
ページ範囲:P.201 - P.201
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抗リン脂質抗体症候群(APS)は,反復する動静脈血栓症,習慣性流産,血小板減少症を特徴とし,抗カルジオリピン抗体(aCL)またはループスアンチコアグラント(LA)いずれかの自己抗体を有する自己免疫疾患と考えられている.aCLは固相抗体法により定量的に測定可能であるが,LAは凝固時間法を用いた定性的測定により診断される.一般的には血栓症などの臨床症状が認められ,プロトロンビン時間(PT)または活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の延長(特にAPTTの延長)を伴う場合にLAの測定が行われ,これらの凝固時間の延長が認められない場合には,さらなる精査が行われないことが多い.しかし,PT,APTTいずれも延長を認めないものの,カオリン凝固時間法(KCT),希釈ラッセル蛇毒時間法(dRVVT)などによりLAの存在が証明される症例もある.
症例:35歳,女性.右下肢の深部静脈血栓症を発症し当科へ紹介.既往歴に自然流産3回あり.PT10.5秒(INR1.02),APTT32.5秒(対照33.5秒)と正常であったが,APSが強く疑われたためKCT,dRVVTを測定したところ,KCT234.5秒(対照102.5秒),dRVVT56.8秒(同35.8秒)と延長を認め,confirm testによりLA陽性と診断された(ちなみにaCLは陰性であった).