icon fsr

文献詳細

雑誌文献

medicina36巻11号

1999年10月発行

文献概要

けんさ—私の経験

長期経管栄養摂取による銅欠乏性の貧血・白血球減少症

著者: 白田明子1

所属機関: 1太田熱海病院神経内科

ページ範囲:P.429 - P.429

文献購入ページに移動
 以前,私が経験した症例で,貧血と白血球減少が進行し,最終的に銅欠乏症と判明した症例がありました.その症例は,70歳の男性で,多発性脳梗塞に伴う嚥下障害のために経管栄養を施行されていましたが,経管栄養開始後約1年目頃より大球性貧血・白血球減少が進行し入院となりました.入院時,WBC 2,200/μl,Hb 6.6g/dlと低下を認めましたが,血清鉄値,葉酸値,ビタミンB12値は正常で,骨髄穿刺所見では骨髄の低形成,芽球細胞細胞質の空胞化がみられましたが,そのほかに骨髄異形成症候群を疑わせるような形態異常はなく,巨赤芽球性変化もみられず原因は不明でした.その後の検査で,血清銅値が5μg/dl未満,セルロプラスミン値が2mg/dlと著しく減少していることがわかり,硫酸銅の経管投与により貧血・白血球減少は改善を認め,最終的に銅欠乏症に伴う貧血・白血球減少症と診断がつきました.
 銅は多くの食物中に含まれ,通常の経口摂取で不足することのない微量元素と考えられており,日常臨床において遭遇することは稀です.そのため普段は注意を払うことが少ないと思われますが,近年医療の高度化に伴い,経口摂取できない患者に対して経管栄養を長期に施行する症例が増加しており,それに伴い,人工栄養による微量元素の欠乏症を発症する症例も増加しています.高齢者における血球減少の原因となることがあり,銅などの微量元素値にも十分留意する必要があると考えさせられた症例でした.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら