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文献詳細

雑誌文献

medicina36巻11号

1999年10月発行

文献概要

けんさ—私の経験

プライマリ・ケア医の臨床疫学—日常臨床の不確実性と検査結果の解釈

著者: 宮田靖志1

所属機関: 1広見町国民健康保険三島診療所

ページ範囲:P.439 - P.439

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 14歳,女性.学校検診にて貧血を指摘され来院.ヘモグロビン8.3mg/dlの小球性低色素性貧血を認めた.胃腸の自覚症状はなく,成長期の鉄欠乏性貧血と考えられたが,うっかり(?)便潜血反応をオーダーしてしまった.不幸にも結果は陽性.さあ,大腸ファイバーを行うべきか?常識的に考えれば,否.それではその根拠は?―問題を簡素化するために,大腸癌に絞って考えてみよう.無症状14歳の大腸癌の有病率を1/10000(実際にはもっと低率かもしれないが)とする.便潜血の感度,特異度をそれぞれ,85%,95%とすると陽性的中率は0.17%となる.このように,便潜血検査をしても検査後の確率は臨床上意味のあるものとならない.よって,以後の精査は必要とならない―いささか具体例が極端であったが,日常臨床でよく遭遇する例として,50歳,男性の大腸癌検診の場合はどうであろう.有病率を1/1000とすると,検査の陽性的中率は1.7%.つまり,便潜血陽性者約60人に1人に大腸癌を発見できることになる.
 検査後には常に何らかの事後の臨床決断を迫られるのであるが,そのときに,有病率と検査の感度,特異度をもとに検査後の確率を想定しなければならない.そうでなければ,自分の思い込みによる検査結果の評価,診断が独り歩きしてしまうおそれがある.医学の不確実性を認識した臨床医は,不確定の臨床状況のなかで判断を誤らないために,この臨床疫学的な思考のトレーニングが必要である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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