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雑誌目次

雑誌文献

medicina36巻12号

1999年11月発行

雑誌目次

今月の主題 内科医のためのCT Introduction

CTの歴史と原理

著者: 関谷透

ページ範囲:P.1752 - P.1756

●X線の発見以来,これを利用して人体の断層像を作成する種々の試みがなされてきた.
●CTの開発は,三次元の情報を提供すること,濃度分解能を向上させること,濃度を数値化すること,などを目的とした.
●驚異的な機械技術の発達に伴い,CTスキャン時間は数分から数秒へ,さらに1秒以下へと短縮された.
●ヘリカルスキャンやマルチスライスの導入により,CTの応用が急速に拡大されている.

CTの現状と将来

著者: 武藤安弘

ページ範囲:P.1757 - P.1762

●ヘリカルスキャンでは,実効スライス厚に影響を与えるピッチなどのパラメータに注意を要する.
●適切な造影タイミングで撮影を行うことが重要であり,リアルタイムCTが有効な手段と考えられる.
●マルチスライスCTでは,超高速撮影,高分解能三次元像,そして種々のアプリケーションが可能であり,今後の普及が期待される.

頭部CT

頭部CT検査の進め方

著者: 渡部恒也

ページ範囲:P.1764 - P.1765

●現在の頭部CTの検査の進め方はMR装置の併設の有無,あるいは装置の性能によって異なる.
●頭部CTは石灰化や急性期の頭蓋内出血巣の検出,あるいは骨病変の有無が診断的に重要な意味をもつ場合に,優先して用いられるべき検査法である.

虚血性疾患

著者: 蓮尾金博 ,   佃正明 ,   日紫喜裕子

ページ範囲:P.1766 - P.1770

●超急性期の脳梗塞は灰白質のわずかな濃度低下と脳溝の局所的な狭小化を呈し,閉塞動脈内に栓子が認められることがあるが,異常がみられないこともある.
●亜急性期には濃度の上昇により病変が同定しにくくなるfogging effectと呼ばれる現象があり,造影剤投与によって増強される.
●出血性梗塞は急性期から亜急性期までみられ,急性期の前半と2〜3週で頻度が高いが,急性期前半では脳内出血との鑑別が必要である.

脳出血・くも膜下出血

著者: 町田徹

ページ範囲:P.1772 - P.1775

●急性期出血の描出にはCTが優れている.
●脳出血の大部分は高血圧性であり,基底核・小脳・脳幹などに好発する.
●非典型的脳出血例では血管奇形の存在を考える必要がある.
●急性期出血は高吸収を示すが,次第に吸収は低下する.
●脳内血腫のmass effectは発症1〜2週で極大となる.
●血腫周囲にリング状増強効果がみられることがある.
●悪性黒色腫,絨毛上皮腫,腎癌などの転移は出血しやすい.
●くも膜下出血の原因疾患は,第一に脳動脈瘤である.
●CTはくも膜下出血に続発する水頭症や脳梗塞の検出に有用である.
●急性期出血に対しては現在のところ,MRIよりCTのほうが有利なことが多い.

腫瘍

著者: 寺田一志 ,   鎌田憲子 ,   青木茂樹

ページ範囲:P.1777 - P.1779

●脳腫瘍の診断は基本的にMRIで行い,基本的にはCTを追加する必要はない.
●症例によって適宜CTを追加するが,CTがMRIに優れるのは石灰化,骨,脂肪である.

外傷

著者: 萩原章 ,   赤土みゆき ,   井上佑一

ページ範囲:P.1780 - P.1782

●撮像法は,急性期には通常の単純CTで十分である.ただし,必要に応じて再検査することが重要である.
●脳実質外の病変として急性硬膜外血腫,急性硬膜下血腫,慢性硬膜下血腫,硬膜下水腫,くも膜下出血などがある.急性期には血腫は高吸収域に描出される.
●脳実質内の病変として,脳挫傷,脳内血腫,びまん性軸索損傷などがある.壊死に陥った脳実質が低吸収域に,血腫が高吸収域に描出される.
●高血圧性脳出血,脳動脈瘤破裂など外傷以外の病変との鑑別が必要なこともある.

変性疾患

著者: 和田昭彦 ,   大内敏宏

ページ範囲:P.1784 - P.1785

●変性病変の多くはCTではX線の吸収値の差としては描出できず,その診断はコントラスト分解能の高いMRIに委ねられる.
●CTの主な役割は,他の器質的疾患の除外である.
●MRI所見や臨床所見から臨床診断がなされれば,その後の形態学的変化(委縮の進行など)の経過観察はCTでも可能なことも多い.
●長時間の安静が困難な場合やペースメーカー装着者など,MRIの適応外の患者では必然的にCTの適応となる.

胸部CT

胸部CT診断の進め方

著者: 村田喜代史 ,   高橋雅士 ,   古川顕

ページ範囲:P.1787 - P.1789

●微細な形態診断が必要と考えられる場合には,結節性病変,びまん性病変にかかわらずCT検査の適応があり,高分解能CTが重要である.
●肺門部病変の評価には,薄いスライス厚の連続画像を造影剤急速注入時に撮像する肺門部薄層CTが有用である.
●呼吸運動を利用した動態CT検査は,閉塞性肺疾患の評価において付加情報を提供する.

びまん性感染症

著者: 小栗晋 ,   西村浩一 ,   伊藤春海

ページ範囲:P.1790 - P.1792

●びまん性感染症の鑑別診断では,まず患者の免疫状態から起炎菌となりうる病原体を考えることが重要である.
●免疫不全患者では,カリニ肺炎が鑑別診断の一つとなり,肺門から広がる地図状のスリガラス様所見を呈することが多い.
●カリニ肺炎とサイトメガロ肺炎はしばしば合併する.
●血液の悪性疾患患者では,侵襲性アスペルギルス症が重要であり,結節性病変の周囲にみられるスリガラス様病変はhalo signと呼ばれ,本症に比較的特徴的である.
●粟粒結核では,胸部X線写真で正常にみえてもCTで多数の小結節性病変が描出されることがある.不明熱の場合に考慮する必要あり.

びまん性非感染性炎症疾患

著者: 高橋雅士 ,   村田喜代史

ページ範囲:P.1793 - P.1795

●びまん性非感染性疾患は,急性の経過を示すものとして,AIP(acute interstitial pneumonia),過敏性肺臓炎,亜急性の経過を示すものとして,BOOP(bronchiolitis obliterans organizing pneumonia),NSIP(nonspecific interstitial pneumonia),慢性の経過を示すものとしてUIP(usual interstitial pneumonia)がある.
●間質性肺炎における線維化の存在の推測は,ステロイド治療の適応,効果の推測に重要であり,陰影内部の気道拡張,蜂窩肺の有無の読影が重要である.

びまん性結節性病変

著者: 平方敬子

ページ範囲:P.1797 - P.1799

●比較的純粋に末梢気道中心,つまり小葉中心性の結節を示すものにびまん性汎細気管支炎,過敏性肺炎がある.
●気管支血管束や胸膜や小葉間隔壁に沿った結節分布が認められる場合は,リンパ路に関係する疾患であるサルコイドーシスや癌性リンパ管症などが鑑別に挙がる.
●血行性肺転移や粟粒結核の結節は,二次小葉からみると不規則な分布を示す.
●結節が上肺野に優位な疾患として,サルコイドーシス,好酸球性肉芽腫症,珪肺/炭鉱夫肺があり,びまん性汎細気管支炎や血行性肺転移では下肺野に多い傾向がある.

多発性嚢胞性疾患

著者: 木村和彦 ,   杉村和朗

ページ範囲:P.1800 - P.1802

●多発性嚢胞性疾患には,代表的なものとして肺気腫,気管支拡張症,肺線維症がある.
●鑑別すべきものには過誤腫性脈管筋腫症,ヒスチオサイトーシス,塵肺症,リンパ増殖性疾患などがある.
●嚢胞の形態,分布,嚢胞以外の画像所見,臨床所見が診断の決め手になる.

原発性肺癌

著者: 酒井文和 ,   高田香織 ,   山田隆之

ページ範囲:P.1803 - P.1805

●肺野型肺癌におけるCTの役割は,高分解能CTによる結節陰影の良悪性診断と,局所進展の評価である.
●肺門型肺癌におけるCTの役割は,腫瘍と二次変化による陰影の分離,縦隔大血管への浸潤の有無とその程度の評価などにある.
●CTによる縦隔リンパ節転移の診断は,その径により行われ,正診率は60〜80%程度である.

良性腫瘍

著者: 栗山啓子

ページ範囲:P.1807 - P.1809

●肺の良性腫瘍は胸部X線写真と同様にCTにおいても,充実性の結節影や腫瘤影を呈する.
●充実性に増殖する肺野型肺癌(低分化腺癌,腺管型腺癌,小細胞癌,大細胞癌およびカルチノイド)との鑑別が重要であり,前回との比較読影や経過観察が有用である.
●スキャンの厚みが薄いHRCT(1〜2mm)で腫瘤影内の石灰化や脂肪を検討することにより,良性腫瘍である過誤腫と結核腫などの肉芽腫の診断が可能である.
●肺の良性腫瘍は均一な軟部組織濃度の腫瘤影を呈することが多いために,悪性を疑う場合は,速やかに経皮肺生検や気管支鏡下肺生検などの病理組織診断を行う必要がある.

縦隔腫瘍

著者: 成松明子 ,   野口靖志 ,   結城朋子

ページ範囲:P.1810 - P.1812

●胸部単純X線撮影による縦隔腫瘍の診断は,病変の局在診断にとどまる.
●CTでは,まず嚢胞性腫瘤と充実性腫瘤とを鑑別する.前者は単純CTで水に近いCT値を示すが,例外として気管支原性嚢胞がある.後者の場合には,腫瘍の形態や内部構造,周囲への浸潤の有無により,良・悪性の鑑別はある程度可能である.
●単純CTで,脂肪による低吸収域を含む腫瘤には,奇形腫や脂肪腫などがあり,また,石灰化巣のうち歯牙は奇形腫に特徴的である.
●悪性腫瘍間の鑑別はCTのみでは困難なことが多く,MRIやCTガイド針生検などが必要となることもある.

心臓・大血管

著者: 田中良一 ,   栗林幸夫

ページ範囲:P.1813 - P.1816

●心臓領域では拍動によるアーチファクトが強く,CT診断の適応は限られる.
●大血管疾患では,血管径や主要分枝との位置関係が重要である.
●造影CTにおいては,平衡相で得られる情報も多く,早期相だけでなく平衡相の撮影も必要である.

腹部CT

腹部CT診断の進め方

著者: 浮洲龍太郎 ,   丹野啓介 ,   武中泰樹 ,   宗近宏次

ページ範囲:P.1819 - P.1821

●臓器,血管などの立体的な位置関係を理解する.
●他の画像検査(超音波・消化管造影など)があれば,それを参考にして診断を進める.
●経静脈性造影剤の投与が充実性腫瘍や血管性病変の評価には必須である.
●経口造影剤の投与で,消化管と腫瘤や腫大リンパ節とを区別する.
●ヨード造影剤を急速に静注し,複数の時相で撮像すれば,血行動態を反映した画像が得られる.
●複数の病変が存在することもあるので,臓器内を細かく観察する.
●脂肪と腹腔内遊離ガスが紛らわしい場合,ウインドウを広げれば区別できる.

肝腫瘍

著者: 岡田吉隆 ,   大友邦

ページ範囲:P.1822 - P.1824

●CTによる肝腫瘍の診断には,造影剤の投与法と撮影のタイミングが非常に重要である.
●肝細胞癌は,ダイナミックCTの早期相で強く染まる.
●肝血管腫は早期相では辺縁の一部のみが強く染まり,ゆっくりと染まりの範囲が広がっていく.

びまん性肝疾患

著者: 上野恵子

ページ範囲:P.1825 - P.1829

●びまん性肝疾患は,沈着によるもの,感染,腫瘍性に分けられる.
●沈着によるものは,沈着物質のCT値を反映する.
●脂肪肝にはびまん性と限局性のものがある.
●CT画像上,特徴的な所見を示し,診断的特異性の高いものがある(脂肪肝,ヘモクロマトーシス,日本住血吸虫症).
●CTは経時的,定量的に経過を観察できる.
●悪性リンパ腫などは特異的な所見はなく,臨床的に疑われたならば積極的に速やかに生検を施行する.

胆嚢・胆道

著者: 石亀慶一 ,   市川智章 ,   荒木力

ページ範囲:P.1831 - P.1837

●CTは胆道系の評価も行え,かつ周囲(腸間膜,リンパ節,血管)および他の実質臓器も同時に客観的に観察が行える点で,他のmodalityより優れている.
●胆嚢,胆道系の病変の評価には少なくとも5mm以下のスライスの撮像が必要である.ヘリカルスキャンで撮像することが望ましい.
●胆道系のCTは閉塞部位の同定は高い確率で行えるが,必ずしも,胆石,胆管結石,腫瘍自体を描出できないことがあり,注意が必要である.
●CTでの胆嚢壁の肥厚する疾患の鑑別は一般的に難しい.

著者: 岡田吉隆

ページ範囲:P.1838 - P.1839

●急性膵炎では,膵周囲への炎症所見の広がりによって重症度を判定する.
●膵癌の診断には,造影剤の急速静注後,直ちに撮影する造影CTが必須である.
●膵癌は,造影CTの早期相で正常膵よりも染まりの悪い領域として描出される.周囲への浸潤,血管浸潤,リンパ節腫大など癌の進展度の評価も行う.

腎臓

著者: 後閑武彦 ,   宗近宏次

ページ範囲:P.1840 - P.1842

●腎腫瘤性病変の診断におけるCTの役割は,腫瘤の検出,性状評価,そして腎細胞癌などの悪性腫瘍であれば治療方針決定のために病期診断を行うことである.
●急性尿路感染症が臨床的に疑われた場合,CTが適応となるのは臨床診断が不確かな場合,通常の内科的治療に反応しない場合,患者が免疫不全状態にある場合である.
●単純X線での陰性結石(尿酸結石など)もCTでは高濃度を示すので,尿路結石の診断にCTは役立つ.

副腎

著者: 河野敦

ページ範囲:P.1844 - P.1845

●副腎は小さな臓器であるため,CTは5mm以下の薄いスライス厚での検査が必要.
●コルチゾル産生腺腫は2cm以上の類円形の腫瘤であり,CTで全例,検出が可能である.
●アルドステロン産生腺腫は低吸収値の腫瘤であるが,小さいためCTでは検出できないこともある.
●褐色細胞腫は3cm以上の高度の造影剤増強効果を示す腫瘤で,全例CTで検出が可能である.
●非機能亢進性腺腫は低吸収値を示すことが多く,10HU以下の腫瘤は非機能亢進性腺腫と考えられる.

腹部救急疾患

著者: 福島徹 ,   新美浩 ,   中島康雄

ページ範囲:P.1846 - P.1849

●基本的に造影検査を施行し,全腹を撮影する.尿路などの結石が疑われる場合,単純CTも撮影する.
●腹腔内脂肪織や遊離ガスの評価のため,ウィンドウ幅の広い条件においても検討を行う.
●主な疾患について確認すべき所見を把握する.また,予想外の疾患については,その所見を見逃さないようにする.

消化管

著者: 齋田幸久 ,   板井悠二

ページ範囲:P.1850 - P.1852

●腸管壁と腸間膜の造影効果の欠如は,虚血状態を直接的に示す結果的所見である.
●消化管悪性腫瘍のステージングの読影においては,解剖学的な動脈走行に一致したリンパ節検索が重要.
●同時に,原発巣に近い腹膜のわずかな肥厚や小結節の存在は腹腔播種を意味するので注意深い読影が必要.
●手術既往のないイレウスは,原則としてCTの適応.
●高齢女性のイレウスでは,骨盤底部までのスキャンが必要.

CTの新しい展開

ヘリカルCTによる肺癌検診

著者: 曽根脩輔 ,   高島庄太夫 ,   李峰

ページ範囲:P.1855 - P.1857

●肺癌は難治性であり,現在の救命率は低い.
●わが国では年間約5万人弱が罹患している.米国では年間約17万8千人が罹患,約16万人が死亡している.
●臨床病期IAの5年生存率は約61%で,十分な数値ではない.これより進行した病期,特にⅢ期やⅣ期の5年生存率は非常に低い.
●腫瘍径が少なくとも2cm以下の肺癌の発見を目標とした肺癌検診が望ましい.しかし,このような目標の達成は,胸部単純写真によっては,一般に困難である.
●CT検診では,5mmから2cmの範囲の大きさでほとんどの肺癌を発見できる.
●低X線曝射の胸部のCT検査(管電流が25mAの場合)による胸部の皮膚吸収線量は約3mGyである.
●われわれの概算では,少なくとも45歳以上の受診者において,CT検診におけるX線被曝によるリスクより肺癌の早期発見による延命効果が上回る.

肝癌における肝動脈CTと門脈CTの有用性

著者: 高安賢一

ページ範囲:P.1858 - P.1861

●門脈CT(CTAP)および肝動脈CT(CTA)は,肝腫瘍の精密検査に位置づけられ,進行肝細胞癌では,おのおのlow density(perfusion defect)およびhigh densityな病変として描出される.
●早期の肝細胞癌では,進行肝細胞癌と異なって,門脈CTで1/3がiso density,肝動脈CTでIowないしiso densityとなる病変が80%強となる(いずれの検査法でも抽出しにくくなってくる).
●門脈CTや肝動脈CTでいろいろな部位にピットフォールがみられる.肝S4の背側,S1,S5は門脈CTで,肝表面は肝動脈CTでピットフォールの比較的多くみられる部位である.

三次元CT血管造影法

著者: 林宏光 ,   隈崎達夫

ページ範囲:P.1863 - P.1865

●らせん走査型CTとは,X線管球を同一方向に連続回転させながら検査寝台を体軸方向に定速移動することで,被験者をらせん状にスキャンし,その投影データを収集することが可能なCTである.
●らせん走査型CTにより,短時間で体軸方向に良好な連続性を有する容積情報が得られ,また高いコントラストで明瞭な血管の造影効果が得られるため,三次元CT血管造影法が可能となった.
●らせんCTから得られた複数枚の二次元CT画像から三次元画像を作成するには,三次元画像再構成を行う必要がある.現在,臨床で主流となっている画像再構成法にはvoxel transmission法,perspective volume rendering法などがある.
●優れた画像再構成法の登場により,CT値の異なるものは“質感の違い”として三次元画像上で表現しえるようになり,X線造影剤の静脈注入により,内径1.5mm 程度の末梢血管の三次元画像化も可能である.
●三次元CT血管造影法の適応は血管系のみに限らず,比較的CT値の低い筋肉や軟部組織,ならびに造影効果に乏しい腫瘍や実質臓器などにも適応が拡大されつつある.

ヘリカルCTによる大腸三次元画像および仮想内視鏡画像

著者: 山下康行 ,   門田正貴 ,   高橋睦正

ページ範囲:P.1866 - P.1870

●近年,大腸疾患に対してヘリカルCTを用いた仮想内視鏡(virtual endoscopy)が注目されている.ヘリカルCTデータを用いることによって内視鏡像のみならず,充えい像や二重造影法のような画像を作成することも可能である.
●Virtual endoscopyでは,5mm以上のポリープは描出可能であり,大腸癌および粘膜下腫瘍では周囲組織との関係が三次元的に評価できる.さらに,大腸癌の完全閉塞例でも口側の病変範囲も描出可能である.
●注腸のようにバリウムが抜けずに病変が見逃されることや,内視鏡のように死角もないので今後の臨床応用が期待される.

鼎談

CT—来し方,行く末

著者: 蜂屋順一 ,   坂本二哉 ,   関谷透

ページ範囲:P.1873 - P.1884

Pre-CT時代
 関谷(司会) CTが1972年に発明されてから二十数年が経ちましたが,この間医療における画像診断の役割が大きく変わってきました.
 私が画像診断を習得し始めた時期とCTの発明とはそれほど差がありませんでしたので,CTに対して全く違和感はなかったのですが,坂本先生,蜂屋先生はもともとCT以前の画像診断でトレーニングされて,平たくいえば一人前になられた後にCTが発明されましたので,私たちの世代とはかなり違う印象をおもちではないかと思います.蜂屋先生が入局された頃と比べ,CTが発明されてから放射線科は変わったでしょうね.

理解のための28題

ページ範囲:P.1885 - P.1890

カラーグラフ 病原微生物を見る・4

チフス

著者: 江崎孝行 ,   趙立成

ページ範囲:P.1898 - P.1901

 チフス菌(Salmonella typhi)は通性嫌気性のグラム陰性桿菌で,Enterobacteriaceae腸内細菌科に属する危険度レベル3の病原体である.
 菌体の周囲は多数の鞭毛がついており(図1),表面はさらにVi抗原と呼ばれるきょう膜で覆われている.腸チフスを疑った場合は,選択培地SS培地(Salmonella-Shigella)を使用して便を直接この培地に塗布して分離培養するするが,他のサルモネラと異なりこの菌はSS培地上で硫化水素の産生が弱いため,赤痢菌と同じような透明の集落をつくる(図2).硫化水素は徐々に産生され,数日経過すると徐々に中心が黒く周辺が透明の集落になってくる.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.1903 - P.1908

演習 胸部X線写真の読み方—肺疾患篇・1

背部痛に胸壁腫瘤像を伴った57歳の男性

著者: 久吉隆郎 ,   佐藤雅史

ページ範囲:P.1909 - P.1915

Case
 症例:57歳,男性.主訴:右背部痛.
 家族歴:母と兄が胃癌.既往歴:特記事項なし.職業は大工,喫煙指数1,600.現病歴:6カ月前から右背胸部痛を訴えて接骨医に通院していたが改善せず来院した.血液尿検査では特に異常所見はみられず,問診によると半年前から咳と痰が続いており,胸部スクリーニング検査として胸部単純X線写真(図1a,b)を撮った.

図解・病態のメカニズム 胃疾患・1

胃液の分泌機構

著者: 大澤博之 ,   菅野健太郎

ページ範囲:P.1895 - P.1897

 壁細胞における塩酸分泌調節機序
 壁細胞を刺激して酸分泌活動を行わせる最も重要な物質としては,ヒスタミン,アセチルコリン,ガストリンが代表的なものである.これらが,すべて壁細胞に直接作用するのか,あるいは間接的に働くのか(ヒスタミンがすべての酸分泌のメディエーターとなっているという説)については,1980年頃までは激しい論争があったが,現在では,分離壁細胞による多くの実験から,壁細胞は,酸分泌刺激効果の強弱はあるものの,いずれに対しても反応性を示すことが明らかにされ,これらに対するそれぞれ独立した受容体をすべて有していることが示された.壁細胞のこれら受容体分子のcDNAは,1992年までにすべてがクローニングされ,分子構造が明らかにされた(表1).壁細胞上のヒスタミン受容体は,H1,H2,H3の3種類のサブタイプのうち,薬理学的性質からH2に分類される.またムスカリン受容体は主にM3サブタイプ,ガストリン受容体はCCKB(cholecystokinin-B)受容体と同一であると考えられる.ただ,ガストリン受容体にはスプライシングの違いによる変異型受容体が存在することが報告されている.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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