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雑誌目次

雑誌文献

medicina36巻13号

1999年12月発行

雑誌目次

今月の主題 Evidenceに基づいた内科疾患の予防 Introduction

内科医にとっての予防とは

著者: 松村真司 ,   福原俊一

ページ範囲:P.1924 - P.1928

●予防は,人間集団に介入するポピュレーション・ストラテジーと,個人に介入するハイリスク・ストラテジーの2つに大別される.臨床実践では後者が多用されるが,前者の重要性も忘れてはならない.
●予防は,一次・二次・三次予防に大別される.自分が行おうとしているのはどれか常に考える.
●予防を行う際には,適切にリスク評価をすることが必要である.リスクの評価にあたっては,1)まず,どのアウトカムで見ているかを考えよ.患者の視点,社会的視点に立脚したアウトカムが重要である.2)その疾患の頻度(罹患率,有病率)を考えよ.稀な事象では,相対危険度より絶対危険減少をみる.3)研究デザインを吟味し,根拠の強さ,バイアスを考慮する.
●根拠に基づく予防は,医師-患者間のコミュニケーションを改善させる一つの方法に過ぎない.

感染症の予防方法

リウマチ熱に対する抗生物質の予防投与

著者: 浅村信二

ページ範囲:P.1929 - P.1931

●リウマチ熱の予防には,先行するA群β溶血レンサ球菌に対する抗生物質の治療によるリウマチ熱の発症予防と,リウマチ熱にすでに罹患した患者の増悪因子となるA群β溶血レンサ球菌の再感染の予防がある.
●A群β溶血レンサ球菌の上気道炎には,現在でもなおペニシリン製剤の経口10日間の治療が第一選択である.ほかの新しい抗生物質の有用性も報告されている.
●リウマチ熱患者の再感染の予防も同様にペニシリン製剤が第一選択となるが,常時の予防が必要である.

心内膜炎予防のための抗生物質投与

著者: 武田裕子 ,   岡田徹

ページ範囲:P.1932 - P.1934

●菌血症から心内膜炎を発症するリスクは心疾患によって異なる.例えば,僧帽弁閉鎖不全を伴わない僧帽弁逸脱では,リスクはほとんどなく予防を必要としない.
●予防投与の必要性は手技によって異なる.
●予防投与は推定される起因菌に合わせて選択する.広域スペクトルを有する抗生物質を用いる必要はない.
●投与のタイミングが重要.通常,抗生物質は手技直前(経口では1時間前,静・筋注では30分前)に1回のみ投与すればよく,繰り返し投与する必要はない.
●予防効果のエビデンスとなる確実性の高い臨床試験は行われていないので,その適応については臨床家が個々の症例ごとに判断する.

結核症の発症予防と感染予防

著者: 佐竹幸子

ページ範囲:P.1936 - P.1938

●結核の感染経路は空気であるので,活動性結核患者に対して空気予防策をとる.
●結核潜伏感染者を同定するためにツベルクリン反応や胸部X線撮影を実施する.
●結核に新たに感染した人が活動性結核に進展する危険性を減らすために,isoniazidの予防的投与を行う.
●医療従事者の結核予防対策は,地域および病院内における結核の罹患率,発生率,ツベルクリン反応陽転率,抗結核薬耐性率などから危険度を評価し,適切かつ効率的に実施されるべきである.

好中球数減少時の抗生物質による予防投与

著者: 森澤雄司

ページ範囲:P.1939 - P.1941

●好中球数減少に伴う発熱は死亡率が高い緊急症で,約60%が感染症,約20%が血液培養陽性である.
●院内感染制御において,手洗いはすべての医療従事者に必須である.
●好中球数減少時のTMP/SMX合剤やニューキノロン系の投与は発熱を予防するが,耐性菌の出現を増加させる可能性がある.

HIV感染者におけるカリニ肺炎予防

著者: 根岸昌功

ページ範囲:P.1942 - P.1943

●CD4陽性細胞数が200/μl未満では,カリニ肺炎の予防治療を開始する.
 HIV感染症の病態は免疫機能の低下にある.したがって,HIV感染者には種々の日和見疾患が合併するし,日和見感染症の再発もみられるのが特徴である.
 本稿ではHIV感染者に最も多く見られるカリニ肺炎(病原体はPneumocystis carinii)について述べる.

HIV患者におけるクリプトコッカス髄膜炎の予防

著者: 照屋勝治 ,   岡慎一

ページ範囲:P.1944 - P.1946

●クリプトコッカス髄膜炎に対する一次予防は推奨されていない.
●クリプトコッカス髄膜炎発症後の二次予防は,全例において行われるべきである.
●HAARTにより免疫機能が開腹すれば,日和見感染症に対する予防投与が不要となる可能性が出てきている.

手術部位感染予防のための抗菌薬の予防的投与

著者: 遠藤和郎

ページ範囲:P.1947 - P.1949

●抗菌薬の予防投与は最も有効な手術部位感染予防策の一つである.しかし不適切な投与は,十分な予防効果が得られないばかりか,耐性菌の誘導,医療費の増加につながる.
●予防投与の適応は,臨床研究にて良好なevidenceが得られた手術とする.
●使用される抗菌薬は,安全性が高く,安価で,殺菌的に作用し,予想される起炎菌に有効に作用するものとする.
●初回投与は皮膚切開前30分以内に投与する.
●術中および術後数時間は,血中および組織内に十分な抗菌薬濃度を保つようにする.

海外渡航にあたっての予防対策

著者: 濱田篤郎 ,   廣重由可

ページ範囲:P.1950 - P.1953

●海外渡航者には経口感染症(下痢症,A型肝炎),蚊に媒介される感染症(マラリア,デング熱),性感染症(尿道炎,B型肝炎)が多い.
●海外渡航者に実施する予防接種は,渡航の目的,滞在地域,滞在期間などを考慮して選択する.
●下痢症は最も頻度の高い感染症であり,飲食物に対する指導が基本的な予防対策となる.
●マラリア予防の基本は蚊の対策であるが,感染リスクが高い地域に滞在する場合は予防薬の定期的服用を指導する.

成人のワクチン投与

著者: 岡山昭彦

ページ範囲:P.1955 - P.1957

●インフルエンザは単なる風邪とは異なり,高齢者や基礎疾患を有する患者では重篤な病態を呈しうる.重要な合併症としては肺炎,脳炎,心筋炎,心外膜炎,また特殊な合併症としてライ症候群がある.治療薬としてはA型にアマンタジンが有効である.
●欧米では高齢者,ハイリスク群を中心に広くインフルエンザ不活化ワクチンが使用されており,予防効果,費用効果とも有益であることが示されている.現在本邦でもより積極的な使用が検討されている.
●肺炎球菌は肺炎,髄膜炎の主要な起炎菌の一つである.ペニシリン耐性菌の出現もあり,今後ワクチンによる幅広い予防の必要性について検討が望まれる.

小児のワクチン投与

著者: 中山哲夫

ページ範囲:P.1959 - P.1961

●感染症コントロールに果たすワクチンの役割は大きいが,接種率が低く,接種率を高めるためには,ワクチン接種率と疾患の発生状況,自然感染の合併症の頻度とワクチン接種後の副反応の頻度を比較して考えるpotential risk/benefitの考え方を普及させる必要がある.

消化器疾患の予防方法

H. pylori除菌による胃・十二指腸疾患の予防

著者: 高木敦司

ページ範囲:P.1962 - P.1963

●EBMの観点から,胃・十二指腸潰瘍に対するH. pyloriの除菌療法は,潰瘍再発を予防していることが明らかにされている.
●胃癌の内視鏡治療後の再発予防や胃MALTリンパ腫に対するH. pyloriの除菌療法は,現時点で大規模の無作為化比較試験の成績がないため,EBMにおける根拠としては十分ではない.

大腸癌の予防

著者: 棟方昭博 ,   中路重之

ページ範囲:P.1964 - P.1966

●大腸癌,特に結腸癌は食生活と強い関連があるとされる.その根拠には,①戦後の日本における大腸癌急増と食生活の変化,②ハワイ日系人における大腸癌の増加,③ユタ州住民の大腸癌罹患率の低さ,などのevidenceによる.
●過去の疫学研究を総括すると,脂肪の促進作用と食物繊腫の抑制作用が示唆される.βカロチン"ビタミンCの抑制作用も報告されているが確実ではない.
●ポリペクトミーは大腸癌発生を予防するとする研究が多い.
●3年に1度の内視鏡によるフォローアップが,臨床的にも経済的にも効率がよい.

肝炎ウイルス感染の予防

著者: 柴田実

ページ範囲:P.1968 - P.1971

●肝炎ウイルス感染の予防は個人的予防と行政・医療による予防によって達成される.
●A型,E型肝炎ウイルス感染は衛生環境の改善により,B型,C型,D型肝炎ウイルス感染は献血者のスクリーニングにより著しく減少した.
●A型およびB型肝炎ウイルスに対して,ワクチン接種および免疫グロブリン投与による予防が実用化され,有用性が証明されている.
●WHOの勧告に従い,世界90カ国以上で全新生児にHBワクチン接種が実施されており,population-based studyによりB型急性肝炎,B型慢性肝炎,肝細胞癌の減少が報告され始めている.

C型慢性肝疾患における肝細胞癌発生予防

著者: 森實敏夫

ページ範囲:P.1972 - P.1974

●C型慢性肝炎でIFN治療持続反応群と,一過性反応群における肝細胞癌発生は無効群より有意に低率である・
●C型肝硬変に対するIFN治療で肝細胞癌発生を予防できるかどうかは結論が出ていない.
●Quality-adjusted life yearsを指標とすると,C型慢性肝炎におけるIFN治療は費用対効果からも正当化される.

循環器疾患の予防方法

大動脈瘤破裂の予防

著者: 増田善昭

ページ範囲:P.1975 - P.1977

●大動脈瘤は予後の悪い疾患で,その死亡原因の約半数は瘤破裂による.
●瘤径が大きくなるにつれ瘤拡大速度は速くなり,破裂しやすくなる.
●瘤破裂の予防には血圧をコントロールすることが大切であるが,完全に予防することはできず,瘤径を経時に観察し,大きくなったら外科的療法を行う.

心房細動へのワルファリンの予防的投与

著者: 南雲美也子 ,   三田村秀雄

ページ範囲:P.1979 - P.1981

●非弁膜症性心房細動からの脳塞栓症発症頻度は,加齢により増加し,また心房細動非合併例に比べ約5倍多くなる.心房細動を合併する脳梗塞では急性期の死亡率や再発率が高いことも知られている.
●危険因子を有する症例,および75歳以上の非弁膜症性心房細動例はワルファリン療法の適応とされ,至適投与量は国際標準比(INR)で2.0〜3.0を目標に調節することが推奨されている.
●心房細動の除細動前後に1はそれぞれ3〜4週間の抗凝固療法を行うことが勧められている.しかし,経食道心エコー検査で左心耳内血栓がなければ,最小限の抗凝固療法で除細動できる.

冠動脈疾患発症後のコレステロール低下療法

著者: 馬渕宏

ページ範囲:P.1982 - P.1985

●コレステロールは最も重要な冠疾患の危険因子である.
●HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン)は安全で強力なコレステロール低下剤であり,本剤投与により冠動脈疾患の一次予防と二次予防の効果が実証されている.
●難治性家族性高コレステロール血症に対してはLDL-アフェレーシスが有用である.

冠動脈疾患発症後のアスピリン使用

著者: 石川欽司 ,   猪木達 ,   北山耕司

ページ範囲:P.1987 - P.1989

●アスピリン(ASA)は安定狭心症,不安定狭心症,および心筋梗塞の心筋梗塞再発,突然死などの心臓死(心事故)予防に有効である.投与量は,欧米では1日81〜325mg,本邦では1日50〜81mgである.健康人にASAを予防的に投与する有用性は確立されていない.

冠動脈疾患発症後の禁煙

著者: 石川道郎

ページ範囲:P.1990 - P.1993

●喫煙は,高血圧,高脂血症とともに冠動脈疾患の3大危険因子の一つである.
●喫煙により冠動脈疾患の罹患率と死亡率が増加する.
●冠動脈疾患罹患後に禁煙することにより,PTCA後の再狭窄率を減少し,PTCA後や冠動脈バイパス術後の予後を改善する.
●喫煙により,組織での酸素分圧の低下,血管内皮細胞傷害,交感神経活性亢進,血小板機能活性化,総コレステロール・中性脂肪・VLDL・LDLコレステロールの増加,HDLコレステロールの低下,タバコ修飾LDLの生成,冠攣縮の誘発などがもたらされる.

植え込み型除細動器による不整脈死の予防

著者: 武市耕 ,   笠貫宏

ページ範囲:P.1994 - P.1997

●ICDのprimaryendpointは突然死予防ではなく,全死亡の予防すなわち生命予後の改善にある.
●ICDは血行動態の破綻をきたすVT/VFの既往例に対し,強力な突然死予防効果を有し,生命予後改善効果もICDが薬物療法よりも優れている.
●VT/VFの既往がない場合でも,心機能低下を有する冠動脈疾患の非持続性VTで,EPSにより持続性VTが誘発された症例では,突然死の予防効果,生命予後改善効果のいずれにおいてもICDが薬物療法よりも優れている.
●致死的不整脈を有する低心機能例に対しては,ICD単独の治療には限界があり,今後アミオダロンやβブロッカーなどとの併用を検討していく必要があろう.

呼吸器疾患の予防方法

肺塞栓症の二次予防

著者: 藤岡博文 ,   山田典一 ,   中野赳

ページ範囲:P.1999 - P.2001

●肺塞栓症は再発を特徴とし,その多くの塞栓源である下肢および骨盤腔の深部静脈血栓症への対策が必要である.
●肺塞栓症の二次予防策は,深部静脈での血栓の形成,進展阻止を目的とした抗凝固療法,遊離した血栓の肺への到達を阻止する下大静脈フィルターに大別される.
●抗凝固療法はまずヘパリンを用い,引き続いてワーファリン®に切り替えていく.
●下大静脈フィルターは抗凝固療法の限界を補填し,再発率を5%以下にする手技であるが,その適応に関しては今後の検討課題である.

慢性閉塞性肺疾患の悪化予防と感染予防

著者: 田中裕士 ,   田中紳太郎 ,   阿部庄作

ページ範囲:P.2002 - P.2004

●慢性閉塞性肺疾患の急性悪化の最大の原因は感染であり,次に肺性心である.
●慢性閉塞性肺疾患の感染による急性悪化予防として,インフルエンザウイルスワクチンの有用性が確認されており,重症感染症による死亡率を50〜70%滅少させるとされている.
●感染による早期増悪には抗菌薬を使用するが,抗菌薬の予防投与による感染予防効果は確認されていない.

代謝・内分泌疾患の予防方法

糖尿病の合併症予防

著者: 加藤弘巳

ページ範囲:P.2005 - P.2008

●厳格な血糖コントロールは細小血管障害を予防する.
●HbA1c7.0%未満であれば合併症予防効果が期待できる.
●高血圧は重要な合併症促進因子であり,積極的に治療する.治療目標:130/85mmHg未満,腎症合併時120/80mmHg
●糖尿病網膜症:単純網膜症では血糖コントロールにより,可逆的改善を期待できる.定期的観察を行い,光凝固療法の適応と時期を逸さない.コントロール不良例では急速な血糖改善により一時的悪化がみられることがある.
●糖尿病性腎症:腎症第3期Aまでは可逆的改善が期待できる.血糖とともに血圧コントロールを重視する.
●神経障害:早期であれば,血糖コントロールにより改善しうる.足病変を起こさぬように注意する.
●動脈硬化性病変:糖尿病は,脳血管障害や心筋梗塞の大きなリスクファクターである.血糖コントロール以外の要因,特に高血圧に注意する.高脂血症,肥満,喫煙など,ほかのリスクに注意する.

骨粗鬆症の悪化予防と骨折予防

著者: 井上大輔

ページ範囲:P.2009 - P.2011

●現在,骨粗鬆症治療薬のうち骨折予防効果が確実に証明されているのは,ビスフォスフォネート(BP)と閉経後骨粗霧症に対するエストロゲンであり,ビタミンd がそれに次ぐ.
●BPは強力な骨吸収抑制薬で,高代謝回転型骨粗鬆症やステロイド骨粗霧症が特に良い適応となる.
●エストロゲンは,骨に対する保護作用のほかに,脂質代謝改善作用や動脈硬化性疾患の予防効果などの望ましい骨外作用がある一方,乳癌などの発生率を増加させる.
●活性型ビタミンDは高齢者に多い低代謝回転型骨粗霧症や,カルシウム吸収低下例,二次性副甲状腺機能亢進症の傾向を有する例などに良い適応となる.
●カルシトニンは骨吸収抑制薬であるが,むしろ鎮痛効果を期待して用いられる.

腎疾患の予防方法

保存期腎不全の進展予防

著者: 中井滋 ,   新里高弘 ,   前田憲志

ページ範囲:P.2013 - P.2015

●高血圧は保存期腎不全患者の重要な腎不全進展因子である.腎機能保護のためには,血圧を40歳未満では125/75mmHg未満,40歳以上60歳未満では135/80mmHg未満,そして60歳以上では140/85mmHg未満に維持することが望ましい.
●多くの報告が,アンギオテンシン変換酵素阻害薬には腎保護作用があることを示している.
●カルシウム拮抗薬の腎保護作用についての評価は一定していないが,血圧を十分に低く維持すれば,一部のカルシウム拮抗薬には腎保護作用が示唆されている.保存期腎不全の進行にきわめて重大な影響力をもつ血圧の管理を中心に概説する.

脳神経系疾患の予防方法

TIAの再発と脳梗塞の予防

著者: 横田千晶 ,   峰松一夫

ページ範囲:P.2016 - P.2018

●TIAの再発率は発症後1年以内が高い.したがって再発予防のための治療は,発症後早期より開始すべきである.
●アスピリンを中心とした抗血小板薬療法は,TIAや脳梗塞の再発に対して有効である.
●チクロピジンは,アスピリンに比してTIAや脳梗塞の再発率を有意に低下させるが,投与開始後早期は,重篤な副作用(無顆粒球症,肝障害,血栓性血小板減少性紫斑病)を生じることがあるため,注意する必要がある.
●明らかな塞栓源心疾患を合併するTIAに対しては,原則として経口抗凝血薬療法(ワーファリン®内服)を実施すべきである.

未破裂脳動脈瘤の予防手術の可否

著者: 大生定義

ページ範囲:P.2020 - P.2023

●くも膜下出血は,いったん発症すると高い死亡率,重い後遺症をきたす.画像診断の発達で,無症状の時期にその原因の多くを占める脳動脈瘤が発見されることが日常的になった.
●予防的な手術については,患者の動脈瘤の状況(大きさ・形・部位など),患者の動脈瘤以外の状況(年齢・合併症など),一般的な動脈瘤の自然史(年間破裂率),手術のリスク(医師の技量・病院の設備・スタッフを含めた診療レベルなど),患者の選好(死・後遺症についての価値づけ,手術・経過観察についてのリスクの捉えかた)などが考えるべき因子となろう.
●本稿では臨床決断分析の手法を紹介する.どの手法をとるにしても,文献で報告されているデータが眼前の患者に適用できるかをよく考えることが大切である.

頸動脈狭窄の治療と脳梗塞の予防

著者: 稲福徹也

ページ範囲:P.2024 - P.2026

●TIAまたは軽症脳梗塞を発症し,その責任病変として内頸動脈起始部に75%以上の狭窄を有する者は頸動脈内膜剥離術(CEA)の適応である.CEAによる効果を得るためには,周術期合併症をできるかぎり低く(5%以下に)抑えなければならない.

理解のための28題

ページ範囲:P.2029 - P.2038

症例によるリハ医療—内科医のために・14

心血管系の重篤な合併症を伴ったハイリスク患者のリハビリテーション

著者: 安岡利一 ,   大仲功一 ,   伊佐地隆 ,   大田仁史

ページ範囲:P.2041 - P.2045

 リハビリテーションの理念が広がり,安静の弊害が知られるにつれ,リハビリテーションの対象疾患が拡大される傾向にある.また,QOLの観点からも,従前ではリハビリテーションの対象と考えられなかったハイリスク患者やターミナル期の患者に対するリハビリテーションが行われる動きもある1,2).しかし,特に致死的な転帰をとりうる疾患に対して,どの程度の訓練を行えるのだろうか.今回は,重篤な心・大血管系の合併症を伴った患者に対して,慎重なリスク管理の下に訓練を行い,効果を上げることができた例を通してこのことを考えてみたい.

図解・病態のメカニズム 胃疾患・2

胃粘膜防御機構

著者: 平石秀幸 ,   島田忠人 ,   寺野彰

ページ範囲:P.2047 - P.2050

はじめに
 “胃粘膜は,何故胃内腔に存在する強力な胃酸/ペプシンによって消化されないのであろうか?”との疑問こそが胃粘膜防御機構の本質であり,その概念は,消化性潰瘍の発生が攻撃因子と防御因子の不均衡に基づくとのバランス説から派生したものである(図1,Shay & Sun).胃粘膜防御機構に関する研究は,Hollanderのtwo componenttheory,Davenportの胃粘膜関門(gastricmucosal barrier),backdiffusionなどが重要なものである(表1).これらの学説は,胃酸に対し粘液/重炭酸,粘膜上皮が抵抗性を発揮するが,いったんアスピリンなどのbarrierbreakerによって胃粘膜関門が破壊されると,胃酸(H)の粘膜内への逆拡散,mast cellなどからのヒスタミンの遊離が起こり,その結果微小循環の障害から,出血,びらん・潰瘍形成に至るとの仮説である.1979年,A. Robertらはprostaglandin(PG)による胃粘膜細胞保護作用(cytoprotection)という現象を見い出し,その後の1982年,MarshallらはHelicobacter Pylorzi(H. Pylori)の分離培養に成功した.これら二つの業績は,潰瘍発生の成因論,胃粘膜防御機構研究にとり一大転機となった.

演習 胸部X線写真の読み方—肺疾患篇・2

強度の貧血で受診し胸部の異常陰影を指摘された41歳の女性

著者: 佐藤雅史

ページ範囲:P.2065 - P.2069

Case
 症例:41歳,女性.
 主訴と経過:学生時代から強度の貧血を指摘されている.日常生活に特に支障ないため経過をみていたが,貧血の精査を指示され,当院紹介受診となる.初診時の胸部単純写真で異常陰影が認められた.
 理学的所見:呼吸音は正常でラ音は認めない.頸部・鎖骨上窩のリンパ節触知せず.血夜生化学検査:WBC 7,200/μl,RBC 104×104/μl,Hb 3.5g/dl,LDH 1,200IU/l.

medicina Conference・29

乾性咳嗽と発熱を主訴とする63歳の女性

著者: 伊藤澄信 ,   上坂義和 ,   芝祐信 ,   岡田範之 ,   北原光夫

ページ範囲:P.2052 - P.2063

 症例:63歳,女性.
 主訴:乾性咳嗽,発熱.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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