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雑誌目次

雑誌文献

medicina36巻4号

1999年04月発行

雑誌目次

今月の主題 検査異常から考える血液疾患 血液について知っておくべき基礎知識

赤血球系

著者: 堀田知光

ページ範囲:P.560 - P.561

●赤血球の産生は,骨髄の多能性幹細胞から赤芽球前駆細胞を経て赤芽球となり,さらに分裂を経て網赤血球に成熟する.赤芽球前駆細胞から赤血球に至る過程にはエリスロポエチンの存在が必須である.
●ヘム合成は,ミトコンドリアにおいてグリシンとサクシニルCoAの重合によるδアミノレブリン酸の生成に始まる.この反応を触媒するδアミノレブリン酸合成酵素は,ヘム合成系の律速因子となっている.
●健常成人の体内総鉄量3.0〜4.0gのうち,約70%はヘモグロビン鉄,約25%はフェリチンやヘモジデリンなどの貯蔵鉄,その他少量がミオグロビンや含鉄酵素など組織鉄の形で存在し,運搬鉄としてのトランスフェリン鉄の比率は0.1%以下である.
●鉄は消化管や皮膚の上皮細胞の脱落により便や汗として1日約1mgが失われ,一方で,食物中に含まれる1日約10〜20mgのうち約1mgが小腸上部で吸収される.

白血球系

著者: 松尾辰樹 ,   朝長万左男

ページ範囲:P.562 - P.564

●末梢血液中の白血球は好中球とリンパ球が主体である.
●顆粒球はその二次顆粒によって好中球,好酸球,好塩基球に分けられる.
●リンパ球はT細胞,B細胞,NK細胞からなる.リンパ球の同定・分化段階の評価にはCDが特に重要である.

出血凝固系

著者: 高松純樹

ページ範囲:P.565 - P.567

●生体内では凝固しないが,血管の破綻による出血時には速やかに凝固が起こるしくみを止血機構という.
●止血機構には,血管内皮細胞,血小板,凝固線溶因子,およびその阻止因子が複雑にかかわっている.
●それらの破綻は時には出血,時には血栓の原因となる.

臨床症状からみた血液疾患

貧血

著者: 村手隆

ページ範囲:P.568 - P.569

●貧血とは末梢血の血液単位容積中の赤血球,ヘモグロビン,ヘマトクリットが正常より低下した状態をいう.
●貧血の自覚症状は酸素の供給不足,赤血球の減少ならびに心拍出量の増加による非特異的なものが多い.
●診断としては,患者の示す貧血の症状あるいは貧血に特徴的な身体所見から貧血の存在に気づき,耳血検査に始まる鑑別診断を進めていくことが重要である.

出血症状

著者: 渡辺清明

ページ範囲:P.571 - P.573

●出血症状はsystemicな止血障害により起こる.
●紫斑などの点状出血斑や小型の斑状出血あるいは粘着出血などは,血管および血小板障害でしばしば認める.
●大型の斑状出血や関節出血,筋肉内・胸膜腔内などの単発の深層部出血は,血液凝固異常あるいは線溶異常で認める.
●出血症状が他の症状を伴う場合は,ある程度基礎となっている血液疾患を推測可能なときがある.

発熱・不明熱

著者: 北原光夫

ページ範囲:P.574 - P.575

●血液疾患,特に悪性の疾患,白血病やリンパ腫では,腫瘍熱と呼ばれる発熱をしばしば経験する.
●骨髄へ結核が進展した結果,種々の血液学的変化が発熱とともにみられる.
●血液疾患に発熱が合併した場合には,常に感染症の存在を念頭に置くべきである.安易に血液疾患による発熱と決めつけてはならない.

リンパ節腫大

著者: 大西一功

ページ範囲:P.576 - P.578

●リンパ節腫大の80%以上が反応性病変である.
●鑑別診断には病歴と理学的所見が重要である.
●リンパ節生検を行う場合は,鼠径部以外の場所で丸ごと一つを探る.針生検は有用性が低い.

血液疾患の検査から何がわかるか

CBC(complete blood count)

著者: 米山彰子 ,   中原一彦

ページ範囲:P.580 - P.582

●白血球増加を認める場合は,その程度と,赤血球や血小板の増減を伴うかどうかに注意する.
●白血球減少でもその程度と分画の変化,他の血球の所見から鑑別を進める.
●貧血については,大球性高〜正色素性貧血,正球性正色素性貧血,小球性低色素性貧血に分け,鑑別を進める.

骨髄穿刺

著者: 木崎昌弘

ページ範囲:P.584 - P.587

●原因不明の貧血,白血球減少,血小板減少,末梢血塗抹標本で異常細胞の出現をみた際は,骨髄穿刺を速やかに施行する.
●骨髄液は組織トロンボプラスチンが豊富なため凝固しやすいので,全過程を迅速に行う必要がある.
●血液学の基本は形態学であり,骨髄有核細胞数,巨核球数,骨髄像の検査は必須である.急性白血病のFAB分類もこれらによる診断,分類を中心にしており,どの施設でも行えることが前提になっている.

出血凝固系検査

著者: 中野一司 ,   丸山征郎

ページ範囲:P.589 - P.591

●出血時間は,血小板の質的量的(血小板数あるいは血小板機能の)異常をスクリーニングする検査であり,凝固線溶系の因子は影響しない.
●理屈に合わない血小板減少症をみた場合,末梢血塗抹標本にて血小板の減少を確認することが重要である.
●凝固線溶系検査は緊急検査であり,それぞれの検査値を組み合わせて病態を読む必要がある.

手術・観血処置前の検査異常とその対策

著者: 朝倉英策 ,   御館靖雄

ページ範囲:P.592 - P.595

●術前スクリーニング検査として行うべき凝血学的検査として,血小板数,出血時間,PT,APTT,フィブリノゲン,FDPがあげられる.
●DIC準備状態,軽症ビタミンK欠損症も術後に顕性化する可能性が高く,術前診断が必要である.

専門医への紹介のタイミング

赤血球系

著者: 若尾大輔 ,   松田晃 ,   別所正美

ページ範囲:P.596 - P.597

●貧血のほかに白血球や血小板の減少あるいは増加がある場合は,白血病,再生不良性貧血,骨髄異形成症候群などの難治性の造血器疾患がある可能性が高く,直ちに専門医へ紹介する必要がある.
●貧血をみた場合,正確な鑑別診断を怠り,安易に鉄剤,ビタミン剤,輸血などを行うことは慎むべきである.

白血球系

著者: 檀和夫

ページ範囲:P.598 - P.600

●白血球,赤血球,血小板のうち2つ以上に量的異常がみられる場合,多くはその原因検索に骨髄検査を必要とするため,専門医へ紹介すべきである.
●白血球の質的異常では,明らかに感染症が疑われる場合以外は,専門医での精密検査を要する.

出血凝固系

著者: 森美貴 ,   和田英夫

ページ範囲:P.602 - P.605

●DICの治療の原則は,①消費された血小板,凝固因子の補充療法,②血管内凝固の抑制,③二次的な線溶亢進に基づく出血傾向の抑制,④基礎疾患の治療,⑤血管内皮細胞障害に基づく臓器障害の治療,の5点に集約される.
●血友病の場合,補充療法のコツは早期に出血を止めることである.

血液疾患・病態へのアプローチ 赤血球の異常

貧血患者に対するアプローチ

著者: 浦部晶夫

ページ範囲:P.607 - P.609

●貧血の鑑別診断を進めるうえではMCVによる分類が有用である.
●小球性貧血では鉄欠乏性貧血を考慮し,鉄欠乏か否かを判定する.
●大球性貧血では巨赤芽球性貧血を鑑別する.

大球性貧血

著者: 小松則夫

ページ範囲:P.610 - P.612

●骨髄では正染性巨赤芽球の同定が巨赤芽球性貧血の診断にしばしば有用で,成熟した豊かな胞体,繊細な核網を有する核が特徴的である(核・細胞質成熟解離).
●ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血は,壁細胞が多く分布する胃体部を切除すると,5〜6年後に発症する.神経症状のみが前面に出てくることがあるので注意を要する.
●ビタミンB12欠乏性による神経障害に葉酸を投与すると,かえって神経症状が悪化することがあるので禁忌である.

小球性貧血

著者: 厨信一郎

ページ範囲:P.613 - P.615

●MCVが80fl以下の貧血であれば,確実に小球性貧血と判断できる.
●小球性貧血の発症メカニズムは,赤芽球におけるヘモグロビンの合成障害による.
●小球性貧血を鑑別するには,血液学的検査として末梢血塗抹標本における赤血球形態の観察,血液生化学検査としては血清鉄,総鉄結合能およびフェリチン値の検索から開始する.

慢性疾患と貧血

著者: 小峰光博

ページ範囲:P.616 - P.618

●慢性の感染症・炎症・悪性腫瘍に続発する中等度までの正ないし小球性貧血である.
●赤沈やCRPなどと同じく非特異的な全身反応の一部と解釈できる.
●貧血の成因は複合的だが,血清鉄の低下とフェリチンの上昇が特徴的である.
●基礎疾患のコントロールが最善の治療法である.

先天性赤血球異常

著者: 藤井寿一

ページ範囲:P.619 - P.622

●溶血性貧血とは,赤血球崩壊が亢進した結果生じる貧血の総称である.病因により遺伝性と後天性に分けられるが,遺伝性溶血性貧血には赤血球膜,赤血球酵素ならびにヘモグロビンの異常によるものがある.
●赤血球膜異常症はスペクトリン,バンド3,アンキリン,バンド4.1,バンド4.2などの細胞骨格を構成する膜蛋白,赤血球酵素異常症はG6PDやPKなどの責任酵素,ヘモグロビン異常症はグロビン鎖をコードしている遺伝子の種々の分子異常による.
●慢性溶血性貧血では,赤血球産生亢進に伴い葉酸の需要が高まるので,葉酸(フォリアミン®)の少量投与(1mg/日)は理に適っている.

多血症患者に対するアプローチ

著者: 田内哲三 ,   大屋敷一馬

ページ範囲:P.623 - P.625

●循環赤血球量が男性では36ml/kg,女性では32ml/kg以上であれば,絶対的赤血球増加症である.
●真性赤血球増加症の赤血球系前駆細胞は,Epに対する感受性が正常よりも高い.

白血球の異常

顆粒球の質的・量的異常のアプローチ

著者: 笹田昌孝

ページ範囲:P.628 - P.629

●好中球の機能が低下すると感染症を,機能が亢進すると炎症病態を形成する.したがって,感染症や炎症で原因が明らかでないとき,好中球の機能異常を疑う必要がある.
●好中球の量的異常では無顆粒球症が特に重要であり,速やかな対処が必要である.

白血球増多症の原因と鑑別

著者: 松村到 ,   金倉譲

ページ範囲:P.630 - P.631

●白血球増多症には,造血器腫瘍による場合と類白血病反応の場合がある.
●敗血症,粟粒結核などの重篤な感染症時には,末梢血中に種々の分化段階の未熟な顆粒球系細胞の出現を認める.
●胃癌,大腸癌などの骨髄転移においてもCML様の白血球増多症が認められる.

白血球減少症の原因と鑑別

著者: 三原英嗣 ,   仁田正和

ページ範囲:P.632 - P.634

●好中球実数が500/μ1以下では重篤な感染を引き起こす可能性が高く,早急な感染予防および原因検索の対処が必要となる.
●免疫性の破壊には薬剤関連のものがあり,これは最も臨床上遭遇するものである.

単球・マクロファージ系の異常

著者: 鈴宮淳司 ,   田村和夫 ,   菊池昌弘

ページ範囲:P.635 - P.637

●細胞学的検査では,単球は非特異的エステラーゼであるα-naphthyl butyrate/acetate esterase染色陽性であり,これらは単球の同定に重要である.
●単球増加症の鑑別診断で重要なことは,増加している単球が反応性か腫瘍性かの鑑別である.

好酸球の異常

著者: 村上博和 ,   小河原はつ江 ,   森田公夫

ページ範囲:P.638 - P.639

●著明な好酸球増多(2,000/μl以上)は様々な臓器障害を伴うことがあるので,原因疾患の早期診断・治療が重要である.
●末梢血液標本と胸部X線所見が重要である.
●Hypereosinophilic syndrome(HES)は,①1,500/μl以上の好酸球増多が6カ月以上持続する,②アレルギー性疾患,寄生虫疾患などの好酸球増多をきたす明らかな原因が認められない,③好酸球増多による臓器障害が認められる,と診断基準が定められているが,除外診断が重要である.

出血傾向と血栓傾向

出血傾向患者へのアプローチ

著者: 石田明 ,   半田誠

ページ範囲:P.640 - P.644

●出血傾向はこれらの止血機構の破綻によって生じる易出血性変化であり,その病態は血管壁,血小板,凝固系,線溶系の各々の異常として捉えることができる.
●一次止血異常の鑑別には血小板数と出血時間が利用される.出血症状は,血小板数が5万以上ではほとんどみられず,5万未満になると観察されるようになり,1万を下回ると重症化する危険が出てくる.出血時間は血小板数が正常(10万以上)の場合に,血小板の質的異常(血小板機能異常)の鑑別に利用される.
●凝固異常は二次止血異常の大半を占め,凝固スクリーニングで概ね鑑別できる.PTの延長は外因系凝固異常を,APTTの延長は内因系異常を反映する.また,PTとAPTTがいずれも低下している場合は,内因系と外因系の共通部分の異常のほか,肝障害やDICが疑われる.
●血小板数,出血時間,凝固スクリーニングがいずれも正常の場合は,血管壁の異常,線溶系の異常,XIII因子異常の鑑別に進む.

血栓傾向患者へのアプローチ

著者: 岡村孝

ページ範囲:P.646 - P.649

●先天性の血栓性素因を有する患者では,30〜40歳代の若年発症および家族発症がみられるのが特徴である.
●臨床的に最も問題となるのは肺塞栓の併発である.
●先天性の血栓性素因ではプロテインS欠損,プロテインC欠損,アンチトロンビンIII欠損,プラスミノゲン欠損,活性化プロテインCレジスタンスならびにフィブリノゲン異常症などがあげられる.

血小板の量的・質的異常

著者: 倉田義之

ページ範囲:P.650 - P.651

●血小板減少を鑑別していくにあたっては,まず最初に偽性血小板減少症を否定しておく必要がある.
●出血傾向を認める症例で血小板数が正常の場合には,血小板機能異常症および凝固異常症を考える.
●抗炎症鎮痛剤の服用や各種疾患において血小板機能の低下がみられることがあるので,詳細に問診などを行う必要がある.

トピックス

造血器腫瘍と幹細胞移植

著者: 土肥博雄

ページ範囲:P.653 - P.656

●骨髄移植推進財団を介した骨髄移植に関しての研究で,HLA-A,BのDNAレベルの一致,不一致は予後に大きな影響を与えることがわかった.すなわち439例の非血縁者間骨髄移植でHLA-A一致症例は,不一致症例に対して4年後で約20%の生存率の向上をみた.
●同種末梢血幹細胞移植は,G-CSF単独でも十分な幹細胞動員が起こることが判明し,同種での応用がなされるようになった.
●臍帯血幹細胞移植は,臍帯血が増殖力旺盛な幹細胞を多量に含むことから期待された.一方で,生着に時間がかかりすぎるという問題点がある.
●造血細胞移植成績では,成人のAMLに関しては第1寛解期と第2寛解期では差がないが,第3寛解期以後は非寛解期と同じくらいに生存率が落ちている.また,小児のALLでは成人のAMLに似た生存曲線を示し,第1寛解期と第2寛解期では差がなく,第3寛解期以後は極端に成績が落ちている.

造血器腫瘍の分化誘導療法

著者: 大野竜三

ページ範囲:P.658 - P.659

●JALSGの初診例APLを対象としたAML92 studyにて,評価可能196例中173例(88%)に完全寛解が得られた.
●ATRAで寛解後に再発したAPLにAm-80による分化誘導療法を試みたところ,14例(58%)が完全寛解に到達した.
●ATRAによるAPLの分化誘導療法の驚くべき有効性は,ヒトのがんが分化誘導療法により確実に治療できることを初めて明らかにした.

DIC治療の進歩

著者: 高橋芳右

ページ範囲:P.660 - P.662

●DICの基礎疾患により凝固・線溶活性化のバランスが大きく異なる.白血病,血管病変によるDICは線溶亢進型・出血型DICとなり,敗血症によるDICは線溶抑制型・臓器障害型DICとなる.
●病態の多様性をふまえ,個々の症例に適した治療を行うことが重要である.
●アンチトロンビン製剤を比較的大量投与すると抗炎症効果が発揮され,敗血症によるDIC症例の生存率を向上できる.

抗リン脂質抗体症候群の治療

著者: 保田晋助 ,   堤明人 ,   小池隆夫

ページ範囲:P.663 - P.665

●一般検査では,軽度から中等度の血小板減少,aPTTの延長,梅毒血清反応の生物学的偽陽性などが本疾患を疑わせる契機となる.
●検査所見に異常を認めれば,症状が軽微であっても積極的な血栓症の検索が必要である.
●慢性期の治療では再発の予防に主眼が置かれるが,薬剤の選択,治療継続期間,治療の程度に関しては統一した見解が得られていない.

鼎談

21世紀に向けた安全で適正な輸血療法

著者: 高松純樹 ,   稲葉頌一 ,   高橋孝喜

ページ範囲:P.667 - P.677

 高松(司会) 本日は「21世紀に向けた安全で適正な輸血療法」というやや大仰な題目ですが,輸血療法における現在の問題点や将来展望について,第一線でご活躍中の先生方に忌憚のないお話をお伺いしたいと思います.
 輸血の有効性についてはすでに確認され,現在では安全性も確立されておりますが,一方で感染症におけるウインドウ期の問題,あるいは輸血後GVHD(graft-versus-host disease)といった問題が起こっております.そこでまず,現在の輸血療法の問題点についてお伺いしたいと思います.稲葉先生,いかがでしょうか.

理解のための31題

ページ範囲:P.679 - P.684

カラーグラフ 内科医が知っておきたい眼所見・7

加齢黄斑変性

著者: 湯沢美都子

ページ範囲:P.687 - P.690

 加齢黄斑変性は,滲出型と非滲出型に分けられる.滲出型の大部分を占める病型は黄斑部に脈絡膜由来の新生血管が発育し,出血や滲出を生ずるものであり,わが国では老人性円板状黄斑変性と呼ばれてきた.非滲出型は黄斑部に萎縮変性を生ずるものである.

図解・病態のメカニズム 胆道疾患・6

胆道癌

著者: 中村雄太 ,   乾和郎 ,   中澤三郎

ページ範囲:P.701 - P.703

 胆道癌は比較的高齢者に発症し,その予後は不良なものが多いが,胆嚢癌では最近の画像診断法の進歩により早期に発見されるものが増加してきた.しかしながら,胆管癌では進行した状態で黄疸により発見される症例がいまだ多いのが現状である.胆道癌発生の病態を把握しておくことは,正確な診断体系と早期診断の手助けとなる.そこで本稿では,胆道癌の発生における知見について述べる.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.691 - P.696

演習 胸部X線写真の読み方—心疾患篇・1【新連載】

心疾患として経過観察中の42歳の男性

著者: 大瀧誠

ページ範囲:P.704 - P.710

連載にあたって
 心疾患,循環器疾患の胸部単純X線写真の読み方について6カ月の連載を行うことになりました.胸部単純写真の適切な読影は,循環器疾患の診断の第一歩としてたいへん重要です.以下に述べるように,胸部X線写真には多数の利点があります.すなわち,胸部単純写真の撮影は簡便であり,結果は客観的に評価できます.非侵襲的で患者の負担はほとんどなく,繰り返し検査を行えるので経過観察に適しています.さらに循環器疾患にとって大切な循環動態をかなり正確に評価できます.検査の費用対効果比の点からも,複雑で高価な検査とほぼ同等の結果を,単純写真は短時間で費用も少なく診断できます.しかし残念ながら,循環器疾患の画像診断法として単純X線写真,超音波,X線CT,MRI,DSA,核医学検査,心臓カテーテル検査と知らなければならない検査があまりに多くなりすぎて,胸部単純写真は軽視される,あるいは十分活用されない傾向にあります.
 一般的にいえば,画像所見は疾患の病理病態を反映しているだけです.ですから画像診断学の基本は,まず正常でない画像所見に気づいて(第1のステップ),どのような病理病態が起きているのかを考えます(第2のステップ).その病態の原因となるいくつかの疾患を鑑別診断として考え(第3のステップ),さらに,鑑別に役立つその他の所見の有無に注目して読影して(第4のステップ),はじめて診断に役立つ画像診断が行えます.

医道そぞろ歩き—医学史の視点から・48

薬物を集大成したディオスコリデス

著者: 二宮陸雄

ページ範囲:P.712 - P.713

 2世紀に書かれたガレノスの著作には多数の医用植物が記されている.筆者が『ガレノス・自然生命力』(1998年,平河出版社)で指摘したように,ガレノスが使った薬草の多くを数百年前にインドのスシュルタも記している.古くから東洋と西欧の間には薬草の流通があったと考えられる.
 ガレノスの『単純医薬の性質と作用』を読むと,ガレノスは,紀元50年頃アレクサンドリアで活躍した辞書編纂家パンフィルスが『植物について』という薬草の本を書いたと述べている.実は同じ頃,ローマで教育を受けた軍人のプリニウスが,その晩年に37巻から成る『博物誌』を書き,第20巻から第27巻に医用植物を列挙した.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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