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雑誌目次

雑誌文献

medicina36巻8号

1999年08月発行

雑誌目次

今月の主題 ニューロパチーとミオパチー Introduction

ニューロパチーとミオパチーはどのような病気か

著者: 川井充

ページ範囲:P.1250 - P.1251

●ニューロパチーは末梢神経の病気,ミオパチーは骨格筋の病気の総称である.
●末梢神経は運動神経,感覚神経,自律神経からなり,運動神経の障害により筋萎縮,筋力低下が,感覚神経の障害により温覚,痛覚,触覚,振動覚,位置覚などの感覚低下,異常感覚,錯感覚が,自律神経の障害により起立性低血圧,発汗障害,陰萎,膀胱直腸障害,下痢・便秘などの消化器症状が出現する.
●ミオパチーの主な症状は筋萎縮と筋力低下で,疾患によっては筋痛や筋痙攣,筋の短縮による関節拘縮を起こすことがある.

患者の訴えと病歴のとりかた—病歴で何がどこまでわかるか

著者: 村山繁雄

ページ範囲:P.1252 - P.1253

●神経疾患全般にいえることであるが,正確な病歴の聴取でかなり正確な診断を下すことが可能である.
●神経・筋疾患の場合は,日常生活動作(ADL)において,何が,いつから,どのようにできなくなったかを把握することがきわめて重要である.

診察のポイント

筋力低下と筋萎縮の診かた

著者: 横山貴博 ,   中瀬浩史

ページ範囲:P.1255 - P.1258

●筋力低下と筋萎縮を診察するにあたって,個々の筋力・萎縮を見逃さないために主要な筋を決め,熟練することが重要である.
●階段昇降,歩行,しゃがみ立ちなどの動作についても記載しておく.発症の自覚,進行の速さ,左右差,分布などについても注意を要する.

筋痛,有痛性筋痙攣,筋強直の診かた

著者: 宮嶋裕明

ページ範囲:P.1259 - P.1261

●筋痛では薬剤の使用,発症状況の問診が重要.繰り返す筋痛では,空腹や運動の内容との関連に注目する.
●有痛性筋痙攣は下位運動ニューロンの障害,脱水で認められる.
●筋萎縮をみたら手を握って開かせ,ハンマーで母指球筋を叩打してみる.筋強直は一時的な「こわばり」として見過ごされていることがある.

反射の診かた

著者: 大矢寧

ページ範囲:P.1263 - P.1265

●末梢神経・筋疾患で深部反射(筋伸張反射)は低下することが多いが,低下しない場合もある.
●最低限診るべき反射は,上腕二頭筋,上腕三頭筋,腕橈骨筋,手指屈筋,大腿四頭筋,下腿三頭筋の深部反射(このうち手指屈筋以外は誘発できなければ異常)と,Babinski徴候,Chaddock徴候の皮膚筋反射である.深部反射は筋ではなく腱を叩き,左右差や部位差,idiomuscular contractionとの差に注意する.
●所見は誤解を招かないように記載したい.反射は客観的な所見だが,評価は総合的な判断になる.しばしば経過観察も重要である.

感覚障害の診かた

著者: 井上聖啓

ページ範囲:P.1266 - P.1267

●本稿で説明する感覚とは,触覚,温覚,痛覚などの一般体性感覚であり,体性感覚は表在感覚と深部感覚に大別される.
●表在感覚の障害には,感覚脱失,感覚低下,感覚過敏,さらに全く刺激を与えられていないにもかかわらず何らかの感覚を示す異常感覚と,刺激に対して質的に異なった感覚(ピンで刺したときに“熱い”と感じる,など)を示す錯感覚がある.
●これらの訴えをよく訊き,その部位を正確に把握する.この際,人形図を患者に与えて記入させるのも一法である.

自律神経障害の診かた

著者: 国本雅也

ページ範囲:P.1268 - P.1269

●ニューロパチーによって起こる自律神経障害のうち,起立性低血圧は圧受容体反射弓の破綻として起こる.これは舌咽・迷走神経の内臓知覚枝を求心路とし,延髄孤束核とRVLA(rostral ventro-lateral medulla)を中枢とし,交感神経を遠心路とする反射弓である.
●ニューロパチーの場合,この入力系,出力系いずれの障害がメインなのか考える必要がある.また,ほかには膀胱直腸障害,発汗障害,体温調節障害,インポテンツ有無を問診する.

神経筋以外の臓器の診かた

著者: 尾方克久

ページ範囲:P.1271 - P.1274

●ニューロパチーやミオパチーでは,神経筋以外の所見が診断の決め手となることがある.逆に末梢神経や筋は全身に分布し,様々な臓器の評価が診療にあたって重要となる.
●しっかりした病歴をふまえて全身の身体所見を系統的に診察し,神経学的診察を行うことが重要である.患者の訴えと,全身の症候に常に目配りすることが肝要である.
●特に循環器系と呼吸器系の症候は,生命予後を左右することがあるので重要である.急性期の厳重な監視を要する疾患だけでなく,慢性期に訴えがなくても定期的な評価が望ましい疾患がある.

検査で何がわかるか

血液生化学検査でわかること

著者: 田中惠子

ページ範囲:P.1276 - P.1277

●筋原性疾患では,血清中に筋逸脱酵素であるCK(creatine kinase),ミオグロビン,アルドラーゼ,GOT,LDHなどが高値となるが,特異性・病勢の推移の把握にはCKが適している.
●Duchenne型筋ジストロフィー・先天性筋ジストロフィー・筋炎などではきわめて高度のCK上昇を認めるが,筋緊張性ジストロフィーや顔面肩甲上腕型では上昇の程度は軽く,甲状腺中毒性ミオパチーやステロイドミオパチーではCKは上昇しない.
●神経原性疾患,その他種々の病態で血清CKが上昇する.

髄液検査でわかること

著者: 斎藤豊和

ページ範囲:P.1279 - P.1281

●末梢神経疾患では脊髄神経根に障害が波及すると,髄液に異常が出現してくる.髄液検査では中枢神経系,末梢神経系のいかんを問わず,細胞数,蛋白量と糖値がスクリーニングの対象となる.
●Guillain-Barré症候群(GBS)では特に髄液蛋白が増加し,細胞数は正常である.蛋白細胞解離現象が診断の重要な所見となっているが,採取時期では蛋白の増加がない場合がある.しかし髄液採取は頻繁に施行するのではなく,採取間隔が短期間では蛋白増加,細胞増多をきたすために注意が必要である.

針筋電図でわかること

著者: 園生雅弘

ページ範囲:P.1283 - P.1285

●随意収縮時針筋電図は運動単位電位(MUP)から構成される.
●神経原性変化では出現するMUP数と種類の減少がみられ,個々のMUPは初期には多相性,慢性期には巨大MUPとなる.
●筋原性変化では弱収縮でも干渉波が出やすくなり,個々のMUPは低振幅でthin が基本だが,しばしば高振幅となり,また多相性も目立つ.
●中枢性筋力低下も針筋電図で診断できる.
●線維自発電位・陽性鋭波や線維束自発電位などの安静時活動も診断に役立つ.
●針筋電図は筋力低下のレベル診断,神経原性変化での病期/予後・局在診断などに役立つ.

誘発筋電図とテンシロンテストでわかること

著者: 重藤寛史

ページ範囲:P.1286 - P.1287

●反復刺激試験とは,重症筋無力症やLambert-Eaton症候群などで神経筋接合部の伝達障害の有無を判定する検査法である.
●反復刺激試験では10%以上の漸減現象(waning)がみられたときは重症筋無力症として,4倍を超える漸増現象(waxing)がみられたときはLambert-Eaton症候群として診断的意義を有する.
●テンシロンテストは,重症筋無力症の診断や抗アセチルコリンエステラーゼ剤投与中の必要薬剤量の判定法として用いられる検査法である.

神経伝導速度でわかること

著者: 寺尾安生

ページ範囲:P.1288 - P.1291

●神経伝導検査は,末梢神経の機能をみる検査で,運動神経伝導検査,感覚神経伝導検査の2種類がある.
●神経伝導速度は,神経走行に沿った2点で刺激を行い,その間の距離を潜時差で割り算して求める.
●神経伝導検査でみるのは,神経伝導速度のほかに振幅,波形および異常の分布範囲であり,これらの所見を併せて末梢神経の脱髄性および軸索変性の疾患の鑑別ができる.

自律神経検査でわかること

著者: 田村直俊

ページ範囲:P.1292 - P.1293

●早期の軸索変性型ニューロパチーでは,心・血管系自律神経機能や血漿ノルアドレナリン(NA)は正常であるが,発汗試験で四肢遠位部に手袋・靴下型の無汗領域を認める.
●①発汗試験における四肢・体幹のpatchyな無汗領域,②血漿NA低値を伴わない起立性低血圧は,脱髄性ニューロパチーを示唆する所見である.
●全身性の交感神経機能亢進を伴う特殊なニューロパチーとして,Guillain-Barré症候群などがある.

画像診断でわかること

著者: 中山貴博

ページ範囲:P.1295 - P.1298

●CTは全身の骨格筋の筋萎縮や脂肪化を短時間に評価することが可能である.
●MRIは筋萎縮の評価のほか,信号値の変化から炎症・脂肪化の評価が可能であり,そのパターンから原疾患の鑑別に役立つ.

筋生検でわかること

著者: 埜中征哉

ページ範囲:P.1300 - P.1301

●筋疾患は筋原性(myopathic)と神経原性(neurogenic)に分けられる.
●筋原性の代表的疾患は筋ジストロフィーで,筋線維の大小不同,筋線維壊死を主病変とする.
●神経原性疾患は脱神経を受けた筋線維が小径化し,群をなす(群集萎縮).神経再支配を受けた筋線維は同一のタイプ(型)で集合し,筋線維型群集(fiber type grouping)を作る.
●タイプ2線維萎縮は非特異的で,疾患特異性に乏しい.
●タイプ1線維萎縮は先天性ミオパチー,筋強直性ジストロフィーなどにみられ,筋疾患を裏付ける重要な所見である.

神経生検でわかること

著者: 神田隆

ページ範囲:P.1303 - P.1305

●神経生検は通常腓腹神経で行う.
●神経生検が確定診断に結びつく疾患は多くないが,血管炎によるニューロパチー,アミロイドニューロパチー,サルコイドーシスや癩によるニューロパチーなどは記憶されるべきものである.
●基本的に侵襲的検査であるので,適応の決定には慎重でありたい.しかし,標本を読む能力が十分にあれば,きわめて情報量の多い検査法といえる.

診断のポイントと治療 ミオパチー

筋ジストロフィー

著者: 石原傳幸

ページ範囲:P.1306 - P.1307

●筋ジストロフィーは遺伝性・進行性のミオパチーである.
●責任遺伝子の解明が進み,蛋白質レベルで原因が解明されつつある.
●遺伝子診断が行われるようになった.
●薬物治療としては副腎皮質ホルモンが有効である.近い将来は,遺伝子治療が根本治療として行われよう.

筋強直(ミオトニア)を示す疾患

著者: 橋本和季

ページ範囲:P.1309 - P.1311

●筋強直性ジストロフィーは,横紋筋のみならずいろいろな臓器を侵す常染色体優性遺伝の全身性疾患である.
●ミオトニアが特徴であり,把握ミオトニアと叩打ミオトニアとして観察できる.
●筋萎縮は顔面筋では,側頭筋と咬筋に強く斧様顔貌を呈する.ほかの筋では胸鎖乳突筋,四肢遠位筋優位の筋萎縮が特徴である.
●筋以外の症状としては,眼では白内障,循環器系では心伝導障害,消化器系では巨大結腸,精神症候では病識の欠如などが特徴である.
●ほとんどの症例で第19染色体のCTGリピートの延長を証明でき,遺伝子診断が可能である.

炎症性ミオパチー—多発筋炎・皮膚筋炎

著者: 谷田部可奈

ページ範囲:P.1312 - P.1314

●炎症性ミオパチーの多くは,特発性筋炎の多発筋炎(polymyositis:PM)・皮膚筋炎(dermatomyositis:DM)である.
●PM・DMは,亜急性の四肢近位筋の筋力低下が主症状だが,合併する肺および心臓の障害(特に間質性肺炎)が予後を決定する.
●PM・DMの発症機序には免疫異常が考えられている.
●PM・DMの治療は副腎皮質ステロイドが第一選択であるが,難治例には免疫抑制薬,γグロブリンを用いることもある.

薬剤性ミオパチー

著者: 尾野精一

ページ範囲:P.1315 - P.1317

●薬剤性ミオパチーのうち日常臨床上最も多くみられるのはステロイドミオパチーである.したがって,ステロイドを服用している患者に対して常に本症の合併に注意することが必要である.
●本症の発生を予測する方法として,24時間尿での尿素窒素を測定し,ステロイド投与前後の24時間総排泄量の比が3倍以上の場合は,そのステロイドを長期投与するとミオパチーを引き起こす可能性が高い.
●腎機能低下,甲状腺機能低下,閉経後などでは量を減らし,妊娠末期,ジフェニルヒダントイン®の投与などがなくなったときは,減量を忘れずに行うのが重要である.

周期性四肢麻痺

著者: 栗原照幸

ページ範囲:P.1318 - P.1319

●周期性四肢麻痺(periodic paralysis)は遺伝性のものと症候性のものがあり,単一の疾患ではない.
●発作性に四肢の麻痺を反復して起こす疾患であるが,発作時に血清Kが高いもの,正常値のもの,低値のものがあり,それぞれ高K血性,正K血性,低K血性周期性四肢麻痺と呼んでいる.
●本邦では,若い男性患者で甲状腺機能亢進症に伴って起こる低K血性の周期性四肢麻痺が多い.発作時は,両下肢が張ったような感じがして,脱力が両下肢から次第に上がってきて,両上肢にも麻痺が及ぶ.

神経筋接合部の病気—重症筋無力症とLambert-Eaton症候群

著者: 松原四郎

ページ範囲:P.1321 - P.1323

●重症筋無力症は筋の易疲労性,特に眼瞼下垂,複視などを主徴とし,低頻度連続刺激で複合筋活動電位が減衰するが,これを一時的に抗コリンエステラーゼ剤で改善させることができる.また,抗アセチルコリン受容体抗体の陽性率は高く,高頻度に胸腺腫を合併する.
●Lambert-Eaton症候群は四肢筋力,特に下肢近位筋力の低下で初発する例が多い.腱反射が減弱し,時に自律神経障害を伴う.複合筋活動電位がきわめて低いが,高頻度連続刺激やテタヌス刺激で増高する.抗電位依存性カルシウムチャネル抗体の陽性率が高く,高頻度に肺小細胞癌を合併する.

ミトコンドリア病

著者: 後藤雄一

ページ範囲:P.1325 - P.1327

●ミトコンドリア病の症状は,骨格筋や中枢神経症状以外に,多臓器に現れるのが特徴である.
●ミトコンドリア異常を確認するための検査には,筋生検が最も有用性が高い.また,罹患臓器の障害の程度を把握する検査も重要である.
●ミトコンドリア病治療は,生化学的障害に応じた薬物療法と各臓器症状に対する対症療法が基本である.

ニューロパチー

運動ニューロン疾患と神経原性筋萎縮症

著者: 澤田幹雄 ,   中野今治

ページ範囲:P.1329 - P.1331

●運動ニューロン疾患とは,上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両者あるいは一方が,選択的かつ進行性に侵される疾患である.
●筋萎縮性側索硬化症は病因が未解明であり,発症から死亡までの平均経過は3〜4年である.ほかに,伴性劣性遺伝を呈する球脊髄性筋萎縮症や,常染色体劣性遺伝形式をとる脊髄性筋萎縮症がある.いずれも根本的には治療手段がないため,その他の治療可能な疾患を鑑別することが大切である.
●筋萎縮性側索硬化症に延命効果があることが示されたリルゾールが,本邦でも1999年春より使用可能となった.

糖尿病に伴うニューロパチー

著者: 溝井令一 ,   高木誠

ページ範囲:P.1333 - P.1335

●末梢神経障害は糖尿病の重要な合併症の一つであり,血糖コントロールの不良な者ほど高率に合併する.
●糖尿病性末梢神経障害の最も代表的な型は,感覚性多発ニューロパチーである.
●感覚性多発ニューロパチーの進行例では,自律神経障害を伴うことが多く,生命予後を不良にする.
●糖尿病性眼筋麻痺(動眼神経麻痺)では,瞳孔は障害されないことが多い.
●糖尿病性末梢神経障害の治療の基本は,長期間,血糖コントロールを良好に保つことである.

悪性腫瘍に伴うニューロパチー

著者: 上坂義和

ページ範囲:P.1336 - P.1337

●悪性腫瘍に伴うニューロパチーの原因は,転移・浸潤,治療の副作用,遠隔効果,栄養障害,血清蛋白異常によるものなど多彩である.
●遠隔効果によるものでは亜急性感覚性ニューロパチーが最も多い.また,原因となる悪性腫瘍としては肺癌が最も多い.また,その発症は癌の発見にしばしば先行する.
●亜急性感覚性ニューロパチーでは,抗Hu抗体陽性例が多い.

血管炎性ニューロパチー

著者: 竹内恵

ページ範囲:P.1339 - P.1341

●血管炎性ニューロパチーは全身性の血管炎症候群に伴うことが多いが,末梢神経限局性の血管炎(non-systemic vasculitic neuropathy)もある.
●末梢神経障害を伴う血管炎症候群は,中・小型動脈を傷害する結節性多発動脈炎やChurg-Strauss症候群,慢性関節リウマチなどが代表的疾患である.
●近年,抗好中球細胞質抗体,特にP-ANCA陽性の顕微鏡的多発血管炎の存在が明らかにされ,血管炎性ニューロパチーを高頻度に伴うことが注目されている.
●血管炎性ニューロパチーの治療はステロイド薬が中心となるが,症例によっては免疫抑制薬の併用も必要となる.

中毒性ニューロパチー

著者: 清水潤

ページ範囲:P.1343 - P.1346

●中毒性ニューロパチーの診断のためには,まず疑うことが大事である.
●原因の同定のためには接触歴の聴取が重要であり,薬物摂取歴,職業内容,習慣や生活環境も含め病歴をとる.
●原因物質を早期に同定し,離脱することが中毒性ニューロパチーの治療として重要である.
●Thiamineをはじめとした多因子の栄養素の欠乏が,アルコール性ニューロパチーの発症機序を説明すると考えられている.
●禁酒,ビタミンB群の投与,バランスのとれた食事が,アルコール性ニューロパチーの治療として重要である.

Guillain-Barré症候群と慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー

著者: 小鷹昌明 ,   結城伸泰

ページ範囲:P.1348 - P.1350

●Guillain-Barré症候群(GBS)と慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)は,共通して四肢の筋力低下と腱反射消失をみるが,発症様式が異なる.CIDPは,発症から8週以上かけて進行して極期に達する.
●現行の保険診療上,GBSもCIDPも単純血漿交換が第一選択である.GBSでは副腎皮質ステロイドを使用してはいけない.CIDPでは単純血漿交換の効果を確認したうえで,副腎皮質ステロイドを投与し始める.

座談会

ニューロパチーとミオパチー—診断・治療をどのように進めるか

著者: 末石眞 ,   栗原照幸 ,   楠進 ,   川井充

ページ範囲:P.1353 - P.1365

 川井(司会) 本日は,末梢神経と筋肉の疾患をどのように診察し,どのように治療を進めるかということについて,一般内科の先生方の参考になるお話を伺えればということでお集まりいただきました.

理解のための30題

ページ範囲:P.1367 - P.1372

カラーグラフ 病原微生物を見る・1

ペスト

著者: 川端寛樹 ,   渡邊治雄

ページ範囲:P.1382 - P.1384

ペストの臨床症状
 ペストの臨床症状は,大きく腺ペスト,肺ペストおよびペスト性敗血症に分けられるが,すべてペスト菌感染に起因する.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.1375 - P.1380

演習 胸部X線写真の読み方—心疾患篇・4

全身倦怠感と微熱を訴える33歳の女性

著者: 斎藤拓郎 ,   大瀧誠

ページ範囲:P.1389 - P.1397

Case
 主訴と経過:全身倦怠感,微熱を主訴に来院した.
 入院時所見:聴診上で拡張期雑音あり,炎症反応は陽性である.

症例によるリハ医療—内科医のために・13

高齢者のリハビリテーション

著者: 林拓男 ,   丸山典良

ページ範囲:P.1399 - P.1402

 Dacsoは高齢者のリハビリテーション(以下,リハと略)を次の3種類に分けている.
 ①明らかな障害をもった高齢者:片麻痺,関節炎,骨折,切断,神経筋疾患など.②著明な障害のない慢性疾患患者:慢性の心・肺疾患など.③はっきりした疾患があるわけではないが,体力の低下しているもの.
 さらにDacsoは,「高齢者のリハの中心が第1群にあることは若年者と同様であるが,高齢者に特有な点は第2・3群の占める割合が多くなることである.第3群についてはむしろ高齢者の健康管理・指導などの広範囲のものを含んでおり,体力の低下が老齢によるもののほかに,置かれた環境,日常生活パターン,経済的状況に左右されることが多いからである」と述べている1)

医道そぞろ歩き—医学史の視点から・52

生誕の神秘に打たれたファブリチオ

著者: 二宮陸雄

ページ範囲:P.1404 - P.1405

 美しい冬の日,パドヴァ大学を訪れると,折あしく内部の見学は休みであった.あきらめて帰ろうとしていたとき,たまたま一人の教授に出会った.教授が,折角来たのだから中を見ますか,というので喜んで後を追った.お陰で昔の教授たちの頭蓋骨を見たり,ガリレオが講義した机や,膵臓の管を描いたウィルスングの肖像の壁画を見たりした.
 それにもまして幸運であったのは,有名なファブリチオの解剖示説階段教室を真下の解剖台のところから見上げられたことである.ファロッピオの死後,1565年にパドヴァ大学の外科学教授になったファブリチオが,1594年,57歳のときに作った解剖示説室である.卵型の底部を見下ろす階段状の回廊をもつ7.5mと9mのこの示説室は,現在まで400年間そのままの形で残っている.階段は険しく,学生は立って見学し,ノ一トをとるのも難しかった.有名なモルガーニもここで50年間も教えたが,1844年までは窓は開かず,燭台(松明)の光で講義したらしい.

medicina Conference 解答募集・29

下記の症例を診断して下さい.

ページ範囲:P.1373 - P.1373

 症例:63歳,女性.
 主訴:乾性咳嗽,発熱.
 既往歴・家族歴:特記すべき事項なし

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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55巻12号(2018年11月発行)

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55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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