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文献詳細

雑誌文献

medicina37巻1号

2000年01月発行

文献概要

カラーグラフ 病原微生物を見る・5

腸管出血性大腸菌O157

著者: 竹田多惠1

所属機関: 1国立小児病院小児医療研究センター感染症研究部

ページ範囲:P.145 - P.148

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臨床症状および経過
 夏期に患者は多発するが,冬季にもしばしば発生する.潜伏期は平均3〜5日である1).さらに遅れての発症も報告されているが,8日以降の場合は二次感染の可能性が高い2).初発症状は水様性の下痢と腹痛が主で,熱や血便は1割程度,吐き気や嘔吐,風邪のような症状が数%にみられる1).夏風邪と区別がつきにくい.多くは翌日から血便に移行する.血便は血液が線状に付着する程度から,鮮血そのものといつたもの(図1)まで様々である(出血性大腸炎,hemorrhagic colitis).大腸壁,特に回盲部から上行結腸には潰瘍や強い浮腫がみられ(図2,3),時には腸重積や直腸脱をきたすこともある.虫垂炎症状もしばしばみられる.
 発症後1週間くらいすると,患者の約1割は溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syn-drome:HUS)を続発する(図4).初期から腹痛や血便,熱の程度が高いほどHUS発症の危険性が高い.血液検査で白血球数やCRP値が高いこと,総蛋白やアルブミン値が低下していることも重症化の予知因子となる1,3).HUSは乏尿と傾眠傾向などで気付かれる.破砕赤血球(図5)の出現,貧血,血小板減少,尿量減少,腎機能障害などが1週間頃から急激に現れる.時には下痢症があまり目立たず,貧血や出血傾向を訴えて受診する患者もある.HUSの予後は蛋白尿や血尿など腎機能不全が長く残ることがあり,3〜4%は死亡する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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