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文献概要
図解・病態のメカニズム 胃疾患・3
胃の微小循環—構造とその調節機構
著者: 辻晋吾1 川野淳2
所属機関: 1大阪大学大学院医学系研究科病態情報内科学 2大阪大学医学部保健学科病態生体情報学
ページ範囲:P.155 - P.158
文献購入ページに移動胃における血管構築を模式化すると,図1に示したように,粘膜下で動静脈叢が形成されており,そこから粘膜へ細動脈・細静脈が伸びている.ただし胃の小彎ならびに大彎では,細動静脈は直接胃壁を貫通していると報告されている.胃潰瘍が胃の小彎側に比較的多い理由の一つに,このような胃の血管構築の差異があるのかもしれない.
胃粘膜の微小血管系は粘膜表層に向かって上行する毛細血管系に始まる.この毛細血管系の比較的上流には,主細胞や壁細胞などの細胞が局在している.特に壁細胞は,ミトコンドリアによる好気的代謝により.酸分泌に要するATPをまかなっている.したがって,大量の酸素を消費する壁細胞が胃粘膜微小循環の比較的上流に位置することは目的に適っている.また壁細胞からは,酸分泌と同時に大量の重炭酸イオンが胃粘膜毛細血管系に放出され,その一部は被蓋上皮その他から分泌される重炭酸イオンの源にもなると考えられる.一方,胃粘膜微小血管の血管系とそこにかかる静水圧の関係について検討した藤田らは,毛細血管系の総断面積が減少する増殖帯付近では活発な物質交換が行われていると推測している.この毛細血管系と増殖帯の位置的関係は,腸上皮化生粘膜においてもみられるという.
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