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雑誌目次

雑誌文献

medicina37巻10号

2000年10月発行

雑誌目次

今月の主題 肺炎—市中感染と院内感染 市中肺炎へのアプローチ

市中肺炎のリスクファクター

著者: 松村理司

ページ範囲:P.1576 - P.1578

●生体には,気道感染に対する様々な防御機転があり,それが破綻して初めて肺炎が生じる.
●市中肺炎をきたす起炎微生物と各種の病態の間には,感染防御能の特定の破綻様式を介して,一定の相関がある.
●総じて肺炎球菌によることが多いが,喫煙者.慢性閉塞性肺疾患患者では,インフルエンザ桿菌やMoraxella catarrhalis,大酒家や糖尿病患者では,クレブシエラを含むグラム陰性桿菌の頻度が高くなる.

診察所見からの情報

著者: 草深裕光

ページ範囲:P.1579 - P.1582

●肺炎は発熱に咳,痰,胸痛などの呼吸器症状を伴う場合に疑われ,胸部X線での浸潤影か肺炎に一致する聴診所見を伴う.
●硬化像を呈する肺炎は打診で濁音を呈し,声音振盪が亢進,breath sounds,whisper sounds,voice soundsは増強しcracklesを伴う.
●まず病歴と診察所見より入院治療の必要性を判断し,外来治療が可能な場合,追加検査は必ずしも必要でない.

喀痰の性状とグラム染色と培養

著者: 佐竹幸子

ページ範囲:P.1584 - P.1585

●市中肺炎へのアプローチをする際,抗菌薬投与前に血液培養のための採血をし,良質の喀痰を採取する.喀痰を採取したら直ちに喀痰の性状と量を観察し,グラム染色して喀痰の質を評価する.良質な喀痰が得られていることが確認された場合は,グラム染色性と形態から起因菌を推定し,その喀痰の培養検査を可及的速やかに開始する.

重症度の判定に必要な検査

著者: 前野哲博

ページ範囲:P.1586 - P.1588

●肺炎を診断したら治療方針の決定および予後の予測のために重症度の評価を行う.
●重症度の判定のために必要な情報は,以下の3つに大別される.
 ①患者背景(年齢,基礎疾患など)
 ②身体所見(バイタルサインなど)
 ③検査所見(胸部X線,血算,生化学,炎症反応,血液ガスなど)
●重症度の判定には様々なガイドラインが提唱されているが,あくまで標準的な基準を示したものであり,最終的には担当医が患者の病態を全体的に評価して判定する必要がある.

肺炎のX線写真と利用方法

著者: 鈴木勝 ,   堀内正

ページ範囲:P.1589 - P.1591

●胸部X線で新しい浸潤影を認めることは肺炎の診断には必須である.
●陰影がなくても肺炎を否定できない場合がある.
●胸部X線所見による起炎菌の推定は困難であるが,それぞれの菌による特徴的パターンを知っておくことは有用である.
●X線の陰影の改善は身体所見や白血球数の正常化より遅れる.
●年齢が高いほど陰影は遷延する.

肺炎診断におけるCTスキャンの利用方法

著者: 小場弘之 ,   伊藤英司 ,   伊藤峰幸

ページ範囲:P.1592 - P.1594

●肺炎の診療においてCTスキャンの有用性は高く,種々の肺疾患との鑑別に必要な肺の形態情報を得ることができる.
●気管支肺炎のCT所見は,区域性を有する辺縁不明瞭な,種々の大きさの肺胞性陰影で,癒合傾向が強く,しばしば気管支透亮像を伴う.
●重症例および非定型的な経過や所見を呈する例に対しては,速やかにCTを撮影して治療方針決定の一助とする必要がある.

市中肺炎の治療にあたって

重症度による抗菌薬の選択

著者: 二木芳人 ,   三村公洋

ページ範囲:P.1595 - P.1597

●市中肺炎の初期治療方針および第一次選択薬決定のうえで,その重症度の的確な評価は重要である.
●重症度に応じてある程度の起炎菌の種類を特定することも可能である.
●軽度~中等症の肺炎では,第二次選択薬に変更の余裕もありうるが,重症例ではエンピリックセラピーで初期治療をより確実なものとする必要がある.

入院治療か外来治療かの決定

著者: 相澤信行

ページ範囲:P.1598 - P.1599

●入院治療か外来治療とするかの決定は,肺炎の重症度,年齢,基礎疾患の有無,介護の状況などを考えて行う.
●決定には,ポイントシステムの利用が有用である.

ペニシリン耐性肺炎球菌肺炎の判断と治療

著者: 北原光夫

ページ範囲:P.1602 - P.1603

●ペニシリン耐性肺炎球菌の検出率は増加してきている.
●市中肺炎の治療を正しく行うには,喀痰培養,血液培養を抗菌薬投与前に行い,肺炎球菌の感受性を得られるようにする.
●治療においては予測的投与を行い,感受性に合った抗菌薬へと変更する.

高齢者の肺炎

著者: 岸本寿男

ページ範囲:P.1604 - P.1606

●高齢者では基礎疾患や合併症,老化による機能低下などで若年者に比べ重症化,難治化しやすい.
●起炎菌は肺炎球菌,インフルエンザ菌,肺炎クラミジア,レジオネラ,肺炎マイコプラズマなどが多い.

若年者の市中肺炎

著者: 野口善令

ページ範囲:P.1607 - P.1610

●若年者の市中肺炎の原因菌は,マイコプラズマ,クラミジア,肺炎球菌が多い.
●症状は呼吸器症状,肺外症状ともはっきりと出現するものが多い.
●軽症のものが多く生命予後も良いことが多い.
●軽症例ではマクロライドが第一選択となる.

インフルエンザと肺炎

著者: 河崎伸

ページ範囲:P.1611 - P.1613

●インフルエンザウイルス感染症は心筋炎,脳症,肺炎などの合併症があり,流行期に発症した肺炎はインフルエンザウイルス肺炎を念頭に置くべきである.最近,インフルエンザウイルスA型迅速診断キット,アマンタジン,ノイラミダーゼ阻害薬など様々な診断・治療法が使用できるようになった.

市中でみられる誤嚥による肺炎

著者: 青木泰子

ページ範囲:P.1614 - P.1615

●市中でみられる誤嚥による肺炎には,誤嚥エピソードが明らかなmacroaspirationによるものと,不明確なmicroaspirationによるものがあり,後者は顕性,および不顕性の脳血管障害を基盤とすることが多い.起因菌として嫌気性菌の関与を念頭に置いて治療する.再発防止には嚥下障害に対する対策が重要である.

市中肺炎の問題症例

単なる肺炎か結核か迷うとき

著者: 青島正大 ,   大曲貴夫

ページ範囲:P.1619 - P.1621

●一般に細菌性肺炎は肺結核と比べ急性の経過で,高熱,核の左方移動を伴う高度の白血球増多や高度のCRP上昇を示すが,肺炎か肺結核か迷う症例も少なくない.肺結核も肺炎も多彩な画像を呈するため,画像を根拠とすると診断を誤る危険性がある.このような場合には喀痰塗抹のグラム染色と抗酸菌染色を行うことが鑑別の第一歩になる.

どのような肺炎に対して,HIV感染症を疑う必要があるか

著者: 井上哲郎 ,   田口善夫

ページ範囲:P.1622 - P.1625

●自らの診療圏におけるHIV感染率を知り,肺炎症例においてもHIV感染者に遭遇する機会があることを認識しておく必要がある.
●AIDS(acquired immunodeficiency syndrome:後天性免疫不全症候群)指標疾患を認識するとともに,病歴聴取の重要性を再確認し,的確なHIVスクリーニングを行うように心がける.

間質性肺疾患への対応

著者: 濱田邦夫 ,   長尾大志 ,   長井苑子

ページ範囲:P.1626 - P.1631

●市中感染肺炎として抗菌治療を開始したが改善が得られない場合,その他の肺疾患について迅速に評価と診断を進める必要がある.
●胸部X線写真で両側性下肺野優位の陰影を呈するときは,間質性肺疾患をまず疑う.
●間質性肺疾患の診断と治療には,胸部HRCT,気管支鏡検査および肺生検による組織診断が重要である.

市中肺炎にみられる合併症

著者: 中浜力

ページ範囲:P.1632 - P.1633

●市中肺炎の合併症は,肺炎治療の予後に大きく影響し,その病態には脱水,電解質異常,呼吸不全,ARDS,心不全,DICなどがある.
●脱水の治療時には,過剰輸液による心不全や電解質異常に注意する.
●慢性呼吸不全患者の呼吸不全治療時には,CO2ナルコーシスを起こさないように,低濃度からの酸素投与を行う.

院内感染肺炎へのアプローチ

院内感染肺炎のリスクファクター

著者: 矢内勝

ページ範囲:P.1636 - P.1637

●高齢者,特に脳血管障害の既往のある患者は院内感染肺炎になりやすい.
●管内挿管,ベンチレータ装着患者はハイリスク群である.
●ハイリスク群の耐性菌感染症の肺炎発症の予防には,医療従事者の院内感染対策への取り組みが重要である.

院内感染肺炎の診断

著者: 武田裕子

ページ範囲:P.1638 - P.1640

●院内感染肺炎は市中肺炎と異なり,臨床像からは診断できないことが多い.
●喀痰や気管内吸引で得た分泌物の細菌培養では,コロナイゼーションしているだけの菌が検出されることも多く,結果の解釈には注意が必要である.
●人工呼吸器装着患者の院内感染肺炎には,気管支鏡を用いた診断法が有用である.

院内感染肺炎の起炎菌をどう決めるか

著者: 下方薫

ページ範囲:P.1642 - P.1643

●院内感染肺炎において,喀痰はとりわけ常在菌で汚染されやすい検体であるので,喀痰による起炎菌の推定は慎重に行われるべきである.
●血液培養,気管支鏡下の検体採取,肺病変部からの検体の針吸引などは侵襲的であるが,起炎菌決定の手段として信頼性が高い.
●それぞれの医療施設での院内感染肺炎の主要な起炎菌と薬剤に対する感受性をあらかじめ知っておくことは臨床的に重要である.

喀痰からMRSAが出たときどうするか

著者: 青木眞

ページ範囲:P.1644 - P.1646

●喀痰に認められたMRSAに適切に対処するには黄色ブドウ球菌感染症の全体像に対する理解が重要である.
●生存能力の高いMRSAが咽頭部に定着していることは多い.喀痰培養でMRSa陽性=MRSA肺炎ではない.
●喀痰のMRSAに気を取られ,血管カテーテル感染症など他臓器の感染症の有無を検討することを忘れてはならない.
●喀痰のMRSAは本菌による菌血症の肺合併症である可能性がある.血液培養も重要.

院内感染肺炎と鑑別すべき疾患

著者: 山﨑透

ページ範囲:P.1648 - P.1650

●胸部X線写真上,急性〜亜急性に陰影が出現するすべての疾患が鑑別対象となる.
●院内感染肺炎,鑑別疾患ともに基礎疾患を有する患者に発症するものであり,急速に進行して予後不良となることが多いため,迅速な対応が必要である.
●診断は,基礎疾患,病歴,病態などを的確に把握することがまず最も重要であり,そのうえで必要な検査を迅速かつ効率的に行って総合的に判断する必要がある.

院内感染肺炎とCTスキャンの利用方法

著者: 渡辺憲太朗 ,   向野賢治

ページ範囲:P.1651 - P.1653

●胸部X線上に陰影が出現すれば,市中肺炎の診断は比較的容易である.しかし入院患者では市中肺炎と異なり陰影の出現する病態は多岐に及び,肺炎の診断は必ずしも容易でなく,CTが有用な診断の道具となる.
●CTで解剖学的病変分布と病変のパターンを把握することにより,他疾患との鑑別が可能となる.早期病変の発見にも有用である.

院内感染肺炎の治療にあたって

lCUにて経験する肺炎

著者: 喜舎場朝雄

ページ範囲:P.1656 - P.1657

●肺炎は臨床経過を把握して総合的に判断する.
●ICUでの肺炎患者は陰影も複雑で患者背景も考えX線は経時的に評価する.
●喀痰塗抹は簡便で治療の参考になるので全例で施行すべきである.
●重症肺炎でも市中肺炎と同様に患者の背景・臨床経過に応じて抗菌薬を投与する.

急性白血病治療中の肺炎

著者: 河村千春 ,   木崎昌弘

ページ範囲:P.1658 - P.1660

●急性白血病治療中の患者は,原疾患や化学療法のため免疫不全状態にあり,日和見感染症を起こしやすい.
●好中球数が著明に減少するため,肺炎は特徴的所見に欠くことが多く,発熱が唯一の早期症状であることが多い.原因菌の判明しないことも多い.
●抗生物質の経験的治療(empiric therapy)はグラム陽性球菌,グラム陰性桿菌を幅広くカバーする薬剤を投与する.血液培養は重要である.

骨髄腫と肺炎

著者: 中川靖章 ,   鈴木憲史

ページ範囲:P.1664 - P.1665

●骨髄腫患者の肺炎では,正常免疫グロブリンが減少していることが多く,抗生剤投与のみでは軽快しないことがあり,早急にγグロブリン製剤の投与も検討するべきである.
●骨髄腫の治療にステロイド療法や同種幹細胞移植をすることがあり,細胞性免疫の低下による結核,非定型抗酸菌症,ウイルス,真菌,Pneumocystis cariniiなどの呼吸器感染症も増加している.

入院中の高齢者と誤嚥性肺炎

著者: 多田慎也

ページ範囲:P.1666 - P.1668

●脳血管障害の高齢者では,無症候性の誤嚥を伴いやすい.
●嚥下障害には咳反射の障害も伴いやすく,常に誤嚥の可能性を考慮する.
●高齢者肺炎では症状に乏しく,意識レベルの変化や活動性低下に注目する必要がある.
●誤嚥性肺炎の起炎菌は口腔内の細菌が多く,口腔内を清潔に保つことが重要.

術後(または外傷後)にみられる肺炎

著者: 大滝美浩

ページ範囲:P.1669 - P.1671

●術後肺炎の死亡率は高い.
●開胸,なかでも特に食道癌,肺癌切除での肺炎の頻度は高い.
●重篤な外傷や熱傷,大手術など侵襲度の高い状態では肺炎の頻度が高い.
●人工呼吸管理下であった場合,診断は非常に難しい.
●術後急激発症の呼吸不全では肺炎も鑑別に入れるべきである.
●周術期の予防的管理が大事である.

改善のみられない院内感染肺炎への対応

著者: 小林龍一郎

ページ範囲:P.1672 - P.1674

●浸潤陰影があっても無気肺,肺出血,肺梗塞などの原因も考えられるので,本当に感染症であるか見直しをする.
●危険因子の見落としや複数菌の重複感染や真菌やウイルスなど稀な起炎菌についての検討をする.
●浸潤陰影を直接検査する気管支鏡検査の適応を検討する.

肺炎の予防対策

ワクチンの投与

著者: 小野容明

ページ範囲:P.1678 - P.1679

●インフルエンザワクチン,肺炎球菌ワクチンともに投与対象者は,基本的にanaphylaxisisがなく急性発熱性疾患がない症例すべてと考えてよい.
●インフルエンザワクチンは毎年,肺炎球菌ワクチンは5年に一度の接種が理想的である.
●両ワクチン接種とも医療経済にもたらすプラス効果は非常に大きい.

全身状態の管理

著者: 桑野和善 ,   原信之

ページ範囲:P.1680 - P.1681

●意識障害,心不全,肝不全,慢性閉塞性肺疾患,糖尿病,血液疾患,治療に伴う免疫不全などの基礎疾患を有する患者や,高齢者においては,肺炎の予防対策としての全身状態の管理が重要と考えられる.患者自身や医療従事者を含めた環境の清浄化は言うまでもないが,その中でも誤嚥の予防は最も重要な課題の一つである.

COPDへの抗菌薬投与と肺炎予防

著者: 陶山時彦

ページ範囲:P.1682 - P.1683

●肺炎ではまず良質な痰を得てグラム染色で原因菌を決定する.COPD例での原炎菌は,Haemophilus influenzaeが最も多く,ついでStreptococcus pneumoniae,Moraxella catarrhalisの順となる.適正な抗生剤を十分投与するほか,呼吸・循環状態の監視と排痰補助が必要となる.HOTや包括リハビリテーション,口腔内の清潔維持がCOPDの予後やQOLを改善する.

理解のための32題

ページ範囲:P.1688 - P.1693

カラーグラフ 病原微生物を見る・14

ボツリヌス菌

著者: 小熊惠二

ページ範囲:P.1712 - P.1715

はじめに
 ボツリヌス菌は食事性ボツリヌス中毒(food-borne botulism),乳児ボツリヌス症(infant botu-lism),創傷ボツリヌス症(wound botulism)をきたす.本稿では菌および毒素の性状,中毒の様式,診断法,治療法などについて述べた後,乳児ボツリヌス症の1症例について記す.

演習 胸部X線写真の読み方—肺疾患篇・12

卵巣癌の術前検査で胸部異常陰影を指摘された49歳女性

著者: 菊竹晴子 ,   佐藤雅史

ページ範囲:P.1695 - P.1698

Case
症例:49歳,女性
 主訴と経過:腹部膨満に気がつき婦人科を受診したところ,下腹部に卵巣癌を疑う巨大腫瘤が発見された.術前に撮影された胸部X線写真で異常陰影を指摘される.呼吸器症状は特にない.
 理学的所見:両側頸部・鎖骨上窩にリンパ節を触知.呼吸音は正常.
 術前入院時の胸部単純X線写真を提示する(図1).

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.1706 - P.1711

図解・病態のメカニズム 胃疾患・12

胃発癌のメカニズム

著者: 森田賀津雄 ,   日下利広 ,   藤盛孝博 ,   寺野彰

ページ範囲:P.1699 - P.1702

 消化器癌は,時代的に減りつつある癌と増えつつある癌に二分される.かつて胃癌は,日本では男女ともに高頻度であったが,1960年から1970年にかけて徐々に漸減し始め,最近では食道,大腸などの癌が増加し,先進国型に移行していると言われている.胃癌の発生母地として胃潰瘍やポリープが注目された時代もあったが,現在では胃炎が大きくクローズアップされている.1983年に同定されたHelicobacter pylori(H.pylori)の存在は1),胃炎,胃癌の相関を根本的に変えたといっても過言ではない.スナネズミを用いた動物実験2〜4)以外では,疫学的evidenceのみが現状で明らかにされた事象であるが5〜8),炎症性発癌の機序として,胃癌の原因をH.pyloriによって惹起される慢性胃炎,あるいは萎縮性胃炎に求めるのは常識的といえる.
 胃癌は,発癌誘起物質と発癌促進物質が関与するとされており,古くは魚や肉の焼け焦げに含まれるトリプトファン,紫外線,放射線なども正常細胞の遺伝子を傷つける物質が発癌誘起物質であり,アルコールやたばこ,アフラトキシン,ニトロソアミンなどが発癌促進物質と考えられており,たばこなどは両方の要素をもつとされている.

新薬情報・4

ミコフェノール酸モフェチル

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.1718 - P.1719

 適応■腎移植後の拒絶反応が標準的な治療薬で抑制不能の場合,または有害反応のために投与できない場合の代替薬.
 用法・用量■1回1.5gを1日2回12時間ごとに経口投与.日本では250mgカプセルのみ市販されているが,諸外国では同錠剤,経口水溶剤用の粉末,注射用剤も市販されている.
 

Scope

HIV感染症診療の実際(前編)—初診から病態の把握まで

著者: 岡慎一

ページ範囲:P.1721 - P.1724

 HIV感染症の治療は,図1に示すごとく,抗HIV薬を用いたエイズ発症予防と日和見感染症の診断・治療・予防の2つの大きな柱に分かれる.そのどちらも非常に専門性が高く,HIV感染者の予後は,専門医にかかるかどうかで違ってくることが示されている.抗体検査を受け陽性と判明した人はしかるべき施設に紹介されることが多いので問題はないが,種々の日和見感染症によりエイズを発症してから病院を訪れる場合には,一般医を受診することがほとんどである.このような場合には,HIVの診療経験がないかもしくは非常に少ない医者が対応に当たることになる.しかし,HIVに併発する日和見感染症は,いわゆる従来の医療経験のなかでは診ることの少ないものがほとんどであり,その診断や治療は必ずしも容易ではない,例えばエイズ発症時の疾患として最も頻度の高いカリニ肺炎の場合,呼吸器専門医ですら間質性肺炎としてステロイドを投与してしまうこともある.これは,自分の経験に基づいた鑑別診断の中にカリニ肺炎が入っていないために起こってしまう誤診である.

medicina Conference 解答募集・30

下記の症例を診断して下さい.

ページ範囲:P.1725 - P.1725

 症例:42歳,男性,会社員.
 主訴:精査目的
 既往歴・家族歴:糖尿病と言われた以外に既往は特になし,母方に糖尿病があり,家族には結核はない.
 現病歴:1995年に人間ドックの検査にて糖尿病と診断されたが,放置していた.1997年には空腹時血糖が278mg/dlであったが,治療を受けていなかった.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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