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雑誌目次

雑誌文献

medicina37巻11号

2000年10月発行

雑誌目次

増刊号 臨床医のための最新エコー法 Editorial

エコー技術の進歩と臨床医に求められるもの

著者: 伊東紘一

ページ範囲:P.8 - P.10

 超音波エコー法が50年を超える発展の経過において,数々のME(medical engineering)の技術的な進歩がみられた.Aモード法からBモード法になり,断層像を描けるようになったことは大きな一歩であった.しかしながら,この時点で臨床医は,一本の探触子(プローブ)を用いて名人芸の腕前を見せなければならなかった.この名人芸もスキャンコンバータを利用して,階調性(グレースケール)の良い画像を容易に得ることができるようになり,診断の精度を向上させることができた.腹部の接触複合走査法と心臓の心拍同期装置による名人芸の時代を経て,やがて電子走査方式を中心とするリアルタイム(実時間)表示の時代に入っていく.リアルタイムの時代になって,臨床医であれば誰でもが,超音波画像を描出し,診断することができる可能性が出てきた.これは,本当の意味で超音波の臨床応用の時代に突入した画期的な出来事である.誰でもが簡単に超音波画像を得ることによって,多くの臨床データが収集されて,超音波画像の有効性が確認されていった.大小様々な技術面における進歩の中から,リアルタイム断層法に続く,抜きん出た発明であるカラードプラ断層法が開発された.

知っておきたいエコー法の基礎

ピエゾ電気現象とドプラ効果

著者: 金井浩

ページ範囲:P.12 - P.15

圧電効果(piezoelectric effect)
 圧電体の結晶に機械的圧力を印加したとき,外力の大きさに比例して結晶の両端に電荷が発生する(電気分極が生じる)正圧電効果と,逆に,結晶体に電界を掛けると歪みが生じる逆圧電効果があり,両効果が電気エネルギーと機械エネルギー間の相互変換に利用されている.これらの現象の詳しいメカニズムを以下で説明する.
 図1aに示すように物質中の1組の正イオンと負イオンが,ばねで支えられて電気双極子を構成していることを考える.電気双極子の強さである電気双極子モーメントPは,2つのイオン間の距離lと電荷量qの積で表される(p=ql).双極子【BA】の軸上で十分離れた点W(r≫l)での電界Eは,双極子モーメントpに比例し,距離rの3乗に反比例する(E=p/2πE0γ3).

超音波検査法の原理

著者: 大平悦三

ページ範囲:P.16 - P.22

 不可視情報の画像化技術の一つである超音波検査法は超音波診断装置として,医学の各分野で広く実用に供されている.超音波診断装置はレーダやソーナの原理から超音波探傷器の基礎技術を応用したものと言われている.しかし,今日の高度な超音波診断装置の進展には工学者と医学者との協力による独自の研究,および技術開発の成果が大きく寄与していると考えられる.現在,実用化されている超音波診断装置には超音波パルスの反射を利用する方式とドプラ効果を利用する超音波ドプラ方式のものがある1)
 これらは電波工学で発達しているレーダと同じ原理を用いる方法で,超音波を対象とする物体に,探触子(プローブ)から細かい超音波ビームを走査しながら物体に照射し,物体からの反射波(エコー)によってブラウン管などのディスプレイに物体の断層像を表示させる方式である.

リアルタイム超音波診断装置

著者: 宮本一夫

ページ範囲:P.24 - P.27

超音波診断装置とは
 今,超音波診断装置は,二次元リアルタイム超音波診断装置が全盛の時代を迎え,また,三次元リアルタイム超音波診断装置も実用的なものとなり注目を集めている.
 まずは,超音波診断装置がどのような診断装置なのかという説明から始めることにしたい.日常われわれが会話で使用している言葉は,口から発せられた音が空気を通して(媒体として)耳に届き,言葉(音)として認識される.超音波診断装置とは,この音の一種である超音波を利用して生体内の断層を画像化する装置である.

探触子

著者: 清水康雄

ページ範囲:P.28 - P.31

 超音波を用いてエコー検査をする際に重要なものはセンサーとしての探触子(プローブ:probe)と振動子から受けた信号を画像化する診断装置に大別される.
 本稿では基礎として探触子の概要を述べるので,参考にしていただければ幸いである.

超音波像のアーチファクト

著者: 長井裕

ページ範囲:P.32 - P.34

見えてほしくないもの
 アーチファクト(artifacts:虚像)とは,超音波診断装置で検査をする場合に,超音波の特徴や性質により発生してしまうものである.これは,ないはずのものが画面に表示される現象であり,検査するうえでは見えてほしくないものである.
 これらは次の6種に大別できる
 ①屈折現象,②反射現象,③減衰現象,④増強現象,⑤多重現象,⑥サイドローブ.

エコー法の実践—総合エコー法

頸部疾患(リンパ節・耳下腺・顎下腺)

著者: 森島勇 ,   植野映

ページ範囲:P.40 - P.43

検査の手順
 体表臓器を観察するには,7.5MHz以上の高周波数を持ったプローブ(探触子)が必要である.一般には,アニュラアレイ型プローブを含むメカニカルセクタスキャナや電子リニアスキャナが使用されている.特にこの3,4年くらいの間に,電子リニアスキャナは急速に発達した.これは,整相部のデジタル化,振動子の高周波化,プローブの高感度広帯域化などの技術進歩により,空間分解能,コントラスト分解能,時間分解能がきわめて向上したためである.
 被検者の体位は,肩の下に枕を入れ,頸部伸展位をとる.左右観察部位に応じて,右左を向く.

甲状腺

著者: 横澤保

ページ範囲:P.44 - P.47

検査の手順
 1.機種はどれを選ぶか?
 最近の超音波機器の技術革新は目覚ましく,より小型の高性能の機種が続々と発売されている.現在最も普及しているのは,リアルタイムに動的画像が得られる電子スキャン装置で,特にデジタル式1~3)のものが画像が良いことやドプラへの応用が可能である利点から主流である.
 2000年のトピックスは,なんといっても,SonoSite 180®(図1)であろう.片手で持ち運びできる(重さ約2kg)うえに,画像が良いので甲状腺外来の診察室で聴診器のように使用できる.正式な名称は,オリンパス社製の携帯型デジタル超音波診断装置(SonoSite 180)で,2000年3月に発売された(2000年5月28日横浜で行われた第73回日本超音波学会ランチョンセミナーで発表された).

副甲状腺

著者: 貴田岡正史

ページ範囲:P.48 - P.52

 臨床的に副甲状腺の画像診断が必要とされるのは,血液生化学的検査や臨床症状より,その機能異常が想定された場合である.しかし近年になり,甲状腺を始めとする前頸部の超音波断層検査が汎用されるようになると,その際に偶発的に副甲状腺腫,特に副甲状腺嚢胞が発見されることが散見されるようになった.
 副甲状腺の画像診断は,病態を大きく過形成と腺腫・癌腫に分けて,その進め方を考えていく必要がある.すなわち,一腺のみの腫大か,複数腺の腫大の可能性を前提にする必要があるか否かが重要となる.従来は,一次性副甲状腺機能充進症の病態を念頭に置いて検討されることが多かった.実際,一次性副甲状腺機能亢進症の有病率は自動分析装置の普及に伴い血清Caのスクリーニングが一般化するにつれて,従来想定されていたよりも高頻度であることが明らかとなった.その頻度は欧米では人口1,000人当たり1人ないし2人とされており,高Ca血症の原因としては最も多い1〜3).これらは副甲状腺腺腫によるものが大部分で,癌腫や多腺性内分泌腫瘍(MEN)に伴う過形成はそれぞれ約10%にすぎない.

乳房

著者: 東野英利子

ページ範囲:P.54 - P.57

検査の手順
 1.装置の設定
 1)プローブ
 乳房のような体表臓器を検査するには高周波数のプローブを用いることが必須である.アニュラアレイ型プローブの場合には,7.5MHzでも容認できるが,それ以外では10MHz以上のものを用いる.
 2)フォーカス 検査の際に重要なことは乳腺の深さにフォーカスを合わせることである.

三次元乳腺腫瘍自動診断(スクリーニング)

著者: 尾本きよか ,   伊東紘一

ページ範囲:P.58 - P.62

 乳癌は従来,欧米に多いとされていたが,わが国の罹患率はここ10年間で約1.5倍と着実に増加している.早期発見のためにスクリーニング検査としての集団検診は重要であるが,視診触診法による従来の方法だけでは,小さな乳癌を見逃す危険があり,最近では超音波検査などが併用されるようになってきた.しかし,これを対象者全員に施行すると収集する画像データは膨大になり,また判読する医師の負担も大きくなることが予想される.
 そこでこの問題を解決すべくコンピュータを用いた支援診断(Computer-aided diagnosis:CAD)の研究が盛んになってきている.CADを用いた自動診断に関して,長澤ら1)の二次元(Bモード)画像を用いた報告があるが,当教室では三次元画像を利用した乳腺腫瘍の抽出と良悪性判別の研究2〜4)を行っている.これは,超音波三次元画像を用いて乳癌を自動的に診断するシステム(automated breast cancer diagnosis system:ABCD system)の構築を目指したものであり,その概要について紹介する(図1).

胸部・呼吸器

著者: 檀原高

ページ範囲:P.64 - P.68

呼吸器領域における超音波診断の特性と検査手順
 超音波診断装置の基本原理はプローブ(探触子)から発生した高周波の反射波を電気的に画像化したものである.超音波の特性として理解しておかなければならないことは,骨組織に当たると超音波は吸収され,また空気に当たると超音波はすべて反射してしまうことである.したがって,呼吸器領域の超音波診断法を実施する際には,骨性胸郭と含気性肺の存在が超音波の伝達に妨げとなる.しかし,肺内であっても含気のない構造が胸膜に接して存在すれば,超音波診断法での画像化が期待される(図1).つまり,体表からの超音波診断法では,目的とする構造と超音波プローブの間に骨組織や空気が存在しないどうかを常に念頭に置く必要がある(図1,2).
 図3は,呼吸器領域の超音波診断に用いられる主な超音波像の体表断面を示したものである.体表からの超音波診断法のアプローチの基本は,骨組織を避けて良質の画像を入手することが最も重要である.

末梢血管

著者: 平井都始子 ,   大石元 ,   吉川公彦 ,   打田日出夫

ページ範囲:P.69 - P.74

 超音波検査は形態情報だけでなく,非侵襲的で手軽に血流情報が得られるため末梢血管への応用も普及しつつある.四肢動脈では狭窄性病変・動脈瘤・内膜剥離の診断や治療後の効果判定,経過観察に施行され,下肢静脈では主に深部静脈血栓症の診断に施行されている.頸動脈では,動脈硬化の程度の評価や狭窄性病変の診断などを目的として施行されている.

運動器官(筋肉・関節・神経など)

著者: 中島幹雄 ,   瀬本喜啓

ページ範囲:P.76 - P.79

 整形外科が取り扱う運動器疾患のうち,骨以外の軟部組織に主病変がある場合には,単純X線像で病変を捉えることは困難である.近年,超音波検査と磁気共鳴画像(MRI)の発達により,軟部組織の病変を画像として捉えられるようになり,軟部組織病変の診断能力は飛躍的に向上した.なかでも超音波検査は,外来に機器を置いておくだけで日常診療中に手軽に行えるという簡便性から,急速に普及してきた補助診断法である.超音波診断の整形外科領域における応用については,皮下の軟部腫瘍の局在診断や腱・腱板断裂などの診断が主であるが,軟骨の多い乳幼児の先天性股関節脱臼に対するスクリーニング検査や,頸椎症の術中の脊髄超音波画像所見を予後判定に役立てる試みもなされてきている.ここでは日常診療で遭遇することの多い軟部腫瘍,関節疾患,腱・腱板断裂,絞扼性神経障害の診断について述べる.

頭部

著者: 市橋光

ページ範囲:P.80 - P.83

 超音波検査の特徴として,簡便,非侵襲的,リアルタイム性が挙げられる.新生児や乳児では,検査のための移動や鎮静が児の不利益になることもしばしばあり,ベッドサイドで覚醒状態のまま行える超音波検査は,非常に有用である.

眼科

著者: 林英之

ページ範囲:P.84 - P.88

 眼科において臨床に応用されているエコー法には,①Aモード眼軸長測定,②高周波Bモードエコー法,③超高周波Bモードエコー法(超音波生体顕微鏡),④Bモードカラードプラ法がある.これらはそれぞれ目的や検査法,装置が異なっている.これらのうち,一般に普及しているのはAモード眼軸長測定と高周波接触式Bモード法である.したがって本稿においてはこの二つについてそれぞれ述べる.

皮膚科

著者: 中川秀己

ページ範囲:P.89 - P.92

 近年,主に皮膚科領域では高い分解能を持つ15〜60MHzの高周波超音波診断装置を用い,種々の皮膚疾患の計測,解析が試みられてきている.皮膚科領域において,体表より数mm〜20mm前後にある病変を詳細に観察するためには高周波超音波診断装置が特に有用と考えられ,臨床的には,①皮膚腫瘍の全体像の把握および鑑別,②皮膚腫瘍,特に基底細胞癌,悪性黒色腫の術前検査(腫瘍の厚さ,横への広がりの測定),③悪性腫瘍のリンパ節転移の判定,④化学療法薬,放射線治療などの効果判定などが考えられる1).それ以外の応用としては接触皮膚炎におけるパッチテストでの判定の補助2),尋常性乾癬に対する外用治療薬の効果判定3),ステロイド外用剤の皮膚萎縮作用の判定4),強皮症における皮膚厚の測定などがある.

エコー法の実践—心エコー法

心エコー検査の進めかた

著者: 羽田勝征

ページ範囲:P.94 - P.99

 心エコー検査は特異性の高い検査で,心臓,大血管の形態と動態,および異常構造物(腫瘍,血栓,心膜液貯留など)の観察により,心疾患の診断と機能評価のために行うものである.しかし,症状がなく,理学所見が正常で胸部X線写真と心電図に異常がなければ発見される病気は皆無に近く,心エコー検査は効率の悪い検査となる.心臓悪性腫瘍の検索には心エコー検査は不可欠であるが,本疾患はきわめて稀である.したがって,本法はドックや検診でのルチン検査では行われず,通常は以下の所見か症状を認めたときに適応となるのみである.しかし,正常であることを確認しておくことは,その後の診療においてきわめて大切な場合がある.
 最近はコンピュータ端末から心エコー検査が依頼されることが多くなった.この場合,依頼医の目的が検査者に伝わりにくいという欠点がある.依頼医の目的が何か,何を否定したいのかがわかるほうが,能率的・効率的検査となり,得られる情報も多く,心エコー所見の読みも深まるものである.何の疾患がどのくらいの可能性があるかを考えつつ依頼することは心エコー検査上達のためのコツである.

経胸壁心エコー法

著者: 石光敏行

ページ範囲:P.100 - P.103

適応
 超音波検査法は,投入した超音波パルスの反射信号および周波数変調を利用している.規定出力の範囲で使用する限り,超音波は人体に対して無害と考えられる.経胸壁心エコー検査は胸壁およびその周辺の音響窓に接触させたプローブ(探触子)より心臓に向けて超音波ビームを投入することで必要な画像を得る.このため,投入部分に外傷などがない限り安全面での禁忌はない.以上の理由から,本法の適応は心エコー検査の必要がある症例すべてということになる.
 心エコー検査が診断と経過観察に必要な病態を表1に示す.

経食道心エコー法

著者: 平田久美子 ,   吉川純一

ページ範囲:P.104 - P.107

 経胸壁心エコー法は,非侵襲的で繰り返し施行できるという長所があるものの,超音波の減衰や解剖学的な位置関係から肺静脈や左心耳などの明瞭な描出は困難である.一方,経食道心エコー法(transesophageal echocardiogram:TEE)は食道内から心臓,大血管の背面にアプローチするため,超音波の通過を妨げるものがほとんど介在しない.このため,高周波のプローブ(探触子)で左房,左心耳,肺静脈,心房中隔,大動脈の明瞭な画像を得ることが可能であり,それらを詳細に観察することができる.さらに,形態学的な診断のみならずドプラ法を用いることによって,血行動態の評価も同時に行うことも可能である.

血管内エコー法

著者: 知久正明 ,   本江純子

ページ範囲:P.108 - P.112

 従来,冠動脈造影法(coronary arterio gra—phy:CAG)は,虚血性心疾患での冠動脈硬化病変の評価方法における“gold standard”として中心的役割を担ってきた.しかし,CAGは血管内腔のシルエットのみを描出するため,実際の血管壁についての評価には限界がある.
 一方,血管内エコー法(intravascular ultra—sound:IVUS)は,先端に高周波超音波トランスデューサを有するカテーテルを血管内腔に挿入して観察することにより,血管壁自体の構造や動脈硬化性病変の形態・性状まで評価することが可能な観血的診断法である.今回は血管内エコー法について概説する.

三次元心エコー図法(3-Dimensional Echocardiography)

著者: 太田剛弘

ページ範囲:P.113 - P.121

三次元心エコー図法の目的と道程
 日常臨床に不可欠な非侵襲的超音波診断法としてドプラ法,カラードプラ法を備えたリアルタイム二次元断層心エコー図法は,ティシュハーモニックイメージングなどの装備により画質も改善され,デジタル信号処理技術を取り入れ目覚ましく進歩している.三次元心エコー図法の目的は,心血管系の解剖学的構造を,直接立体的に表示することである.断層心エコー図法で心臓の立体構造を把握するには,検者が“頭の中”で得られた断面像を三次元に再構築(mental reconstruction)する必要があり熟練を要する.不規則な心臓の形状把握や先天性異常の理解,より正確な容積,心機能計算に三次元心エコー図法は有望である.
 超音波法による三次元画像研究は1970年代から報告された1,2).再構築三次元法は拍動心の断層像を各時相ごとに取り込みコンピュータで再構成するため多くの制約があり,臨床応用は必ずしも一般的でない.

コントラスト心エコー法

著者: 石蔵文信 ,   別府慎太郎

ページ範囲:P.122 - P.126

 コントラスト心エコー法は,現在大きく三通りの方法に分けられ,それぞれ適応や判定が異なる.
 用手撹拌のバブルを用いた右心系の造影で,先天性心疾患などの短絡を可視化したり,三尖弁閉鎖不全から右室圧を推定するためのドプラ検査の増強に用いられた(図1)1)が,簡便であるがドプラ検査の発達とともに用いられることは少なくなった.
 今回,解説するのはカテーテルにて直接冠動脈に注入する方法と経静脈的心筋コントラストエコー法である.

心機能の評価法

著者: 赤石誠

ページ範囲:P.128 - P.133

 心機能は,左室機能と血行動態という2つの側面から評価される.つまり,左室心筋の収縮機能の評価と心拍出量と心血管内圧の評価である.また,広い意味で言えば,心臓の機能ということで,弁機能,左右短絡疾患の短絡率なども評価の対象になる.

拡張機能の捉えかた

著者: 尾辻豊 ,   高崎州亜 ,   鄭忠和

ページ範囲:P.134 - P.139

 心臓の拡張機能は,心室の圧・容積曲線を描くことにより評価できる1,2).しかし,日常の臨床例において圧・容積曲線を求めることは困難であり,実際には心エコードプラ法を用いた拡張機能の評価が中心となる.
 心エコードプラ法を用いた拡張機能の評価には,いろいろな方法があるが,特に心臓内の血流速度波形からの評価が多い.心臓内においても,圧較差(mmHg)=4×[血流速度(m/sec)]2の関係(ベルヌーイの簡易式)が成立している.心臓内血流速度は圧較差を反映し,断面積変化の少ない所では通過血流量をも反映するが3,4),圧そのものとは直接の関係はない.したがって,心臓の拡張機能(左室充満圧・左室弛緩能・左室コンプライアンスなど)を心臓内の相対的な圧較差から推定するという作業が,心エコードプラ法を用いた拡張機能の評価となるので,そこには有用性と限界があることを理解し,各症例の病態評価に役立てる必要がある.

エコー法の実践—心エコー法(冠動脈疾患)

虚血性心疾患の診断と評価法—安静時心エコー法

著者: 原田智浩 ,   大滝英二

ページ範囲:P.140 - P.144

 日常診療で虚血性心疾患が疑われる患者に対し心エコーを行う場合は,①自覚症状の原因をスクリーニング,②異常Q波やST変化などの心電図異常の原因精査,などがある.さらに,心筋虚血では拡張(弛緩)障害や壁運動異常(収縮障害)が,心電図変化,血清学的異常よりも早期に出現するという事実から,胸部症状のある患者に対し,まず施行することにより虚血の定性的評価に利用している.また重症度や合併症の有無といった評価にも用いることができるので,CCU滞在中には少なくとも1日1回は心エコーを撮るようにすべきである.

虚血性心疾患の診断と評価法—ストレス心エコー法

著者: 八杉直子 ,   小柳左門

ページ範囲:P.146 - P.150

 心臓は生体の変化に応じて様々に適応し活動しているが,心疾患においては,代償機能が低下し,変化に十分適応できない.このような場合,ストレスを与えることにより,その病態を診断する方法が種々の循環機能検査で行われるが,とりわけ虚血性心疾患の診断においては,負荷法は重要な位置を占めている.ストレス心エコー法の目的は,安静時の心エコー画像では診断しえない虚血性心疾患に対し,ストレスを加えて心筋虚血を起こさせることで,病態を明らかにすることである.

心筋梗塞の合併症

著者: 原田昌彦 ,   平井寛則

ページ範囲:P.151 - P.155

 心筋梗塞の合併症として,急性期では左室自由壁破裂,心室中隔穿孔,乳頭筋断裂,右室梗塞,心膜液貯留など,また,亜急性期〜慢性期では仮性心室瘤,真性心室瘤,左室内血栓,心膜炎などがあり,その診断に心エコー図が有用である.

川崎病

著者: 金丸浩 ,   鮎沢衛 ,   能登信孝 ,   原田研介

ページ範囲:P.156 - P.160

 川崎病は全身の血管炎に伴う種々の症状を呈し,しばしば冠動脈瘤を合併する原因不明の疾患である.主に4歳以下の乳幼児に発症するが,年長児にもみられ,成人例の報告もある.わが国では年間約6,000人以上が新しく発病しており,年齢別人口10万人に対する罹患率は年々増加し,現在では100を超えている1).厚生省川崎病研究班作成の「川崎病診断の手引き(改訂第4版)」(表1)に基づいて診断されており,主要症状のうち5症状以上を認めた場合に「確実例」として診断される.治療は,ガンマグロブリンの静脈内投与とアスピリンの内服が行われる.
 20%前後に冠動脈瘤や拡大性病変を合併するうえに,0.08%程度に死亡例があり,その主な原因は大きな冠動脈瘤に形成された血栓による心筋梗塞であり,突然死が多い.また死亡に至らなくても冠動脈病変を後遺症として,小児期から虚血性心疾患として管理される児もいる.本疾患が疑われる例で主要症状が4症状のみの場合でも,心エコー検査によって冠動脈瘤を伴えば「不全型」として診断される.これらの理由で本疾患では小児に対して繰り返し心合併症を検索する必要があり,非侵襲的に心臓,特に冠動脈を描出できる心エコー検査は不可欠な検査法である.

エコー法の実践—心エコー法(弁膜症)

僧帽弁と大動脈弁疾患

著者: 高元俊彦

ページ範囲:P.162 - P.168

1 僧帽弁疾患
 僧帽弁疾患には,僧帽弁狭窄(mitral stenosis:MS)と僧帽弁閉鎖不全(mitral regurgitation:MR)が含まれる.
 1.検査の手順
 僧帽弁疾患の精査は,聴診での雑音聴取,胸部X線異常などに際して行われるが,発症原因および病態が多彩であるため,検査法の習熟が必要となる.

三尖弁と肺動脈弁疾患

著者: 林輝美

ページ範囲:P.169 - P.173

三尖弁疾患
 1.三尖弁疾患の検査の手順
 三尖弁は四腔像(胸骨傍,心尖部アプローチとも)で最もよく描出される.この像では前尖と中隔尖が見える.さらに大血管レベル短軸像で主に中隔尖が描出される.三尖弁の後尖は通常描出されにくい.三尖弁疾患では右心の圧負荷や容量負荷を伴うことが多いため,ルチン検査では,2Dエコー図で左室長軸像,短軸像を観察し,右室の大きさ,心室中隔運動などを評価した後に三尖弁を記録観察する.弁運動について拡張期半閉鎖速度,心房収縮期波の大きさなどはMモードエコー図により計測する.カラードプラ法で弁逆流を描出,中等度以上の弁逆流が観察されれば連続波ドプラ法でピーク逆流血流速度から右室収縮期圧を計測する.

感染性心内膜炎

著者: 宇野漢成 ,   竹中克

ページ範囲:P.174 - P.179

IE(infective endocarditis)の診断
 1.IEの成因
 原因不明の場合もあるが,短絡や弁逆流などで生じた速い血流によって心内膜が傷つき,そこに血小板の凝集やフィブリン沈着が起こる.これを無菌性血栓性心内膜炎(non-bacterial throm—botic endocarditis:NBTE)という.この状態で菌血症となると,NBTE部位に血中の細菌が付着し,増殖することでIEとなる.

人工弁置換術後

著者: 中谷敏

ページ範囲:P.180 - P.184

人工弁の種類(図1)
 心エコーで人工弁を観察する際には,現在どのような人工弁が使われているのかを知っておく必要がある.人工弁は大きく生体弁と機械弁に分けることができる.前者にはブタの大動脈弁を処理したもの(Hancock弁)やウシの心膜を加工して作ったもの(Carpentier-Edwards心膜弁)などがあり,後者には傾斜型のディスクが一枚である一葉弁(Medtronic-Hall弁,Omnicarbon弁,Björk—Shiley弁など)と二枚である二葉弁(CarboMedics弁,St.Jude Medical弁など)がある.最近,生体弁の一型としてステントのないステントレス弁(Toronto弁,Freestyle弁)やまたヒト大動脈弁であるホモグラフトが用いられる機会が増えてきた.

エコー法の実践—心エコー法(心筋症)

肥大型心筋症

著者: 福田信夫

ページ範囲:P.185 - P.189

検査の手順
 本症における心エコー検査の手順として,まず断層法で,心筋肥大の有無,程度と分布,左室内腔の形態と動態,左室壁運動および心筋内エコー性状を評価する.次に,Mモード法で心筋壁厚と内腔径を計測するとともに,僧帽弁と大動脈弁の運動様式を観察する.さらに,カラードプラ法を用いて左室内モザイク血流の部位と広がりおよび僧帽弁逆流血流の広がりを観察し,本法をガイド下にカラーMモード法で両血流の時相分析を,連続波ドプラ法で両血流の最大流速測定を行う.また,パルスドプラ法で僧帽弁口部および右肺静脈開口部での血流速波形を記録する.
 断層法は,まず傍胸骨アプローチで左室長軸および短軸断層図を記録する.この際,探触子(プローブ)を通常の位置より下げて心尖部を含む長軸像を記録すること(図1),および腱索,乳頭筋,心尖部の各レベルで短軸像を記録することが大切である.次に,心尖部アプローチによる左室長軸,四腔および二腔の各断層像を描出し,左右両心室の立体的な構造や左室内血流動態を評価する.

拡張型心筋症と心筋炎

著者: 千田彰一 ,   近藤功 ,   水重克文

ページ範囲:P.190 - P.196

拡張型心筋症
 拡張型心筋症は,心室の拡大および収縮不全を呈する原因不明の疾患である.肥大型心筋症が進行して,やがて拡張型心筋症類似の病態を呈するに至る拡張相肥大型心筋症も,しばしば認められる.近年,動物実験による分子生物学的研究が進み,拡張型心筋症の遺伝子異常が報告されてきている.また,治療に関しても,以前までは左室収縮能が低下した心不全病態には禁忌であったβ遮断薬が,今では拡張型心筋症の予後を著しく改善することが証明され,病態の解明とともに治療法も大きく変わってきている.本稿では,拡張型心筋症の心エコー図について,最近のEBMにちなんだ動向を含めて概説する.

エコー法の実践—心エコー法(先天性心疾患)

小児診断の進めかた

著者: 里見元義

ページ範囲:P.197 - P.202

 先天性心疾患の心エコー図診断は,所見のある限られた断面のみを観察して終了するのでは不十分である.心臓の構築自体の異常がある場合や,複数の疾患が組み合わされている場合も往々あるからである.いつも決められた一定の断面を一定の順序で必ず観察するようにすると,ただ漫然と長時間検査することなく能率的で見落としの少ない検査ができる1)

成人診断のポイント

著者: 中村憲司

ページ範囲:P.203 - P.206

 注意すべき成人の先天性心疾患には,左—右短絡疾患,弁膜疾患,修正型大血管転換などがみられ,超音波断層法とドプラ法の併用により,外来でも短絡量の算出,肺動脈圧の推定,狭窄弁口面積,弁口圧較差,弁逆流量の算出など定量的診断が可能になりつつある.

エコー法の実践—心エコー法(その他の心疾患)

心膜疾患

著者: 山田博胤 ,   大木崇

ページ範囲:P.208 - P.212

心膜液貯留(pericardial effusion)
 1.検査の手順
 心膜液貯留の診断は,心外膜(epicardium)と心嚢膜(pericardium)の間にecho-free spaceを検出することであり,その有無および程度についての評価は,心エコー法の最も得意とする分野である.本法にてecho-free spaceを認めた場合は,①液貯留の程度と分布,②血行動態への影響,③原因疾患の把握,に注意しながら検査を進める.

胸部大動脈瘤と解離

著者: 宮入剛 ,   髙本眞一

ページ範囲:P.213 - P.215

 社会の高齢化による母集団の増加と手術成績の向上に伴う対象年齢の引き上げにより,大動脈疾患の手術件数は増加している.近年ステントグラフトの登場などにより治療の選択肢が増えたが,それに伴い画像診断に要求される内容もより高度になった.すなわち従来からの存在診断に加えて,瘤周辺の大動脈の壁の性状,屈曲の程度,血流の状態などのより詳細な情報が術前・術中に要求されるようになった.その中で,心エコー法はベッドサイドで非侵襲的に簡便かつ繰り返し施行できる画像診断法として,必要欠くべからざる位置を確保している.

腫瘍と血栓

著者: 渡部徹也 ,   永田正毅

ページ範囲:P.216 - P.219

検査の手順
 塞栓症状を認めた場合に心原性を疑い,心エコー検査を行うことはあるが,心腔内に異常エコーを認めていても,無症状であることも多く,ルチンの検査にて偶然に発見されることも多い.異常エコーを認めた場合,基礎疾患(弁膜症,心筋梗塞,心筋症,臨床所見異常)の有無の確認が重要である.血栓の発生しやすい基礎疾患には,僧帽弁狭窄症,心房細動,心筋梗塞,拡張型心筋症,血液凝固異常などがあり,心腔内腫瘍との鑑別の手掛かりとなる.心腔内に異常エコーを認めた場合,主に腫瘍(良性・悪性)と血栓との鑑別が必要になってくるが,異常エコーと間違いやすい正常構造物もあり,それらの鑑別が必要である.腫瘍と紛らわしい正常構造物として,以下のものがある.
(1)eustachian valve:右房内で下大静脈との移行部にみられるvalve状のもの.

肺性心と肺血栓塞栓症

著者: 三神大世 ,   西原馨子 ,   北畠顕

ページ範囲:P.220 - P.224

 肺性心は,肺循環系を含む肺の病変に基づき肺高血圧症を生じ,右心負荷や右心不全をきたす病態の総称である.肺気腫や肺線維症などの肺実質性病変もその原因となるが,肺高血圧症が高度になることは少ない.本症の診断における心エコー法の役割が,まず肺高血圧症の診断と重症度評価にあり,次いで機能的三尖弁逆流などその二次的な病変の把握にあることを考えると,肺実質疾患での本法の役割は必ずしも大きいとはいえない.
 一方,肺血管疾患では,しばしば高度の肺高血圧症をきたすが,その診断には心エコー法がきわめて有用である.肺血管病変として,肺血栓塞栓症,原発性肺高血圧症,および混合性結合組織病(MCTD:mixed connective tissue disease)などの膠原病に続発する肺高血圧症などが挙げられる.肺塞栓症は見逃しやすい重篤な急性疾患の代表として,また原発性肺高血圧症はより慢性の経過をとるがきわめて予後不良な疾患として重要である.また,膠原病の予後を規定する因子として,肺高血圧症は重大な合併症といえる.

エコー法の実践—腹部エコー法

症候からの腹部エコー法の選択・手順

著者: 松田康雄

ページ範囲:P.226 - P.230

 腹部領域疾患の症候としては,腹痛,腹部腫瘤,黄疸,消化管出血,下痢・便秘,腹部膨満などがある.これらの症候に対し,いかに有効にエコー法を用い原因疾患を診断するかは,腹部エコー法の基本である.特に急性腹症においては,診断および治療に緊急を要することが多く,手技的に簡便なエコー診断は不可欠な手法である.しかし,多くの早期悪性腫瘍は無症候であり,これらの重要な疾患の診断においても腹部エコー法は多大な役割を果たすことを忘れてはならない.

限局性肝疾患

著者: 佐藤美知子 ,   石田秀明 ,   渡邊純夫

ページ範囲:P.231 - P.233

 肝臓の限局性疾患は,主に悪性疾患と良性疾患に大別可能であるが,本稿では日常臨床で遭遇する機会が多い疾患に限定し,その超音波像(ultrasonography:US)を中心に述べる.

びまん性肝疾患

著者: 黒肱敏彦 ,   平田經雄 ,   古賀伸彦

ページ範囲:P.234 - P.238

 びまん性肝疾患に対する超音波検査は,血液生化学検査などと同様に肝のびまん性疾患の診断においても重要な役割を担っている.
 本稿では特に診断の手順を始めとして,診断のポイントについて新しい手法も含めて言及してみたい.

胆道疾患

著者: 平田健一郎

ページ範囲:P.240 - P.245

胆嚢
 1.検査の基本と正常像
 基本的には朝食抜きで午前中に検査を施行するが,朝食を軽く摂取後,昼食抜きで午後に行ってもよい.吸気位で息止めをしてもらい,仰臥位,右季肋下縦断走査で胆嚢の長軸断面を描出する.画面を見ながら頸部から底部まで全体像が描出されるようにプローブを走査し,最大断面を記録する.消化管のガスなどで十分に観察されない場合は,呼気位で息止めしてもらい右肋間走査を行うか,左側臥位に体位変換し吸気位で息止めをしてもらい,右季肋下縦断〜斜め走査を行う.胆石の移動性を観察する場合には,半座位,腹臥位などの体位変換が役立つ.病変の誤認や見落とし防止のために,どの走査法でも必ず長軸方向と短軸方向の2方向から観察を行う.
 胆嚢内腔に出現するアーチファクトには,多重エコー,サイドローブ,近接臓器の重なり像などがある.腹壁の多重エコーは胆嚢底部にしばしば出現するが,呼吸による変化がないことで鑑別しうる.底部の観察には腹壁の多重エコーの影響を避ける必要があり,体位変換や呼吸性移動を利用する.サイドローブは胆嚢の屈曲部から連続する像として出現することが多い.体位や走査方向を変えることにより,その消長を確認する.近接臓器(主に十二指腸)の重なり像は,走査面に垂直な面の超音波ビームの広がりによるアーチファクトで,走査方向を変えることにより鑑別しうる.

膵疾患

著者: 武井宏一 ,   羽木裕雄 ,   跡見裕

ページ範囲:P.246 - P.250

検査の手順
 膵臓は後腹膜腔に存在するために消化管のガスによる影響を受けやすく,また時に周囲の脂肪織とのエコーレベルの差が小さく,臓器の同定すら困難なことがある.被検者を背臥位または坐位として,深呼吸時に心窩部横走査で観察すると,肝臓がacoustic windowとなり膵臓が描出されやすくなる.また,このときにプローブ(探触子)で腹壁をやや強く圧迫すると,消化管のガスが排除され,より描出されやすくなる.膵臓の同定には周囲の脈管系を指標とすることが有用であり,解剖学的位置関係をよく理解することが重要である.膵臓は心窩部で右下から左上へ斜めに存在し,やせ型の人ほど傾斜が急なことが多い.頭部は上腸間膜静脈,門脈の左側縁と十二指腸壁内側縁で囲まれた部分で頸部および鈎状突起を含んでいる.頭部を除いた尾側膵を2等分し,その十二指腸側を体部,脾側を尾部とする.さらに膵臓各部は十二指腸Vater乳頭部を起点として,上下に2等分した線により上・下の領域に分けられ,また各部を前後に2等分した線により前・後の領域に分けられる.なお鈎状突起は後部に含まれる.

脾疾患

著者: 川井夫規子

ページ範囲:P.252 - P.257

 脾における超音波検査の意義は,第一には肝疾患や血液疾患などにおける脾腫の有無およびその程度の把握にあると思われる.脾限局性病変は稀であり,谷口らによれば腹部超音波検査の0.13%の頻度である.しかし,これらの中にはその後の治療が大きく変わる重要な疾患が含まれており,脾病変を呈する各疾患およびその超音波所見について知識を得ておくことは非常に大切である.

消化管疾患

著者: 藤井康友 ,   畠二郎

ページ範囲:P.258 - P.261

 体外式超音波(ultrasonography:US)は,消化管粘膜の微細な形態を把握する手段としては無力に等しいものの,消化管壁の肥厚や内腔の拡張を呈する病態においては,断層像としてその形態的異常の描出が可能なmodalityである.幸いなことに,炎症や腫瘍性変化を有する消化管は内腔のガスが排除され,USにとって好条件となることが多い.このような病態を原因とする消化器症状を有する症例では,USによる実質臓器のみの観察では症状に対するアプローチとしては不十分であり,消化管病変を念頭に置いた観察が不可欠である1).紙幅の都合上,各疾患の詳細なUS所見については成書に譲ることとし,本稿では代表的な疾患を提示しながら無処置での消化管疾患のUSスクリーニング法について述べる.

腹部大動脈・静脈疾患

著者: 松本廣嗣

ページ範囲:P.262 - P.265

 一般診療に携わる医師が腹部エコー検査で大動脈や下大静脈疾患に遭遇する機会は比較的多い.大動脈や下大静脈は,走行が固定している管状構造なので検査自体はやさしい.

小児腹部

著者: 中村みちる

ページ範囲:P.266 - P.269

検査の手順
 検査の手順自体は,原則として成人の腹部と変わりない.小児は脂肪や筋肉量が少なく,大人に比べ良好な画像が得られる条件を有している.体が小さいため一つの視野に腹部横断像の大部分が入り,CTさながらの全体像を得ることもできる.
 しかしながら,啼泣によりガスが腸管に入り込むと正中部の観察が不能になり,またおとなしくしていられない子どもであると観察が不十分となり,大切な所見を見落としてしまうことがある.子どもがリラックスできるように話しかけたり,時にはビデオを見せたり,ミルクを飲ませ静かにさせるよう試みるが,それでも暴れるときは睡眠薬の投与も適宜考慮する.筆者らは超音波室に絵本,おもちゃ,あめなどを用意しており,また必要によりトリクロリール®(8mg/kg)またはエスクレR坐薬(30〜50mg/kg)を用いている.

腹部救急エコー法

著者: 安田是和

ページ範囲:P.270 - P.274

検査の手順
 超音波検査(ultrasonography:US)は,救急の現場において今や必要不可欠の検査法である.利点は数多くあるが,基本はあくまでも超音波解剖と疾患の理解であることはいうまでもない.現在,USの主体は主にBモード画像であるが,超音波ドプラ法やカラーフローマッピングなど新しい画像から,形態診断のみならず血流などの情報も得られるようになってきており,救急の現場でもこれらを有効に活用していくことが要求されている.さらにUSは,診断に引き続き主に穿刺などの技術を安全に行い診断をより確かなものとしたり,ドレナージなど治療にも応用され,さらに緊急手術の際には肝外傷をはじめとする手術に際して術中超音波検査が頻繁に使用され,救急疾患の治療体系の中で,本法は幅広い位置を占めるようになってきている.
 本法は,患者に対して侵襲がほとんどなく,繰り返し行うことが可能で,かつ得られる情報量は非常に多く,すべての救急疾患に適応があるといっても過言ではない.ただし救急の現場においては,絶食などの前処置が行われていないことがほとんどであり,患者の状態によっては体位変換や検査時間などに制約を受けることも多いので診断には慎重を期し,CTなどほかの画像診断の情報も十分参考にし,早急かつ正確に診断することが重要である.

内視鏡エコー法

著者: 杉山政則 ,   阿部展次 ,   跡見裕

ページ範囲:P.276 - P.281

 内視鏡エコー法は,内視鏡を用いて超音波プローブを目的部位まで誘導し走査して対象臓器の超音波断層像を得る検査法である.対象臓器の近くで走査できるため,高周波超音波プローブの使用が可能となり,消化管壁や消化管近傍臓器の高分解能の超音波像が得られる.

エコーガイド下穿刺診断法

著者: 椎名秀一朗 ,   寺谷卓馬 ,   浜村啓介

ページ範囲:P.282 - P.285

 開腹手術をしなくとも,エコーガイド下に穿刺を行うことにより組織標本が得られるようになったのは大きな進歩である.画像診断が発達した現在でも,最終的な診断根拠として病理組織診断が求められることが多い.画像所見が非典型的な症例では病理組織診断は必須である.イメージガイド下の穿刺法としては,ほかにCTガイドやMRIガイドを用いる方法もあるが,現時点ではリアルタイム性などの見地から,大部分の場合はエコーガイド下穿刺が最も優れていると思われる.

腹部コントラストエコー法

著者: 工藤正俊

ページ範囲:P.286 - P.290

 コントラストエコー法の種類
 コントラストエコー法には大きく分けて動注法と静注法がある(表1).動注法としてはCO2マイクロバブル(微小気泡)がコントラスト剤として使われるが,静注法においては現在唯一の国内の市販薬であるレボビスト®300mg/mlを,5mlないし7mlをボーラスもしくはインフユージョンにて用いる.静注法には,基本波のカラードプラもしくはパワードプラを用いる造影ドプラ法と,ハーモニック法を応用した造影ハーモニック法の2種類がある.さらにハーモニック法にもハーモニック・カラー/パワードプラ法とハーモニックBモード法の2種類の方法がある.これらは現時点では装置によって性能が異なるため,目的に応じて使い分けがなされているのが現状である.

エコー法の実践—泌尿器領域エコー法

腎臓の限局性疾患

著者: 斉藤雅人

ページ範囲:P.292 - P.296

検査の手順
1.超音波診断装置
 最近の超音波診断装置はどれも性能が良いので,どの機械を使っても大差はない.腎の超音波検査法には,振動子の発振周波数は5MHzくらいが適当であろう.プローブはコンベックススキャナがよい.カラードプラ法(パワードプラ法を含む),ハーモニックエコー法,三次元画像作成法といった機能を備えた超音波診断装置が出ているが,腎の超音波検査法に必須というわけではない.ただそれらがあると,少しだけ便利で診断精度が向上する.また最近は超音波造影剤が市販されており,今後の新しい展開が期待されている.現状における一般の臨床では,通常の白黒の超音波断層像(以下超音波断層像とだけ記載する)があれば十分であるが,カラードプラ法の有用性もかなりあるので,できればカラードプラ法も可能な診断装置がほしいところである.

腎臓のびまん性疾患

著者: 寺沢良夫

ページ範囲:P.298 - P.301

検査の手順
 腎の超音波検査には,腹臥位による背部からの走査(泌尿器科など)と背臥位の経腹的走査(内科など)がある.筆者らは腎の検査でも,胆・肝・膵・腹部大動脈,膀胱,前立腺,卵巣も同時に走査しているので,背臥位での各臓器の検査後,左右を挙上しての背部からの腎走査も加えている.なぜならば,びまん性腎疾患の検査中,無症状の悪性疾患(腎癌,腎盂癌,膀胱癌,肝癌,膵癌,胆管癌など)が検出されることを頻繁に経験しているからである1,2).また,蓄尿(約150ml以上)していることが膀胱の検査にとって望ましい.
 腎の検査は次の手順で行っている.

副腎・後腹膜疾患

著者: 平田經雄 ,   上川秀樹 ,   倉重康彦

ページ範囲:P.302 - P.306

検査の手順
1.解剖学的特徴
 後腹膜腔は,前腹壁からの最深部に位置する広範囲な空間で,膵臓,腎臓,副腎,泌尿生殖器および消化管の一部,腹部大動・静脈およびリンパ系などの多彩な臓器と脈管などが存在する.しかしながら通常はそれらを除いて後腹膜腔とすることが多く,後腹膜腔病変の判読は,前記諸臓器・管状構造物疾患の除外から始まる.
 両側副腎は,下部胸郭に囲まれる体幹中央の深部に存在する三角形の小臓器で,周囲を含気性の肺や消化管に囲まれるため超音波が透過しにくく,描出困難なことがある.新生児で腎サイズのほぼ1/3,5歳で3cm,成人で4cmくらいに達し比較的長いにもかかわらず,幅が乳幼児では1mm,成人で3〜6mm程度と非常に薄いこと,きわめて不整な形状をなすことなども超音波検査にとっては悪条件となる.

尿管疾患

著者: 棚橋善克

ページ範囲:P.308 - P.311

 尿管の超音波検査は,体外(体表)からの走査と,極細径プローブを用いた管腔内走査(尿管内エコー法)とが行われている.体外からの超音波では尿管の全長にわたって描出することは難しいが、尿管内エコー法では腎盂尿管の全長にわたってより精細な画像を描出することが可能である.

膀胱疾患

著者: 棚橋善克

ページ範囲:P.312 - P.316

膀胱の解剖
 膀胱は体幹の最下部に存在し,一部は恥骨の後方に位置している.膀胱のうち,左右の尿管口と内尿道口を3つの頂点とする三角部は,壁が厚く,しかも周囲に固定されていて動かない(変形しない).それに対し三角部以外の部分は,尿の貯留状況によりその厚さが変化する.また,膀胱が空虚のときは,前面を腸が覆っており,超音波ビームの通過を妨げる.したがって,膀胱病変を見逃しなく検査するためには,膀胱内の尿の貯留の状態に注意を払う必要がある.

前立腺疾患(精嚢)

著者: 沼田功

ページ範囲:P.317 - P.321

検査の手順
 前立腺は精液を構成する前立腺液を分泌する男性器で膀胱足方に位置し,前方に恥骨,後方には直腸,仙骨があり,中心部を尿道が貫通する.精嚢は前立腺の頭側で膀胱三角部の直腸側にある.このように前立腺は前後に骨があるため,走査部は限定される.

精巣と周辺疾患

著者: 澤村良勝

ページ範囲:P.322 - P.326

 陰嚢内病変の超音波診断は,これまで超音波断層法と超音波ドプラ法の併用法が行われてきた.これは断層法により描出された種々の陰嚢内の異常に対し,ドプラ法を併用して精索部や精巣部の血流の有無や強弱を測定する方法である.今日ではカラードプラ法が一般化し,これら2つの診断法を1つのプローブ(探触子)で同時に行うことができ,従来のグレースケール断層像の上にリアルタイムで血流像が観察されるようになり,陰嚢内病変の診断にはカラードプラ法は不可欠な検査法となっている.本稿では,陰嚢内臓器の正常像と代表的疾患についてカラードプラ法を中心に解説する.

エコー法の実践—産婦人科エコー法

正常妊娠

著者: 鈴木真 ,   岡井崇

ページ範囲:P.328 - P.332

 超音波診断装置の進歩により胎児の観察が可能になり,超音波診断法は現在の妊娠管理において必須の検査となっている.妊娠初期における胎児計測による妊娠週数の確定,胎児の心拍の確認だけでなく,妊娠中期(16〜20週)では胎児奇形スクリーニング,妊娠後期では胎児発育や胎児well—beingの評価と周産期管理上重要な検査となっている.周産期管理において子宮内の観察ができるようになったことは飛躍的な進歩といえる.ここでは正常妊娠におけるルチンの母体・胎児管理について妊娠初期,中期,後期に分けて述べる.

異常妊娠

著者: 上妻志郎

ページ範囲:P.333 - P.336

 産科領域においては,検査法の胎芽・胎児に対する影響という点から,エコー診断の果たす役割は大きい.特に,経膣超音波法は子宮近傍からの観察を可能とするため,得られる情報量が経腹超音波法より多く,妊娠前半期においてきわめて有用である.本稿では,代表的な異常妊娠におけるエコー診断上の基準と注意点について述べる.

胎児期診断

著者: 宮崎豊彦 ,   谷垣伸治

ページ範囲:P.338 - P.342

 胎児期におけるエコー法は,胎児発育の評価と胎児形態異常の発見・診断が主な目的である.また近年は,パルスドプラ法を用いて胎児胎盤循環や胎児心機能の評価などが行われ,ハイリスク妊娠における胎児仮死や心不全などの異常発症の予測にもエコー法は有用な検査になっている.本稿では胎児形態異常の診断を中心に胎児期診断を概説する.

卵巣腫瘍

著者: 秦幸吉 ,   宮﨑康二

ページ範囲:P.343 - P.346

 卵巣腫瘍の確定診断は,通常,開腹術による摘出標本の組織学的検討により行われている.そのため,術前の超音波診断による卵巣腫瘍の良悪性診断は興味ある領域の1つである.従来の卵巣腫瘍の超音波診断は,超音波断層法より得られた腫瘍像を形態学的に評価し,病理組織学的診断を推定するものであった.1980年代の終わり頃からカラードプラ法が婦人科領域に導入されるようになって以来,卵巣腫瘍から得られた血流動態を解析することによる機能的診断が可能となり,それを良悪性診断に応用しようという試みが盛んに行われるようになってきた.その後十分な検討がなされ,現在では比較的完成度の高いものとなってきている.
 本稿では,卵巣腫瘍の超音波診断の現状ならびに意義について解説する.

子宮疾患

著者: 泉章夫 ,   佐藤郁夫

ページ範囲:P.347 - P.349

検査の手順
 超音波検査は,子宮腫瘍性病変の画像診断においても,簡便で非侵襲的検査のため最初に行われることが多い.走査法の1つである経膣法は,経膣専用プローブを膣円蓋部に挿入して行うので子宮に隣接しており,高周波(5〜7.5MHz)で行えるため良質の画像が得られる.しかし,産婦人科医以外では一般的ではなく,膀胱充満法を用いて経腹法(3.5〜5MHz)で行うことがほとんである.経腹法で子宮をきれいに描出するポイントは,検査前に十分に水分を摂取させ,膀胱を充満させて超音波通過のウィンドウを作ることである.経腹法では,子宮縦断像(矢状断像)と子宮体部横断像を基本走査断面とする.経膣法の矢状断面描写では,画面左側に患者頭側,つまり膀胱が向くように表示する.正常子宮の長さは成人で6〜10cm,閉経後で3〜5cmとされている.

エコー法の新しい展開

コヒーレント・イメージ・フォーメーション法(CIF法)による超音波画像

著者: 入江喬介

ページ範囲:P.352 - P.355

CIFとは
 コヒーレント・イメージ・フォーメーション(coherent image formation:CIF)法は,従来の反射超音波の振幅情報に加え,位相情報を用いて画像化する方式である.特に空間分解能の向上はこれまでの常識を超えているが,合わせて時間分解能およびコントラスト分解能の向上も顕著である.
 “コヒーレント”という用語は,物理の世界,特に光などの波動でよく使われ,辞書には「(波動などが)互いに干渉し合う性質を表す用語」または「(各部分が)緊密に結びついた」などとある.

カラードプラ—速度とパワー

著者: 坪根泉

ページ範囲:P.356 - P.359

 カラードプライメージング法は,1982年に滑川らによって発明され,約半世紀の医用超音波の歴史上で最も大きなトピックスの1つである.
 今日では,循環器領域において臨床上欠くことのできない検査法として定着している.また最近のデジタル化技術の進歩はその空間分解能,コントラスト分解能,時間分解能を格段に向上させ,低速流,低流量の微小血管の抽出を可能とし,腹部領域,産婦人科領域をはじめいろいろな分野でその有用性が臨床検査に供されている.

ドプラ法による血流の定量計測

著者: 小笠原正文

ページ範囲:P.360 - P.362

 超音波ドプラ法を用いた血流の定量計測はこれまで種々の方法が試みられてきている.最もよく使われているのは,パルスドプラ法から求められたパワースペクトラムより瞬時平均流速を検出し,その平均流速値にBモードから得られる血管径を乗ずることで流量を求める方式である.
 また最近ではカラードプラを用いた血流の定量計測も試みられている.ここではドプラ法による血流計測における基本的なことがらと,最近試みられているカラードプラ法による定量化について述べる.

組織ドプラ法

著者: 宮武邦夫 ,   上松正朗

ページ範囲:P.364 - P.369

 心エコー法は,非侵襲的に心臓の形態および機能をともに評価しうる優れた方法である.しかし,例えば左室壁運動を評価しようとするとき,現行の標準的な方法では肉眼的に壁運動を観察することのみでは,精密な定量的評価は難しく,検者によっては結果が異なることがある.すなわち,心エコーによる壁運動評価は,初心者のみならず熟練者にとっても決してやさしいものではない.臨床的には左室壁運動の客観的,定量的な評価は診断と病態評価に役立ち,治療法の選択にも重要と思われるので,実際,左室壁運動の定量化の試みは古くから行われてきた.しかし,いずれの方法も限界があったり,リアルタイム性に乏しく実用向きではなかったりして,結局,臨床現場では熟練者による肉眼的判定が標準的かつ信頼しうる方法となっている.組織ドプラ法はこのような壁運動評価を定量的かつ客観的に行いうる方法として注目されている.

音響組織特性

著者: 谷口信行 ,   伊東紘一

ページ範囲:P.370 - P.373

 音響組織特性とは,組織の違いによる超音波の振る舞いを検討するもので,これを診断目的で研究するのが組織性状診断である1).組織性状診断は,現在,次のようないくつかの解釈がされている.
 ①超音波の物理的性質すなわち音速,減衰などを定量的に計測するもの.
 ②超音波の信号を使って組織の硬さなどを推定するもの.
 ③超音波像を,ヒストグラム,テクスチャ解析のような手法で半定量的に検討したもの.
 ④超音波画像の変化が組織のどのような性状を表すか,超音波の性質をもとに考えるもの.

三次元画像作製法

著者: 赤羽睦弘

ページ範囲:P.374 - P.376

 X線CT,MRIなどの診断装置で三次元画像を目にする機会が多くなっている.超音波の分野においても産婦人科1),消化器,腹部,循環器,体表領域と多くの領域で三次元表示に関する研究が進み,三次元表示機能を付加した診断装置も販売され始めている.
 本稿では,断層像を得る診断装置,特に超音波診断装置を中心とした三次元画像作製の方法について筆者らの研究内容も含めて紹介する.

心機能自動計測

著者: 神山憲王 ,   吉田清

ページ範囲:P.378 - P.382

 近年の超音波診断装置の発達には目覚ましいものがある.それに伴い,得られた画像を用いて自動的に心機能を算出する試みがなされ,従来では方法が煩雑で不可能であった各種心機能データ,特にリアルタイムでの解析も可能となっている.しかし一方で,自動計測に用いられる各種方法は開発メーカー独自のものであり,それがすべての診断装置に可能となるまでには至っていない.
 本項ではAgilent techonology社におけるAcoustic Quantification(AQ)法,Color Kinesis(CK)法,東芝社におけるAutomated ContourTracking(ACT)法,Automated Cardiac flowMeasurement(ACM)法について述べる.

Integrated Backscatter

著者: 増山理 ,   山本一博

ページ範囲:P.383 - P.385

 通常の心臓超音波装置では,プローブ(探触子)で受信された超音波信号に,心内膜面をより鮮明に描出するための種々の画像処理を施し,モニタ画面に描出する.これは,現在の心エコー検査では,心構造物と血液の境界面である心内膜のエコーが解析対象であるためである.しかし,受信超音波信号には実に豊富な情報が含まれていることがわかっており,心筋組織から反射してきた超音波信号を適切に解析すれば,その組織性状を同定できるはずである.そこで,超音波の送受信信号レベル,すなわちradio frequency(RF)信号として信号処理を行う超音波組織性状診断法が登場した.その中に,心筋から後方散乱(反射)してくる超音波RF信号のパワー(integrated backscat—ter:IB)を解析する方法がある.IBは受信超音波信号をフーリエ変換し,周波数軸で展開してその平均値として求めることも可能であるが,単に反射超音波信号強度を2乗して時間軸で積分することによっても求められる.

非線形パラメータイメージング

著者: 秋山いわき

ページ範囲:P.386 - P.388

 超音波による組織性状診断を目的として非線形パラメータが注目されたのは,1980〜1990年にかけてである.この頃,様々な組織に対する非線形パラメータについて,in vitroでの測定値が報告されている1〜3).組織特性からみた非線形パラメータの意味については,様々な議論があるが,現在のところ明確な結論は得られていない.しかし,癌の診断などについて大きな可能性を秘めていると思われる.一方,非線形パラメータの測定法は大きく分けて次の2つに分類される.音速の温度依存性および圧力依存性から測る熱力学的手法2〜4)と,非線形伝搬によって発生する第2高調波から測定する有限振幅法1,4)である.前者の手法のほうが測定精度は高いが,in vivoでの測定は難しい.一方,筆者らは有限振幅法をエコー信号に適用してイメージングまで可能にした手法を1985年に提案した5).そして1990年にin vitroではあるが,牛肝の画像を示した6).最近,エコー信号における第2高調波を測定する技術が進み,市販の装置でも実現可能となった.新しい組織性状診断としてBモードでは得られない情報を獲得できるため,今後の臨床への適用が期待される.

コントラストを用いたハーモニック・イメージング

著者: 嶺喜隆

ページ範囲:P.389 - P.391

 造影エコー法で組織内の微少血流を映像化する場合,その毛細血管をとりまく周囲組織からのエコー信号が非常に大きいため,従来のBモードでは十分な染影が得られない.超音波造影剤の主成分は微小気泡であり,気泡の強い非線形な振動特性に着目して造影剤由来の信号のみを検出し映像化する手法がハーモニック・イメージングである1).気泡は送信される超音波の作用で消失する性質もあり,造影剤特有のこれらの性質を利用して毛細血管レベルの血流の映像化を可能にする新しい映像技術が活発に開発されている.ハーモニック・イメージングを始めとする造影剤映像技術について述べる.

NativeTM Tissue Harmonic Imaging

著者:

ページ範囲:P.392 - P.398

 超音波イメージの画質は,トランスデューサ,ビームフォーマ,イメージフォーメーション,およびイメージプロセッシングにおける数次にわたる技術革新によって大幅に向上した.
 これらの向上にもかかわらず,超音波装置は,人体組織内で超音波が一定速度で直進するという推定に基づいて作動している.皮下組織の場合この推定は,明らかに当てはまらないために,皮下組織によって超音波ビームの歪みが生じる.これらの歪みを補正するために,各種の方法が試みられた1)が,今までのこうした問題を解決する超音波システムは市販されていない.

コントラスト剤(造影剤)

著者: 椎名毅

ページ範囲:P.400 - P.403

 超音波診断では,血流像を得る手段として従来からドプラ法があるが,コントラスト剤(造影剤)を用いることにより血流からのエコーが増強され,心筋内灌流や肝臓など臓器実質内の血流動態の把握が容易になった.一方で,コントラスト剤の主成分は微小気泡(マイクロバブル)であり,それによる散乱(反射)を利用している.そのため,気泡の特性の違いのほか,送信の音圧や周波数,超音波音場分布など測定条件の影響を強く受けることや,造影剤が容易に崩壊消失する点が,CTなどで用いる造影剤とは大きく異なる.
 このため,コントラストエコー法においては造影剤の開発とともに,造影に適した超音波装置の開発も重要となる.ここ数年で,いくつかのコントラスト剤が市販されて臨床応用に供されるようになり,造影法も非線形散乱を用いるハーモニック映像法が考案されるなど,飛躍的に進歩したと言える.しかし,微小気泡と超音波の相互作用はきわめて複雑であり,コントラスト剤,造影法ともに様々なものが検討されているが,簡便性,再現性,定量性などを満足させる至適なものはいまだ得られていない.

B-Flow

著者: 橋本浩

ページ範囲:P.404 - P.407

 B-Flowは1999年より当社のLOGIQ700EXPERT Seriesに搭載されたまったく新しい血流表示のためのアプリケーションである.B Flowを用いることにより,カラードプラやパワードプラと比べて,高分解能,高フレームレートでの血流描出を実現している.本稿では,原理,臨床例,および最新のB-Flowアプリケーションについて述べる.

超音波の生体作用(キャビテーションなど)

著者: 遠藤信行

ページ範囲:P.408 - P.409

生体作用
 広く普及している超音波診断装置では,音の強さが微弱でかつ時間的に非常に短いパルス状音波を使ってカラーエコー断層像やハーモニックイメージ像を取得している.このような微弱な音波を扱う線形音響学に対し,結石破砕や音響化学作用の促進に代表される治療応用では,有限振幅音波を扱う非線形音響学を考慮する必要がある.ここでは強い音波が生体に及ぼす影響,特にキャビテーション(ultrasonic cavitation)について記す.この際われわれは,超音波の以下の特徴をうまく利用している.
 1)音波の直進性:一般に波(波動)は,波長が短くなると直進する性質を持つ.特に,生体中を伝わる超音波の速さ(伝搬速度)は,レーザー光や電波に比べると数万倍遅い.このため波長が大変短くなり,生体中を直進する性質を持つ.エコー診断法は音波の直進性を仮定とし,また強力超音波音場を得るために音波を集束させる場合にも,この性質を利用している.

超音波の安全性

著者: 名取道也

ページ範囲:P.410 - P.413

 最近,超音波の安全性についてのユーザーの意識の向上が強く求められている.これは診断に使用する超音波装置の出力が,以前に比べ2〜3倍に上昇していることが大きな問題となっているからである.超音波の安全性については20年以上前より話題とされてきており,近年は超音波の出力の計測方法についての超音波工学上の進歩,動物実験や臨床研究などの進展と相まって,この方面の研究は大きな進歩を遂げている.しかし,残念ながら当時から現在に至るまで,超音波の安全性がユーザーに大きな関心をもたれてきた歴史はない.
 一般的に,医師を始めとする超音波診断装置のユーザーが超音波の安全性に関する議論に興味を示さなかった理由には表1のようなことが挙げられよう.

フリースタイル拡張画像法

著者:

ページ範囲:P.414 - P.415

 超音波装置の発展の中で失われた広視野
 1970年代後半までの超音波検査は,関節アームスキャナを用いた静止画像(コンタクト—コンパウンドースキャン)であったが,その後進歩して現在の高速,高分解のリアルタイム表示システムになった.また,多数の微細配列素子によって音響データを収集し,それを高速でデジタル処理することが可能になり,空間分解能が向上した画像法が発展してきた.そして断層像と同時表示可能なスペクトルおよびカラードプラ機能が導入され,血流動態情報がリアルタイム画像法と統合されたのである.現在の超音波検査システムでは三次元再構成が可能となっている.しかし初期の関節アームスキャナによる静止画像にも,大きな解剖学的な構造の断面像をただ1枚の画像で表示できたという利点があった.現在のリアルタイムシステムでは,トランスデューサの接触面の大きさ,またはビーム走査の限界によって視野が制限され,その結果,大きな解剖学的な構造の断層像を観察するためには,臨床医はまず狭い視野の画像を収集し,それらを頭の中でつなぎ合わせる必要がある.

画像ファイリングと画像通信

著者: 三谷正信 ,   大柳俊夫

ページ範囲:P.416 - P.418

 コンピュータ技術の進歩により情報のマルチメディア化が進み,医療分野においても電子的な方法での情報交換が可能となりその需要も増加している.医用画像に関しても画像情報の共有化や交換を前提としたファイリングが注目され,紙やフィルムなどのいわゆるアナログファイリングから,電子媒体へのデジタルファイリングに変化しつつある.超音波画像についても,最近になってデジタル出力対応の超音波診断装置が製品化され普及し始めており,ファイリングに対しての関心は高まっている.ここでは,超音波画像を含む様々な医用画像のデジタルファイリングについての現状を述べる.

超音波診断装置の小型化とエコースクリーニング

著者: 重田浩一朗 ,   伊東紘一

ページ範囲:P.419 - P.422

 最近の超音波診断装置開発の方向性として,ハーモニック・イメージングのような最新の超音波技術が装備されている高級器と,小型で携帯も可能な装置があるだろう.
 この小型化された携帯型装置も画質が改良され,超音波スクリーニングは携帯型でも十分行える時代が来ている.また携帯型超音波診断装置はより軽量化を目指し,究極には聴診器のように常に身につけて使用できることを目指していくものと考えられる.ここでは携帯型超音波診断装置の現況と,それが果たしうる役割について述べる.

エコー法の新しい展開—超音波の治療応用(画像を利用した治療法)

術中エコー法

著者: 秋本伸 ,   白井聡 ,   久保博嗣

ページ範囲:P.424 - P.427

術中エコー法について
 超音波の治療的応用の意味で,手術の進行をサポートする術中エコー法はある種の手術にとってきわめて重要な役割をもっている.脳外科手術における応用として始まった本手技は,肝臓手術,胆道手術などに応用が広がり,消化器領域においては膵臓や消化管へも導入されつつある.
 わが国で本格的に応用が進められたのは,1970年代の終わり頃であり,主として肝細胞癌や転移性肝腫瘍,肝内結石の手術を的確に行うことを目的に実施された1).術中専用のプローブが開発されたことによりいっそう利用に拍車がかかった2,3).筆者らは初め,肝内結石に対してAモード法を応用したが実用には至らず,次いで手動走査装置のアームを覆って腹腔内に持ち込んで術中検査を行ったが,大掛かりな割に静止画像のため情報が少なかった.リアルタイム装置が実用化し,初めは通常の体表検査用プローブをそのままビニール袋で覆って用いたが,その後,横隔膜下などの狭い空間で利用できるような薄い形状,小さい形状のものを考案した.その後,次々と各メーカーから術中用プローブが試作されてきた.今日ではほぼ完成された形といえる小型で曲率の大きいコンベックス型術中用プローブが主として使われている(図1,2).使用周波数はおおむね7.5MHzである.

エタノール注入療法

著者: 品川孝

ページ範囲:P.428 - P.432

 肝細胞癌に対する経皮的エタノール注入療法(PEI:percutaneous ethanol injection)は1982年,千葉大学第1内科にて開発され,現在では肝細胞癌に対する代表的な治療法の1つとして広く普及している.特に小肝細胞癌に対しては根治的効果が認められ2),治療成績も良好である3).この超音波映像下穿刺を応用した治療法の開発により,超音波を用いて肝細胞癌の早期診断から治療まで可能となった.本稿では肝細胞癌に合併することの多い門脈腫瘍塞栓や副腎転移に対するPEIも含めて,治療の実際について述べる.

高周波による熱凝固療法

著者: 髙田悦雄 ,   小森俊昭 ,   砂川正勝

ページ範囲:P.434 - P.439

 肝腫瘍に対する治療法は,手術(肝切除術)のほか,PEIT(percutaneous ethanol Injection ther—apy),TAE(transcatheter arterial emboliza—tion)などの治療法がある.いずれもinterven—tionalであるが,肝切除術と比較すると患者への侵襲は著しく軽減することができる.ここでは,MCT(microwave coagulation therapy)とともに,最近普及し始めたRFA(radiofrequency abla—tion:ラジオ波凝固療法)に着目し,高周波凝固療法の手技を中心に,その有効性についても述べる.

エコー法の新しい展開—超音波の治療応用(超音波作用を利用した治療法)

微粒子の超音波操作

著者: 山越芳樹

ページ範囲:P.440 - P.442

 医用超音波の分野において,直径数μm以下の微小気泡が注目を集めている.微小気泡は超音波をよく反射することから超音波造影法でのコントラスト剤として使われていることは言うまでもないが,このほかにも微小気泡と超音波の間には多くの相互作用があり,例えば微小気泡が超音波から力を受けたり超音波下で破壊されたりするので,将来は血管を通して薬剤を直接患部に搬送するドラッグデリバリーシステムでの応用が期待されている.微小気泡は超音波を受けると大きな体積変動を起こすため,気泡の破壊や小気泡への分裂,膜を通じた内部ガスの拡散など気泡自体が受ける作用がある.また,気泡の体積変動により生じる二次的な超音波が近傍の気泡に影響し,この結果,気泡間に引力や斥力が働くBjerknes forceと呼ばれる効果や,気泡の存在によりキャビテーションの閾値が下がったりする化学的作用など多くの現象がある.現状ではこれらすべてが解明され,将来の具体的な応用に向けて各種現象が積極的に利用されているとは言えず,この分野の研究は途についたばかりであるが,将来の超音波診断や治療への応用と,そこで期待される効果を考えれば,今後精力的に研究を進めねばならない分野である.
 本稿では,われわれの研究室で行ってきた超音波と微粒子との相互作用を利用しようとする試みを紹介したい.

音響化学治療

著者: 梅村晋一郎

ページ範囲:P.443 - P.446

 超音波は,人体を伝わるとき,短い波長でも減衰しにくいため,そのフォーカス効果を利用した選択性をもつ治療が可能であるという特徴がある.このような治療法として,その熱的作用を利用する加熱凝固療法がすでに実用化されており,また,超音波の化学作用を利用する音響化学療法が,実用化を目指して研究開発されている.この音響化学治療(sonodynamic therapy)について解説する.

音響抗癌剤増強作用

著者: 山下裕一 ,   甲斐良樹 ,   白日高歩

ページ範囲:P.448 - P.451

 古くからポルフィリン類は,癌に対する光物理化学的治療の研究に利用されている.このことは,ある種のポルフィリン類が癌組織に対し集積性または滞留性を有するだけでなく,光などの外部エネルギーによる物理化学的反応性に富んでいるためである.すでに臨床的には,ブタ血液由来のヘマトポルフィリン誘導体を原料に合成された腫瘍親和性光感受性物質であるポルフィマーナトリウム(フォトフィリン:Pf)が630nmの特定波長のレーザー光エネルギーにより励起される特性を利用し,光線化学療法(PDT:photodynamic ther—apy)として応用されている1)
 本項ではPDTの光エネルギーの代わりに超音波エネルギーを使用した音響化学療法(SDT:sonodynamic therapy)について,今後の臨床応用の可能性を念頭に置き述べる.

薬物吸収増強作用

著者: 立花克郎

ページ範囲:P.452 - P.454

 近年,超音波エネルギーを治療の一手段として応用しようとする試みがなされてきた.特に注目されているのはdrug delivery system(DDS)への超音波の応用である.機械装置と薬物を合体させる治療方法には,光化学療法,インフュージョン・ポンプなど,まだごく限られた臨床応用しかされていないが,超音波エネルギーの非温熱効果を用いて薬物のcontrolled release,またはtargetingの目的で利用しようとする概念が,最近,急速に発展し,実際に臨床応用されつつある.具体的に超音波エネルギー可の併用効果には,様々な生体組織での薬物の吸収を促進させる働きのあることが発見され,血栓溶解剤治療をはじめ,薬物経皮吸収増強作用,血管治療,癌化学療法,遺伝子治療など多彩な広がりをみせている.

“One More Step”

心嚢水の1検査から確診が得られた稀な結核性心嚢炎の1例

著者: 小橋吉博

ページ範囲:P.10 - P.10

 症例は70歳,男性.呼吸困難感,全身浮腫を主訴として来院.胸部X線上,心拡大および肺水腫像を認め,心不全との診断で循環器部門へ入院となった.利尿剤,強心剤などを投与し,心不全,肺水腫状態は改善傾向がみられていた.そこで,心不全の原因精査目的で心臓超音波検査を施行したところ,中等量の心嚢水貯留が認められた.主治医が心嚢穿刺をたまたましていたところに居合わせたが,最初は漏出性だろうと思ってみさせてもらったところ,黄褐色で混濁も軽度あり,すぐに凝固しそうなほどフィブリンの多い粘稠な心嚢水であったため,滲出性に違いないと思い,主治医と相談して,一般の性状以外に一般細菌,抗酸菌(ADAも含む),細胞診などを提出した.その結果,一般細菌,細胞診ともに陰性,抗酸菌も塗抹は陰性であった.しかし,心嚢水中のADAが57IU/lと上昇としていた.結核性を疑い,胸部X線を見直したあと,胸部CTもとり肺上葉を中心として検索したが,肺内陰影は検出しえなかった.一方,ツベルクリン反応も調べた結果,中等度陽性との結果が得られ,6週後の抗酸菌培養検査で陽性,ナイアシンテスト陽性で結核菌と同定された.

低血糖発作による意識障害で入院されたインスリノーマの1例

著者: 小橋吉博

ページ範囲:P.15 - P.15

 この症例は,私が研修医2年目に大学病院救急部で経験した1例である.55歳,女性で明らかな既往歴を有しなかったが,意識障害を主訴に救急車で搬送された.通常通り,各種血液検査,頭部CT検査が行われ,その結果をみたところ,脳内には意識障害をきたすような血管性病変がなかったものの,血糖値が30mg/dlと著明に低下していたのみで,他の検査所見には有意な上昇はみられなかった.このため,低血糖による意識障害と診断し,50%ブドウ糖を静注しながら点滴を持続して入院させた.意識が回復したところで,患者さんと話をしていたところ,以前にこういったエピソードもなく,今回が初めてだと言われたため,まず学生時代に学習していたインスリノーマを疑って,腹部超音波検査を自分で試みていたところ,膵臓の付近にあやしい3cm大の腫瘤性病変がみられたため,これによる膵内分泌腫瘍と考えた.その後,自分でも不安なところがあったため,腹部CTをとったところ,膵尾部に3cm大の腫瘤が確認された.

身近な人の診察は苦手です

著者: 石田秀明

ページ範囲:P.34 - P.34

 この話の発端はどうも不自然ですが,実際にあった話ですので聞いてください.登場人物は私と患者(50歳,女性)の二人.時は随分昔です.患者は病院事務の方で,ある日,エコーで体内がどう見えるのか,後学のため彼女の体を使って教えてほしいと,私のところに来ました.聞くと,ご丁寧に,朝絶食で来たとのこと.断わる理由もなく,軽い気持ちで引き受けました.ところが,検査を始めて「しまった」と思いました.胆嚢底部が著明に肥厚し胆嚢癌と思われる所見です.胆嚢頸体部は壁肥厚全くなし,胆嚢内に結石なし.腹部にほかの異常所見なし.CTやほかの検査でも同じ結果です.つまり,切除可能な胆嚢癌です.いつも顔を合わせている人にどう話を切り出そうか,とても悩みましたが,やっとの思いで説明し,手術に持ち込みました.開けてびっくり,胃前庭部から発生した平滑筋腫が胆嚢に癒着したものでした.確かに,retrospectiveにみると(便利ですね,この言葉),胆嚢底部と胆嚢体部の状態が一線で境されるように全く異なるのは,きわめて不自然ではあります.古来,ある臓器の辺縁に腫瘍を見た場合,近接臓器由来の腫瘍の可能性を忘れてはいけない,と強調されてきました.

エコーのMy Tips

著者: 秋津壽男

ページ範囲:P.43 - P.43

 「medicina」をお読みの賢明な読者の方にとってこんなことはとうに常識かもしれませんが,実際のエコー検査をやっていて気づいたことがらを少し述べます.御笑覧ください.
 1.ECGクリップ:パンティストッキングの上からスラックスをはいた御婦人のエコーをとるとき,心電図信号クリップをつけるために脱いでいただくとなると大変な手間になります.ストッキングの上から生理食塩水で湿らせた脱脂綿を挟んでクリップを使う方法もありますが,患者さんは結構嫌がります.

胸水貯留を認めた患者の胸腔穿刺におけるエコー検査の有用性/カラードプラ法を用いた裏技

著者: 小橋吉博 ,   玉野宏一

ページ範囲:P.53 - P.53

 呼吸器内科を専門としている以上,胸水貯留による呼吸困難感を主訴として入院してくる患者も多い.原因としては,癌性胸膜炎によるものが増加しており,高齢者では細菌性肺炎に伴って膿胸による比率が増加してくる.この際,胸水採取のために胸腔穿刺が必要になるが,胸水の貯留量が500ml以上になってくると打診でも肝臓と胸水,そして肺との境界もわかってくるが,特に熟練していない研修医などでは,肺自体を穿刺して気胸も起こしかねない.そこで,誰もが簡便に行うことができるエコー検査が有用となる.現時点でも,偉い先生方には胸水を抜くだけのことなのになぜエコーの機械を使う必要があるか,としばしばお叱りを受けることがあるが,実際使用してみると実に有用である.100ml以下のごく少量の胸水でも呼吸の運動に合わせて可動しているのがわかるし,内部に癌の転移などによる腫瘤性病変も捉えることができる.また,同様に胸壁に接した実質性腫瘤の経皮的生検の際にも境界が明確にわかるため施行しているが,これも合併症もなく安全に行えている.

となりの窓から

著者: 秋津壽男

ページ範囲:P.57 - P.57

 この患者さん(75歳,男性)の心エコー検査の手順は普通の患者さんと少し違います.
 まず,第4肋間胸骨右縁6cmの所から大動脈弁を観察します.次に剣状突起下より左室長軸断面をとります.心尖部からは大動脈を観察します.

“asynergy診断”免許皆伝

著者: 玉野宏一

ページ範囲:P.62 - P.62

 左室asynergy(壁運動異常)の診断テクニックは,心エコー法の中で初心者が習得し難い技法の一つだと思います.私自身もうまく診断できずによく悩んだものです.そこで,私が誤診を避けるために常日頃注意していることを思いつくまま列記してみようと思います.
 その1:「まず敵を知る」
 患者さんに虚血性心疾患がありそうか,否かを知ることは重要です.どんな状況でも心エコー図の依頼趣旨と心電図くらいは最低でも確認したいものです.心電図に異常があれば,asynergyの部位を想像しながらプローブ(探触子)を握ります.

腹部超音波検査を契機に肝内に多数のサルコイド結節を認めたサルコイドーシスの1例

著者: 小橋吉博

ページ範囲:P.68 - P.68

 症例は46歳,男性.検診における肝機能障害の精査目的で,腹部超音波検査をしたところ,脾腫,肝内に多数の小結節,複数の腹腔内リンパ節腫大の所見が得られた.このため,肝生検を目的として腹腔鏡検査を施行した結果,乾酪壊死を伴わない類上皮細胞性肉芽腫の組織所見が得られた.そこでサルコイドーシスを疑い,全身精査をしたところ,表在性リンパ節は触知せず,皮膚病変もなし,胸部X線上で両側肺門部リンパ節腫大を認めたのみで肺内病変も伴わなかった.そのほか,眼病変,心病変,中枢神経病変も伴っていなかった.検査所見は,ツベルクリン反応陰性であったものの,血清ACE,リゾチームも正常範囲内にとどまっていた.サルコイドーシスは,全身性疾患であるが,通常,肺,眼,皮膚病変から先に診断されることが大半であり,文献上も本症例のごとく肝機能障害から診断されることは珍しいと思われる.以前の胸部X線を取り寄せてみると,両側肺門部リンパ節腫脹は認められており,発症時点はもう少し前であったと考えられる.腹部超音波検査の時点では,発熱や腫瘍関連因子の上昇もなかったが,悪性リンパ腫も鑑別として挙げていた.

収縮性心膜炎もお忘れなく

著者: 茅野千春

ページ範囲:P.74 - P.74

 内科一般,循環器医として仕事をしている関係上,心エコーは私にとって必須の検査となっています.心機能というと左室の収縮がまず問題となります.左室駆出率(EF)が0.6以上あるから心機能は心配ないとか,0.4以下だからうっ血性心不全に陥った原因でしょうといった会話になります.多くの症例では事足りるのですが,時として収縮状態だけに目を奪われていると病態を見誤ることがあるので注意が必要です.高齢者で心房細動のある患者さんでは,エコー上左室の収縮が問題なく見えても肺うっ血状態に陥ることがままあります.左室の拡張障害や心拍数の問題が原因として考えられているようです.
 心室の壁運動だけに目がいってしまい収縮性心膜炎の症例で診断・治療が遅くなってしまった経験があります.呼吸困難,胸水,腹水,浮腫で入院したのですが,原因がよくわかりません.血液検査で特異的な所見はなく胸部X線写真,心エコー,胸部CT,細胞診などを行ってみましたが,原因と考えられるような所見は得られませんでした.利尿剤に反応しませんし,病態は徐々に悪くなりますし,経口不良などもあって低蛋白血症,脱水による腎機能障害を合併してきました.心エコー検査は何回かしましたが左室,右室ともに収縮は良好で拡張もなく心嚢水もなく問題なしと判断してしまいました.

探触子を当てさえすれば

著者: 中村みちる

ページ範囲:P.88 - P.88

 超音波検査ではいろいろな疾患を診断できます.しかし当然のことながら病変部に探触子を当てなければ診断はできません.
 皮膚筋炎の患者さんが,悪性腫瘍の合併の有無を確かめるために来室しました.初めに診た研修医の先生の診断は異常なし.その後確認で私が検査.確かに肝,胆,膵,脾,腎は全くきれい.最後に大動脈周囲を上腹部からずっと下腹部に向かって探触子を動かすと…….ごろごろと腫れたリンパ節が見つかり,診断は悪性リンパ腫となりました.腹部の検査では,各臓器だけでなく必ず大動脈周囲から骨盤腔内を,そして消化管病変が疑われる場合は,腹部全体をくまなく走査することが大切です.

弁逆流の評価—カラードプラ法の功罪

著者: 坂本二哉

ページ範囲:P.99 - P.99

 弁逆流診断の主力は,かつては聴診・心音図であった.Mモード心エコー図の出現は狭窄症には有用であったが,逆流症にはほとんど無力であった.逆流に伴う様々な心エコー図上の変化は,その後も決定打を欠いていた.しかしカラードプラ法の出現以後は完全に主客転倒,心エコー図法の優位性を確立させたかにみえた.
 だが,いくつかの問題が発生した.その一つはやたらと四弁弁膜症,つまりかつてはたいへん珍しく,症例報告にさえなっていた“quadrivalvular disease”が四弁逆流症“quadrivalvularregurgitation”として多くの例にみられるようになり,逆流評価に対する“臨床的”基盤が揺らいでしまったのである.

胸痛と呼吸困難は急性心筋梗塞?

著者: 玉野宏一

ページ範囲:P.121 - P.121

 私が以前,某病院に派遣されていたときのことです.ある日,同僚の医師から心エコー図検査の依頼がありました.「入院中の70歳代の女性に胸痛と呼吸困難が出現し,急性心筋梗塞を疑っている.しかし,心電図で明らかなST変化を認めないので,ぜひ心エコー図で確認してほしい」という趣旨の依頼でした.いわゆる急変で,患者さんの状態があまり良くないことを理由に,主治医は病棟への出張エコー検査を要望してきました.その病院で使用していたポータブルのエコー装置は旧式のもので,心臓と腹部の兼用機器でした.当然ドプラ法の施行できない機種で,性能も良くありません.“労多くして功少なし”ということがしばしばで,この種の依頼を受けるのはいつも気が重いものでした.しかも出張先が最も移動距離のある老人病棟ということで,正直なところ軽い足取りというわけにはいきませんでした.
 病室に到着して患者さんを探し,エコー装置に電源を入れ,探触子を握ります.患者さんの体型は肥満に属するもので,「詳細な左室壁運動の評価は困難だろうなあ」などと思いつつ心エコー検査に取りかかりました.

心室中隔の奇異性運動に対する疑問

著者: 坂本二哉

ページ範囲:P.127 - P.127

 心房中隔欠損を代表とする右心容量負荷疾患では,心室中隔の奇異性運動(paradoxicalmotion)が非常に特徴的な心エコー図診断基準とされている.そのほか,重症三尖弁閉鎖不全,Ebstein奇形,肺性心や肺高血圧,肺動脈弁閉鎖不全(ある程度以上の逆流例)などもその範疇に入る.そのほかに重要な疾患として,殊に日本では,左心膜部分欠損症がある.また前壁中隔梗塞,それに収縮性心膜炎なども大切な疾患であるし,機械的なものとしてはB型WPW症候群や右室ペーシング,左脚ブロックも直ちに想起される.
 しかしこの成因はなかなか難しい問題を含んでいる.私たちのかつて行った動物実験では,単にWPW波型を作成するだけでは奇異性運動は得られず,同時に自由壁に別な刺激を与えて初めて奇異性運動が出現している.

内視鏡下気管支腔内超音波断層法(Endobronchial ultrasonography:EBUS)の有用性

著者: 小橋吉博

ページ範囲:P.133 - P.133

 呼吸器疾患に対しても,1992年からHunterらにより経気管支的に超音波検査(EBUS)が行われるようになった.腫瘍の壁深達度や壁外浸潤の有無に役立つため,本邦でも近年使用頻度が増加してきている.EBUSでは,気管支壁が,第1層高エコー帯(境界エコー),第2層低エコー帯(上皮下組織,気管支腺,平滑筋),第3層高エコー帯(軟骨内側境界エコー),第4層低エコー帯(軟骨),第5層高エコー帯(軟骨外側境界エコー)として正常では5層構造に描出される.気管支原発の腺様嚢胞癌などの深達度でどの層まで断絶していないかを観察することにより,外科的切除が可能かどうか判断しうる.手技的には,全身麻酔下で硬性鏡を挿入し,バルーンシースをかぶせた細径超音波プローブを硬性鏡の鉗子口から気管内に誘導する.病変部の間隙を抜けてプローブを挿入し,先端のバルーンを膨らませ,ゆっくりと引きつつ描出してみる.この際,場合によってはNd-YAGレーザーを用いた腫瘍焼却術も同時に施行することも可能であり,患者への侵襲も軽度である.

収縮状態が末期になったら…

著者: 茅野千春

ページ範囲:P.139 - P.139

 エコー検査はある程度主観が入ってしまう検査です.心エコー検査での左室駆出率(EF)の値はMモードを記録して計測する都度,多少違った値が出てきます.Bモード法で見た印象では全く問題のない左室の壁運動なのにEFが0.5以下の値になってしまい,Bモード法の壁運動に合う値が出るように計測し直したりとか,また逆のこともあります.左心不全で入院した治療前後や慢性心不全でアンジオテンシン変換酵素阻害薬を1年間服用した後など,Bモード法上明らかに左室の収縮状態が改善している場合は,EFを出すときに以前の値を参考にしながら何回か計測していい値を選択するようなこともします.検査に主観が入り過ぎていてけしからんとお叱りを受けるかもしれませんが,私はある程度しかたないし,意味ある数字の比較だと考えています.
 困るのが虚血性心疾患にしろ心筋症にしろ左室の収縮状態が末期に近くなってしまった場合の評価です.慢性心不全が代償できなくなって肺うっ血を呈して入院したときと,入院後自覚症状が改善して胸部X線写真でうっ血が消失したときとで,Bモード法上,エコー所見にほとんど変化を見いだせないことがままあります.

大動脈弁は三尖? 二尖?

著者: 玉野宏一

ページ範囲:P.144 - P.144

 心エコー図検査を担当し始めた頃の話です.大動脈弁閉鎖不全症の20歳代の男性が精査目的に入院しました.大動脈造影で3度の逆流を認め,最終的に手術適応と判断されました.心臓カテーテル検査を担当した医師に造影所見から大動脈弁閉鎖不全症の原因が大動脈二尖弁だったと指摘されたとき,心エコー図検査を施行した私はそれを真っ向から否定しました.私は「大動脈弁は三尖ありました!」と言い張り,その医師にビデオを見せることにしました.大動脈弁短軸断層像で大動脈弁が三尖あることを得意げに説明している私に,彼は衝撃的な言葉を投げつけました.
 「それ,rapheじゃない?」

PISA—二人の愛弟子の狭間に立って

著者: 坂本二哉

ページ範囲:P.145 - P.145

 PISA法(proximal isovelocity surface area)はカラードプラ法以後に生じた興味ある方法論である.例えば僧帽弁逆流の定量的評価法として,従来はパルスドプラ法と断層法を用い,左室の流入血流量と駆出血流量を算出して,その差から逆流量を求める方法があったが(超高速CTでも簡単に同様な方法が用いられていた),それに代わって,カラードプラを用い,逆流弁口の左室側,つまり僧帽弁口よりも左室側に存在する加速逆流血流の大きさから,逆流量を判定しようというのである.
 このPISA法は別名“加速度法”とも呼ばれるが,理論的には明確で,たいへん魅力的であることから,かなり以前より,しばしば論じられてきた.しかし臨床的な利用はいま一つという感じである.

心エコー図法の泣き所

著者: 坂本二哉

ページ範囲:P.161 - P.161

 現在の心臓病学にとって心エコー図は欠くべからざる方法論である.1960年代の初めシカゴに留学した私は,金のない患者ではX線や心電図を省いて「心音図」をとれと命じられた.それで心電図は心音図用のブラウン管上で観察しメモするだけで我慢した.もともと心電図屋の私の抵抗である.今ならさしずめ「心エコー図だけはとれ」ということになるであろう.
 だがあらゆる検査法にそれぞれの限界があるように,心エコー図も決して万能ではない.それには記録不良(きれいな記録ができない)とか,死角(dead angle)の問題がある.

正常所見で確認を

著者: 茅野千春

ページ範囲:P.184 - P.184

 エコー検査は手軽にできて侵襲もあまりなく大変便利なのですが,アーチファクト(虚像)の問題があって注意が必要です.検査をしたがためにアーチファクトに振り回されてしまうことがあります.心房細動のある患者さんが脳梗塞で入院になると左心系,特に左房内の血栓の有無について心エコー検査で評価して下さいとの依頼がかなりあります.左房の中に血栓があるのではないかなどと先入観を持ってプローブを振りながら検索しているといかにもそれらしいエコー像が見えてきます.慌てて確認のため造影CTをとっても2cmもあるような血栓像は出てきません.虚像の原因は超音波の多重反射という現象にあるそうです.実像なのか虚像なのか判断するのはなかなか難しいことです.特に血栓があってもおかしくないような状況ではなおさらです.多発性に塞栓症状を起こした症例で体表からの検索では分からなかったのですが,経食道心エコー検査で大動脈弁の弁尖の中に血栓ができていて塞栓源となっていたと判明した経験があります.体表から見えなくても血栓がないと言い切れないのに,まして見えているのにアーチファクトだと断定するには勇気がいります.経食道心エコー検査で確認するのが一番でしょうが,全例で行うというのは実際的ではないように思います.

記録の保存

著者: 坂本二哉

ページ範囲:P.207 - P.207

 心エコー図に興味をもつ者,殊に研究室を主宰する者にとっての最大の悩みは,記録された心エコー図(Mモードの記録紙,ビデオなど)をどのように格納するかであろう.どんどん増え続ける資料はすぐに部屋いっぱいとなり,スペースに余裕のない病院ではその収納に四苦八苦する.古いものは別の倉庫に移せばよいが,症例の経過が知りたい場合が少なくないのでそうもいかない.
 随分古いことであるが,筆者が米国のMayo Clinicを訪れた際,その点を質問すると,当時はまだ断層法が緒についたばかりでMモード記録が主体であったが,記録の良否によってAからEまで選定し,Aはテキスト用,Bまでは学会用,Cは症例により残す,Dの多くのものとE(最低の記録)は捨てるということであった.しかしIndiana大学では一切合併保存しており,筆者の所(東大)でもそうであった.

原因不明の心電図異常

著者: 玉野宏一

ページ範囲:P.233 - P.233

 私が研修医の頃だったと思います。心電図異常について精査することを目的に60歳代の男性が入院してきました.左室肥大を思わせる心電図でしたが,外来で施行した心エコー図では左室肥大を認めず,すべて正常範囲の所見でした.

腹部エコー診断ことはじめ

著者: 竹内和男

ページ範囲:P.257 - P.257

 今では,腹部に何らかの症状があったら,まずエコー検査を行うのが腹部診療での常識である.筆者の施設では,約25年前,1970年代半ばにエコー検査を開始した.その後検査件数は急増し,現在では年間およそ25,000件の腹部エコー検査を行っている.このように数多くの検査がオーダーされるまでには,いくつかのステップがあった.
 エコーを始めた頃の話である.当時は,接触複合走査法(contact compoundscan)といって,チョークのような円筒状の探触子を被検者の腹壁に当て,手動で線を引くようにして断層像を得ていた.まさに1枚1枚像を描くといった時代であった.時間もかかるし,他のドクターにとっては見慣れない画像であり,「エコーで何がわかるの?」といった批判的な冷たい眼差しを背に受けながら,肩身の狭い思いをして検査を行っていた.いや,実際は外科医に頼み込んで,術前の胆石症例の検査をやらせてもらっていたというのが正しい.現在では信じられないような話である.

腹部エコー診断ことはじめ—その後

著者: 竹内和男

ページ範囲:P.261 - P.261

 「腹部エコー診断ことはじめ」(p257)のエピソードがあってから間もなく,リニア型電子スキャンが使えるようになった.以下は,いずれも忘れられない思い出である.
 20歳代前半の若い女性が上腹部痛と黄疸・発熱で外科に入院となった.閉塞性黄疸が疑われたため,最初にERCPが選択された.しかし,2度トライしたが,どうしても胆管造影ができずに終わった.熱は続き,ビリルビン値も急速に上昇し,20mg/dlを超えていた.外科医は次の手としてPTC(経皮経肝胆道造影)を考えていたが,その前に“柳の下のどじょう”ではないが,エコー検査をやってみようということになった.当時,エコー検査の有用性については,まだまだ半信半疑だったのである.おもむろに探触子を当てると,すぐに閉塞性黄疸の状態であることがわかった.同時に拡張した総胆管の末端部に1cm大の結石が明瞭に捉えられた.胆嚢にも同大の結石が複数あり,その落石と思われた.患者が美しい年若い女性の総胆管結石であったこともあるが,そのときの総胆管結石の見事な画像が鮮明に脳裏に焼き付いている.外科医は感嘆し,手術室に走った.

慢性肝炎にご注意

著者: 中村みちる

ページ範囲:P.274 - P.274

「私は糖尿病ですが,糖尿病の権威の○○先生に毎月一回欠かさず診ていただいているので,健康のほうはお任せしてあって心配ないんですよ」
 超音波検査を受けながら,そのおじいさんはうれしそうに話していました.私の探触子は肝臓に止まったままでした.直径10cmもある肝細胞癌が映っていたのです.その方はHB(+)で慢性肝炎がありました.

超音波ガイド下PTCD—夜明け前

著者: 竹内和男

ページ範囲:P.281 - P.281

 当院で超音波ガイド下PTCD(経皮経肝的胆道ドレナージ)が行われるようになった頃の話.今から15年くらい前のことである.
 当時,筆者は30歳代前半,血気盛んな頃であった.その頃,PTCDは,X線透視下での右側胸式PTCに引き続き,五寸釘のような太い針を透視下に垂直に立て,心窩部から拡張した左肝管をダイレクトに穿刺する方法が主流であった.“映像下直達法”といい,考案者の名前から“高田式”と呼ばれていた.その原理は,針をX線ビームと平行となるように把持すると,透視下で針が点として見える.その点となった針が拡張した左肝管中央部に重なったとき,呼吸を止めさせ,一気に7〜8cm垂直に穿刺すれば,胆管を間違いなく穿刺できるといったものである.

超音波ガイド下経皮経肝リンパ管穿刺?

著者: 竹内和男

ページ範囲:P.285 - P.285

 超音波ガイド下でPTCを始めたときの話である.
 学会で超音波ガイド下PTCの斬新さを目の当たりにし,早速当院でもということで,業者から穿刺用の超音波装置を借りた.たしかT社の10Aという装置であったと記憶している.探触子はリニア型で中央部に穿刺孔があるタイプのものである.型のごとく消毒・局麻後,超音波ガイド下に胆管穿刺を試みた.穿刺中,針先が点状の高エコーとして認識されたが,垂直に近い穿刺を行ったため,針そのものは明瞭な像ではなかった.それでも針先エコーが拡張胆管内に確認できたので穿刺は成功し,内針を抜けば間違いなく黄色の胆汁が引けると自信をもってそう思った.しかし,予期に反し胆汁は出てこない.引けてきたのは無色透明の液体であった.

聴診所見をお忘れなく

著者: 坂本二哉

ページ範囲:P.290 - P.290

 何事も目的意識をもって検査に当たることが肝要である.漫然とした聴診が無意味なように(第I音の発見から第II音の発見まで,実に200年かかっている.第II音という存在を意識しないでいたからである),超音波検査も単に一つのマニュアルに従うだけでは十分とはいえない.
 1999年の米国心エコー図学会の講習会パンフレットを見たが,そこには心臓の聴診について2単位の講習が入っていた.これは大切なことである.

早速CTをやりましょう!

著者: 竹内和男

ページ範囲:P.296 - P.296

「先生,エコーをやったけど,よくわからないので,早速CTをやりましょう」
 最近,若いドクターが言うのを耳にした.

左室駆出率の評価—患者の状態も考えて

著者: 坂本二哉

ページ範囲:P.297 - P.297

 左室駆出率(ejection fraction:EF)は何も心エコー図の専売特許ではないが,おそらくこの検査法で最も頻用される指標の一つである.しかしどの程度の値が異常とされるかについてはいろいろと問題がある.それゆえ,テキストによっては明確な数値を記載していないものがあって,初心者を困らせる.その際,その諸点を常に考慮すべきだろう.
 1.計測法:左室長軸を短軸の2倍と仮定した回転楕円体計測法(Pombo−Troy法,1971年)を使用して駆出率を求めている施設は,現在ほとんどないと思われるが,心エコ−図による駆出率計測用にいかなる式(方法)が用いられているか,コンピュータ化された現在,全く知らない医師や技師が少なくないのには驚かされる.私の所ではTeichholzの式(Mモード)を用いているが,他の式を用いる研究者,断層法に依存する者,最近では三次元エコーを用いる者も出てきた.それぞれの内容を知ってかからねばなるまい.

脾臓の上に脾臓?/エコー検査—私の苦い体験(脂肪にご注意)

著者: 石田秀明

ページ範囲:P.307 - P.307

 絵画を言葉で表現するのはきわめて難しいように,エコー所見を文字で綴るのにはもどかしさを感じますが,共通認識を作るため,まず,紙を一枚ご用意下さい.そこに,大きな三日月の上に小さな三日月を重ねて書いて下さい.次に,その大きな三日月の中央に線を一本書いて傘状にしたら,小さな三日月の中に微小の輪を数個書いて下さい.できましたか?では,この絵を見ながら,お話を聞いて下さい.
 ある日,エコー検査のかなり上手な先生から,左上腹部の肋間走査で,脾臓(お手元の大きな三日月)の腹側に腫瘍(お手元の小さな三日月)があり,ちょうど脾臓の上に脾臓があるようだ,というふれ込みで痩せ気味の若い女性が紹介されました.全く無症状です.問題となった“腫瘍”のエコーレベルは脾臓のそれよりやや低く,内部に微小の高エコーの輪を多数認めます.研修に来ていた若手医師からは,「生検をすべきだ」「手術も考慮すべきだ」という物騒な意見も飛び出し,騒然となりましたが.…….

膵尾部描出法のコツ(Ⅰ)—体型による臓器の位置関係を知る(1)

著者: 井出満

ページ範囲:P.316 - P.316

 実質臓器において超音波検査は,今や不可欠な検査法となってきています.しかし,万能な検査ではなく,かつ術者の力量に左右されやすい検査であるのも事実です.今回,一般的に描出困難とされる膵尾部描出についてその一案を示したいと思います.これは,胃,大腸などの消化管を移動,排除させる必要があり,消化管エコーに携わってきた者の考えとして理解していただければと思います.
 膵尾部は,前方に胃や横行結腸などが存在し,ガス,便塊などにより描出困難なことが多々あります.超音波装置の改良が進んだ現在においても,この弱点がなかなか克服されにくいのが実状です.すなわち,術者側の問題点でもあろうかと思います.しかし,これは発想を少し変えることにより,簡単(?)に膵尾部が描出されることになります.

膵尾部描出法のコツ(Ⅱ)—体型による臓器の位置関係を知る(2)

著者: 井出満

ページ範囲:P.332 - P.332

 前項では体型により,臓器の位置関係が異なることを説明しました.この項では肝臓と胃との位置関係を体型ごとにシェーマに示し具体的に理解していただきたいと思います.例えば肝臓の形状は,図Aのように肥満型の人(腹圧が大きい)では腹部の前後径(b)が長く頭足径(a)が短くなります.また胃は,肝下面に接して存在しており,肝形状(肝下面の角度)に一致した角度で位置していることになり,胃は腹部の前後径に対し垂直(立った)に近い状態で存在しています.反対に痩せ型の人(腹圧が小さい)では腹部の前後径(b)が短く頭足径(a)が長くなります.太った人とは反対に胃は腹部の前後径に対し角度を持ち,寝た状態で位置していることになります.肥満型の人が胃下垂,痩せ型の人が牛角胃や瀑状胃になりにくい理由が理解できます.
 当然,胃の走行が異なれば膵臓との位置関係も変わってくることになります.これを念頭に置いていただきたいと思います.

膵尾部描出法のコツ(Ⅲ)—肥満体型の人の胃と膵臓の位置関係を知る

著者: 井出満

ページ範囲:P.355 - P.355

 前項にて体型により,諸臓器(肝・胃・膵)の形状,位置,走行が異なることを説明しましたが,この項では位置関係を理解していただき膵尾部描出の心得(?)を説明したいと思います.
 痩せ型の人では従来から言われているように膵尾部の前方には胃が存在するが,肥満型の人の場合必ずしもそうではなく,前項で説明したように胃は腹部の前後に対し垂直(立った)に近い状態で位置しているため,膵尾部の前方には胃が存在しない場合や存存していても一部のことが多い(図B).ここで理解していただきたいことは,従来の肝臓をウィンドウとして利用する方法や胃の小彎側からの膵体部・尾部アプローチ法では,膵尾部がどうしても胃(ガスなど)が邪魔になって描出できないのは当然です.ここで肥満型の人の場合,超音波ビーム(探触子)の方向性として胃の大彎側より攻めると,胃は邪魔にならなくなり,当然視界が良好となります.

膵尾部描出法のコツ(Ⅳ)—肥満型の人の膵尾部を狙って攻める

著者: 井出満

ページ範囲:P.376 - P.376

 この項では具体的に肥満型の膵尾部アプローチの手順を説明します.
 図Cの手順にて行います.まず,①呼吸法として普通の呼吸か呼気状態で腹筋を和らげておく.②膵尾部は左腎の頭側に位置するため,まず左腎描出を行います.左上腹部の横断走査にて腹側より徐々に探触子をこじ入れていき,最後に強度の圧迫(空腸やガスなどを排除)にて左腎を描出する(左腎の描出が困難な場合,腹式呼吸を何回か繰り返し,圧迫をその呼吸に合わせてこじ入れていくと空腸のガスなどが排除しやすくなります).③左腎が描出できれば左腎上極部に移動し探触子をその位置で固定する.④次に吸気(基本的に肥満型の人は軽度から中程度,痩せ型の人は深吸気)にて膵尾部前方の腸管やガスなどを移動,排除するとともに膵尾部を腹側および足側に移動させる(このとき,吸気による腹圧に負けないよう探触子をしっかり固定しておく).⑤この時点で探触子位置を変えないで腹部をえぐり上げるように頭側に傾けていくと膵尾部が現れてきます(“うそ”と思えるぐらい簡単に?).

膵尾部描出法のコツ(Ⅴ)—縦断走査の臓器位置を知る

著者: 井出満

ページ範囲:P.385 - P.385

 前項では横断走査,左肋骨弓下縁斜走査にて膵尾部描出を説明しましたが,この項では縦断走査による膵尾部短軸像および周囲臓器との位置関係を知っていただきたいと思います.
 前項で説明したように膵尾部が得られれば,そのまま縦断走査に切り替えると膵の短軸臓が得られることになります.図Dのごとく肥満型の人は脾臓と左腎の2点の間にあり,痩せ型の人は前方に胃を認め,その3点の間に位置することになります.このことを理解して描出を試みることが重要です.左腎描出から手順を進めましたが,慣れてくれば直接尾部を狙うことも可能になります(横断・縦断走査とも).このようにして実践にて膵尾部が出せるようになると膵尾部は決して腹側より遠い位置にないということが(特に肥満型の人)理解してもらえると思います(モニタ上).膵体部から尾部を覗き込もうとするとどうしてもモニタ上,深い位置にもってこなくてはならず,術者の勝手(?)な錯覚により深い位置にあるものと解釈されていた人も少なくなかろうと思います.相手(膵臓および周辺臓器)を理解することが描出の早道でもあります.

膵尾部描出法のコツ(Ⅵ)—良いと思われる前処置がむしろ条件を悪くすることがある?

著者: 井出満

ページ範囲:P.399 - P.399

 前項までに肥満型の人の膵尾部アプローチについて説明しました.肥満型の人では膵臓の前方に胃がないことが多く,たとえ腹側に胃があったとしても呼吸法により位置を変えることが可能です.すなわち呼気状態にすると肝臓・胃は頭側に移動,膵臓は移動しにくいため膵前方の視界が良くなるのです.さらに胃の大彎側に持ってきた超音波ビームを足側から頭側にえぐり上げるようにするとモニタ上の臓器位置を簡単に変えることができます.
 一方,膵尾部では,前方の腸管やガスを移動,排除しそれを引きずり出すために深吸気を使ったりすることがあります.膵頭部・体部では,それをすることにより胃や十二指腸が前方に移動し,むしろ悪条件になることがあります.膵頭部・体部では,普通の呼吸や呼気状態で,吸気で行うとしてもわずかなほうが描出は良好と考えています.

膵尾部描出法のコツ(Ⅶ)—痩せた人のアプローチ法

著者: 井出満

ページ範囲:P.422 - P.422

 前項まで,肥満型の人のほうが膵尾部は条件が良いということで話を進めてきましたので,痩せた人は条件が悪いのか(?)となりますが,そうではありません.確かに膵尾部の前方には胃があるわけですが,ここでも考えれば膵尾部描出は決して困難ではありません.通常エコー検査では,痩せた人のほうがよく見えるわけですから,何も工夫しなくても膵尾部が描出されることは多々あります.この時になぜかと思って見てみるとわかりますが,それは,自然と胃がウィンドウになっていることだと思われます.胃があるから膵尾部が見づらいのではなく,胃の中のガスによって後方が見えないことが多いわけです.したがってガスがない,もしくは少ないときには当然,胃がウィンドウ役になり膵尾部が描出されることになります(飲水法を利用した時でもそうです).しかし,そうは言ってもいつも条件が良いわけではありませんので,当然対処法が必要となってきます.
 ここでも特別,肥満型の人と異なった手法ではなく基本的には(IV)で説明した要領で行います.それでは,胃と膵尾部とが重なり胃のガスが邪魔になって見えないではないか,とのご意見も出そうですが,ここで少し考えてみましょう.

膵尾部描出法のコツ(Ⅷ)—ガスがやや多めのときの対処法

著者: 井出満

ページ範囲:P.427 - P.427

 前項ではガスが少しの場合,呼吸法や圧迫により排除可能であることを説明しましたが,この項ではガスがやや多めの場合の対処法について説明します.
 ガスが多くウィンドウを作りにくい場合には,前項までの手段だけでは不十分なこともあります.このようなときは体位変換を行うと効果的です.胃は収縮,伸展かつ移動するものですからこれを利用し,体位を右側臥位にすれば,胃は重力によってある程度右側に移動します.そこに移動した分のスペースができることになります.

膵尾部描出法のコツ(Ⅸ)—“最終編”

著者: 井出満

ページ範囲:P.446 - P.446

(Ⅷ)まで,膵尾部描出の手法について述べてきました.これ以上もう“イヤ”と言う方もいらっしゃるかもしれませんが,あと一点お付き合いしていただきたいと思います.何かと言いますと,それは横行結腸です.横行結腸に便がないときには,今までの手法で十分なのですが,そこに便が存在しているときには,これも避けなければなりません.この場合には二通りの攻め方があります.まず,胃大彎と横行結腸との間からアプローチする方法と大腸の脾彎曲の間からアプローチする方法があります(図F).肥満型の人と痩せ型の人では胃と横行結腸との距離や大腸の脾彎曲のスペースが異なったりします.また,被検者や飲水などにより状況が変化しますので,膵尾部の位置を把握し,どのスペースを使えば描出できるのか考えていただければ十分可能だと思います.
(Ⅰ)から(Ⅸ)まで,長い道のりで疲れた読者の方もいらっしゃると思います.しかし,このように対処していただければ膵尾部は決して描出困難なものではないと思っていただけると信じています.ただし,そうはいっても圧迫・圧縮をうまく使わないと“すぐできる”というものではありません.ちょっとやってみて“やっぱりダメだ”と思わずに,根気よく,何回も繰り返し挑戦してもらえれば必ず描出できますので,ご健闘をお祈りしております.

生物の授業

著者: 秋津壽男

ページ範囲:P.451 - P.451

 よく学校健診にて心雑音で引っかかった学生が精査に訪れます.心エコー検査時に,一通り観察が終わった後,画面を見せながら心臓の構造の説明をしてあげます.
 そう,生物の授業の復習ですね.

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出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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