icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

medicina37巻13号

2000年12月発行

雑誌目次

今月の主題 糖尿病と合併症へのアプローチ

理解のための29題

ページ範囲:P.2039 - P.2045

どのように病態を把握し,治療指針を決定するか

糖尿病性合併症の動向

著者: 藏田英明 ,   田嶼尚子

ページ範囲:P.1898 - P.1900

●1型糖尿病の網膜症の進展については,世界各国で大きな差はない.2型糖尿病における網膜症の動向は,厳格な血糖コントロールの維持が糖尿病性網膜症の羅患率を左右する.
●糖尿病性腎症の発症率は人種差があり,末期腎症発症率は,わが国では米国の約2倍に達している.さらに,1998年以降,糖尿病性腎症による透析導人数が慢性糸球体腎炎を抜き,原疾患の第1位となった.

糖尿病をどう診断し,どう病態を把握するか

著者: 黒瀬健 ,   清野裕

ページ範囲:P.1901 - P.1903

●糖尿病の診断・分類は,1999年の「糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告」を参考にする.
●糖尿病の判定は慎重に行い,経口糖負荷試験は正常者と区別する必要のあるものに限って行う.
●糖尿病の型の判定では「その他の特定の機序・疾患によるもの」,特に内分泌疾患による糖尿病を見落とさないように注意する.

合併症をどう診断し,どう病態を把握するか

著者: 吉川隆一

ページ範囲:P.1905 - P.1907

●すべての糖尿病患者において合併症の診断と病態把握に努めるべきである.
●眼,腎,末梢神経,心血管系などが主要な対象臓器である.
●自覚症状が現れる前に早期診断することが肝要である.

糖尿病と合併症の治療方針をどう立てるか

著者: 大角誠治 ,   小林正

ページ範囲:P.1908 - P.1911

●糖尿病性慢性合併症は,蛋白の非酵素的糖化反応,ポリオール代謝の亢進,酸化ストレスの亢進,PKC活性の亢進が主要な機序で発症する.
●高血糖下におけるグリケーション,ポリオール代謝,酸化ストレスの亢進は,直接蛋白を修飾してその機能を変え,組織を傷害する.また,これらはPKC活性の亢進とともに細胞内MAPキナーゼを活性化し,正常遺伝子発現を変化させ,合併症につながる.
●発症機序各ステップにおける治療薬の開発は課題であるが,基本治療は高血糖を是正し,正常化することである.

糖尿病合併症の発症・進展を予防するための治療の進め方

経口血糖降下薬の使い方の基本的考え方

著者: 岩﨑直子 ,   岩本安彦

ページ範囲:P.1912 - P.1914

●経口血糖降下薬の選択にあたっては,①肥満の有無②インスリン抵抗性の程度,③上昇しているのは食前血糖のみかそれとも食前食後の双方か,などがポイントとなる.
●経口血糖降下薬の開始時には,患者に内服の時間,副作用について説明し,必要があれば低血糖時の対処方法を指導すべきである.
●単剤で十分な効果が得られない場合には,2剤の併用も考慮する.しかし,経口血糖降下薬の無効例に漫然と長期間投与することは避けるべきである.

合併症の発症・進展予防のための血糖・血圧・脂質コントロール目標

著者: 若崎久生 ,   南條輝志男

ページ範囲:P.1915 - P.1917

●血糖コントロールは空腹時120mg/dl未満,食後2時間17Omg/dl未満,HbA1c 6.5%以下を目標とする.
●血圧は13O/85mmHg未満を目標とする.
●総コレステロール200mg/dl以下,中性脂肪120mg/dl以下,HDLコレステロール45mg/dl以上を目標とする.

食事療法をどう進めるか

著者: 岡本元純

ページ範囲:P.1918 - P.1921

●食事療法は,その実施方法の習得とアドヒアランスの育成を,患者やその家族,医師,コメディカルなどが協力して行う.
●継続的な食事療法のための最適な摂取エネルギーや組成比は,体格や肥満度だけでなく,運動機能や運動量,合併症の程度,性格や好みなど,多くの因子を考慮して決められる.
●食事療法は,栄養処方だけでなく,その実施状況の把握と評価や,さらに適切な栄養処方へのフィードバックも重要である.

運動療法をどう進めるか

著者: 押田芳治 ,   佐藤祐造

ページ範囲:P.1922 - P.1924

●糖尿病治療上,運動療法は食事療法とともに「車の両輪」にたとえられる.
●糖尿病運動療法の目的は,インスリン抵抗性の是正を図り,合併症の発症・進展防止である.
●運動療法指導前には,メディカルチェックを行い,血糖などの代謝状態や潜在する合併症の存在を把握する.
●1日10〜30分,週3日以上の有酸素運動の継続が必要である.
●Valsalva呼吸を伴わないレジスタンス運動の併用も効果的である.

糖尿病合併症の発症・進展を予防するための治療の進め方—合併症の発症・進展予防に向けた経口血糖降下薬の使い方

スルホニルウレア薬

著者: 川崎史子 ,   加来浩平

ページ範囲:P.1927 - P.1929

●SU薬の主な作用はインスリン分泌促進である.
●肥満を助長し,食後血糖抑制作用は弱いという欠点がある.
●適応を考えて使えば血糖管理における有用性は高い.
●二次無効例に漫然と使用しない.

速効性インスリン分泌促進薬

著者: 吉元勝彦 ,   石田均

ページ範囲:P.1930 - P.1933

●新たなインスリン分泌促進薬として開発されたレパグリニド,ナテグリニド,ミツグリニドの3剤は,いずれもインスリン分泌促進作用が従来のスルホニルウレア(SU)薬に比べて速効かつ短時間であるため,速効性インスリン分泌促進薬として一括される.
●SU薬と同様に膵β細胞のSU受容体(SUR 1)に高親和性に結合し,KATPチャネルの閉鎖を介してインスリンの分泌を促進させるが,その構造にSU基は存在しない.
●臨床的には,食後にみられるインスリン分泌の初期反応の低下を改善し,主に食後の高血糖をよく低下させるので,「食後高血糖改善薬」の一つとして位置づけられる.わが国では,現在のところナテグリニドのみが上市されており,比較的早期の軽症2型糖尿病患者が投薬対象となる.

α-グルコシダーゼ阻害薬

著者: 河盛隆造

ページ範囲:P.1934 - P.1936

●α-グルコシダーゼ阻害薬は,糖質の急峻な分解・吸収を抑制することにより,食後の血糖値上昇を穏やかにする薬物である.奏功すれば食後の異常な血糖値上昇がみられないことから,インスリン遅延過剰分泌が抑えられ,次の食前低血糖や肥満,ひいては糖尿病の増悪を阻止しうる可能性がある.

ビグアナイド薬,インスリン抵抗性改善薬

著者: 荒木栄一 ,   本島寛之 ,   近藤龍也

ページ範囲:P.1938 - P.1940

●ビグアナイド薬,インスリン抵抗性改善薬ともにインスリン分泌が比較的保たれ,インスリン抵抗性が存在する2型糖尿病患者が良い適応となる.
●ビグアナイド薬は主に肝での糖放出抑制,インスリン抵抗性改善薬は主に末梢での糖取り込み増加により血糖値を低下させる.
●ビグアナイド薬は肥満合併2型糖尿病患者において脳血管障害の発症を抑制する可能性がある.
●ビグアナイド薬は乳酸アシドーシス,インスリン抵抗性改善薬は肝障害の副作用に特に留意する必要がある.

糖尿病合併症の発症・進展を予防するための治療の進め方—合併症の発症・進展予防に向けたインスリンの使い方

1型糖尿病

著者: 平井完史 ,   佐藤譲

ページ範囲:P.1941 - P.1943

●良好な血糖コントロールが細小血管症の予防,進展阻止,遅延に有効なことが大規模スタディにより立証され,1型糖尿病ではできるだけ強化インスリン療法を行うことが求められるようになった.超速効型インスリン,超遅効型インスリンの開発,持続型インスリン注入ポンプの進歩などにより1型糖尿病の治療にも新たな展開が開けつつある.

2型糖尿病

著者: 浜口朋也 ,   難波光義

ページ範囲:P.1944 - P.1947

●厳格な血糖管理によって糖尿病合併症の発症・進展を予防できることが大規模臨床試験によって明らかにされている.
●内因性インスリン分泌が高度に障害された症例では,良好な血糖管理を得るためにインスリン治療が必要である.
●強化インスリン療法はより生理的な血中インスリンレベルを実現するよう考案された方法で,血糖自己測定などと組み合わせることでより有効かつ安全な治療法となる.
●強化インスリン療法の問題点として,重症低血糖や体重増加,高コストなどが挙げられるが,食事療法を含む適切な外来管理と合併症予防により問題点の多くは回避しうる.

糖尿病患者の高血圧治療の進め方

著者: 久代登志男 ,   上松瀬勝男

ページ範囲:P.1948 - P.1950

●降圧薬療法を当初より導入する.
●外来血圧の降圧目標は13O/85mmHg未満とする.
●微量アルブミン尿があれば,ACE阻害薬を第一選択薬とする.
●ACE阻害薬とカルシウム拮抗薬の併用療法が降圧目標達成に有用である.
●家庭血圧が過剰降圧を予防し,患者コンプライアンスを高めるうえで有用である.

糖尿病患者の脂質代謝異常の治療の進め方

著者: 石橋俊

ページ範囲:P.1951 - P.1955

●糖尿病は,それ自体が主要な冠動脈疾患のリスクであり,積極的な治療が望ましい.
●大規模臨床試験のサブグループ解析において,糖尿病患者や耐糖能異常者でも,スタチンには冠動脈疾患の2次予防効果があることも実証されている.
●生活習慣へ介入し,糖代謝を正常化することも重要である.
●LDLコレステロール値の低下を優先する.

糖尿病患者の動脈硬化をどう把握し,どう治療するか

著者: 山崎義光

ページ範囲:P.1956 - P.1958

●糖尿病性動脈硬化には,高血糖,高血圧,高脂血症,喫煙,凝固線溶系など多数の危険因子が関与する.
●心筋梗塞・脳梗塞などの発症がなくても,より早期の診断・治療が必要である.
●高脂血症,高血圧を伴うとき抗高脂血症剤や降圧剤により明らかな効果を認めるが,血糖管理の効果は,細小血管合併症ほど明らかではない.

糖尿病合併症への対応の実際

虚血性心疾患を伴った糖尿病患者のマネジメント

著者: 戸兵周一 ,   齋藤宣彦

ページ範囲:P.1959 - P.1963

●虚血性心疾患を伴った糖尿病患者のマネジメントは,マルチプルリスクファクターの管理に尽きる.
●禁煙,体重管理(目標はBMI<23),摂取エネルギー管理(目標は総脂肪量を食事摂取総エネルギーの30%以下),血糖管理(目標は空腹時 125mg/dl以下,食後 180mg/l以下,HbA1c 6.5%以下),高脂血症管理(目標はLDLコレステロール<100mg/dl,HDLコレステロール>35mg/dl,トリグリセリド<200mg/dl),血圧管理(目標は135/85mmHg未満)が大切である.
●糖尿病患者では無症候性心筋虚血が少なくなく,虚血性心疾患のイベントを疑ったときはとにかく心電図をとってみることが重要である.

脳梗塞をもった糖尿病患者のマネジメント

著者: 中野忠澄 ,   井藤英喜

ページ範囲:P.1964 - P.1967

●糖尿病は,脳硬塞の独立した一つの危険因子とみなされる.
●脳硬塞発症時の高血糖は,組織血流の低下,嫌気的解糖,乳酸の蓄積,脳障害の拡大を招き,脳卒中の予後を悪くする.
●適切かつ迅速な検査に基づく診断とほかの危険因子の把握に努める.
●急性期治療では,速やかな血糖コントロールの可否が予後を左右する.
●慢性期には,高血圧および糖尿病のコントロールが重要であり,抗血小板療法や抗凝固療法が有用である.

網膜症の治療をどう進めるか

著者: 堀貞夫

ページ範囲:P.1969 - P.1971

●網膜症の発症には,罹病期間と血糖コントロールが大きく関与する.
●罹患後数年から10年で発症することが多い.この期間は比較的安全である.年1回のスクリーニングも簡便化してよいかもしれない.
●網膜症の発症予防が第1次治療である.治療の主体は血糖コントロールである.
●単純網膜症は,血糖コントロールで自然軽快することもある.
●増殖前網膜症は,失明予防のための光凝固の良い適応である.
●増殖網膜症の患者は,生命を脅かすほかの合併症をももつ.

早期腎症への対応

著者: 久代昌彦 ,   四方賢一 ,   槇野博史

ページ範囲:P.1973 - P.1976

●早期腎症の診断基準は,24時間尿では尿中微量アルブミン15μg/min以上,随時尿ではアルブミン/クレアチニン濃度比(ACR)30μg/mg・Cr以上である.
●早期腎症期の治療で重要なのは血糖管理と血圧管理である.
●血糖コントロールについてはHbAIC値6.5%以下を目標とする.
●降圧の目標としては130/85mmHg以下が望ましい.

糖尿病性腎症の透析導入の実際

著者: 中尾俊之 ,   岡田知也

ページ範囲:P.1977 - P.1979

●糖尿病性腎症の適切な透析導入時期は,厚生科学研究・腎不全医療研究班によるガイドラインで60点以上となった場合である.
●血液透析と腹膜透析の選択は,患者の病態や社会的状況をふまえて決定する.
●食事療法ではエネルギー,蛋白質,塩分,水分,カリウム,リンなどに留意する.
●血糖コントロールは食事療法とインスリン療法が主体となるが,一部の経口糖尿病薬も用いうる.

糖尿病性神経障害の治療の進め方

著者: 安田斎

ページ範囲:P.1980 - P.1982

●糖尿病性ポリニューロパチーは足袋型の感覚異常を呈する.
●神経障害が存在しない場合には,血糖コントロールはHbA1Cで6.5%以下を目指す.
●無症状でも,神経学的検査や神経機能検査で異常が出現すれば薬物療法を開始する.
●薬物療法の基礎薬はアルドース還元酵素阻害薬(ARI)である.
●糖尿病性ポリニューロパチーの存在が確実な場合は,血流改善薬などの作用の異なる薬物を併用投与する.

足病変の治療の進め方

著者: 新城孝道

ページ範囲:P.1983 - P.1986

●フットケアは,まず身近な問題の着手が重要である.
●糖尿病足病変は,①糖尿病性神経障害,②末梢循環障害,③感染症についての客観的な評価が重要である.
●活動性足病変は,足の安静,免荷と保護が重要である.

病態に応じた個々の症例への対応

境界型—軽症糖尿病の外来診療

著者: 伊藤千賀子

ページ範囲:P.1988 - P.1990

●境界型はOGTTのみで診断され,糖尿病へのhigh risk群であるとともにインスリン抵抗性や動脈硬化性疾患が高率にみられる.
●糖尿病発症例では境界型の時期が10年あまり継続しており,糖尿病の一次予防のために介入するきわめて重要な時期である.
●肥満はインスリン抵抗性を増大させることから,栄養・運動指導による肥満の是正が必要である.
●境界型の管理は身体活動度を増加させ,栄養面では摂取エネルギー量,動物性脂質や単純糖質の過剰摂取の是正,食物繊維や減塩を奨励することが重要である.食生活実態は個人差が大きいことを考慮し,適切な個別指導と動機付けが指導効果を上げる方策といえる.

肥満糖尿病の治療方針

著者: 浜口和之 ,   坂田利家

ページ範囲:P.1991 - P.1993

●体重減少は肥満2型糖尿病の血糖コントロールを劇的に改善する.
●肥満2型糖尿病患者には,食行動に独特な“くせ”や“ずれ”がある.
●食行動質問表をダイアグラム化し,異常な食行動を抽出する.
●グラフ化体重日記では,体重変動を“きれい”“汚い”の感覚で捉えられる.
●日本食化超低エネルギー食療法は,空腹・満腹感の修復に適している.

糖尿病合併妊娠の治療指針

著者: 佐中真由実

ページ範囲:P.1995 - P.1997

●児の奇形や,母体の糖尿病合併症の発症・悪化を防ぐためには,妊娠前からの治療・管理が重要である(計画妊娠).
●妊娠時の薬物療法にはインスリンを用いる.
●妊娠時はインスリン抵抗性である.
●最大インスリン需要量は,1型糖尿病妊婦では非妊娠時の約1.5倍,2型糖尿病妊婦では約2倍である.
●出産後,インスリン需要量は急激に減少する.

高齢者糖尿病への対応

著者: 宮尾益理子 ,   鳥羽研二

ページ範囲:P.1998 - P.2001

●加齢に伴い耐糖能は低下する.
●高齢者は脱水に陥りやすく,低血糖症状も出現しにくい.
●高齢者では,糖尿病の状態のみならず,併存疾患,個々の家庭環境,生活能力,認容性,生命予後などを十分に考慮し,治療方法の選択,コントロール目標の設定を行わなければならない.

肝硬変合併糖尿病への対応

著者: 神田勤 ,   今野英一 ,   西田勉

ページ範囲:P.2002 - P.2004

●肝硬変合併糖尿病の主因はインスリン抵抗性であるため,初期には空腹時血糖値は正常値を示し,食後2時間血糖値が上昇する.
●HbA1Cは赤血球寿命短縮のため,偽低値(0.5〜2.2%,平均1.3%)を呈する.
●早期診断には75gOGTT,1,5-AG,糖化アルブミン,食後2時間血糖値の測定が有用である.
●SU剤は無効であり,食事療法,α-GIにて血糖管理不良ならば,インスリン療法が必要となる.

ステロイド,感染,手術時の対応

著者: 小田原雅人

ページ範囲:P.2006 - P.2008

●ステロイドにより耐糖能は悪化し,易感染性が増すので,高血糖是正が重要である.ステロイド投与量の増減とともに治療の微調整が必要となる.
●糖尿病患者では,非糖尿病者では稀な感染症も合併しやすい.重症感染症ではインスリンによる厳格な血糖管理が必要である.
●手術症例では糖尿病の有無の確認が必要である.血糖管理は術前に十分行い,一時的なインスリン治療が必要になることもある.手術時は高血糖と低血糖に注意が必要である.

糖尿病のエマージェンシー

著者: 野田光彦 ,   門脇孝

ページ範囲:P.2009 - P.2014

●糖尿病性昏睡の治療では,輸液・電解質管理が,インスリンの持続静注と並んで重要である.インスリンの持続静注速度は0.1単位/kg/時,輸液量は最初の6時間で3l程度を目安に,心機能に問題のある場合はこれにも留意しつつ施行する.
●乳酸アシドーシスでは,原病の治療が重要である.
●低血糖性昏睡ではグルコースの静注を行う.意識が回復したのち,いったん覚醒した患者が再び昏睡に陥ることがあるので,注意を怠ってはならない.

不安定糖尿病

著者: 髙根直子 ,   牧田善二

ページ範囲:P.2016 - P.2018

●不安定糖尿病の治療として,インスリン持続皮下注入療法(continuous subcutaneous insulin infusion:CSII)が有力な治療法と考えられている.
●従来のインスリン頻回注射と比較して,CSIIのほうが,HbA1Cも低下し,重症低血糖の頻度も少ないと報告されている.
●特に暁現象(dawn phenomenon)をきたす症例や,夜間の無自覚性低血糖を含む重症低血糖を繰り返す症例は,プログラミング可能なインスリンポンプの適応である.

患者教育・療養指導の観点から

合併症をもつアドヒアランス不良な症例への対応

著者: 石井均

ページ範囲:P.2020 - P.2021

●合併症は必ずしもセルフケア行動への動機にはならない.
●合併症が重症になるほど,糖尿病をコントロールできるという自信が減少する.また,心理的負担は大きくなる.
●患者の感情や考えを聞くこと,適切な情報を提供し合理的な目標を設定すること,サポートグループなどが有効な対応法である.

日本糖尿病療養指導士認定制度の発足にあたって

著者: 北村信一

ページ範囲:P.2022 - P.2024

●糖尿病の正しい知識と熟練した療養指導技能を有し,わが国の医療法の下で指導業務を行う有能なコメディカルの方々を日本糖尿病療養指導士に認定する同認定機構が2000年2月に発足.わが国の糖尿病と合併症の増加に対応して,患者の健康と福祉の向上に貢献するよう活動を始めた.

座談会

糖尿病診療の実際の進めかた

著者: 柏木厚典 ,   渥美義仁 ,   戸辺一之 ,   門脇孝

ページ範囲:P.2025 - P.2036

 門脇(司会)本日はお忙しいところお集まりいただきましてありがとうございます.本特集のテーマは「糖尿病と合併症へのアプローチ」です.この座談会では,先生方が目の前の患者を日々どのように診療を進めているか,その実際のアプローチをお話しいただきたいと思います.

medicina Conference・30

左肺尖部に異常陰影を指摘された42歳の糖尿病患者

著者: 北靖彦 ,   瀬川和彦 ,   森下慎二 ,   大橋洋綱 ,   北原光夫

ページ範囲:P.2050 - P.2059

 症例:42歳,男性,会社員.
 主訴:精査目的
 既往歴・家族歴:糖尿病と言われた以外に既往は特になし,母方に糖尿病があり,家族には結核はない.
 現病歴:1995年に人間ドックの検査にて糖尿病と診断されたが,放置していた.1997年には空腹時血糖が278mg/dlであったが,治療を受けていなかった.

新薬情報・6

アジスロマイシン水和物(ジスロマック®

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.2060 - P.2061

 適応■アジスロマイシン感受性のあるグラム陽性菌(ブドウ球菌,連鎖球菌,肺炎球菌)とグラム陰性菌(モラクセラ・カタラーリス菌,インフルエンザ菌),マイコプラズマ,クラミジアによる市中感染の上・下気道感染症と中耳炎.
 剤型■カプセル(アジスロマイシン100mg含有),細粒(1g中にアジスロマイシン100mg含有).

図解・病態のメカニズム—呼吸器疾患・2

上気道狭窄

著者: 田崎厳 ,   岩元徳全 ,   桑平一郎

ページ範囲:P.2063 - P.2066

概念
 上気道とは,概念的には気管分岐部から鼻腔までの領域を指すのが一般的であるが,解剖学的には鼻腔,咽頭および喉頭を総称したものである.
 上気道狭窄とは,機能的あるいは器質的な種々の原因により気流閉塞が生じ,換気機能に障害をもたらす疾患である.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.2067 - P.2072

カラーグラフ 病原微生物を見る・15

バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)

著者: 藤本修平 ,   富田治芳 ,   野村隆浩 ,   池康嘉

ページ範囲:P.2075 - P.2079

はじめに
 腸球菌は腸管常在菌で日和見感染菌である.腸球菌は種々の抗生物質に自然耐性であるだけでなく獲得耐性により高度薬剤耐性となる.その中で,バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin resistant enterococcus:VRE)が欧米において院内感染の重要な原因菌となっている.VREの多くはバンコマイシンのみならず,感染症治療のために先行使用したペニシリンやアミノグリコシド系抗生物質にも高度耐性であるため,その感染症に有効な抗生物質が存在しないことも起こりうる.そのためVREの増加は医療上重要な問題となりうる.

演習 心電図の読み方・2

QRSの異常(1)—電気軸の異常(右軸偏位,左軸偏位)

著者: 近森大志郎 ,   山科章

ページ範囲:P.2080 - P.2085

Case
 症例1:53歳,男性.健康診断での心電図.
 既往歴,現病歴,身体所見:特記すべきことなし.

--------------------

「medicina」第37巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

icon up
あなたは医療従事者ですか?