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雑誌目次

雑誌文献

medicina37巻2号

2000年02月発行

雑誌目次

今月の主題 アレルギー診療の実際 Editorial

アレルギー炎症の発症機序に基づく予防対策と治療方法

著者: 長屋宏

ページ範囲:P.168 - P.171

●CD 4 T細胞は,IL-4の影響下でTH 2細胞に分化するとIL-4やIL-5を産生遊離してアレルギー炎症を起こす.
●CD 4 T細胞がIFN-γやIL-12の影響下で分化するとTH 1細胞となり,IL-2やIFN-γを産生して細胞性免疫に関与する.
●アレルゲンがT細胞の抗原レセプターと結合しても,T細胞表面のCD28分子と抗原提示細胞表面のB7分子の結合による第二のシグナルがないとT細胞は無反応状態になる.
●喘息患者がアレルゲンを吸入すると,マスト細胞から遊離されたヒスタミンの刺激で気道からIL-16が遊離され,アレルゲン非特異的にCD 4 T細胞を遊走,活性化して気道炎症を起こして気道過敏性を亢進させる.
●アレルゲンの回避と減感作療法によってTH 2細胞への分化,増殖の抑制とマスト細胞のヒスタミン遊離の抑制で,IL-16を介するCD 4 T細胞の活性化を抑えてアレルギー炎症悪化の悪循環を断つ.

Introduction

諸外国におけるアレルギー疾患治療方法の傾向—日本と比較して

著者: 岡田正人

ページ範囲:P.172 - P.175

●日本と他先進国におけるアレルギー診療にはいくつかの重要な相違がみられる.
●各臓器別アレルギー疾患の専門家ではなく,多臓器に及ぶアレルギー疾患全体を診療できるアレルギー専門医の育成が先進国における標準である.
●簡潔で理解しやすく,実地臨床の場で容易に使用可能なガイドラインの普及は,アレルギー診療の質を向上させ死亡率低下にもつながる.
●アレルギー診療における薬物療法の役割はより重要化しており,臨床科学的データに基づく慎重な薬物の選択が必須となる.

アレルギー患者の問診と診断のポイント

著者: 長屋宏

ページ範囲:P.176 - P.178

●アレルギー症状が若年者,特に小児期に起こるほどアトピー素因によるものである可能性が高い.
●喘鳴が聴かれたときに患者にとって重要なことは,気道過敏性亢進の有無や気管支喘息という診断名の定義に当てはまるか否かを議論することではなく,アトピー型の喘息であるか否かを知るためにアレルギー皮膚テストを行うことである.
●血清総IgE値が低くてアレルゲン特異的IgE(RAST)が陰性でも,アレルギー皮膚テストはRASTよりも感度が高いので,皮膚テストも陰性でなければ非アトピー型とはいえない.

アレルギー疾患の根本的治療法

アレルゲンの除去と回避

著者: 佐々木聖

ページ範囲:P.181 - P.183

●アレルゲンの除去・回避はアレルギー疾患の根本的治療法である.そしてアレルギー発病予防法でもある.予防にはアレルゲンによる感作・発病を防ぐ一次予防法と,すでにアレルゲンに感作・発症している場合,さらなる発症・悪化を防ぐ二次予防法の概念がある.
●現在実行しえて効果を確実にみることができ,そしてmajor allergenであるチリダニ抗原の除去・回避について記した.

アレルゲン特異的減感作療法(免疫療法)

著者: 長屋宏

ページ範囲:P.184 - P.188

●アレルゲン特異的減感作療法は,アレルゲンの回避に次ぐ最善の予防的治療法であり,対症療法と併用してできるだけ早く始めるべきである.
●吸入ステロイドは,特に小児では末梢気道に届く割合が低く,吸入を中止すれば治療効果は消失するが,減感作治療効果は全身にゆきわたり,中止後も免疫治療効果は何年も持続しうる.
●非可逆的な肺機能の低下を予防するためには,喘息の発症から2年以内に吸入ステロイド治療を始めるべきだが,高用量の吸入ステロイドは成長阻害の可能性があるため,吸入ステロイドを併用して減感作治療を直ちに始めるべきである.

アレルギー疾患の薬物療法

抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬の種類,作用機序と使い方

著者: 中川武正

ページ範囲:P.190 - P.193

●抗ヒスタミン薬は,ヒスタミンH1受容体に拮抗して作用する対症療法薬であり,急性効果が期待できる.
●抗アレルギー薬は,I型アレルギー反応とそれに続発するアレルギー性炎症を制御する薬剤として理解されている.
●抗アレルギー薬は,予防効果を期待する長期管理薬であり,最大効果発現まで2〜4週を要する.

吸入および経口ステロイド薬の作用機序・使い方—気管支喘息において

著者: 小林信之 ,   工藤宏一郎

ページ範囲:P.194 - P.197

●ステロイドの抗喘息作用機序は多岐にわたるが,サイトカインや炎症性メディエーターの産生抑制が最も重要である.
●他の作用機序として,血管透過性や気道分泌の抑制,気道過敏性の抑制,β2刺激薬の作用増強などが挙げられる.
●プロピオン酸フルチカゾン(FP)はドライパウダーの吸入ステロイド薬で,べクロメサゾン(BDP)の2倍以上の抗炎症効果があり,かつ全身性副作用が少ない.
●経口ステロイド薬は発作治療薬(レリーバー)として短期間(3~10日)投与する.

吸入および経口気管支拡張剤(β2刺激薬とテオフィリン)の使い方

著者: 小川忠平 ,   佐野靖之

ページ範囲:P.198 - P.200

●吸入β2刺激薬(MDI)は気管支拡張作用に優れるが抗炎症作用に乏しいので,頻用させないように吸入ステロイド薬などできちんと治療する.
●テオフィリン薬は有効血中濃度(5〜20μg/ml)を維持するとともにmorning dipに効果的なように用いる.
●テオフィリン血中濃度に影響を及ぼす因子に気をつける.
●中等症〜重症はもとよりであるが,軽症であっても抗炎症作用に優れた吸入ステロイド薬などの併用を念頭に置いておく.

鼻炎

アレルギー性鼻炎の発症機序,病態と鑑別診断

著者: 奥田稔

ページ範囲:P.202 - P.204

●アレルギー性鼻炎は,発作性反復性のくしゃみ,水性鼻漏,鼻閉を3主徴とする鼻粘膜のI型アレルギー性疾患である.
●アレルギー反応は粘膜上皮層肥満細胞の脱顆粒をトリガーとして起こる即時相反応と,その後に起こる遅延相反応があるが,実際の患者鼻粘膜ではこれらの反応が交錯,重積している.
●I型アレルギー疾患としてみると,アトピー性皮膚炎と喘息との合併が多い.
●鼻炎の立場からは本疾患は鼻炎の一つで,感染性鼻炎,非感染性非アレルギー性過敏性鼻炎などとの鑑別が必要である.

花粉症の診断

著者: 宇佐神篤 ,   岩崎幸司 ,   柘植昭宏

ページ範囲:P.205 - P.207

●花粉症診断の検査法は,耳鼻科的にはアレルギー性鼻炎のそれと大きく異ならない.
●抗原検査にはスクリーニングテストとしての皮膚テスト,IgE抗体測定があり,鼻症状の発症責任抗原であるかを判定するための鼻誘発テストがある.
●花粉抗原には固有の飛散期間があり,それに沿った花粉症の発作期があるので,患者の発作期から大まかに花粉抗原を推定可能である.
●わが国で重要な花粉抗原には,スギ,イネ科,ブタクサ属,ヨモギ属がある.

花粉アレルゲン回避と減感作療法

著者: 沼田勉 ,   今野昭義 ,   寺田修久

ページ範囲:P.208 - P.209

●どのような治療を選択しても,抗原回避の努力は必須である.
●スギ花粉症が60歳前に自然寛解する頻度は10%以下である.
●素因の強い者,抗原特異的IgE抗体値の高い者,小児期発症者では自然寛解が起こりがたい.重症スギ花粉症で関東以西に居住する者,中等症以上の通年性アレルギー性鼻炎症例では,根治を期待できる唯一の治療法として減感作療法の適応を考える.

花粉症の薬物療法

著者: 大久保公裕

ページ範囲:P.210 - P.212

●抗アレルギー薬の使用法で初期療法とも呼ばれる季節前投与法があり,スギ花粉症に対して効果が高い.
●局所ステロイド薬,抗コリン薬,血管収縮薬などの点鼻薬を併用して症状を緩和させる.
●患者のQOLに合わせて薬剤を選択する.
●薬物療法は対症療法であり,根治療法にはなりえない.

喘息

小児喘息の発症機序・病態と予後—小児喘息は自然に治るか?

著者: 小田嶋博

ページ範囲:P.214 - P.216

●初めから喘息がある小児はいない.喘息の発症前の段階に戻すことができれば喘息は自然に治っている.
●小児期には初発の発作がある.このときに原因を可能な限り追求し除去する.
●発作を繰り返していけば,気道過敏性が亢進し,誘因は多くなり複雑となる.
●特に小児期には,発作の治療のみを考えるのではなく,発作の持続を絶ち,原因の除去を考えなければならない.
●以上が十分に行われれば,喘息は自然に治っていくはずである.

小児喘息の治療ガイドライン—吸入ステロイド療法の問題点とアレルゲン除去の重要性

著者: 末廣豊 ,   亀崎佐織 ,   福井徹哉

ページ範囲:P.217 - P.219

●小児の気管支喘息では,成人の喘息と違ってステロイド吸入療法は必ずしも治療の第一選択ではない.
●アレルゲン対策・環境調整が薬物療法に先駆けて重要視されるべきものである.
●小児喘息の予防・管理ガイドラインでは,中等症持続型でDSCG+サルブタモールの次に吸入ステロイドを位置づけている.
●しかしながら,ステロイド吸入の導入が遅れることによるデメリットも十分に考慮して,開始のタイミングを失わないように注意が必要である.

成人喘息の発症機序,病態と予後

著者: 可部順三郎

ページ範囲:P.220 - P.222

●喘息発症にかかわる因子には,①素因,原因因子(アレルゲン,薬物など),寄与因子(喫煙,感染など)がある.
●気道炎症が加わって気道過敏性を亢進させ,炎症の持続とリモデリングにより慢性化する.
●慢性化は不可逆的変化を招く可能性があり,恒常的肺機能低下が起これば生命予後に悪影響を及ぼす.
●喘息死は年々減少傾向にあったが,近年は世界的に横ばいか,やや上昇傾向にある.わが国の喘息死亡率は欧米に比べてまだかなり高い.

喘息の発症,増悪にかかわる原因アレルゲン回避の重要性

著者: 安枝浩

ページ範囲:P.224 - P.225

●アレルゲンへの曝露と感作,および気管支喘息の発症,臨床症状との間には明確な因果関係がみられる.
●ダニアレルゲン回避策によって実際に曝露のレベルを低下させることができれば,それに対応して感作の阻止,症状の改善がみられる.
●現時点における最も有効なダニアレルゲン回避策は,ダニアレルゲン粒子を通過させない素材でできた防ダニフトンカバーの使用である.

喘息の減感作療法

著者: 冨田尚吾

ページ範囲:P.226 - P.229

●減感作療法はアレルギー反応に一種の“慣れ”をつくることにより症状の軽減ないしは完治を目的とする.
●病因であることが病歴,RASTなどで明らかなアレルゲンを選んで実施する.喘息発作やアナフィラキシーの出現に備え,注射後30分は監視下に置く.
●食物アレルゲンや真菌類の減感作は通常実施しない.
●初回の注射は皮膚テストの陽性閾値よりも薄い濃度から始め,以後漸増する.
●減感作療法は基本的に即効性が乏しく(急速減感作を除く),長期にわたるものであることを患者によく理解させておく.
●減感作の機序としてT細胞アナジー説が注目されている.

成人気管支喘息患者に対する吸入ステロイド療法の早期導入の有用性

著者: 鈴木直仁

ページ範囲:P.231 - P.233

●気管支喘息における気道炎症の持続は気道のリモデリングと過敏性の亢進を惹起し,不可逆な閉塞性障害をもたらす.
●喘息患者は加齢による呼吸機能の低下が健常人よりも大きい.
●呼吸機能を正常に保ち,気道過敏性を改善させるためには,喘息発症早期から吸入ステロイド療法を開始することが重要である.

成人喘息の急性発作に対する治療

著者: 大田健

ページ範囲:P.234 - P.236

●成人喘息の急性発作を治療する際には,発作の強さを直ちに評価し,発作強度に応じた段階的治療を施行する.
●薬物としては,β2刺激薬,エピネフリン,テオフィリン薬(アミノフィリン),ステロイド薬などを投与し,低酸素血症には酸素投与,重篤な呼吸不全には人工呼吸を施行し,臨機応変に対処することが重要である.
●横になれる軽度ではβ2刺激薬の吸入をまず試み,起座呼吸のある中等度ではβ2刺激薬からステロイド薬までを選択肢とし,動けない高度以上ではβ2刺激薬からステロイド薬までの薬物を駆使して寛解を図る.

成人喘息の長期管理治療

著者: 長坂行雄 ,   秋山慶太 ,   下村修也 ,   中野直子

ページ範囲:P.237 - P.239

●喘息患者の長期管理には,ダニやハウスダストなどの原因抗原を減らす,ペットを飼わない,などの生活指導があるが,実効をあげるのは困難である.
●最近では強力な抗炎症薬(=長期管理薬),すなわち吸入ステロイド薬に加えて抗アレルギー薬,テオフィリン,β刺激薬(特に貼付薬)などの長期管理薬によって良好なコントロールが得られるようになった.これらの薬剤を重症度によって使い分ける.
●喘息治療ガイドラインに準じて長期管理薬の重症度に応じた使い分けをしたうえで生活環境の整備を図ることが,より良い長期管理につながる.

高齢者喘息の発症機序,病態と治療の注意点

著者: 長谷川眞紀

ページ範囲:P.241 - P.243

●高齢者では約半数が非アトピー型(皮膚テスト全陰性+カンジダ単独陽性)である.
●皮膚反応陽性例については,血清中特異IgE抗体,誘発反応陽性率は若年者と大差ない.
●高齢者でも治療の原則は変わらない.
●合併症の有無によって原則を柔軟に応用しなければならない.
●吸入薬(MDI)はスペイサーを使用して吸入させる.また頻回の吸入指導が必要である.
●テオフィリン製剤の代謝が遅延して,血中濃度が上昇することがあるので注意する.

慢性閉塞性肺疾患(COPD)と喘息

著者: 馬島徹 ,   堀江孝至

ページ範囲:P.244 - P.247

●COPDには肺気腫,慢性気管支炎,気管支喘息の一部が含まれ,それぞれがオーバーラップしている.
●COPDや喘息では気道粘膜にマクロファージや活性化T細胞の浸潤がみられ,慢性気管支炎では杯細胞過形成や粘膜下腺の細胞増生,肥大がみられ,喘息では好酸球,T細胞,肥満細胞,好塩基球などの炎症細胞や,気道上皮の剥離,粘膜・粘膜下の浮腫,上皮杯細胞化生,粘膜下腺過形成などを認める.
●COPD,喘息の治療にはβ2刺激薬,テオフィリン薬,抗コリン薬の気管支拡張薬が用いられるが,COPDでは抗コリン薬,喘息では吸入β2刺激薬が第一選択である.テオフィリン薬は両者に有効である.喘息では吸入ステロイドは最も効果があるが,COPDでは確立されていない.

アスピリン喘息

著者: 末次勸

ページ範囲:P.249 - P.251

●アスピリンだけでなく,すべての酸性NSAIDsにより発作が誘発される喘息である.食品・医薬品添加物,自然界のサリチル酸化合物でも発作の増悪が認められる.
●アトピーを合併しうるが,本症自体は非アレルギー性の喘息である.
●臨床像の特徴は内因型に類する.すなわち,通年型である,30歳代に発症のピークがあり成人に多い,女性にやや多発する,好酸球増多をしばしば伴う,初診時重症例が多い,鼻茸・慢性副鼻腔炎・嗅覚著明低下を高率に認める,アトピーを合併しなければ総IgE値は低く,特異的IgEも陰性である.
●治療は徹底的な発作誘発物質の除外と発作時の対策を基本とする.

妊娠と喘息

著者: 大友守

ページ範囲:P.252 - P.255

●アレルゲンの除去など環境の整備も重要.
●吸入ベクロメタゾン(BDP;800〜1,000μg/日まで),テオフィリン(血中濃度8〜12μg/ml),β2刺激薬などは妊娠時にもほぼ安全とされ,これらを重症度に応じて段階的に使用.
●妊婦は薬への不安が強いので十分な説明を.
●ピークフローが予想値の60%以下では,経口プレドニン®(20〜30mg程度)の短期投与を.
●急性発作時の治療は一般患者とほぼ同じであるが,症状が続けば早めに入院を考慮.酸素飽和度が95%以上なるように酸素を使用.
●ステロイド全身投与を受けていた患者には,分娩時ヒドロコルチゾン100〜200mgの点滴静注を考慮.
●陣痛促進剤プロスタグランジンF2α®は,喘息患者では使用禁忌.
●出産1〜3ヵ月後は喘息症状が再現しやすいので,出産後は重症度に応じた治療に戻す.

職業性喘息

著者: 清水泰生 ,   中澤次夫

ページ範囲:P.257 - P.259

●職業性喘息は特定の職場で,その職業特有の物質に暴露され,一定期間後に主としてアレルギー的機作によって発症する気管支喘息である.
●原因物質は多岐にわたり,わが国では近年,従来の高分子性物質のほかに低分子性物質の増加が目立つ.
●診断は本症を疑うことから始まるので,問診が非常に重要である.症状発現と作業との因果関係をよく確認する.
●対策は予防が重要であり,原因物質の除去,減量など雇用側と作業側の協力・理解が必要である.薬物療法は非職業性のそれに準ずる.

好酸球増多を伴う肺疾患の鑑別診断と治療

著者: 山本尚実 ,   秋山一男

ページ範囲:P.260 - P.262

●好酸球性肺炎はPIE症候群を拡大解釈した疾患概念と考えられる.
●好酸球性肺炎の臨床経過には,自然軽快を示す症例から急速な経過で急性呼吸不全を呈し人工呼吸管理を必要とする症例もあることから,迅速な診断とステロイドを中心とした早期の治療が必要である.

アレルギー疾患の危機管理と救急治療

アナフィラキシー,急性じんま疹と血管浮腫の原因,予防と救急治療

著者: 高藤繁

ページ範囲:P.263 - P.265

●アナフィラキシーはIgE抗体の関与するI型アレルギーによって起こる.アナフィラキシーの一症状として,じんま疹,血管浮腫がみられることがある.アナフィラキシーの原因物質として,βラクタム系抗生物質などの薬剤,食物,ハチ毒などがある.
●血管浮腫は,補体第一成分阻害因子の異常に基づいて起こることがある.
●薬物によるアナフィラキシーの予防には問診が重要であり,また,予知手段として皮内テストやプリックテストが行われる.
●アナフィラキシーショックの治療では,エピネフリン皮下注が第一選択であり,循環不全あるいは気道閉塞に対する救急処置が中心となる.

食餌依存性運動誘発アナフィラキシーの原因と治療

著者: 高藤繁

ページ範囲:P.266 - P.267

●食餌依存性運動誘発アナフィラキシーの原因食物としては,エビ,カニ,カキなどの貝・甲殻類と小麦製品が多い.
●食事終了から症状発現までの時間は30分〜3時間半,運動開始から症状発現までの時間は5〜50分が多い.
●症状は,じんま疹,呼吸困難,意識障害が多い.
●診断には詳細な問診が重要である.
●予防については,食後3時間は運動を控えるように指導すること,また,原因食物の摂取を避けるよう指導することが重要である.
●アナフィラキシーショックが発症したときは,他の原因で生じた場合と同様の救急処置を要する.

全身性アレルギー疾患

アトピー性皮膚炎の発症機序・病態と治療

著者: 池澤善郎

ページ範囲:P.269 - P.272

●アトピー性皮膚炎におけるアレルギー反応のタイプには,I型のIgE抗体伝達性の早発性反応(EPR;別名膨疹紅斑反応)と遅発性反応(LPR)ならびにIV型のT細胞伝達性遅延型過敏反応(DTHR)などがある.
●患者の症状とその進行に合わせて,1次治療,2次治療,3次治療とステップアップする.
●ステロイド外用剤の減量や離脱を念頭に置いて使用し,副作用の出やすい顔面は原則として避け,ステロイド軟膏の減量と離脱を可能にするために,難治例ではステロイド外用剤だけに頼った治療をしないで,食餌療法,環境改善,抗アレルギー薬,抗真菌剤や抗菌剤の併用,心因性反応に配慮した掻跛対策などの原因療法やステロイド外用療法以外の病態・対症療法をできるだけ併用する.
●ステロイド軟膏の減量・離脱のために,新しいタイプの免疫抑制剤軟膏,非ステロイド消炎軟膏・尿素軟膏・ヒルドイド軟膏・アズノール軟膏・白色ワセリン・亜鉛華軟膏などのスキンケア軟膏を併用する.

食物アレルギーの原因と対策

著者: 海老澤元宏

ページ範囲:P.273 - P.275

●食物アレルギーは圧倒的に小児期(特に乳幼児)に多く認められるが,成人においても認められる.
●小児における発症のピークは1歳前後で,鶏卵,牛乳が圧倒的に多く,小麦,大豆,そば,ピーナッツなどがそれに続く.
●小児期発症の食物アレルギーの約9割は自然治癒するといわれている.成人での食物アレルギーは自然治癒しなかった小児期発症例と魚介類,ナッツ類,果物などによる成人型の食物アレルギーである.成人の果物による経口アレルギー症候群なども最近増加している.
●診断はIgE抗体の検出だけでは不十分で食物除去・負荷試験が最終的に必要である.

薬物アレルギーの原因と対策

著者: 鈴木修二

ページ範囲:P.276 - P.277

●アレルギー発症機序に関与する諸細胞,諸器官への薬物の直接的作用による過敏症も,臨床的に薬物アレルギーと同列に論じられることが多い.
●β-ラクタム環を有する抗生物質は,アナフィラキシー(「ア」)反応を起こす薬物の代表である.ヨード造影剤過敏症,局所麻酔剤過敏症のごく一部で,この機序を介するものがある.ヨード造影剤は,「ア」様反応を起こす代表的薬物である.
●局所麻酔剤によるショック症例のほとんどは,アレルギー反応によらない.
●アレルギーの型に合った原因検索,問診,薬物使用時の注意,型に合った治療などが対策の骨子である.

ハチアレルギーの診断と治療

著者: 湯川龍雄 ,   平田博国 ,   福田健

ページ範囲:P.279 - P.283

●ハチアレルギー(hymenoptera allergy)は,アナフィラキシーショックを惹起し,年間30〜50例の死亡報告例があり,重要な全身性アレルギー疾患の一つと考えられる.
●診断は,ハチ毒(スズメバチ,アシナガバチ,ミツバチなど)に対するIgE抗体を皮膚テスト,血液検査(RAST法)で検出する方法が一般的である.
●治療は,根本療法(減感作療法)と対症療法(薬物療法)の二つに大別されるが,本邦では前者に保険適用がなく,また,後者も欧米で使用が一般化されている救急治療キットが認可されておらず,今後の改善と普及が望まれる.

ラテックスアレルギー

著者: 赤澤晃

ページ範囲:P.284 - P.285

●ラテックスアレルギーは,国内ではまだ認知度の低いアレルギーであるが,患者は増加する可能性がある.
●予防方法は,医療従事者自らがハイリスクグループであり,感作されると就業不能,アナフィラキシーショックを起こす可能性があることを自覚することである.

鼎談

アレルギー疾患の予防および早期診断・治療

著者: 奥田稔 ,   秋山一男 ,   長屋宏

ページ範囲:P.289 - P.302

 長屋(司会) 本日は,アレルギー疾患のなかでも,特に日本でも患者数が多く問題となっているアレルギー性鼻炎(花粉症)と気管支喘息を中心に,その予防および早期診断と治療介入について先生方にお話を伺いたいと思います.
 アレルギー性鼻炎患者数の推移
 長屋 アレルギー性鼻炎(花粉症)は,ここ20年いろいろ問題になっています.まず,花粉症の患者数などの最近の動向を簡単にご説明いただけますか.

理解のための32題

ページ範囲:P.305 - P.311

カラーグラフ 病原微生物を見る・6

サルモネラ

著者: 小花光夫 ,   岡田京子 ,   川嶋一成

ページ範囲:P.323 - P.325

 サルモネラ属(Salmonella spp.)は腸内細菌科に属する周毛性鞭毛をもつ運動性のグラム陰性桿菌(図1〜3)であり,その病原性からは全身性感染症であるチフス性疾患を惹起するチフス菌,パラチフス菌と,それ以外の多くの非チフス性サルモネラ属とに大別される.チフス性疾患については本連載ですでに取り上げられているので(第36巻12号),本稿ではチフス菌,パラチフス菌を除いた非チフス性サルモネラ属について述べる.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.327 - P.333

図解・病態のメカニズム 胃疾患・4

胃粘膜傷害と修復のメカニズム

著者: 高橋盛男 ,   片山裕視 ,   桑山肇

ページ範囲:P.319 - P.322

Introduction
 Cyclooxygenase(COX)はプロスタグランディン産生の律速酵素であり,胃粘膜でも重要な働きをしている.COXにはCOX-1,COX-2の2つのisozymeが確認されている.COX-1は常に一定量発現しており,あまり発現誘導されることはない.一方,COX-2は通常は発現しておらず,炎症のときなどに発現誘導される.したがって,COX-1は粘膜の恒常性維持に働き,COX-2は炎症にかかわると考えられるようになった.NSAIDsは,COX-2を阻害することにより抗炎症作用を発揮する.一般にNSAIDsは,COXを無差別に阻害する.つまりCOX-2を阻害すると同時にCOX-1も阻害する.NSAIDsの胃粘膜に対する傷害作用は,このCOX-1阻害によるものではないかと考えられるようになった.したがって,COX-2のみ選択的に阻害する薬剤があれば,副作用のない優れた抗炎症剤になりえるのではないかという発想が生まれた.こうして開発されたのがCOX-2特異的阻害剤である.
 しかしこのような考え方に対して,一つのアンチテーゼが提出された.Mizunoらは,COX-2は潰瘍の修復に重要な役割を果たしていることを示した1).つまり,潰瘍修復時に潰瘍辺縁でCOX-2が誘導され,それが潰瘍修復の役割を担う.潰瘍修復の役割を担うということは,粘膜の恒常性維持にも関係する可能性が高い.

演習 胸部X線写真の読み方—肺疾患篇・4

肺癌治療後の33歳の女性

著者: 楠本昌彦 ,   森山紀之

ページ範囲:P.315 - P.318

Case
 症例:33歳の女性.
 主訴と経過:1年前に原発性肺癌で,他院にて化学療法と放射線療法を受けている.経過は順調だったが,胸部単純X線写真上多発結節影がみられたため本院を受診した.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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