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雑誌目次

雑誌文献

medicina37巻7号

2000年07月発行

雑誌目次

今月の主題 ブレインアタック Brain attack 脳卒中の病態を理解するための基礎知識

血栓の形成される病態

著者: 内山真一郎 ,   山崎昌子

ページ範囲:P.1048 - P.1051

 ●脳梗塞の成因と病態に血小板・凝固・線溶系は中心的な役割を果たしているが,それらの関与は脳梗塞の病型によって異なる.アテローム血栓性脳梗塞では血小板活性化が主体であり,進行性脳卒中では凝固活性化も関与し,心原性脳塞栓症では凝固活性化が主体であるが,急性期には血小板活性化も伴い,ラクナ梗塞でも一部で血小板活性化が関与すると考えられる.

脳虚血と再灌流障害,脳浮腫

著者: 秋山久尚 ,   北井則夫

ページ範囲:P.1052 - P.1056

 ●脳血流量の高度な減少により,酸素代謝が維持不可能となった状態が脳虚血と呼ばれる病態で,脳血流量により脳組織機能障害と細胞膜機能障害が認められる.この2つの障害間に脳虚血の可及的な改善により脳組織機能障害の回復が期待できるischemic penumbra領域が考えられている.
●脳血流の再灌流は生じているが,神経症候の増悪をみる病態を脳虚血/再灌流障害(ischemia/reperfusion injury)と呼んでおり,その主役は好中球,血管内皮細胞である.興奮性アミノ酸,フリーラジカル,遺伝子発現,神経栄養因子などの関与が報告されている.
●脳浮腫は脳組織内に水分とナトリウムが異常に増加し,脳組織容積が増大した病態で,細胞障害性浮腫,血管原性浮腫,間質性浮腫とに分類される.

いま注目される危険因子・遺伝子異常

著者: 山脇健盛

ページ範囲:P.1057 - P.1060

●抗リン脂質抗体,高ホモシステイン血症は脳梗塞の独立した危険因子と考えられている.
●アポリポ蛋白E,アンジオテンシン変換酵素,5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素などの遺伝子多型が脳卒中の危険因子としての可能性が指摘されているが,その結果は必ずしも一致しておらず,病型,人種などにより異なる可能性がある.

脱落症状をいかに捉えるか

軽微な脱落症状を見逃さないために

著者: 平田幸一 ,   竹川英宏 ,   小林由佳

ページ範囲:P.1061 - P.1063

●一過性の症状を聞き逃さない正確な病歴聴取が必要である.
●軽度の知的機能障害,神経心理学的異常を調べるほか,うつ状態を脳卒中の一症状として考慮しておく必要がある.
●脳神経・小脳系の詳細な診察のほか,軽度の麻痺を見逃さないため,上下肢のBarré徴候,Mingazzini試験などを行う.

軽症意識障害の捉え方

著者: 奥田文悟 ,   立花久大

ページ範囲:P.1064 - P.1065

●軽症意識障害は急性の発症,症状の日内変動,全般的な見当識障害,病識の欠如を特徴とする.
●脳血管障害に合併した代謝性障害,感染症や環境変化によっても生じることがある.
●脳血管性痴呆,抑うつ状態,失語などとの鑑別を要する.

意識障害のある患者の神経症候の捉え方

著者: 渡引康公

ページ範囲:P.1066 - P.1068

●意識障害のある患者では,バイタルサインのチェックを優先し,病歴聴取と神経学的診察は要領よく速やかに行うことが大切である.
●神経学的診察は,患者の状態に応じて,系統的に行う習慣をつけ,病巣の種類や局在を予想するように努める.

ベッドサイドにおける高次脳機能評価

著者: 本村暁

ページ範囲:P.1069 - P.1071

●高次脳機能評価は,意識,注意,言語と,より低次の機能から高次の機能へと進める.1回の検査で結論を下さないことも多い.
●本稿でふれた範囲の,局在価値のある症候群は,予備知識として備えておきたい.
●高次脳機能は,病巣の側(side),部位(location),重症度(severity),経過(course)の鋭敏なモニターである.

頸部血管雑音の診断的価値

著者: 岩本俊彦 ,   六郷則仁

ページ範囲:P.1072 - P.1074

●頸部血管雑音は,性状より静脈性・動脈性に,広がりより限局性・広範性に分けられる.
●限局性の頸動脈性雑音は内頸動脈の高度狭窄に由来していることが多い.
●本雑音は,動脈病変が頸動脈ばかりでなく,頭蓋内-脳動脈や冠動脈,末梢動脈にも進展していることを示唆し,各血管病変の評価が必要である.

Japan Stroke Scale(JSS)による評価

著者: 浜野均

ページ範囲:P.1075 - P.1078

●脳卒中重症度スケール(急性期)—Japan Stroke Scale(JSS)—の特徴は,比例尺度であること,評価項目が重み付けされていること,計算されるスコアは真の数量であること,再現性・信頼性が保証されていること,世界で唯一の定量的脳卒中重症度スケールであることである.
●本スケールは全体として完成したもので,その部分的な使用は本スケールの価値を無にすることに注意を要す.

責任病巣をいかに捉えるか

脳梗塞急性期の検査計画

著者: 岡田靖

ページ範囲:P.1079 - P.1082

●基本的な考え方は,適切な治療を最短時間で開始するために検査を計画することである.
●可及的速やかに診察後,脳卒中か否かを鑑別し,次いでCTで虚血性・出血性脳血管障害の判定を行う.
●画像検査の第一選択はCTであり,今後は頸部・経頭蓋超音波検査およびMRI/diffusion MRI/MRAが特に有用となる.
●病態把握および病型・鑑別診断のための検査も速やかに行う.

脳梗塞超急性期にCTで捉えられる超急性期徴候

著者: 戸村則昭 ,   岡根久美子 ,   下瀬川恵久

ページ範囲:P.1084 - P.1086

●脳梗塞の発症後1時間程度からCTで異常所見の出現が認められることがある.特に脳塞栓症において異常所見の出現が早く,血栓性梗塞との鑑別にも役立つ.
●超急性期CT所見として,レンズ核陰影の不明瞭化,皮質-髄質境界の不明瞭化,脳実質の淡い低吸収域の出現,脳溝の不明瞭化,閉塞動脈に一致した高吸収などが重要な所見である.

MRI拡散強調画像による脳梗塞超急性期の診断

著者: 高山秀一 ,   美原盤

ページ範囲:P.1087 - P.1089

●MRI拡散強調画像によって,脳梗塞発症約3時間後から病巣を高信号域として捉えることができる.また,新鮮な脳梗塞病巣のみが高信号域となるので陳旧病巣との鑑別が可能である.
●MRI拡散強調画像によって,脳梗塞超急性期に病巣部位,大きさ,発症機序を把握し,臨床病型分類に応じた治療法を開始することができる.

脳梗塞超急性期のSPECT/PET

著者: 下瀬川恵久

ページ範囲:P.1091 - P.1095

●脳梗塞超急性期のSPECT/PET(single photon emission computed tomography/positron emission tomography)による機能的画像検査では,CTやMRI検査での形態学的変化の出現以前に虚血の範囲や程度を診断することが可能である.
●追跡CT上の不可逆性組織障害部位や血栓溶解療法後の出血性梗塞の出現予測には,超急性期のSPECTによる脳血流量測定が有用である.
●PETでは,脳組織酸素代謝も含めたより詳細な虚血病態の情報を得ることができる.

超音波診断—経頭蓋ドプラ・頸動脈エコー・経食道心エコー

著者: 長尾毅彦 ,   片山泰朗 ,   横地正之

ページ範囲:P.1096 - P.1099

●急性期超音波検査の目的は,血流評価,血管病変検索,塞栓源検索,心機能評価である.
●脳梗塞病巣検出のみならず,主幹動脈病変,残存血流評価,塞栓源検索は急性期治療方針決定に不可欠であり,可能な限り入院直後に評価する.
●微小塞栓信号が検出された場合には,塞栓性機序による脳梗塞を想定する.
●卵円孔開存による奇異性塞栓症に注意する.

脳血管撮影,DSA,MRA

著者: 長束一行

ページ範囲:P.1100 - P.1102

●脳血管撮影は今も脳血管の形態学的評価法としてはgold standardであり,欠かすことのできない検査であるが,合併症を起こす危険性があるため適応を慎重に決めるべきである.
●MRAは非侵襲的であるため,血管撮影にとって代わる検査となりつつあるが,狭窄度を過大評価する傾向にあるので注意を要する.

脳静脈・静脈洞血栓症の急性期診断と治療

著者: 赫寛雄 ,   内海裕也

ページ範囲:P.1103 - P.1104

●脳静脈・静脈洞血栓症の基礎疾患は多様であるが,病因が特定できない例も20〜25%ある.
●MRI・MRVは,非侵襲的に血栓や血流を直接描出でき,急性期画像診断として最も有用である.
●拡散強調画像は,急性期におけるvasogenic edemaと梗塞巣との鑑別に有用である.
●急性期治療として,ヘパリンによる抗凝固療法の有効性が指摘されている.

解離性動脈瘤

著者: 水戸泰紀

ページ範囲:P.1105 - P.1108

●解離性動脈瘤の診断頻度はMRIなどの画像診断の普及とともに増加している.
●成因により特発性と外傷性に,また解離が動脈の層状構造のどこに生じるかによって,外膜下解離と内膜下解離に分類される.
●突発する頸部痛や頭痛で発症することが多いが,血管狭窄や閉塞による脳虚血症状あるいは血管破綻によるくも膜下出血という全く反対の病態を呈する.
●虚血発症例には主に抗凝固療法が施行される.出血発症例では手術適応の検討も必要である.

脳卒中急性期の治療戦略

脳梗塞急性期の治療計画

著者: 峰松一夫

ページ範囲:P.1110 - P.1112

●脳梗塞急性期治療で有効性が確認されたものは,脳卒中専門病棟での治療,発症3時間以内のt-PA療法など,数少ない.
●薬物治療や急性期リハビリは,臨床病型や重症度を考慮して実施しなければならない.
●Evidenceに基づいた急性期治療の徹底のために,学会などによる治療指針の策定が急務である.

心原性脳塞栓に対する血栓溶解療法

著者: 中川原譲二 ,   粕谷潤二

ページ範囲:P.1114 - P.1116

●心原性脳塞栓症の発症直後の脳虚血域では,組織の不可逆的変化が直ちに生じる領域(ischemic core)と,組織の可逆性が一定時間維持される領域(ischemic penumbra)とが混在する.Ischemic penumbraにおける組織の可逆性は,残存する脳血流量と発症からの時間の2つの要因に依存しており,ischemic penumbra の存在は,血流再開を目的とする血栓溶解療法に開かれた窓(therapeutic window)として,臨床的に意義のある病態といえる.
●血栓溶解療法には,血栓溶解剤の静注法と選択的動注法とがあるが,治療の適応となる症例を見落とさないためには地域住民の教育,脳卒中診療センターの整備,脳卒中救急搬送システムの確立が急務である.

心原性脳塞栓症の急性期管理

著者: 島村宗尚 ,   橋本洋一郎 ,   内野誠

ページ範囲:P.1117 - P.1120

●心機能,脳浮腫に注意し,慎重に輸液,血糖管理を行う.
●出血合併症がなければ,抗凝血薬療法を行う.
●血圧管理は,血圧値,合併心疾患,抗血栓療法施行の有無で降圧するかどうか判断し,降圧目標を決める.
●循環器内科と連携し,基礎心疾患の治療を行う.
●クリティカルパスを利用し,早期離床,早期リハビリテーションをめざす.

脳梗塞急性期の抗トロンビン療法

著者: 杉原浩 ,   高橋洋一

ページ範囲:P.1121 - P.1123

●脳梗塞急性期には凝固線溶系と血小板活性の亢進が認められる.
●アテローム血栓性脳梗塞の抗トロンビン療法は脳梗塞巣周辺のischemic penumbraの血流改善が重要な目的であり,アルガトロバンが使用されている.
●アテローム血栓性脳梗塞の病初期の診断には頭部CT,MRIの病巣の大きさのみで判断せず,総合的に診断する必要がある.

ラクナ梗塞の急性期治療

著者: 寺山靖夫

ページ範囲:P.1124 - P.1127

●ラクナ梗塞急性期の診断は臨床経過,臨床症候に加えてCT scanとdiffusion MRIによる画像診断が有用である.
●ラクナ梗塞の成因は深部穿通枝自体の血管病変であり,microatheromaと呼ばれるアテローム硬化性変化によるもの,lipohyalinosisと呼ばれる高血圧性変化によるものと塞栓性機序によるものがある.急性期の治療方針は病型別に検討することが重要である.
●ラクナ梗塞に類似の症候を呈するbranch atheromatous diseaseは主幹動脈のplaqueに起因するアテローム硬化性病変によるものであり,発症には血栓が関与している.
●ラクナ梗塞急性期の薬物治療は発症後も症状が進行性である症例に行い,その中心は抗血小板療法と抗凝固療法である.

進行性脳梗塞に対する治療

著者: 植松大輔

ページ範囲:P.1128 - P.1130

●進行性脳梗塞の治療の第一歩は,個々の病態(進行の原因)を迅速かつ正確に把握することである.
●急性期には血圧を下げないことが原則であり,血行動態が関与する例や低血圧の症例では1週間は頭位を上げず臥床を保つことが重要である.
●オザグレルナトリウムはラクナ型,アテローム型を問わず急性期の脳血栓症における運動障害などの神経症状の進行を抑制する.

一過性脳虚血発作の治療

著者: 畑隆志

ページ範囲:P.1131 - P.1134

●一過性脳虚血発作は脳梗塞の重要な予兆である.しかし正しく診断され,正しく治療されていない場合も多い.
●診断には詳細な病歴聴取が必須であり,補助診断としてはMRIとMRA,頸動脈超音波検査が有用である.
●治療はアスピリン50〜325mg/日の投与が基本であり,アスピリンが服用できない場合やアスピリンを内服中にTIAが起こった場合(aspirin failure)には,抗凝固療法や代替療法(チクロピジン,ジピリダモールなど)が考慮される.
●頻発するTIAs,心原性塞栓症に起因するTIAには抗凝固療法を検討する.
●頸部内頸動脈に高度の狭窄(70〜99%)がある場合には内膜切除術の適応となる.

脳卒中急性期の血圧管理

著者: 久留島秀朗 ,   井林雪郎

ページ範囲:P.1135 - P.1138

●脳卒中急性期には一過性の血圧上昇をみるが,降圧療法を施さなくとも多くは自然経過で発症前値に復す.
●急性期においては,脳血流自動調節が破綻し,脳血流量が血圧依存性に変動するため,急激かつ過度の降圧は避けるべきである.
●降圧を行う場合には,脳血流量や自動調節に悪影響のない薬剤や投与法を選択する.

脳出血の急性期治療と外科治療の適応

著者: 本藤秀樹

ページ範囲:P.1139 - P.1141

●脳出血の診断はCTで容易であるが,非定型例ではDSAやMRIで脳動脈瘤,脳腫瘍などを鑑別する必要がある.発作早期に血腫増大をみることがあり,血圧管理は重要である.
●手術適応については,被殻出血が30ml以上,小脳出血が15ml以上,皮質下出血は40ml以上の症例に適応がある.視床出血,橋出血には開頭術の適応はなく,血腫吸引術が試みられているが,その評価はまだ定まっていない.

脳梗塞に対する血行再建術の適応

著者: 平島豊 ,   桑山直也 ,   遠藤俊郎

ページ範囲:P.1143 - P.1145

●脳虚血急性期の治療で最も重要な点は,傷害が可逆的な段階にとどまっている間(therapeutic time window)に血流を再開することである.
●therapeutic time windowの範囲を超えた血行再建は神経機能の回復が期待できないだけでなく,脳浮腫,出血性梗塞を招く原因となる,
●急性期血行再建術には血管内手術(局所線溶療法,経皮的血管拡張術など)と外科手術(頸動脈内膜切除術,バイパス手術など)があるが,併用されることもある.
●血行再建術の適応決定では残存血液量の評価が重要であるが,diffusion MRIで直接脳の可逆性を判断することが有効な手段となる可能性がある.

Stroke Care Unitの導入で治療成績は向上するか

著者: 長田乾

ページ範囲:P.1146 - P.1148

●Stroke Care Unit(SCU)は,急性期からリハビリテーションまでの脳卒中に一貫して対応する診療システムで,従来の診療科の枠を越えた複数の専任医師が,基準化されたプロトコールに沿って包括的な医療を行う.
●SCUにおける急性期脳卒中は,死亡率の減少や機能予後の向上のみならず,慢性期の「生活の質」の向上にもつながると期待されている.

急性期リハビリテーションの適応と阻害因子

著者: 横山絵里子

ページ範囲:P.1149 - P.1151

●脳卒中急性期リハの目的は,廃用症候群を予防し,障害された機能の回復を促通することであり,脳卒中の臨床病型や病態を考慮して適応を判断する.
●急性期の積極的な坐位訓練を避けたほうがよい症例は,進行性脳梗塞,心内血栓を認める心原性脳塞栓症,止血が未確認,あるいは血圧管理不良の脳内出血,脳血管攣縮の危険性が高い破裂脳動脈瘤,原因不明の脳卒中,重篤な合併症を有する例などで,血行力学的機序が関与した可能性がある脳梗塞では慎重に開始する.

再発予防と慢性期の管理

心原性脳塞栓の再発予防

著者: 山崎昌子 ,   内山真一郎

ページ範囲:P.1153 - P.1155

●心原性脳塞栓症は左心房・左心室・静脈の血流うっ滞により生じるフィブリン主体の血栓に由来するので,原則として抗凝固療法が第一選択となり,慢性期の再発予防にはワーファリン®が用いられる.
●ワーファリン療法の指標にはInternational Normalized Ratio(INR)を用い,非弁膜症性心房細動(NVAF)ではINR2.0〜3.0,人工弁置換例ではINR2.5〜3.5にコントロールする.

抗血小板薬による再発予防

著者: 佐藤美佳 ,   長田乾

ページ範囲:P.1156 - P.1158

●抗血小板療法は脳梗塞の再発を20〜40%減少させ,現在アスピリンとチクロピジンが一般的に用いられている.
●抗血小板薬の適応の選択には,脳梗塞の病型分類が必須であり,抗血小板薬はアテローム血栓性脳梗塞に最も有効である.
●副作用としては,アスピリンには胃腸障害が,チクロピジンには好中球減少や発疹,肝障害などがみられ注意を要する.

脳卒中慢性期の血圧管理

著者: 石束隆男

ページ範囲:P.1159 - P.1160

●脳血管障害の再発予防には血圧の適切な管理が重要である.
●降圧薬の投与は少量から開始し,緩徐に降圧するとともに,倦怠感・気力の低下・立ちくらみといった過剰降圧の症候があれば,速やかに減量あるいは降圧薬の変更を行う.
●J-curveの存在の有無は今後の検討課題である.

無症候性脳梗塞は治療対象となりうるか?

著者: 棚橋紀夫

ページ範囲:P.1161 - P.1162

●無症候性脳梗塞では症候性脳梗塞と同様に,臨床病型(アテローム血栓性,ラクナ梗塞,心原性,その他)を明らかにするにため,MRアンギオグラフィ,頸部超音波検査,心電図,心臓超音波検査などを行う.
●ラクナ梗塞が80%以上と最も多いが,あらゆる臨床病型で高血圧をはじめとする危険因子の管理が最も重要である.
●アテローム血栓性脳梗塞の場合には抗血小板薬,心原性脳塞栓の場合はワーファリン®による抗凝固療法を行う.ラクナ梗塞で特に単発の場合は,抗血小板薬は使用しない場合もある.

座談会

ブレインアタック—超急性期治療をめぐって

著者: 橋本洋一郎 ,   寺山靖夫 ,   平島豊 ,   長田乾

ページ範囲:P.1164 - P.1177

 長田(司会) 本日は,脳卒中の超急性期治療をテーマにお話を伺っていきたいと思います.欧米では脳卒中について,1990年代から「heartattack」に対応する「brain attack」という言葉が使われ,heart attackと同様に救急治療の重要性が再確認されております.わが国でも1990年代の後半になってその取り組みが始まっていますが,まずは脳卒中にかかわる臨床の先生方に,脳卒中を救急医療として再認識していただくことが大事だと思います.
 脳梗塞の予後は虚血の時間と程度,範囲によって左右されますので,発症から入院までの時間が治療成績に大きく影響してきます.そこでまず,発症から入院までの時間とtherapeutic windowから話を始めたいと思います.橋本先生,ご自身のご経験から,脳卒中の患者さんをいかに早く搬送するかという点について,いかがですか.

理解のための32題

ページ範囲:P.1180 - P.1186

カラーグラフ 病原微生物を見る・11

MRSA

著者: 小松澤均 ,   桑原正雄 ,   菅井基行

ページ範囲:P.1198 - P.1200

臨床症例および経過
 1.症例
 76歳,男性.気管支喘息,肺気腫による慢性呼吸不全,高血圧症および老人性せん妄で治療中であった.8月下旬より呼吸困難が増悪し,外来でアミノフィリン,ステロイド,抗生剤の点滴注射を行っていたが,9月15日自宅において頸部自傷(自殺企図)し,救急入院となった.

演習 胸部X線写真の読み方—肺疾患篇・9

呼吸困難,発熱,咳嗽を主訴とする19歳男性

著者: 栗原泰之 ,   新美浩 ,   荒川浩明 ,   中島康雄

ページ範囲:P.1187 - P.1190

Case
 症例:19歳,男性.
 主訴:呼吸困難,発熱(40℃),咳.
 現病歴:10日前から5年ぶりにタバコを吸い始めた.3日前から呼吸苦が出現し,発熱が加わり来院.来院時に撮影された胸部単純X線写真とその拡大像を示す(図1a,b).

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.1191 - P.1196

図解・病態のメカニズム 胃疾患・9

H. pyloriの病原性

著者: 杉山敏郎 ,   熊谷彩恵 ,   浅香正博

ページ範囲:P.1207 - P.1211

●はじめに
 日本人の6,000万人以上がHelicobacter pylori(H. pylori)に感染しているが,そのうち胃潰瘍,十二指腸潰瘍,低悪性度MALTリンパ腫,胃癌を発症するのは一部にすぎず,多様な臨床病態は,①H. pyloriの病原性の多様性,②感染宿主の反応の多様性,③環境要因との相互作用,などから考えられている.本稿では多彩なH. pyloriの病原性について概説する.

新薬情報・1【新連載】

ザナミビル水和物(商品名:リレンザ)

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.1202 - P.1203

 適応■A型またはB型インフルエンザウイルス感染症の初期(48時間以内)の治療.
 予防目的の治療や発症後48時間以上経過した時点での治療効果は証明されていない.また,C型インフルエンザウイルス感染症には無効である.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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