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雑誌目次

雑誌文献

medicina37巻8号

2000年08月発行

雑誌目次

今月の主題 循環器薬の使い方 2000

理解のための31題

ページ範囲:P.1371 - P.1377

循環器疾患の薬物治療の基本

狭心症

著者: 石川欽司

ページ範囲:P.1222 - P.1225

 ●ライフスタイル是正がまず第1.
●狭心症発作予防が目的か,長期予後改善が目的か,見極めて薬剤を選ぶ.
●薬剤選択は欧米の治療ガイドラインなどを参考に.
●冠動脈造影を行って,PTCA,CABGの適応を見逃さないこと.

心筋梗塞

著者: 河野通 ,   佐藤和義 ,   上松瀬勝男

ページ範囲:P.1227 - P.1232

●急性心筋梗塞(AMI),不安定狭心症(UA)の共通した病態として冠動脈の粥腫の破綻,引き続く血栓形成が大きく関与している.
●血栓溶解療法の開始が早いほど残存心筋は増加し,症状が出現してから少なくとも12時間までに再灌流することで死亡率の低下が認められている.
●AMIの冠動脈の閉塞血栓に対して重要な薬物療法は血栓溶解療法,抗トロンビン療法そして抗血小板療法の3つである.
●数多く発症しているAMIを対象としてみたとき,依然再疎通療法としては血栓溶解療法が簡便で発症早期に再灌流が得られるという点で大きな意味を持っている.

不整脈

著者: 杉薫

ページ範囲:P.1235 - P.1239

●細胞の活動電位の発生には主にナトリウム(Na),カリウム(K),カルシウム(Ca)の各電解質が関与するので,頻脈性不整脈治療に用いられる抗不整脈薬はこれらの電解質チャネルの抑制が主作用となる.
●β遮断薬は,不整脈抑制効果は低いものの,交感神経活性が亢進している状態では不整脈抑制に有効である.
●心機能の良好な心房細動に対してはslow kineticsを示すNaチャネル抑制薬(Ic群薬)が有効であり,生命予後を考慮した致死的心室性不整脈に対してはKチャネル抑制薬(Ⅲ群薬)の投与が勧められる.

心不全

著者: 川合宏哉 ,   横山光宏

ページ範囲:P.1240 - P.1243

●心不全の進展には種々の神経体液性因子や炎症・免疫活性物質が関与しており,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系と交感神経系の活性亢進が特に重要である.
●ACE阻害薬,β遮断薬は慢性心不全患者の生命予後を改善し,慢性心不全の標準的治療として確立された.
●心不全患者に対するACE阻害薬,β遮断薬の投与方法は少量より開始し,徐々に増量していく.
●アンジオテンシン受容体拮抗薬はACE阻害薬と同程度の生命予後改善効果を有する.
●ジギタリスは頻拍性心房細動患者には第一選択薬と考えられ,また洞調律心不全患者のQOL改善効果を有する.
●カリウム保持性利尿薬のスピロノラクトンは,心不全患者の生命予後を改善する.

高血圧

著者: 有田幹雄 ,   西尾一郎

ページ範囲:P.1244 - P.1247

●個々の症例の病態生理を把握し,病態に基づいた治療を行う.
●軽症例や白衣高血圧では,非薬物療法が基本となる.
●理想的な降圧薬は増加した末梢血管抵抗と構成器官の血管抵抗を下げ,最小限の反射性心臓刺激でその効果を発揮すべきで,心拍出量と主要臓器の血流(特に心,腎,脳)を悪化せず改善されるべきである.さらに薬物は単剤で用い,1日1回が望ましく,また安価であるとよい.

高脂血症

著者: 馬渕宏

ページ範囲:P.1249 - P.1253

●高コレステロール(CHOL)血症の診療ガイドラインは冠動脈疾患を念頭に設定されている.冠動脈疾患の二次予防には強力なCHOL低下量法が適応となる.
●高CHOL血症にはHMG-CoA還元酵素阻害剤が,高トリグリセリド血症治療にはフィブレート系薬剤が第一選択薬である.
●CHOL低下療法の治療適応優先順位は,①家族性高CHOL血症(FH),②高CHOL血症の二次予防,③正CHOL血症の二次予防,④高CHOL血症の一次予防,⑤正CHOL血症の一次予防,の順となる.

病態に応じた循環器薬の使い方 ACE阻害薬とAII拮抗薬

作用機序・効果・種類・特徴・副作用・禁忌

著者: 日和田邦男

ページ範囲:P.1255 - P.1258

●レニン・アンジオテンシン(RA)系を抑制する薬剤としては,ACE阻害薬とAII拮抗薬がある.
●ACE阻害薬はRA系の純粋な抑制薬とは言えない.同じくAII拮抗薬もタイプ1受容体(AT1)に特異的であって,RA系全体の抑制薬ではない.ACE阻害薬にはブラジキシンの作用増強作用,AII拮抗薬には別経路で産生されたAIIもブロックできる利点がある.
●AII拮抗薬の降圧効果や心不全患者の延命効果はACE阻害薬と同等であり,空咳の副作用がないのでACE阻害薬よりも優れている.
●AII拮抗薬にもACE阻害薬と同等な臓器保護作用が報告されてきている.現在進行中の大規模臨床試験の結果,心血管系疾患の発症と死亡の抑制がACE阻害薬と同等以上であれば,ACE阻害薬はAII拮抗薬に置き換えられるであろう.

高血圧における使い方

著者: 平田恭信

ページ範囲:P.1261 - P.1263

●ACE阻害薬およびAII拮抗薬は穏やかな降圧作用を有し,合併症のない高血圧の第一選択薬の1つである.
●特に若〜中年者あるいは心不全・腎不全・糖尿病を合併する高血圧には有効性が高い.
●血清クレアチニン濃度が2mg/dl以上の患者には慎重投与.
●ACE阻害薬は乾性咳嗽を誘発することがある.

心不全における使い方

著者: 川名正敏

ページ範囲:P.1264 - P.1266

●ACE阻害薬は心不全に対する基礎治療薬である.少量で開始し,血圧,腎機能,血清カリウム値に注意しながら漸増して,目標投与量にもっていく.
●現時点では,ACE阻害薬使用により空咳その他の副作用が出現した場合にAII受容体拮抗薬の適応を考える.

心筋梗塞における使い方

著者: 𠮷野秀朗

ページ範囲:P.1267 - P.1270

 近年,虚血性心疾患は,わが国の国民の死因の大きな部分を占めるようになってきた.最近の積極的な再灌流療法によって,初回急性心筋梗塞の急性期死亡率は10%前後にまで低下した.しかし,生活習慣の欧米化に伴う若年発症の増加は,その後の人生の長い期間にわたり生活の質(QOL)を障害し,罹患患者の社会活動を阻害する.虚血性心疾患の二次予防が重要であり,そのために種々の薬物がためされた.その中でアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は,心筋梗塞の代表的な二次予防薬の1つとして,現在臨床現場で広く用いられている.

β遮断薬

作用機序・効果・種類・特徴・副作用・禁忌

著者: 江口麻里子 ,   土橋和文 ,   島本和明

ページ範囲:P.1273 - P.1276

●β遮断薬はβ受容体に対する競合的拮抗作用で効果を発現する.薬理作用はβ受容体の分布により決定される.
●β遮断薬は多種の薬剤を有し,ISAないしは受容体選択性などの特徴により分類される.
●薬理作用,副作用が多彩であり,合併症をよく考慮した上での薬剤の選択が望まれる.
●副作用には高頻度に気管支喘息,徐脈性不整脈,中枢神経症状,末梢循環不全などがあるため,使用にあたっては注意を必要とする.
●中止の際は離脱症候群をきたしうるため,漸減中止ないしは厳重な観察が必要である.

高血圧における使い方

著者: 佐藤加代子 ,   桑島巌

ページ範囲:P.1277 - P.1279

●高血圧症に対するβ遮断薬投与は大規模臨床試験の結果より,脳心血管系疾患の一次予防に有効である.
●心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患を合併した高血圧例では,その長期的予後を改善することから,β遮断薬投与は絶対的適応とされる.
●β遮断薬は交感神経系を抑制し,徐脈や心収縮力の抑制をもたらすことによって心保護作用を発揮する.
●高齢者,高脂血症,糖尿病でも気管支喘息や徐脈などの合併症がなければβ遮断薬投与の適応がある.
●β1受容体選択性の有無,ISAの有無,親油性,親水性を考慮した症例に合った個別的薬物療法が望ましい.

狭心症における使い方

著者: 井上晃男

ページ範囲:P.1281 - P.1283

狭心症におけるβ遮断薬の適応
 狭心症の薬物療法の目的は,発作の寛解,発作の予防,さらには不安定狭心症や急性心筋梗塞といったacute coronary syndromeへの移行を防ぐことにある.β遮断薬はこのうち主として発作の予防に用いられる薬剤である.β遮断薬により心拍数を低下させ,心筋の酸素消費を減らし,さらに労作によって生ずる血圧の上昇や心収縮力の増強を抑制することができる.
 このようにβ遮断薬は交感神経の活動が活発になるときに,まず最初に心筋の酸素需要を減らすことができるため,労作性狭心症では有効な薬物と考えられる.しかし,β遮断薬は冠動脈を収縮させるため,冠攣縮性狭心症には無効であるのみならず,むしろ発作を増悪させることがあり使用できない.また不安定狭心症ではβ遮断薬単独での有効性は認められていない.一方,近年重要性が注目されている無症候性心筋虚血(silent myocardial ischemia:SMI)の治療においてβ遮断薬の有効性が指摘されている1).SMIを含めた虚血発作の概日リズムを考慮した場合,β遮断薬は他剤に比べすべての時間帯でよりすぐれた発作予防効果を示すと考えられている2)

心筋梗塞における使い方

著者: 原和弘

ページ範囲:P.1284 - P.1286

●急性心筋梗塞患者に対しては,β遮断薬をできる限り発症早期から投与することが望ましい.
●高齢者や肺疾患,糖尿病を合併した患者などの相対的禁忌症例においてもβ遮断薬は有用であり,投与が検討されるべきである.

心不全における使い方

著者: 高橋基 ,   和泉徹

ページ範囲:P.1288 - P.1290

 慢性心不全に対するβ遮断薬療法については,すでにその大要が確立したかの感がある.しかしその実,本治療法には劇的効果があることが確認された域を出ておらず,誰を対象に,どの時点で,どのようにして使うかについては,いまだ確立していないのが実状である.ここでは,現状認識と筆者らが用いている方法の概要について述べる.

不整脈における使い方

著者: 相澤義房

ページ範囲:P.1292 - P.1293

●β遮断薬は洞結節の自動能および房室結節における伝導能を抑制する.これはβ受容体を遮断することで,心筋膜の膜電流を減少させるためである.したがって洞結節や房室結節を起源あるいは回路とする不整脈には,β遮断薬は有用である.洞頻脈や房室結節を回路に含む発作性上室頻拍が該当する.
●心室不整脈では交感神経活動の亢進によるものに有効性は限られ,持続性頻拍では単独で有効例はない.しかし心不全の大規模研究から突然死を減少させることが判明している.QT延長群でも予後は改善する.

カルシウム拮抗薬

作用機序・効果・種類・特徴・副作用・禁忌

著者: 中村保幸 ,   木之下正彦

ページ範囲:P.1296 - P.1299

●カルシウム拮抗薬の原型(第1世代カルシウム拮抗薬)はベラパミル,ニフェジピンおよびジルチアゼムであるが,これらの性質には多少の相違点があるため,目的に合わせた使い分けが必要である.カルシウム拮抗薬の守備範囲は実に広く,降圧薬として,抗狭心症薬として,あるいは抗不整脈薬として有効である.しかし副作用も無視できず,また最近の大規模臨床試験ではカルシウム拮抗薬にとって不都合な結果が集積されてきた.急性効果が明確であるため使用しやすいが,長期予後を考慮して,あまりカルシウム拮抗薬に頼りすぎないことが重要である.

高血圧における使い方

著者: 山崎文靖 ,   杉浦哲朗 ,   土居義典

ページ範囲:P.1301 - P.1303

●カルシウム拮抗薬は良好な降圧効果が得られ,糖・脂質代謝への副作用もないため禁忌の疾患が少ない.
●長時間作用型カルシウム拮抗薬は作用が緩徐で高齢者で使いやすく,いくつかの高血圧治療のガイドラインでも推奨されている.
●過度の降圧に注意を要する.
●症例によっては他の降圧薬と併用する.

狭心症における使い方

著者: 本江純子 ,   斎藤穎 ,   上松瀬勝男

ページ範囲:P.1305 - P.1307

●労作性狭心症に対してはβ遮断薬が第一選択薬となるが,気管支喘息などの合併症のためにβ遮断薬が投与できない患者に対しては,心筋収縮抑制作用・洞結節抑制作用を有するベンゾジアゼンピン系のジルチアゼム(ヘルベッサー®R)が,発作の緩解に有効である.
●冠攣縮性狭心症の予防には,Ca拮抗薬が著効を示す.
●しかしCa拮抗薬により発作がコントロールされている場合でも,薬剤の減量や中断により発作の再発が十分にありうるので注意が必要である.

不整脈における使い方

著者: 吉田幸彦 ,   因田恭也 ,   平井真理

ページ範囲:P.1309 - P.1312

●発作性上室性頻拍では,Ca拮抗薬は房室結節の伝導を抑制することにより頻拍を予防,停止する.
●心室応答の速い心房細動や心房粗動では,Ca拮抗薬は心拍数を低下するだけでなく,診断を容易にする.
●Ca拮抗薬は一部の特発性心室頻拍に対しても有効である.
●WPW(Wolff-Parkinson-White)症候群で心房細動発作を伴う症例ではCa拮抗薬の投与は禁忌である.

利尿薬

作用機序・効果・種類・特徴・副作用・禁忌

著者: 佐藤元彦 ,   長谷部直幸 ,   菊池健次郎

ページ範囲:P.1314 - P.1317

●利尿薬は古くから循環器疾患の治療に用いられ,現在もなお治療上不可欠な薬剤である.副作用とされる代謝面(脂質,糖,尿酸),電解質(特にK・Mg欠乏)への影響も用量,使用法を考慮することにより最小に抑えることができ,その地位が再び見直されつつある.本剤の潜在的な副作用の可能性を十分知った上で,その有用性を再認識する必要があろう.

心不全における使い方

著者: 尾崎行男 ,   小林正

ページ範囲:P.1318 - P.1321

●心不全の病態においては原疾患の早期の診断治療が重要(e.g.急性心筋梗塞).●利尿薬は前負荷を軽減する心不全治療の基礎薬であるが,使用量やその期間によっては,脱水,電解質異常,腎機能障害などの合併症が発生することもあり,注意が必要.

高血圧における使い方

著者: 上野均 ,   井上博

ページ範囲:P.1322 - P.1324

●浮腫傾向,老年者,女性および心不全を伴う高血圧症に適している.●高脂血症,耐糖能異常,痛風,高尿酸血漿,低カリウム血漿(サイアザイド,ループ),腎障害(カリウム保持性)を伴う高血圧症患者や生殖年齢の男性には適しない.
●他の非利尿薬系降圧薬(ACE阻害薬,β遮断薬,α遮断薬,AII受容体拮抗薬)の併 用薬として相乗的な降圧効果が期待できる.
●中程度以上の腎機能障害(Ccr<30ml/min,または血清クレアチニン値>2.5mg/dl)を伴う高血圧症に対してサイアザイド系利尿薬は効果がない.
●副作用は用量依存性であり,少量の利尿薬(1錠以下)は代謝系に及ぼす影響は少 ない.

その他の循環器薬の使い方

抗血小板薬

著者: 池田康夫

ページ範囲:P.1325 - P.1328

●動脈血栓症の発症予防に抗血小板薬は有効である.
●わが国では,作用機序の異なる複数の抗血小板薬が使用しうる.

血栓溶解療法

著者: 金政健

ページ範囲:P.1331 - P.1333

●急性心筋梗塞に対する初期治療法として,経静脈的に血栓溶解薬を投与すれば心臓カテーテル法が不要である利点がある.
●病院到着前の血栓溶解療法(prehospital thrombolysis)として使用できる.

抗凝固薬

著者: 苅尾七臣 ,   島田和幸

ページ範囲:P.1334 - P.1338

●多くの循環器疾患は,その病態および合併症に血栓塞栓症がかかわっていることが多い.
●ワルファリンを用いた抗凝固療法は血栓塞栓症の発症を抑制することが証明されているが,一方で出血合併症の危険も伴う.
●ワルファリンは肝臓でのビタミンK依存性凝固因子の抑制により抗凝固能を発揮するので,個人差と他の薬剤との相互作用も多いことから,個人ごとの頻回の抗凝固能モニターを余儀なくされる.
●血栓抑制を効果的に行い,出血合併症を最小に抑える目標抗凝固能の正確な評価はISI(international sensitivity index)が可能なかぎり1.0に近いトロンボプラスチン試薬を用いて測定したプロトロンビン時間INR(international normalized ratio)を用いて行われる.
●ワルファリン投与時にINRが3以上に上昇した場合,出血の危険が高まる.

α遮断薬

著者: 石光俊彦 ,   松岡博昭

ページ範囲:P.1339 - P.1341

●高血圧の成因の中で主要な要素である血管抵抗の増加にはα1受容体を介する交感神経刺激が重要な役割をもち,これを抑制するα遮断薬は高血圧の成因の中で本質的な部分に作用する降圧薬である.
●α遮断薬は第一選択薬として用いうる降圧薬の1つであり,インスリン抵抗性を改善することにより,動脈硬化に基づく循環器疾患の発症を抑制する効果に優れることが期待される.
●α遮断薬の副作用としては,初回投与時の著明な血圧低下(初回投与効果)や起立性低血圧などがあるが,徐効性のものを少量より漸増して用いれば問題となることは少ない.

硝酸薬

著者: 大澤秀文

ページ範囲:P.1343 - P.1345

●硝酸薬は平滑筋細胞内で一酸化窒素(NO)を生成して血管を拡張する.●薬理学的効果は,太い冠動脈(>200μm)の拡張と心負荷の軽減(前負荷>後負荷)による.
●適応症は狭心症・急性心不全・高血圧緊急症である.
●硝酸薬には舌下剤.経口剤・貼付剤(皮膚,口腔粘膜)・注射剤があり,臨床病型に応じた使い分けができる.
●硝酸薬は連続・大量投与すると,耐性が生じ効果が減弱する.
●耐性の回避法は,発作発現の要因・時間帯を考慮した間欠療法がよいが,不安定狭心症ではあまり勧められない.
●硝酸薬の副作用として,頭痛と血圧低下に留意すべきである.

プロスタグランジン製剤

著者: 本康宗信 ,   中野赳

ページ範囲:P.1346 - P.1347

●本剤の薬理作用には,末梢血管拡張作用,血流増加作用,血小板凝集抑制作用,血小板粘着抑制作用,赤血球変形能改善作用,細胞保護作用などがある.
●慢性閉塞性動脈硬化症,振動病などの末梢血行障害,血行再建後の血流維持,小児においては動脈管依存性の先天性心疾患に適応がある.
●原発性肺高血圧症に対する症状,予後改善効果が報告されている.

HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン)

著者: 山田信博

ページ範囲:P.1348 - P.1350

●HMG-CoA還元酵素阻害剤は,肝臓におけるコレステロールの合成を阻害し,LDLコレステロールを低下させる.
●多くの大規模臨床試験によって,動脈硬化の進展抑制,冠動脈疾患の初発・再発抑制効果を実証.
●高リスク群においては血清総コレステロール値を180mg/dl未満に下げるのが目標.
●長期投与における有効性と安全性が確立されている.
●疾病構造の変化や高齢化に伴い,複数科の同時受診が増えているため多剤併用に注意.
●重大な副作用には,横紋筋融解症あるいはミオパチー,肝機能障害などがある.

ジギタリス

著者: 落合正彦

ページ範囲:P.1352 - P.1353

●近年心不全治療におけるジギタリスの薬理作用として,その神経・内分泌系に対する効果が注目されている.
●心房細動例だけでなく,洞調律例においても,ジギタリスは心事故を抑制しうることが明らかとなった.
●投与法としては,腎機能に応じて,ジゴキシン0.125〜0.25mgの維持量を経口投与すれば十分である.

ジギタリス以外の強心薬

著者: 百村伸一

ページ範囲:P.1354 - P.1357

●経口強心薬は予後の改善を目的とするものではなく,QOLの改善などを目的とする.
●経口強心薬は左室収縮機能が正常の心不全患者には用いるべきではない.
●経口強心薬はACE阻害薬,β遮断薬などの心筋保護薬と併用されるべきである.
●経口強心薬使用に際しては重症心室性不整脈の発生に留意し,ホルターなどの検査によってチェックする必要がある.
●β遮断薬導入時の経口強心薬の併用療法については現時点では明らかなエビデンスはないが期待がもてる.試みてもよい方法ではあるが,β遮断薬導入が成功したならば経口強心薬の減量〜中止を試みる.

Naチャネル遮断薬(Ⅰ群薬)

著者: 新博次

ページ範囲:P.1359 - P.1361

●Naチャネル遮断薬(Ⅰ群薬)は少なからず陰性変力作用を有する.
●Naチャネルとの結合解離が速い薬剤は上室性不整脈には無効である.
●Naチャネルとの結合解離が遅い薬剤ほどNaチャネル抑制効果が強い.
●Ⅰ群薬(特にⅠc)の主要な適応不整脈は心房細動,上室性頻拍.
●心機能低下例の心室性不整脈には原則として使用しない.
●上室性不整脈においても心機能低下例への長期使用は好ましくない.

Kチャネル遮断薬(Ⅲ群薬)

著者: 磯本正二郎 ,   矢野捷介

ページ範囲:P.1362 - P.1364

●Ⅲ群薬は活動電位持続時間を延長させることにより,あらゆる刺激伝導系の不応期を延長させる.
●Ⅲ群薬は大規模臨床試験により心室性不整脈に対する有効性が示されている.
●Ⅲ群薬には催不整脈作用があり,使用する場合には多形性心室頻拍などの出現に注意を要する.
●現在本邦ではアミオダロンおよびd,1-ソタロールの経口薬とニフェカラントの静注薬が使用可能である.

血小板GPⅡb/Ⅲa受容体阻害薬

著者: 本宮武司

ページ範囲:P.1366 - P.1368

●血小板GPⅡb/Ⅲa受容体は,血小板活性化の最終段階にかかわる物質である.
●血小板GPⅡb/Ⅲa受容体阻害薬は,現在得られる最も強力な抗血小板薬である.
●これら阻害薬にはモノクローナル抗体,ペプチド性合成阻害薬,非ペプチド性合成阻害薬および経口阻害薬がある.
●臨床応用は,急性心筋梗塞における血栓溶解療法やprimary PTCAの開存性改善,急性冠症候群の予後改善,PTCAの予後改善,ステント治療の予後改善などである.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.1379 - P.1384

カラーグラフ 病原微生物を見る・12

結核菌

著者: 小倉剛

ページ範囲:P.1386 - P.1388

はじめに
 ヒトに病原性のあるマイコバクテリアの中で,結核菌の感染力は最も強く,年間約4万人の患者が発生する.感染は空気感染で,患者の咳などで空中に飛散した結核菌は,吸入されると肺胞に達し,マクロファージに貧食される.一部は発病するが,大部分は細胞内持続感染を繰り返し,高齢や身体条件の悪化により発病する.一方,菌体壁成分の強いアジュバント作用により菌体蛋白に対する強いTh1細胞主体の免疫応答が成立し,病理,病態像を修飾する.
 本稿では,結核菌の検出方法や病態とのかかわりを紹介する.

新薬情報・2

塩酸ドネペジル

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.1392 - P.1393

 適応■軽度から中等度のアルツハイマー型痴呆症の症状改善.重度の同痴呆症に対する効果は証明されていない.また病因論的に異なる脳血管性痴呆には適応がない.
 用法・用量■用量が3および5mgの錠剤として使用可能.治療用量は5mg/日であるが,投与初期の末梢性ムスカリン受容体刺激作用に関係すると考えられる消化器症状(嘔気・嘔吐など)の出現を回避するため,投与後1週間は3mg/日の用量で投与し,以後5mgに漸増する投与法が推奨されている.

図解・病態のメカニズム 胃疾患・10

消化性潰瘍の病態

著者: 太田慎一 ,   新井晋 ,   藤原研司

ページ範囲:P.1394 - P.1396

 消化性潰瘍の病態に関する理解は近年著しく変化した.消化性潰瘍の発生は攻撃因子と防御因子の破綻によるとされてきたが,強力な酸分泌抑制剤の出現やHelicobacter pylori(H.pylori)の発見により,消化性潰瘍の病態に対する理解も治療法も大きく変容しようとしている.本稿では消化性潰瘍の病態生理に関する知見を概説する.

演習 胸部X線写真の読み方—肺疾患篇・10

微熱を主訴に来院,胸部単純X線写真上腫瘤状陰影を呈した37歳女性

著者: 氏田万寿夫 ,   三角茂樹

ページ範囲:P.1399 - P.1402

Case
 症例:37歳,女性.
 現病歴:2年前から37℃前後の微熱と倦怠感を訴えていた.
 既往歴:20歳,甲状腺機能低下症.30歳,アルコール性肝障害.
 身体所見:体温36.7℃,脈拍78/分,血圧160/100mmHg.貧血・黄疸なし.呼吸音は正常.表在リンパ節は触知しない.
 血液生化学検査:WBC 9,300/μl,CRP 1.6mg/dl.肝機能その他特記すべき異常なし.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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