icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

medicina38巻13号

2001年12月発行

雑誌目次

今月の主題 内科医のためのレディース・クリニックII

理解のための36題

ページ範囲:P.2104 - P.2111

女性患者をどう診るか

病歴と身体所見のとりかた

著者: リー啓子

ページ範囲:P.1974 - P.1976

ポイント
 マナーをもって接する.
 訴え・話をよく聞く.病歴を的確にとることにより70〜80%まで診断が可能となる.
 主訴を把握し,どうしてほしいかを十分に理解する.
 背景を考慮する.
 女性特有の疾患や,女性において頻度が高い疾患を念頭に置く.
 身体所見を正確にとる.これにより診断率がさらに10%アップする.
 たとえ検診の場合であっても話をよく聞く.

診断と治療のストラテジー

著者: 伊藤澄信

ページ範囲:P.1978 - P.1981

ポイント
 女性患者を診る場合,妊娠・生理の有無や,特に主訴が腹痛の場合は性交渉歴聴取など,診察に際して配慮が必要である.
 年齢・性別から検査前確率,疾患の頻度と疾患の重篤度を考慮した診断計画を立てる必要がある.
 妊娠中の放射線検査は,通常の線量では問題が少ないといわれるが,精神発育遅滞がありうるともいわれるので15,16週の器官形成期終了までは避ける.
 治療法選択の説明に際し,女性器に対する感情の個人差,審美的要素に配慮し,informed choiceとなるよう心がける.

思春期のレディース・クリニック

思春期女性の身体とこころ

著者: 小島秀規 ,   本庄英雄

ページ範囲:P.1982 - P.1984

ポイント
 思春期における女性の変化を理解する.
 受診時にはこれらの変化に対し十分配慮する.

拒食症・過食症

著者: 渡辺久子

ページ範囲:P.1986 - P.1989

ポイント
 摂食障害(拒食症,過食嘔吐症)は,ストレスを心で受け止める代わりに身体をはけ口にする障害である.
 難治性であり,生体リズムの障害から始まり骨粗鬆症,不妊症などの多臓器障害に陥る。
 早期発見治療が大切であり,治療は心身の休養とめりはりのある食生活を基盤に,本音で生きる練習を積み重ねてゆく.

過敏性腸症候群(IBS)

著者: 小林健二

ページ範囲:P.1990 - P.1993

ポイント
 IBSは腹痛あるいは腹部不快感を伴う便通異常を訴える症候群で,成因として,内臓知覚過敏,脳腸相関異常,消化管運動異常などが推定されている。
 主な症状により,腹痛型,下痢型,便秘型,交代型に分けられる.
 治療の主眼は症状のコントロールであるが,難治例は消化管運動を専門とする医師らへの紹介が望ましい.

性感染症と性教育

著者: 沼﨑啓

ページ範囲:P.1994 - P.1995

ポイント
 新しい性感染症(STD)は,従来の性病に比較すると症状が軽微あるいは無症候性のものが多い.
 STDおよびSTIは,特殊な性風俗にかかわる人々のみならず,一般社会においても女性に広く蔓延している.
 STDまたはSTIの早期の診断とパートナーを含めた適切な治療は感染源対策の観点からも重要である.

月経不順と無月経

著者: 清水靖 ,   福田淳 ,   田中俊誠

ページ範囲:P.1996 - P.1998

ポイント
▶思春期の月経異常の多くは,性成熟完成過程での一時的な無月経が多い.
▶月経異常で不正出血が続き貧血をきたしたり,血液疾患が発見されることもある.
▶続発性無月経の誘因(体重減少,神経性食欲不振症,ストレス)がある場合,無月経は重症であることが多い.
▶原発性無月経は性分化異常であることが多く,満16歳になっても初経の発来をみない場合,精査を行う.
▶思春期の月経不順や無月経の治療には,Holmstrom療法やKaufmann療法などのステロイド補充が主治療となる.

にきび

著者: 宮地良樹

ページ範囲:P.2000 - P.2002

ポイント
 にきびは病態的にも治療面でも,面皰のみの非炎症性にきびと赤色丘疹を伴う炎症性にきびに分けて考える.
 非炎症性にきびは皮脂分泌亢進,毛孔閉塞が原因なので,洗顔などのスキンケアが重要である.
 炎症性にきびは単なる毛包の細菌感染ではなく,好中球による毛包破壊性炎症なので,好中球機能抑制作用を有するテトラサイクリン,マクロライドが第一選択である.

成熟期・熟年期のレディース・クリニック

成熟期・熟年期女性の身体とこころ

著者: 後山尚久

ページ範囲:P.2004 - P.2008

ポイント
 女性の生涯において,性成熟期は内分泌学的にはロングスパンでの変動が比較的少なく,心身は最も安定した時期であるといえる.しかし,月経周期の存在や,妊娠,分娩,子育てなどへの心的体験,あるいは家庭や職場でのストレスに包囲された環境が心理的・身体的に負荷となり,不定愁訴という症状により発症することがある.分娩を契機に発症する精神疾患もあり,また,うつ病やパニック障害の発症もみられ,早期の診断・治療を要し,心身医学的アプローチを要する症例が少なくない.

肥満

著者: 加藤清恵

ページ範囲:P.2009 - P.2011

ポイント
 BMl≧25を肥満とする.
 肥満の合併症があるか内臓脂肪型肥満は肥満症とする.
 脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインは,インスリン抵抗性を介し糖代謝異常・高血圧・高脂血症を起こすとともに,それ自体が動脈硬化性疾患を引き起こす.
 肥満症は食事・運動療法を中心に長期管理を要す.

高脂血症

著者: 香取登久江 ,   山田信博

ページ範囲:P.2012 - P.2015

ポイント
 近年の高脂血症を基盤とする重篤な疾病,特に冠動脈疾患を代表とする動脈硬化性疾患の増加に対して,高LDL(low density lipoprotein)コレステロール血症をはじめとして低HDL(high density lipoprotein)コレステロール血症や糖尿病などでの高中性脂肪血症は,重要な危険因子である.

心電図異常と狭心症

著者: 天野恵子

ページ範囲:P.2016 - P.2019

ポイント
 女性における器質的虚血性心疾患は,閉経前には稀であり,閉経後にその発症率が増加する.閉経は女性において重要な冠危険因子である.閉経年齢とPTCAなどの侵襲的治療年齢の間にはほぼ10年の開きがある.女性のQOL上問題なのが,40〜50歳代の閉経前後の女性にみられる,冠微小血管性狭心症である.

便秘

著者: 伊藤崇

ページ範囲:P.2020 - P.2022

ポイント
 女性に便秘が多い理由としては,①腹筋が弱い,②排便に対し羞恥心が強い,③プロゲステロンの腸管蠕動抑制作用,④妊娠時,子宮の増大による腸管圧迫が挙げられる.
 若年者女性の便秘で最も多い原因は機能性便秘である.
 治療の原則は生活習慣の是正と食事療法.薬物療法は塩類下剤や膨張性下剤から開始するべきである.
 大腸癌などを見逃さないために病歴や診察上のポイントに留意し,必要なら大腸検査を積極的に行う.

自己免疫性肝疾患

著者: 橋本直明 ,   光井洋 ,   田中篤

ページ範囲:P.2024 - P.2029

ポイント
 自己免疫性肝炎(AIH)は,肝炎ウイルス,アルコール,薬物などの原因がない肝炎で疑う.中年女性に多い.約9割はHLA DR4を有する.lgGまたはγ-グロブリンが高値,抗核抗体(ANA)が陽性.抗平滑筋抗体(SAM)陽性例もある.抗スルファチド抗体陽性も特徴.ステロイドが奏効する.初期量は経口プレドニゾロン30〜60mg/日が一般的である.
 原発性胆汁性肝硬変(PBC)は,中高年女性に好発する慢性肝内胆汁うっ滞症.近年は無症候性(a-PBC)が多い.黄疸,掻痒感を呈する症候性PBC(s-PBC)を経て,20〜30年かかって肝硬変に至る.2大死因は肝不全と消化管出血.組織学的特徴は小葉間胆管の慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC).血液検査では抗ミトコンドリア抗体(AMA)陽性.

貧血

著者: 波多智子 ,   陣内逸郎

ページ範囲:P.2030 - P.2032

ポイント
 女性ではHb 12g/dl未満,妊婦や高齢者では11g/dl未満を貧血と診断する.
 赤血球指数に基づいて貧血の鑑別診断を行う.
 鉄欠乏性貧血は最も頻度が多く,その原因検索が重要である.
 鉄欠乏性貧血の治療は原則として経口で行い,フェリチンの正常化を投与中止の目安にする.

特発性血小板減少性紫斑病

著者: 川合陽子

ページ範囲:P.2034 - P.2036

ポイント
 特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura:ITP)は,若い女性に頻度の高い疾患である.予後は比較的良好で治療を必要としない軽症のITPも多いが,妊娠・出産を控えた若い女性の治療が問題となる.また,致死的な出血は稀だが,標準的な治療に反応しない慢性の難治例は予後が悪い.

慢性関節リウマチ

著者: 片山雅夫

ページ範囲:P.2037 - P.2039

ポイント
 慢性関節リウマチ(RA)は妊娠能力および妊娠の予後にほとんど影響を及ぼさない.
 RAの発症頻度は妊娠中は低いが,出産後に高い.RAは妊娠中に改善し,出産後に増悪がみられることが多い.
 NSAIDsは妊娠末期には投与しない.抗リウマチ薬は妊娠前6ヵ月以前に中止する.プレドニゾロン10mg/日では胎児への影響はない.

全身性エリテマトーデス

著者: 上原立子 ,   鈴木康夫

ページ範囲:P.2040 - P.2043

ポイント
 SLEは妊娠可能な若年女性に好発するため,結婚生活が妊娠・出産に影響する場合がある.疾患や治療に対し,十分に理解できるように説明する.特に,治療(ステロイドや免疫抑制薬)がその後外見や生殖機能に与える影響については十分な説明が必要である.
 疾患活動性がコントロールされていれば,妊娠・出産も可能であるが,抗リン脂質抗体や抗SS-A抗体高値例では妊娠や胎児合併症が起きる可能性があり,十分な管理,対応が必要である.

甲状腺疾患

著者: 百渓尚子

ページ範囲:P.2044 - P.2046

ポイント
 一過性の甲状腺機能亢進症をBasedow病と診断してはならない.
 Basedow病の治療は将来を見据えて選択,変更する.
 橋本病による甲状腺機能低下症は自然に回復することがある.
 甲状腺機能低下症は,TSHを指標に適量のサイロキシンを投与する.
 甲状腺に痛みがあって甲状腺機能亢進症があったら亜急性甲状腺炎と診断できる.

乳癌の予防とスクリーニング

著者: 鈴木育宏 ,   徳田裕

ページ範囲:P.2048 - P.2050

ポイント
 1998年における日本人の女性乳癌の死亡数は8,589人で,女性の全悪性新生物死亡111,615人の7.7%を占める.これは肝・胆,胃,大腸,肺に次いで第5位であるが,2015年にはトップになると推計されている.
 一方,1995年における乳癌の罹患数は29,818人で,女性の全癌罹患数194,579人中の15.3%,部位別では胃癌に次いで第2位である.この罹患数は同年の乳癌死亡数の3.8倍であった.また粗罹患率は人口10万人当たり46.6で,部位別には胃癌を抜いて,第1位である.
 乳癌検診は視触診とマンモグラフィ,超音波を併用して行う.

子宮癌・卵巣癌の予防とスクリーニング

著者: 長谷川清志 ,   宇田川康博

ページ範囲:P.2052 - P.2053

ポイント
 卵巣癌の年齢調整死亡率は年々増加している.
 子宮癌全体に対する子宮体癌の占める割合は増加している.
 子宮頸癌の重要な危険因子はヒトパピローマウイルス感染症である.
 子宮頸癌・体癌のスクリーニングは細胞診が主体となる.
 卵巣癌のスクリーニングは超音波断層法と腫瘍マーカーで行う.

うつ

著者: 後藤美野 ,   鈴木勇一 ,   宮岡等

ページ範囲:P.2054 - P.2056

ポイント
 うつ状態では多彩な身体愁訴を認める.
 うつ状態は薬剤性を含む身体因性,内因性,性格・環境因性に分類され,精神医学の知識に基づいた鑑別診断と治療が不可欠である.
 女性特有のうつ状態として,産褥期うつ病,月経前緊張症候群,更年期障害などがある.

更年期・高齢期のレディース・クリニック

更年期・高齢期女性の身体とこころ(更年期障害含む)

著者: 牧田和也 ,   野澤志朗

ページ範囲:P.2057 - P.2059

ポイント
 更年期・高齢期女性の身体および心の変化には,加齢変化のみならず女性ホルモンの分泌低下が関与している.
 更年期は女性の一生の一つの節目であり,様々なストレス・葛藤が生じる可能性がある.
 更年期障害は,更年期にみられる不定愁訴症候群であり,女性ホルモンの分泌低下を中心に,心理・社会的要因が複雑に絡んで発症する.

閉経期への対応とホルモン補充療法

著者: 太田博明 ,   牧田和也

ページ範囲:P.2061 - P.2063

ポイント
 女性は卵巣機能の低下に伴うエストロゲンの分泌低下により,必ず月経の永久的な停止である閉経を迎える.
 ホルモン補充療法は,エストロゲンの分泌低下と関連が深い退行期疾患の予防および治療に有用である.
 その中心となる薬剤はエストロゲン製剤であるが,子宮体癌のリスクを軽減するために子宮を有する者には黄体ホルモン製剤を併用することが望ましい.

骨粗鬆症

著者: 細井孝之

ページ範囲:P.2064 - P.2066

ポイント
 骨粗鬆症は閉経後女性において急増する疾患であり,その予防と治療は社会の高齢化が進む現在,ますます重要なものとなっている.診断基準の整備,治療薬の開発も進み,本症に対する積極的な取り組みが求められる.

リウマチ性多発筋痛症と側頭動脈炎

著者: 野口善令

ページ範囲:P.2068 - P.2070

ポイント
 リウマチ性多発筋痛症は頸部・体幹・肩・殿部・腕などの疼痛,朝のこわばり,血沈の亢進を特徴とする.
 側頭動脈炎は頭痛,側頭動脈の圧痛,腫脹,血沈の亢進を特徴とする.
 両者とも50歳以上に好発し,含併することも多い.
 ステロイドが有効である.
 側頭動脈炎を疑ったら,失明の予防のために早急にステロイド投与を開始し,その後,側頭動脈生検を行う.

尿路感染症(無症候性細菌尿)

著者: 渡邊祐子

ページ範囲:P.2071 - P.2073

ポイント
 無症候性細菌尿の頻度は年齢に応じて増加するが,外来患者では発熱や敗血症の原因となることは稀である.
 更年期・高齢期の無症候性細菌尿において治療が必要なのは,①泌尿器科系の侵襲的検査・手術,②開胸・開腹術,③prosthetic devicesを用いる手術(人工弁置換術,人工血管を用いたバイパス術,メッシュを使用する手術など)の場合である.

尿失禁

著者: 高橋悟 ,   本間之夫

ページ範囲:P.2075 - P.2077

ポイント
 腹圧性尿失禁は40〜50歳代からみられ,切迫性尿失禁は加齢とともに増加する.
 腹圧性尿失禁は,簡便な外科療法で完治するが,軽度のものは骨盤底筋体操も有効である.
 切迫性尿失禁の治療は抗コリン剤による薬物療法が主体である.

周産期のレディース・クリニック

妊娠と高血圧

著者: 東浦勝浩 ,   山口康一 ,   島本和明

ページ範囲:P.2078 - P.2080

ポイント
 妊娠の約5%に高血圧が合併し,子癇前症では拡張期血圧が95mmHgを超える例では薬物療法を開始する.
 子癇症を示す所見を注意深く観察することが重要である.

妊娠と糖尿病

著者: 穴沢園子 ,   坂倉啓一

ページ範囲:P.2081 - P.2083

ポイント
 妊娠には催糖尿病作用があり,「妊娠糖尿病」の発現や既存糖尿病の悪化をきたしやすい.
 妊娠糖尿病は妊娠中の早期発見・治療と,出産後の経過観察が重要である.
 糖尿病合併妊娠,妊娠糖尿病いずれも糖尿病母体の妊娠はハイリスクであり,分娩成績を良好にするには,厳格な血糖コントロールが必要である.
 糖尿病患者の妊娠には,妊娠前管理と計画妊娠が不可欠である.

妊娠と血液異常

著者: 伊東宏晃 ,   佐川典正 ,   藤井信吾

ページ範囲:P.2084 - P.2088

ポイント
 妊娠中期以降に生理的な貧血が生じる.
 妊娠中に血小板数が減少することがある.
 妊婦には血栓症が発症しやすい.

妊娠と薬剤の使用(授乳期を含む)

著者: 井上裕美

ページ範囲:P.2089 - P.2091

ポイント
 受精から着床までの期間(preimplantation period)は薬の影響で流産する可能性がある“all or none”periodといわれる.
 妊娠3〜8週までは器官形成期(embryonic period)で催奇形性を注意しなくてはならない.
 妊娠9週からの胎児発育期(fetal period)は性器の分化および口蓋の閉鎖,そして中枢神経は妊娠全期間を通して発育する.
 妊娠34週以降は胎児の動脈管閉鎖する薬剤に注意する.
 授乳中も乳汁移行に注意する.

レディース・エマージェンシー

パニック障害

著者: 竹内龍雄

ページ範囲:P.2092 - P.2093

ポイント
 突発性の動悸,息苦しさ,胸苦しさ,めまいなどを伴う急性の強い不安の発作(パニック発作)を基本症状とする精神疾患である.
 アルプラゾラムなどの高力価ベンゾジアゼピンと,パロキセチンなどの抗うつ薬が有効である.
 発作で死ぬことは決してないこと,気のせいではなく,パニック障害という病気であり,薬がよく効くこと,などを教える患者教育が重要である.

自傷・自殺企図

著者: 高橋祥友

ページ範囲:P.2094 - P.2095

ポイント
 自殺未遂歴は最も重要な自殺の危険因子である.
 薬を数錠余分に飲んだり,手首を浅く切るといった,それ自体では直ちに生命を失うおそれのない自傷行為に及んだ人でも,将来,自殺に終わる危険が高い.
 自殺の危険の高い人は,初期の段階では精神科医ではなく,プライマリケア医のもとをしばしば受診している.

女性の腹痛

著者: 井村洋

ページ範囲:P.2096 - P.2098

ポイント
 子宮外妊娠をはじめ,緊急性の高い疾患を見逃さない.
 疾患を想定して診療を進める必要がある.
 判断に悩むときは婦人科,外科に相談する.
 妊娠の有無を確認することは重要である.

緊急避妊法

著者: 北村邦夫

ページ範囲:P.2100 - P.2102

ポイント
 緊急避妊法とは,避妊しなかった,避妊できなかった,避妊に失敗した,時にはレイプされたなどの場合に,望まない妊娠を回避する最後の避妊手段である.
 わが国で広く用いられている緊急避妊法は,エチニルエストラジオールとノルゲストレルの配合剤であるー定量の女性ホルモンを性交後72時間以内に1回,その12時間後に同量投与する方法である.

Scope

子どもの虐待

著者: 桃井真里子

ページ範囲:P.2117 - P.2123

はじめに
 子どもの虐待死が日常的にニュースとなり始め,日本社会は,急激に子どもを虐待し,死に至らしめつつある.昔は親が自死の道連れに子どもを殺す,いわゆる「心中」であったのが,いまや親は自らの生きにくさゆえに,子どもだけを殺す道を取りつつあるかのようである.心中は,子どもだけが生き残されてはかわいそうという親の勝手な思い込みによる犯罪であったのが,いまや「自分がかわいそう」という親の自己憐びんから,子どもを虐待し殺している.日本社会がどこでどう間違えてきたのかは,ここでは論じないが,子どもを診療する機会がある医師は,この子どもたちへの犯罪を,決して見逃してはならない,という強い決意と知識が必要になった.本稿では,その知識とノウハウの一端を紹介し,一人でも多くの子どもたちが,医師によって虐待から抜け出られることを,強く願うものである.

演習 心電図の読み方・14

心筋症

著者: 近森大志郎 ,   山科章

ページ範囲:P.2125 - P.2132

Case
 症例1:63歳,男性.主訴:胸痛.
 既往歴:特記すべきことなし.
 現病歴:20年前より健診の際に不整脈を指摘されていたが放置していた.1週間前に初めて労作時の胸痛と動悸を自覚するようになったため近医を受診.心電図の異常が認められたため,当院に紹介された.
 身体所見:身長169cm,体重70kg.血圧116/68mmHg,脈拍54/min.聴診上,第IV音を聴取するが心雑音は認めない.呼吸音に異常なし.腹部にて異常所見を認めない.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.2133 - P.2138

カラーグラフ 消化管内視鏡検査—知っておきたい基礎知識・12

胃悪性リンパ腫

著者: 小田一郎 ,   斉藤大三

ページ範囲:P.2140 - P.2143

 非上皮性悪性腫瘍の頻度は,胃悪性腫瘍の1〜2%とされているが,そのなかで最も頻度が高いのが胃悪性リンパ腫であり,非上皮性悪性腫瘍の約60%を占める.胃原発悪性リンパ腫は,一部の特殊なものを除き,そのほとんどがB細胞性であり,low-gradeであるmucosa-associated lym phoid tissue(MALT)リンパ腫(L-MALT)とhigh-gradeであるdiffuse large cellリンパ腫に大別される.L-MALTは,1983年にIsaacsonらにより提唱され1),その後広く一般に認識され,1994年には,Revised European-American Classification of Lymphoid Neoplasms(REAL分類)にも取り入れられるに至ったが,以前は胃悪性リンパ腫の鑑別対象であったReactive Lymphoreticular Hyperplasia(RLH)の大部分が,これに含まれるものと考えられる.

プライマリケアにおけるShared Care—尿失禁患者のマネジメント・3

膀胱・尿道と骨盤底筋の解剖と生理・薬理的機能

著者: 石塚修 ,   西沢理

ページ範囲:P.2144 - P.2147

 骨盤底筋の解剖と膀胱尿道との関係
 ヒトは起立して生活しているため,四つ脚動物と比較すると骨盤底は強固である.尿失禁との関連で主に問題となるのは,その脆弱化などを起因とする腹圧性尿失禁であり,これは尿道との関係,また,妊娠・出産を経験する関連上,女性で大きな問題となる.男性で腹圧性尿失禁が問題となるのは,多くの場合が前立腺疾患術後の尿道括約筋の損傷・機能障害が主であり,この場合は専門医が取り扱うことが主体となる.そのため,本稿での解剖については女性を主に概説する.

今求められる説明義務・9

宗教上の輸血拒否

著者: 古川俊治

ページ範囲:P.2148 - P.2152

エホバの証人による輸血拒否をめぐる状況
 エホバの証人はキリスト教の宗教団体で,聖書に「血を避けなさい」という言葉が何度も出てくるのは,エホバ神が人間に対し血を避けることを指示しているからであると考え,人間は血を避けることによって身体的にも精神的にも健康であると確信している.したがって,一般に,エホバの証人の信者は,輸血を受けることはできないとの信念を有しているが,なかには,救命のため必要な場合には輸血を受け入れる者もいる.
 エホバの証人の信者やその子どもが,輸血を必要とする病態にありながら輸血を拒否するため,臨床現場で大きな混乱を招いてきた.

新薬情報・17

ゾルミトリプタン(ゾーミック®錠2.5mg)

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.2154 - P.2155

適応■片頭痛と診断の確定した頭痛の治療.予防目的での投与は適応となっていない.
用法・用量■合併症のない成人には,ゾルミトリプタン2.5mgを片頭痛の発作時に経口投与する.2時間以上経っても効果が不十分な場合は同量を追加投与できる.また,2.5mgで効果が不十分であった場合には,次回発作時には5mgから投与を開始できる.ただし,1日総量は10mg以内とする.同薬は末梢血管の収縮作用を有するため,心筋梗塞の既往がある患者や,虚血性心疾患(労作性および異型狭心症,不整脈),末梢血行障害を有する患者,脳血管障害や一週性脳虚血発作の既往のある患者では,基礎疾患悪化の危険のため投与は禁忌である.

--------------------

「medicina」第38巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

icon up
あなたは医療従事者ですか?