icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

medicina38巻2号

2001年02月発行

雑誌目次

今月の主題 Hematological malignancy—診断と治療の現状と展望 Editorial

進歩するhematological malignancyの診断と治療

著者: 木崎昌弘

ページ範囲:P.168 - P.170

ポイント
 造血器腫瘍においては,病態に直接関与する分子を標的とした治療法の開発が進んでいる.
 ABLチロシンキナーゼ阻害剤STI 571はPh1陽性白血病の治療薬として期待されているが,特定のシグナル分子を標的にした低分子抗腫瘍薬として臨床治験が進んでいる.
 APLに関してはATRAによる分化誘導療法の後,再発例に対してAs2O3や合成レチノイドAm 80が有効である.
 低悪性度Bリンパ腫に対しては,ヒト化抗CD20モノクローナル抗体が有効である.
 多発性骨髄腫には血管新生阻害剤であるサイドマイドをはじめ,As2O3,特異的モノクローナル抗体療法が考えられている.

発症のメカニズムと疫学

造血器腫瘍の発症頻度—最近の動向

著者: 内田秀夫

ページ範囲:P.172 - P.173

ポイント
 わが国の白血病による死亡率は,1999年で人口10万人対5.3で,近年はほぼ横ばいである.
 骨髄異形成症候群の発症は増加傾向にある.
 悪性リンパ腫の発症頻度は漸増しており,特に非Hodgkinリンパ腫の増加が目立つ.死亡率も1999年に6.1であった.一方,Hodgkin病はわが国を含む欧米各国で減少傾向にある.

造血幹細胞update—造血器腫瘍の発症機構と造血幹細胞移植を理解するために

著者: 安藤潔

ページ範囲:P.174 - P.178

 造血器腫瘍を学ぶに際して,初めはその詳細な病型分類,多種類の細胞表面マーカー,多様な染色体異常,造血幹細胞移植関連の様々な概念など,圧倒されることが多いのではないだろうか.他の疾患領域とは大きく異なってみえることであろう.しかも病型分類は短期間で改訂され,新たなCD(cluster of differentiation)番号と腫瘍関連遺伝子が次々にカタログに加えられていく.実際,血液内科医にとっても日々新たに加えられるそれらの情報に追いつくのには相当な努力を要するのが現状である.これは血液系という組織が容易にサンプリングでき,特定の組織構築をとらずに「血漿という培地に浮遊している細胞」という特性をもつため様々な検討の対象となりやすいことが1つの要因となっている.このため基礎科学で産み出された最新の成果が血液の分野で最初に応用されるのである.1つだけ最近の例を挙げておくと,ポストゲノム時代の診断法として期待されるDNAマイクロアレイ技術を用いた遺伝子発現パターン診断が,すでに血液腫瘍の領域では利用され始めている1,2).したがって造血器腫瘍を学ぶことの楽しさの1つは最新の科学の成果が医療に取り込まれる過程を目撃できる点である.

やさしい白血病発症の分子機構

著者: 三谷絹子

ページ範囲:P.180 - P.182

ポイント
 癌遺伝子はシグナル伝達物質をコードしており,癌抑制遺伝子には細胞周期の制御に関与するものがある.
 癌遺伝子の変異による活性化あるいは癌抑制遺伝子の失活が白血病発症の原因となる.
 転写因子遺伝子は,白血病で観察される染色体転座に伴いキメラ遺伝子を形成することが知られている.

診断

hematological malignancy—分類の進歩

著者: 押味和夫

ページ範囲:P.184 - P.185

ポイント
 造血器悪性腫瘍は従来形態を中心として分類されてきたが,今後は形態だけでなく,表面マーカー,染色体.遺伝子,さらには臨床像をも加味した分類が要求される.これらの4つの情報を基にした新しい分類がWHO分類である.

理学的所見,検査値から造血器腫瘍を見逃さないための診断のコツ

著者: 浦部晶夫

ページ範囲:P.187 - P.188

ポイント
 白血球数の増加または減少があるか.
 芽球の出現があるか.
 貧血や血小板減少があるか.
 リンパ節腫脹や脾腫があるか.
 M蛋白が出現しているか.

形態および細胞表皮マーカーからの診断

著者: 宮崎泰司 ,   栗山一孝

ページ範囲:P.190 - P.192

ポイント
▶急性白血病の診断分類は,骨髄中の幼弱芽球の認識に始まり,その後,骨髄性,リンパ性を決定し,さらに細かい病型の判断へと進む.その際,骨髄性では主に形態が,リンパ性では免疫学的手法が用いられるが,白血病生物学研究の進歩に伴い,この2つばかりでなく遺伝子レベルの情報まで重要となってきている.

臨床診断に必要な染色体,遺伝子異常

著者: 麻生博也

ページ範囲:P.193 - P.196

ポイント
 白血病をはじめとする血液悪性腫瘍には病型特異的染色体異常が存在し,その大部分が転座型異常を示す.
 染色体転座切断点には,細胞の増殖や分化,ひいては個体発生に重要な遺伝子が存在し,転座によりこれらの遺伝子が機能を喪失したり正常の制御から逸脱することが,白血病の病態に重要と考えられている.
 転座切断点の融合遺伝子を標的とした有効な治療法が,今後開発されていく可能性がある.

治療効果判定のための微小残存病変の臨床応用

著者: 横田昇平 ,   岡本朋美

ページ範囲:P.197 - P.199

ポイント
 急性白血病患者では寛解導入後も最大1010程度の白血病細胞が体内に残存しており,これを微小残存病変(MRD)と呼ぶ.
 MRDは,腫瘍細胞特異的な蛋白や遺伝子変異を免疫学的手法や分子生物学的手法で検出することで診断できる.
 治療開始早期のMRDは予後と相関することから,白血病治療層別化の新たな因子として有用視されている.

治療の現状と展望

EBMによる白血病の治療

著者: 大野竜三

ページ範囲:P.202 - P.207

 白血病は近年の化学療法や造血幹細胞移植療法の進歩により治癒可能な疾患となり,より高率の治癒を目指した治療の改良が続けられている.治癒を得るためには,できる限り強力な治療がよいことを,これまでの白血病治療の歴史が教えてきたが,急性前骨髄球性白血病(APL)において驚異的に高い寛解率と治癒率の得られる分化誘導療法は,必ずしも強力療法のみが治癒を得るための治療手段ではないことも教えている.
 以下,レベルⅠのエビデンスを作りうる無作為比較研究を中心に,読者が日本で患者を治療している内科医師であることを鑑み,わが国でのデータのあるものはわが国のエビデンスを,わが国には信頼すべき十分なデータのないものは欧米のエビデンスを基に,EBMに基づく白血病の治療について解説する.

化学療法

急性骨髄性白血病の治療戦略

著者: 宮脇修一

ページ範囲:P.208 - P.211

ポイント
▶急性骨髄性白血病は,治癒が望める疾患となっている.
▶治癒には,寛解導入療法により完全寛解とすること,寛解を維持するための寛解後療法を実施することが必要である.
▶イダマイシン®とシタラビンの併用による寛解導入療法が行われ,約80%で寛解が得られている.
▶導入療法時のものと交差耐性を示さない薬剤を用いた地固め療法で,約30%の無病生存率が得られているが,欧米では,シタラビン大量療法の有効性が報告されている.
▶成績向上のためには,症例を層別化し,それぞれに最適の治療法を,多施設共同研究により確立する必要がある.

急性リンパ性白血病の治療戦略

著者: 竹内仁

ページ範囲:P.212 - P.215

ポイント
 成人急性リンパ性白血病(ALL)の治療は,まず完全寛解に導入し,その後,地固め療法,次いで維持・強化療法を行うのが原則である.
 ALLでの中枢神経系(CNS)白血病の予防は不可欠である.
 ALLを層別化し,risk group別に治療法を考案することにより治療成績の向上を図ることが期待される.

骨髄異形成症候群—国際予後判定基準に基づく治療法の選択

著者: 宮澤啓介

ページ範囲:P.216 - P.218

ポイント
 芽球比率,染色体異常および血球減少の範囲を指標項目として,MDSを4つのリスク群に分類する国際予後判定基準(International prognostic scoring system:IPSS)が提唱された.
 IPSSに従ってMDS患者の層別化を行い,個々の症例における治療方法を組み立てることが合理的である.

慢性骨髄性白血病の治療戦略

著者: 田内哲三 ,   大屋敷一馬

ページ範囲:P.220 - P.222

インターフェロン(IFN)療法
 慢性骨髄性白血病(CML)の慢性期初期の患者では,IFN療法により70〜80%に血液学的寛解,40%程度に細胞遺伝学的効果(Phクローンの減少),10〜20%では細胞遺伝学的完全寛解(Phクローンの消失)が得られる.病初期でIFN投与量が多いほど細胞遺伝学的効果が得られているため,診断後速やかに十分量を継続して投与することが重要である.実際の投与法は天然型IFNα300〜600万単位,または組み換え型IFNα600〜1,200万単位を連日皮下注する.天然型と組み換え型では単位あたりの力価が異なる.注射薬であるが自己皮下注が認められているため,十分な指導の下に外来治療が原則である.有効例では2〜4ヵ月で白血球数が正常化する.白血球数を5,000/ml以下に低めに維持するように投与量,投与間隔を調節するが,副作用がなければ最大投与量を連日継続することが望ましい.細胞遺伝学的効果は6〜12ヵ月頃より認められる.白血球数がコントロールされている症例では半年に1回ほど骨髄穿刺と染色体分析を行う.

組織分類に基づくリンパ腫の治療指針

著者: 堀田知光

ページ範囲:P.224 - P.227

ポイント
 リンパ腫の生物学的特性を考慮した新WHO分類が提唱され,新たな組織分類に基づく治療対応が求められている.
 Aggressiveリンパ腫に対してはCHOP療法が標準的治療であり,リスクグループに従った治療対応が行われる.
 標準治療の確立していないindolent Bリンパ腫は,抗CD20単クローン抗体(rituximab)を併用した化学療法が有望である.

多発性骨髄腫の治療指針

著者: 原朋子 ,   小阪昌明

ページ範囲:P.228 - P.231

ポイント
 多発性骨髄腫は,早期診断後に治療を開始しても生存期間の延長は望めず,有症状になってから治療を開始すべきであるが,通常の化学療法では治癒は望めない.
 現在もMP療法が標準的治療法である.
 今後は,移植を併用した超大量化学療法により生存期間の延長が期待される.

骨髄増殖性疾患の治療

著者: 小松則夫

ページ範囲:P.232 - P.233

ポイント
 真性赤血球増加症の治療を始める前に,二次性赤血球増加症,ストレス赤血球増加症を鑑別し,除外する.とはいっても鑑別困難な症例に遭遇することがあり,経過を注意深く観察し,総合的に診断する.
 本態性血小板血症では,血栓や出血による合併症の発生に影響する危険因子は年齢,血栓症の既往,血小板数,喫煙,肥満が挙げられており,これらを用いたリスクの層別化をもとに治療方針を決定することが推奨されている.

高齢者造血器腫瘍の治療

著者: 大田雅嗣

ページ範囲:P.234 - P.237

ポイント
 高齢者が増加している今日,加齢とともに造血器腫瘍の罹患率が上昇傾向にある.高齢者造血器腫瘍はもはや特殊な疾患ではない.
 75歳までの急性骨髄性白血病,80歳までの悪性リンパ腫に対しては生理的年齢,臓器予備能を加味しつつ,原則的に成人と同じように積極的に化学療法を行う.
 高齢者造血器腫瘍においても,evidence-based medicine(EBM)をめざし,多施設における共同研究を推進することが急務である.
 造血器腫瘍罹患患者で痴呆症を伴うことをしばしば経験する.家族との話し合いのなかで治療のゴールをどう設定するかが重要である.

造血幹細胞移植

幹細胞移植は造血器腫瘍をどこまでcureするか

著者: 森毅彦 ,   岡本真一郎

ページ範囲:P.240 - P.242

 ポイント
 急性骨髄性白血病では寛解期の同胞間移植では60%以上の5年生存率が得られ,非血縁者間でも同等の成績が得られている.
 急性リンパ性白血病では第一寛解期の同胞間移植では50%の5年生存率が得られているが,それ以外の病期での成績は不良である.また非血縁者間移植でもほぼ同等の成績となっている.
 慢性骨髄性白血病では慢性期の同胞間移植では70%の5年生存率が得られているが,非血縁者間移植では50%となっている.
 血縁者にドナーのいない多くの患者に,より適したドナーを見いだすためには骨髄バンクのさらなる充実が必要である.

造血幹細胞移植のタイミング

著者: 権藤久司

ページ範囲:P.244 - P.246

ポイント
 移植成績には,疾患,病期,治療への反応性,HLA適合性,全身状態,臓器機能,年齢,感染症の有無,心理社会的側面などが影響を及ぼす.
 難治性血液疾患の治療では,造血幹細胞移植を考慮して治療方針を決定し,その適応や実施時期については治療開始後早期から患者,家族,移植実施施設と検討しておくことが重要である.

末梢血幹細胞移植の現状と展望

著者: 島崎千尋

ページ範囲:P.248 - P.250

ポイント
 自家PBSCTは,移植後の血球回復が速く,輸血量や治療関連死亡が少なく,簡易無菌装置下で実施可能である.
 自家PBSCTの有用性が確立された病態は造血器腫瘍の一部に限られ,特に固形癌ではその有用性が確立されるまでは臨床研究として実施すべきである.
 同種PBSCTにおいては移植後の血球回復は速やかであるが,急性および慢性GVHDは骨髄移植と比較して頻度は高い可能性がある.

造血器腫瘍に対する臍帯血移植

著者: 加藤俊一

ページ範囲:P.251 - P.253

ポイント
 臍帯血幹細胞は骨髄あるいは末梢血中の幹細胞と比較して未分化で増殖能力に富むため,少数の移植細胞数でも血液学的再建が可能である.
 臍帯血リンパ球は免疫学的に未熟であるため,移植免疫反応であるGVHDが重症化しにくく,HLAが一部不一致のドナーからの移植も可能である.
 移植成績と相関する重要な因子は移植時期と移植細胞数である.

骨髄非破壊的前処置を用いた造血器腫瘍の移植—mini-transplant

著者: 峯石真

ページ範囲:P.254 - P.256

 近年,同種移植にも末梢血幹細胞が使えるようになったこともあって,造血幹細胞移植は造血器腫瘍および一部の血液良性疾患の根治的療法として広く受け入れられるようになった.従来の幹細胞移植の考え方では,移植の前処置には,抗腫瘍の治療法としての意味以外に2つの意義があり,それは骨髄破壊(myeloablation)および免疫抑制(immunosuppression)である.しかしながら,最近の臨床的知見は,この両者のうち免疫抑制のみが重要で,骨髄破壊を行わなくても造血幹細胞の生着は得られるということを明らかにした.最近,世界各国で非常に盛んに行われるようになった骨髄非破壊的移植(mini-transplant:ミニ移植)は,この考え方の基礎の上に立ち,移植前後の主要な合併症の原因である前処置を免疫抑制中心のものに切り替え,大量化学療法や放射線療法を使わないことによって,前処置関連毒性および移植合併早期死亡を減らすことを目的としたものである.これは初め,普通の同種移植が施行できない高齢者や臓器障害のある患者を中心に適応されていたものであるが,症例の蓄積とともにその適応も広がりつつある.

支持療法

サイトカインの造血器腫瘍治療への臨床応用

著者: 矢ヶ崎史治 ,   別所正美

ページ範囲:P.258 - P.261

ポイント
 通常化学療法後のG-CSF投与は好中球減少期間を短縮するが,生存率には影響を与えないとする成績が多い.
 G-CSFが入院日数や抗生剤投与期間を短縮するとの報告はあるが,医療コストの削減に貢献するかは未解決である。
 G-CSFの予防投与は化学療法後の骨髄抑制が高度で40%以上が発熱すると予測される場合に妥当である。
 AMLにおけるG-CSF投与が寛解導入失敗や再発率を増加指せる臨床的根拠はない.

治療の進歩に伴う感染症の変遷と治療

著者: 田村和夫 ,   鈴宮淳司

ページ範囲:P.262 - P.264

ポイント
 造血器悪性腫瘍治療に伴う感染症は,強力な原疾患治療に伴う易感染状態の創出と一般病棟に蔓延する多剤耐性菌を念頭に,予防,早期発見・早期治療,適切な治療を行う.
 厳重無菌管理よりも手洗い,標準ならびに感染経路別感染予防策(CDCガイドライン)を励行する.One procedure,one wash!
 カテーテル感染に要注意.

造血器腫瘍における適切な輸血療法

著者: 中島秀明 ,   半田誠

ページ範囲:P.266 - P.268

ポイント
 輸血はヘモグロビン値6〜8g/dl,血小板数1〜3万/μlを目安に行う.
 FFPは凝固因子が低下した症例のみ適応となり,血漿蛋白の補充や栄養補給目的の使用は適応とならない.
 頻回の輸血が予想されるため計画的な輸血を行い,輸血量を最小限に抑えて副作用を回避すべきである.

抗癌剤の副作用対策と制吐剤の使用法

著者: 森茂久

ページ範囲:P.270 - P.273

ポイント
 抗癌剤治療を開始する前に,患者の肝,腎,肺,心などの臓器障害について把握し,使用予定の抗癌剤の副作用を熟知したうえで,投与量,期間の妥当性を吟味する.
 治療開始前より可能な予防策を取り,治療開始後は副作用発現に注意し,迅速に対応する.

パミドロン酸ナトリウムの使い方と骨髄腫治療の補助療法

著者: 和田真紀夫

ページ範囲:P.274 - P.276

ポイント
 パミドロネート30〜45mgを500〜1,000 mlの生理食塩水に溶解して4時間以上かけて点滴静注する.
 高Ca血症に対してパミドロネートを1回静脈内投与すると約2〜3日後より血清Caが低下し始め,約2週間にわたってその効果を持続する.
 骨融解病変や重症の骨粗鬆症を伴う多発性骨髄腫には,パミドロネートの長期間にわたる間欠的静脈内投与が推奨されている.

造血器腫瘍における特殊病態とhematological emergencyへの対応

著者: 北野喜良

ページ範囲:P.277 - P.279

ポイント
 増殖が激しく腫瘍量が多い造血器腫瘍では,化学療法に伴いtumor lysis syndromeをきたしやすく,十分な補液,尿のアルカリ化,アロプリノール投与で予防する.
 造血器腫瘍に合併する高Ca血症は急速に進行することが多く,生理食塩水の補液とビスホスフォネートなどの骨吸収抑制剤の投与を行う.

造血器腫瘍の新しい治療

急性前骨髄球性白血病の分化誘導療法—ATRAと亜砒酸

著者: 樋口敬和

ページ範囲:P.281 - P.283

ポイント
 急性前骨髄球性白血病に対するall-trans型レチノイン酸(ATRA)による分化誘導療法は,確立された治療法となっている.
 ATRA療法の大きな問題点はATRA症候群とATRA耐性の獲得である.
 ATRA耐性の克服には亜砒酸が有効である可能性が高く,臨床研究が進行中である.

悪性リンパ腫に対するモノクローナル抗体療法

著者: 飛内賢正

ページ範囲:P.284 - P.285

ポイント
 従来の抗体療法の壁を打破しうる,3つの突破口が明らかになった(マウス/ヒトキメラ抗体,immunotoxin,radioimmunoconjugate).
 異種抗体が産生されにくい,血中半減期が長い,ヒト免疫系の活性化効率が高いことなどがキメラ抗体の利点であり,Bリンパ腫に対するキメラ型抗CD2O抗体(rituximab)の臨床的有用性が明らかにされた.

CML急性転化を含むbcr-abl陽性白血病に対するSTI 571

著者: 陣内逸郎

ページ範囲:P.286 - P.287

ポイント
 ablチロシンキナーゼ阻害剤のSTI 571は,bcr-abl陽性白血病細胞の増殖を選択的に抑制する.
 STI 571はbcr-abl陽性白血病に対して細胞遺伝学的寛解が期待できる.
 STI 571はbcr-abl陽性白血病の白血病特異的分子異常を標的とした治療薬である.

座談会

ここまで進んだ造血器腫瘍の治療

著者: 小松則夫 ,   峯石真 ,   宮澤啓介 ,   木崎昌弘

ページ範囲:P.289 - P.300

 木崎(司会) 本日はhematological malignancy,造血器腫瘍の特集に対する座談会ということで,この分野で中心となってご活躍されている先生方にお集まりいただき,hematologyが今後どういう方向に進んでいくのか,についてお話しいただきたいと思います.

理解のための28題

ページ範囲:P.303 - P.309

Scope

慢性肝炎診療の基本(前編)—疫学・病態メカニズム編

著者: 沖田極 ,   日野啓輔 ,   山口裕樹

ページ範囲:P.311 - P.315

はじめに
 医学の分野は基盤系(基礎医学)から展開系(臨床医学)まで多岐にわたり,またおのおのの系についても領域別に分かれている.したがって,医学の分野には研究会を含めるとおそらく数えきれないほどの学会が存在するはずである.それぞれの学会では,その領域をどのように進歩させるかについて議論を行い,例えば展開系であれば病める人々の救済の道を探るのである.しかし,一般的に言って,これまでの学会は医師や科学者同士の議論が主体であり,そこでの議論が対象となる病める人々へどのように還元するかについてはないがしろにされてきた感がある.日本肝臓学会は数百万人にも及ぶ肝炎ウイルスキャリアの存在,そしてその方々がいきつく肝硬変,肝細胞癌による死亡者数の逐年的増加を危惧し,1999年から行政,報道機関,さらに国民向けに白書1)やパンフレット2)を発行し,情報の開示に取り組んできた.そして,2000年度にはこれらの患者が最初に訪れるであろう第一線の医療機関向けに『慢性肝炎診療のためのガイドライン』を日本肝臓学会より発行し,慢性肝炎診療におけるコンセンサスを広く医療機関に浸透させることによって病める人々があまねく標準化された医療を受けられる体制作りを考えている.

演習 心電図の読み方・4

QRSの異常(3)—反時計軸回転,右側胸部誘導の高いR波

著者: 近森大志郎 ,   山科章

ページ範囲:P.317 - P.321

Case
 症例1:46歳,男性.会社の健康診断で心電図異常を指摘され来院.
 既往歴:約半年前に,出張先で激しい胸痛を自覚したことがある.
 現病歴,身体所見:特記すべきことなし.
 来院時の心電図(図1)を示す.

図解・病態のメカニズム—呼吸器疾患・4

慢性閉塞性肺疾患とびまん性汎細気管支炎

著者: 上原隆志 ,   木田厚瑞

ページ範囲:P.323 - P.327

 慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD),びまん性汎細気管支炎(diffuse panbronchiolitis:DPB)は,広範囲な肺内の慢性炎症により,進行性で不可逆的な閉塞性機能障害をきたし,晩期において労作性呼吸困難を主症状とする慢性呼吸器疾患という共通点をもつ.しかし両疾患の治療方針は明確に異なっており,したがって両者の鑑別は重要である.
 本稿では両疾患の病態の差異について述べる.

プライマリケアにおけるShared Care—前立腺肥大症患者のマネジメント・1【新連載】

前立腺肥大症を中心とした前立腺疾患の基礎知識—疾患編

著者: 武井実根雄

ページ範囲:P.328 - P.333

 前立腺肥大症は男性高齢者に多くみられる疾患であり,2025年には65歳以上の人口比率が25%と「超」高齢化社会の到来が予想されているわが国において,患者の急増が確実な重要疾患である.
 前立腺疾患の代表は前立腺肥大症と前立腺癌であり,いずれも加齢に伴い発生率が増加する.集団検診によれば55歳以上の男性の約20%に前立腺肥大症が,約1%に前立腺癌が発見されるという.前立腺肥大症の受療患者数は厚生省の統計によると,1998年には59万人となっており,1995年からの3年間では2倍近い増加を示している1)

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.336 - P.341

カラーグラフ 消化管内視鏡検査—知っておきたい基礎知識・2

食道癌

著者: 河野辰幸 ,   竹下公矢

ページ範囲:P.342 - P.346

食道癌の内視鏡診断
 食道癌では進行癌の診断と治療にもなお課題が残されているが,内視鏡診断上混乱を生ずるような問題は少なく,表在性病変の検査においてより注意が必要である.現在,食道では癌の浸潤が粘膜下層までにとどまるものを表在癌と定義し,粘膜筋板までの粘膜内にとどまるものを粘膜癌,粘膜下層まで浸潤したものを粘膜下層癌と呼び,粘膜癌で転移のないものを早期癌としている1).わが国では,食道表在癌が多数発見されるようになるとともに,根治的治療法としても手術,内視鏡治療,放射線化学療法などが選択肢となり,最適な治療法を選択できる精密で的確な診断が求められるようになっている.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

icon up
あなたは医療従事者ですか?