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雑誌目次

雑誌文献

medicina38巻3号

2001年03月発行

雑誌目次

今月の主題 内科医が診るリウマチ

理解のための29題

ページ範囲:P.479 - P.484

「リウマチ」と「慢性関節リウマチ」について学ぶ

リウマチ性疾患の歴史

著者: 酒井シヅ

ページ範囲:P.356 - P.361

ポイント
 リウマチの語源はギリシャ語の「流れる」という意味で,体液病理説を言葉である.
 痛風の「風」は中国医学の気の病理説を表す.
 リウマチ性疾患の分類は疾病分類の歴史である.
 リウマチ性疾患の本格的治療は20世紀になって始まった.

リウマチという言葉について

著者: 七川歓次

ページ範囲:P.363 - P.365

ポイント
 リウマチの語源は,体液が関節に停留して流れ去らないために起こると考えられた病状をいう俗語であった,
 リウマチは,医学用語として,リウマチ熱を痛風から分離するために初めて用いられた.
 慢性関節リウマチという病名は,1957年の国際リウマチ学会におけるリウマチ病の命名の統一の合意以後,国際的には全く使用されなくなっている.
 リウマチという言葉は種々のリウマチ性疾患の総称名として用いられている.

身近な難病としてのRA

著者: 齋藤輝信

ページ範囲:P.366 - P.368

ポイント
 慢性関節リウマチ(RA)の診断上,特異的検査所見がないため,臨床症状の鋭い観察が求められる.
 関節所見にのみとらわれることなく,全身疾患と認識して治療にあたることが大切である.
 本症は原因不明の難治性疾患ではあるが,決して治らない病気といった不用意な言葉を発することなく,ただひたすらあらゆる治療手段を講じて患者の管理にあたることである.

リウマチ性疾患の地平線

著者: 宮坂信之

ページ範囲:P.369 - P.371

ポイント
 リウマチ性疾患とは,関節の痛みをきたす疾患の総称である.
 患者が関節の痛みを主訴に来院した場合には,それが関節,関節周囲,筋肉,靱帯など,どの部位に由来するのかを鑑別することが重要である.
 リウマチ性疾患は多様であるが,関節痛をきたす関節数の多寡からも鑑別診断が可能である.
 WHOは,21世紀に向けて,骨・関節疾患制圧10ヵ年戦略を開始した.

リウマチ性疾患の新知識

RAの病因と病態研究の進歩

著者: 山口晃弘

ページ範囲:P.372 - P.373

ポイント
 RAの病態には,以下の3つの局面が混在する.
 1.抗原特異的免疫応答
 2.慢性炎症と滑膜増殖
 3.軟骨と骨の破壊
 細菌感染とRA発症の関運の可能性がある.
 疾患関連遺伝子の検索も行われている.

RAの骨破壊のメカニズム

著者: 首藤敏秀 ,   岩本幸英

ページ範囲:P.374 - P.376

ポイント
 RAの骨破壊の最前線やパンヌス中では,破骨細胞が組織学的に観察される。
 破骨細胞分化促進因子ODFは,骨芽細胞や骨髄間質細胞などの破骨細胞形成支持能のある細胞に発現され,骨吸収促進因子によりその発現が上昇する.
 強力な骨吸収阻害剤であるビスフォスフォネートは,実験関節炎における骨破壊を抑制する.

小児慢性関節炎の新しい分類

著者: 藤川敏

ページ範囲:P.377 - P.379

ポイント
▶米国リウマチ学会と欧州リウマチ学会では,小児期に発症する慢性関節炎の概念,分類,用語の違いがあった.
▶そこで国際リウマチ学会が用語の統一のため委員会を作り検討した結果,若年性特発性関節炎として,全身性関節炎,小関節炎,RF陰性多関節炎,RF陽性多関節炎,乾癬性関節炎,筋腱付着部炎関連関節炎,その他の関節炎に分類されることになった.
▶したがって若年性関節リウマチ(JRA)という用語が使われなくなり,JRAの全身発症型,多関節発症型,小関節発症型とされていた3病型は,若年性特発性関節炎の7病型の1型として分類されることになった.

変形性関節症の病態

著者: 木村友厚

ページ範囲:P.380 - P.381

ポイント
 変形性関節症は有病率の非常に高い生活習慣病である.
 変形性関節症は加齢に伴う関節の変性疾患であり,関節軟骨への力学的ストレスが主要な要因であるが,ほかにも様々な危険因子が関与している.
 マトリックス分解酵素が関節軟骨の破壊変性に直接にかかわっており,また軟骨細胞のアポトーシス,あるいは二次的な滑膜炎や骨変化が,病態を修飾している.

もっと関節に注目しよう

関節の診察法

著者: 上野征夫

ページ範囲:P.383 - P.385

ポイント
 関節リウマチの初期では,リウマチテストはしばしば陰性で,X線所見にも異常は認めない.
 診断は唯一,関節所見のみが頼りである.
 日本の内科医は,欧米の医師と比較して,関節の診療技術取得に遅れをとっていることが指摘されよう.
 まず自分で診て,触ってみて,考える習慣が大切である.

どのようなときにRAを疑うか

著者: 谷口敦夫

ページ範囲:P.387 - P.391

ポイント
 RAにおいては疾患特異的な臨床・検査所見はない.
 RAの重要な特徴は「関節炎の持続性」と「ほかの関節への進行性波及」である.
 関節炎の持続性は6週間を一つの目安とする.
 関節・関節周囲組織の注意深い診察が要求される.
 ウイルス性関節炎のように数週で治癒する関節炎もある.
 多発関節炎は,RAよりも内臓障害の頻度の高い疾患(膠原病や血管炎など)の部分症状のこともある.

RAの早期診断—分類基準と診断基準

著者: 宮田昌之

ページ範囲:P.392 - P.395

ポイント
 日本リウマチ学会早期慢性関節リウマチ(RA)の診断基準は,厚生省早期RA診断基準に比し簡便で,感度は高いが特異度は低い.
 早期RAを診断する際に,全身性エリテマトーデス,混合性結合組織病,Behcet病,乾癬性関節炎,強直性脊椎炎,変形性関節症,リウマチ性多発筋痛症,反応性関節炎などとの鑑別が重要である.

RAの画像診断

著者: 桃原茂樹

ページ範囲:P.396 - P.399

ポイント
 慢性関節リウマチ(RA)は,頸椎を含む四肢関節に対照性多発性に関節破壊をきたす疾患である.そのため,画像検査は骨および関節の状態を把握するうえで診断・治療に必須である.画像検査では,関節周囲の軟部組織の腫脹,骨粗霧,骨びらん,骨嚢腫,骨欠損,滑膜増殖,関節水腫の貯留などの状態を解析し把握する.また,これら所見をスコア化し評価する方法も多く報告されている.

RAのEBM

RAのoutcome評価法

著者: 川合眞一

ページ範囲:P.400 - P.402

ポイント
 RAの臨床評価法を大別するとprocessとoutcomeの評価法がある.
 outcome評価法としては,関節X線写真や身体障害度を含むQOL評価法などがある.
 薬効評価には,ACRコアセットを用いた20%改善基準が世界標準として用いられている.

RAの予後予測因子

著者: 山中寿 ,   松田祐子 ,   田中栄一

ページ範囲:P.403 - P.405

ポイント
 RAの進行には個人差があり,予後不良因子を多くもつハイリスク群には早期から強力な治療が必要である.
 予後不良因子としては,女性,高齢発症,HLA-DRB1の共通エピトープ陽性,初診時までの期間が長い,初診時の疾患活動性が高い,リウマトイド因子陽性,CRP持続高値,血清MMP-3高値などがある.

RAの死因と生命予後

著者: 山田昭夫

ページ範囲:P.406 - P.409

ポイント
 慢性関節リウマチの死因として,感染症の合併が多い.
 生命にかかわる関節病変として,頸椎環軸関節亜脱臼が問題となる.
 関節外病変として,間質性肺炎・肺線維症,アミロイドーシスの予防・治療が重要である.
 ADL,QOLを良く保つことが,生命予後に関しても重要である.

多臓器疾患としてのRA

RAと血管炎

著者: 栗山磨紀代 ,   小林茂人

ページ範囲:P.410 - P.413

ポイント
 慢性関節リウマチ(RA)の関節外病変の一つに血管炎があり,rheumatold vasculitis(RV)と呼ばれる.本邦では厚生省特定疾患調査研究班による悪性関節リウマチ(MRA)が知られている.
 臨床症状は,軽症のものから重篤な臓器障害を伴うものまで,幅広いスペクトラムをもつ.全身型はBevans型,末梢型はBywaters型として知られている.
 10年以上経過した,RF高値,関節所見の進行した症例に多い.MRAの男女比は1:2であり,RAに比し,男性の比率が高い.
 重篤な血管炎では,発熱や体重減少,CRP高値,白血球増多などの炎症所見を認め,感染症の鑑別が早期診断の鍵となる.
 治療は,ステロイド剤(パルス療法も含む),免疫抑制剤,血管拡張剤の投与などを行う.

RAの肺病変

著者: 徳田均

ページ範囲:P.415 - P.417

ポイント
 RAには,胸膜病変,気道病変,間質性病変など多彩な肺病変がみられる.
 自然軽快または治療に反応し予後の良い病変と,治療に反応せず予後の悪い病変とがある.
 リウマチ治療薬によるアレルギー機序を介しての薬剤性肺臓炎の頻度が高く,適切な対応が求められる.

RAの腎病変

著者: 中野正明

ページ範囲:P.418 - P.420

ポイント
 RAの尿検査異常は血尿主体のことが多い.
 アミロイドーシス合併例は,治療抵抗性の進行例が多い.
 抗リウマチ薬による膜性腎症は,薬物開始3〜12ヵ月後に発生しやすい.
 メサンギウム増殖性糸球体腎炎や糸球体基底膜菲薄化合併RAは,血尿主体の尿異常を呈することが多い.
 抗好中球細胞質抗体陽性例では,急速進行性の腎機能障害をきたすことが多い.

RAとアミロイドーシス

著者: 稲田進一

ページ範囲:P.421 - P.423

ポイント
 罹病10年程度のtAで炎症反応高値持続例では,二次性アミロイドーシス発症の可能性がある.
 二次性アミロイドーシスを疑うべき症状は,消化器症状として難治性下痢,腎障害として持続性蛋白尿,高窒素血症がある.
 RAの活動性を抑える治療としては,多臓器障害があるため,PSLや免疫抑制薬の使用を考慮する.
 時にIVH管理や早期血液透析導入を必要とする例が多い.

RAの薬物治療の進歩

エビデンスに基づくRAの治療方針

著者: 竹内勤

ページ範囲:P.424 - P.426

ポイント
 骨・軟骨破壊は,リウマトイド炎症に引き続いて晩期に起こる事象ではなく,発症早期からすでに始まっている.
 リウマトイド炎症を阻止する薬剤は,抗リウマチ薬である.
 抗リウマチ薬は,すべてのRAで適応を考慮する.
 RAの診断確定後,3ヵ月以内に抗リウマチ薬を開始する.
 効果判定を3〜6ヵ月後に行い,無効,効果不十分例では,変更,追加併用を考える.

RA患者に対するNSAIDs投与の実際

著者: 赤星透

ページ範囲:P.428 - P.429

ポイント
 NSAIDsは関節痛や関節腫脹を軽減し,RA患者のQOLを改善しうる薬剤である.
 それぞれのNSAIDsの薬理学的な特徴を十分把握したうえで使用することが大切である.
 NSAIDsによる副作用の発現には十分な注意が必要である.

抗リウマチ薬の使い方

著者: 三森経世

ページ範囲:P.430 - P.432

ポイント
 抗リウマチ薬は,効果発現まではNSAIDと併用して用いる.
 抗リウマチ薬はRAの早期から使用したほうが効果が高く,関節破壊の進行を抑制すると考えられる.
 抗リウマチ薬の使用時は重篤な副作用に注意し,定期的なモニタリングが必要である.
 メトトレキサート(MTX)は速効性があり有効率,耐用率も高く,他剤無効の難治性RAに用いられる.

メトトレキサート製剤の使い方と注意点

著者: 鈴木康夫 ,   伊藤彦 ,   市川陽一

ページ範囲:P.434 - P.437

ポイント
 RAに対する投与量は保険適用上,週8mgまで(リウマトレックス4C/週)である.効果不十分例では注意しながら週15mgまで増量できるが,インフォームドコンセント取得が重要である.
 エスケープ現象がみられた場合は,投与量増加で効果が再現できる.
 副作用には用量依存性と非依存性のものがあり,前者には肝機能異常や口内炎,消化器症状があり葉酸併用で軽減できる。用量非依存性の副作用では急性間質性肺炎に注意を要する.

副腎皮質ステロイド薬の使い方の工夫

著者: 広畑俊成

ページ範囲:P.438 - P.440

ポイント
 副腎皮質ステロイド薬(ステロイド)は,慢性関節リウマチ(RA)に対して短期的には劇的に奏功する.
 副作用と減量に伴う再燃のため,RAにおけるステロイドの有用性・危険性・適切な使用法については幾多の議論がある.
 早期例も含めて,RAの治療においてステロイドは「どうしても必要な場合に限り少量を投与する」というコンセンサスを超えるには至っていない.

近未来の治療法—抗サイトカイン療法を中心に

著者: 西本憲弘

ページ範囲:P.441 - P.445

ポイント
 RAの病態には,TNFα,IL-1,IL-6,IL-8,GM-CSFなどの炎症性サイトカインがかかわっている.
 炎症性サイトカインの過剰産生が続くと,滑膜細胞や血管内皮細胞の増殖,破骨細胞の活性化やコラゲナーゼの産生が誘導され,骨・軟骨破壊が進む.
 生体内では複数のサイトカインがネットワークを形成している。
 TNFαの阻害は,RAに対する最も期待される抗サイトカイン療法の一つである.

RAのcure & care

RA患者の手術適応

著者: 安田正之

ページ範囲:P.446 - P.447

ポイント
 手術の目的と患者の関心は疼痛除去であって,機能の改善や外見ではない.
 将来手術が必要となることを早くから伝えねばならない.
 日本リウマチ学会認定整形外科医による手術と,日本リウマチ学会認定施設でのリハビリテーションが必要である.
 手と頸椎の手術は,両領域のスペシャリストが行うべきである.

RA患者を救急外来で診る場合

著者: 鈴木貴博

ページ範囲:P.449 - P.451

ポイント
 RAは主に関節を障害する慢性炎症性疾患であるが,内臓障害も伴う全身疾患である.
 病態を考えるにあたっては,RA固有の病変のみならず,合併症や内服薬の影響にも留意する.
 特に抗リウマチ薬や副腎皮質ステロイド薬の副作用,易感染性,非ステロイド炎症薬による発熱や疼痛の抑制など,症状の修飾も考慮すべきである.

RAと代替療法

著者: 赤真秀人

ページ範囲:P.452 - P.454

ポイント
 代替療法は,最近,補完・代替医療(CAM)と呼ばれる傾向にある.
 主治医が想像しているよりも多くのRA患者が,西洋医学的治療とともに何らかのCAMを実践中であったり,CAMに興味をもっている可能性がある.医師はこのことを認識しつつ治療を進める必要がある.
 今後,科学的な方法で個々のCAMについて有用性(効果と副作用)が明らかにされることが望まれる.

RA患者とリハビリテーション

著者: 村澤章

ページ範囲:P.456 - P.457

ポイント
 RAのリハビリテーションの目的は,局所的に痛みをとり,筋力低下を防ぎ,変形を予防することにあるが,広義には日常生活動作の改善,自立生活の援助と社会復帰への支援にある.
 方法は理学療法(物理療法と運動療法),作業療法,装具療法などがある.
 装具は医学的効果を期待し,自助具は日常生活動作の助けとなる目的で利用される.
 在宅生活支援のために介護保険が利用される.

日常臨床でできるリウマチ体操の指導

著者: 森俊仁

ページ範囲:P.459 - P.462

ポイント
 慢性関節リウマチ(RA)は,多関節の炎症による痛みと,関節破壊による機能障害のため,日常生活動作(ADL)の低下をもたらすことが多い.RA患者の関節機能およびADLを維持するためには運動療法が必要である.最も身近な運動療法としてはリウマチ体操があり,無理のない程度の運動,体操を長く続けることが大切である.

RA患者が対象となる介護保険・公的補助

著者: 束野通志 ,   戸井逸雄

ページ範囲:P.463 - P.465

ポイント
 介護保険は65歳以上の高齢者の介護を取り扱う保険であるが,40歳以上のRA患者も対象となる.
 更生医療は,身体障害者福祉法に基づいて行われる公費負担制度であり,利用できる者は18歳以上の身体障害者手帳の所持者である.
 第2号被保険者(40歳以上65歳未満)であるRA患者は,身体障害者福祉法よりも介護保険法が優先となる.

座談会

内科臨床におけるリウマチの診かた

著者: 上野征夫 ,   大西利明 ,   桃井康晴 ,   山中寿

ページ範囲:P.467 - P.477

筋・骨格系の痛み―どのような疾患か多いか
 山中(司会) 本日は「内科臨床におけるリウマチの診かた」についてお話しいただきます.一般内科医は,筋・骨格系の疾患の診察のトレーニングをあまり受けていないことが多いと思います.まず,どういう点に気をつけて診断すればいいのかを伺いたいと思います.上野先生,いかがでしょうか.
 上野 確かに内科医は筋・骨格系の診察はあまり得意ではない傾向があると思います.ルチンの身体所見をとる際,胸部・腹部の触診はきちんとやっても,ややもすると筋・骨格系の診察が完全に抜けてしまう.心臓や肺を診察するときと同じように,ルチンの中に筋・骨格系の基本的な診察を入れてもらいたいと思います.

Scope

慢性肝炎診療の基本(後編)—診断・治療編

著者: 沖田極 ,   日野啓輔 ,   山口裕樹

ページ範囲:P.490 - P.495

慢性肝炎の診断はどのように行うか?
 1.病歴
 慢性肝炎の診断において病歴聴取は重要である.家族歴,輸血歴,鍼治療歴などはもちろん必要であるが,鑑別診断のために特に自己免疫疾患を念頭に置いた既往歴,健診歴,飲酒歴,薬剤服用の有無,海外渡航歴,海産物生食の有無などは聴取する必要がある.B型肝炎ではその大半が母子感染であり,家族に受診歴がない場合は,家族の精査も勧める必要がある.また,C型肝炎では感染時年齢が高いものほど進行が速いことが報告されている1)
 しかし,いずれの要因が関与しているとしても,ウイルスマーカーから感染が明らかである場合には,少なくとも経過観察が必要であり,多くの場合治療を要する.

演習 心電図の読み方・5

QRS幅の増大

著者: 山科章

ページ範囲:P.496 - P.502

Case
 症例1:69歳,女性.心電図異常にて近医より紹介.
 既往歴:ときおり出現する30秒以内の動悸.

図解・病態のメカニズム—呼吸器疾患・5

特発性間質性肺炎

著者: 長井苑子

ページ範囲:P.504 - P.507

はじめに
 原因不明の問質性肺炎・肺線維症である特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonia:IIP)は,Hamman, Richの報告以来,65年の研究の歴史のある疾患である.当初は一つの疾患とみなされていたが,臨床像・臨床経過,病理像の対比検討から,IIPには区別されるべきいくつかの疾患が含まれていることが明らかになり,2001年には,米国胸部学会・欧州呼吸器学会合同の国際分類委員会報告が公表される予定である.
 本稿においては,IIPの分類の歴史の概略と,現在IIPに含まれている疾患群の概略について述べる.

プライマリケアにおけるShared Care—前立腺肥大症患者のマネジメント・2

前立腺肥大症を中心とした前立腺疾患の基礎知識—診察・診断編

著者: 貫井文彦

ページ範囲:P.509 - P.512

前立腺肥大症と前立腺癌との鑑別
1.PSAとは
 前立腺特異抗原(prostate-specific antigen:PSA)は精漿から抽出されたカリクレイン系蛋白分解酵素で,現在,前立腺癌の腫瘍マーカーの第一選択として汎用されている.前立腺の分泌上皮で産生されたPSAの血中への漏出は微量で,その50〜95%はα-1-antichymotrypsin,0.1%以下がα-2-macroglobulinと結合し,その他,非結合型の遊離型PSA(free PSA)が5〜50%の割合で存在する.free PSAにも分子量の違う数種類のサブタイプのfree PSAが存在する.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.513 - P.519

カラーグラフ 消化管内視鏡検査—知っておきたい基礎知識・3

食道静脈瘤・胃静脈瘤

著者: 山本学

ページ範囲:P.520 - P.523

 食道・胃静脈瘤は,内視鏡に携わる医師のすべてが必ず遭遇するといってよい疾患である.その際に重要なことは,直ちに治療が必要なのか,それとも経過をみてよいものなのかを判断することであり,十分な知識を得ておく必要がある。本稿ではその内視鏡所見記載基準を紹介し,典型的な内視鏡像を示すとともに,診断のポイント,ピットフォールと鑑別診断などについて述べ,内視鏡治療法を紹介する.

新薬情報・8

バルサルタン(商品名:ディオバン)

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.524 - P.525

適応■高血圧症
用法・用量■成人に対しては40および80mgの経口用錠剤が利用可能で,バルサルタンとして40〜80mgを1日1回経口投与する.ただし,臨床状況により1日160mgまで増量できる.また,ヒドロクロロチアジドなどの利尿薬と相加的な降圧作用を有するため併用も有用である.
作用機序■バルサルタンは,ロサルタン,カンデサルタンに続いて開発された,経口投与可能な,非ペプチド性特異的アンジオテンシンII受容体のAT1サブタイプの遮断薬(ARB)である.アンジオテンシンIIはアンジオテンシンIからアンジオテンシン変換酵素(ACE)により酵素的に生成されるペプチドであり,レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系のなかで,最も強い昇圧作用を有する物質である.直接的な血管収縮作用のほかに副腎皮質においてはナトリウム貯留作用を有するアルドステロン分泌を刺激し,心筋刺激作用も有する.アンジオテンシン受容体にはAT1とAT2のサブタイプが存在する.AT1受容体は血管平滑筋,副腎皮質細胞などに存在し,アンジオテンシンIIの心循環器作用に関係するが,多くの組織に発現しているAT2受容体の循環器作用は知られていない.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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