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雑誌目次

雑誌文献

medicina38巻6号

2001年06月発行

雑誌目次

今月の主題 臨床に活かす免疫学

理解のための32題

ページ範囲:P.1048 - P.1053

免疫学の臨床応用

免疫学はどのように臨床医学に貢献してきたか

著者: 比留間潔

ページ範囲:P.922 - P.924

ポイント
 感染症に一度罹ると二度と罹らなくなることを「二度なし現象」というが,この本態は病原体に対し特異的に反応する抗体の産生によるものである.
 なぜ自己に対して免疫反応が起こらないのか(自己免疫寛容)を理解することは,免疫反応を理解するうえでの重要事項の一つであるとともに,自己免疫疾患のメカニズムの理解に役立つ.
 非自己である同種抗原(他人の抗原)に対する免疫反応を理解すると,臓器移植療法や拒絶反応の予防法の理解に役立つ.

免疫担当細胞のはたらき

T細胞

著者: 上野智雄 ,   高浜洋介

ページ範囲:P.926 - P.928

ポイント
 T細胞は主に胸腺において分化・成熟した細胞である.
 T細胞は自己・非自己の識別をすることによって,高等動物の生体防御反応を担う免疫系の中心的役割を果たす細胞である.
 T細胞はTCR(T cell receptor,T細胞抗原受容体)によって,MHC(major histocompatibility complex,主要組織適合遺伝子複合体)と抗原ペプチドの複合体を認識する.

B細胞と免疫グロブリン

著者: 烏山一

ページ範囲:P.929 - P.931

ポイント
 B細胞は抗原刺激を受けて抗体(分泌型免疫グロブリン)を産生する形質細胞へと分化する.この際,さらにヘルパーT細胞からの援助を受けると,免疫グロブリンのクラススイッチや抗原親和性の亢進が誘導される.
 B細胞が骨髄において造血幹細胞から派生分化してくる過程で,免疫グロブリン遺伝子の再構成をすることにより,個々のB細胞でそれぞれ異なった抗原特異性をもったB細胞ができる.

抗原提示細胞(樹状細胞)

著者: 藤井眞一郎 ,   清水佳奈子

ページ範囲:P.932 - P.934

ポイント
 樹状細胞は造血幹細胞由来の細胞で,未熟な時期には抗原取り込み能を有するが,分化成熟後は抗原の取り込み能は消失し抗原提示能を示すようになる.
 成熟した樹状細胞は,免疫反応においてキーとなる種々のサイトカイン(IL-12,IL-IOなど)の産生を行う.
 樹状細胞は,抗原特異的にナイーブT細胞を活性化し,T細胞の免疫応答のタイプ(Th1あるいはTh2タイプ)を決定する.

NKT細胞

著者: 住田孝之

ページ範囲:P.936 - P.939

ポイント
 NKT細胞は,自己免疫病を制御する調節性T細胞として機能していると考えられる.
 単一のT細胞受容体α鎖(TCRAV 24 AJ 18)を持つリンパ球である.
 TCRAV 24BV 11DN T細胞としてフローサイトメトリー法で測定できる.
 自己免疫病においてNKT細胞の減少がみられる.
 NKT細胞減少のメカニズムとして,抗原の不足,NKT細胞の機能異常,抗原提示能力の低下が挙げられる.

補体

著者: 藤田禎三

ページ範囲:P.940 - P.942

ポイント
 補体系は,第3成分(C3)を活性化する古典的経路,レクチン経路および第2経路と,後半の膜傷害複合体(MAC)から形成される.
 レクチン経路は,生体内に侵入した多くの微生物を認識し,最前線で感染防御に働くと考えられる.
 補体のエフェクター機能として,①炎症のメディエーター,②オプソニン,③MACとして,異物を排除する.

サイトカイン

著者: 西田圭吾 ,   日比正彦

ページ範囲:P.944 - P.945

ポイント
▶サイトカインは,免疫系・造血系・内分泌系など生体内の様々な高次機能を維持するうえで重要な役割を担う生理活性物質である.これらサイトカインは多機能であるとともに機能の重複性を有しており,免疫担当細胞であるT・B細胞などにその受容体を介して機能する.さらにサイトカインネットワークを形成することにより,生体内の免疫応答を調節している.

ケモカイン

著者: 田中良哉

ページ範囲:P.946 - P.949

ポイント
 ケモカインは炎症部で大量に産生され,循環血中の免疫担当細胞に細胞接着誘導活性と細胞遊走活性を介して血管内から炎症組織内への遊出をもたらす.
 ケモカインレセプターは免疫担当細胞のサブセットに発現し,ケモカインは,特定の組織に特定の炎症性細胞を再循環・集積させ,特異的炎症を誘導する.

疾患理解のために—これだけはおぼえておきたい免疫応答メカニズム

T細胞による特異的免疫応答のネットワーク

著者: 梅田幸生 ,   小杉厚

ページ範囲:P.950 - P.954

ポイント
 T細胞を介する免疫応答は,抗原特異的T細胞レセプターに対する抗原提示細胞からの抗原提示により開始される.
 T細胞はその分化の過程において,T細胞レセプター遺伝子の再構成により無数の抗原に対する特異性を獲得する.
 T細胞膜上に存在する脂質マイクロドメイン(lipid raft)が,T細胞の抗原認識およびその活性化に重要な役割を果たしていることが明らかとなっている.

HLA抗原とは何か—免疫応答の第一歩

著者: 高梨美乃子

ページ範囲:P.956 - P.958

ポイント
 HLAはヒトの主要組織適合抗原である.
 HLAはヒトの中で最も抗原多型性(個人差)を示す抗原系である.
 HLA抗原を規定している遺伝子は,ヒトの第6染色体短腕上の主要組織適合複合体(MHC)領域に存在する.
 HLAタイピングは造血細胞移植,腎臓移植,HLA適合血小板輸血での患者とドナーの適合性を判断するうえで必要不可欠の臨床検査である.

自己免疫寛容の成立—どうして自己抗原に反応しないのかを理解する

著者: 清水千織 ,   中山俊憲

ページ範囲:P.960 - P.963

ポイント
 免疫寛容の誘導メカニズムとして,1960年代に大きく3つが提唱された.①胸腺内における自己反応性T細胞の排除(clonal deletion),②末梢におけるT細胞の反応性(clonal anergy),③抑制性のT細胞による抗原特異的免疫反応の抑制(active suppression)である.それぞれを支持する実験結果が報告されているが,本稿では最もよく解析の進んでいる①について解説する.

同種免疫反応

著者: 相沢志郎

ページ範囲:P.964 - P.966

ポイント
 同種間の臓器移植においては,組織適合抗原への同種免疫反応による拒絶反応が問題となる.
 拒絶反応の程度は移植臓器によって異なり,肝臓の長期生着と未熟型樹状細胞,マイクロキメリズムとの関係が注目されている.
 同種免疫反応を効果的に制御するために,新たな免疫抑制剤の開発だけでなく,免疫関連抗体や未熟型樹状細胞を組み合わせた抗原特異的免疫寛容の導入法の開発が望まれる.

IgEとアレルギー反応

著者: 羅智靖

ページ範囲:P.967 - P.969

ポイント
 I型アレルギーはlgEによって惹起される.
 IgEは高親和性IgEレセプター(FcεRl)を介して,マスト細胞,好塩基球の細胞膜に結合し,抗原によって架橋されるとこれらの細胞が活性化される.
 活性化されたマスト細胞は,ヒスタミン,ロイコトリエン,プロスタグランジンなどの化学伝達物質を放出し,即時相の反応を惹起する.
 1型アレルギー反応には,即時相と遅発相の二相性反応があり,マスト細胞の産生するサイトカインが重要な役割を果たす.
 マスト細胞はB細胞のIgE産生を増強し,IgEはまたFcεRIの発現を増強するなど,アレルギーの増強サイクルが局所に形成される.

アレルギー反応

著者: 小林佳美 ,   茆原順一

ページ範囲:P.970 - P.973

アレルギーとは
 アレルギーとは抗原・抗体反応に起因した免疫反応であり,細胞,組織,臓器が障害を受ける病的現象である.遺伝的素因と環境因子による相互作用にて惹起される.
 アレルギーの発生機序によって分けられたGellとCoombsの分類が幅広く用いられ,I型からIV型に分類されている.それぞれに該当する疾患や関連検査を表1にまとめた.臨床の場でアレルギーという場合,多くは1型アレルギーを指すことが多く,II〜IV型は免疫疾患として区別されることが多い.

血管炎における好中球の役割

著者: 神谷康司 ,   有村義宏 ,   中林公正

ページ範囲:P.975 - P.977

ポイント
 抗好中球細胞質抗体(ANCA)の代表は,MPO-ANCAとPR 3-ANCAである.
 PR 3-ANCAはWegener肉芽腫症に特異性が高く,MPO-ANCAは顕微鏡的多発血管炎(MPA),Churg-Strauss症候群,特発性壊死性半月体形成性腎炎などに陽性例が多い.
 ANCAはサイトカインの存在のもとで好中球を過剰活性化し,壊死性血管炎をもたらす.

自己免疫疾患 診断と治療

どのような症状のときに自己免疫疾患を疑うか

著者: 河野肇 ,   山本一彦

ページ範囲:P.978 - P.980

ポイント
 膠原病を疑う必要があるのは,関節症状を伴うとき,多系統の臓器障害がみられるとき,発熱が続くときである.
 血管系は膠原病の病変の主座の一つである.特に皮膚や爪周囲の所見として現れた血管系の障害を見落とさないように.

自己抗体

著者: 大西勝憲 ,   小池隆夫

ページ範囲:P.982 - P.984

ポイント
 自己抗体は,自然自己抗体(natural autoantibody)と抗原誘導自己抗体(antigen-drivenautoantibody)に分類され,後者の高親和性のIgG抗体が病原性をもち,臓器障害に関係する.
 抗原誘導自己抗体は,臓器特異性抗体と臓器非特異性抗体に分けられる.前者は単一臓器にのみ反応し,その臓器に病変を起こす自己抗体であり,後者は単一臓器の病変に関連する抗体と複数の臓器病変に関連する抗体の2種類に分類される.
 自己抗体は,自己免疫疾患の鑑別診断や治療効果判定に有用である.

免疫抑制療法

著者: 前田敏郎

ページ範囲:P.986 - P.988

ポイント
 副腎皮質ステロイドの免疫抑制作用について,作用機序から考察したポイントは,通常の薬剤のようにtarget enzymeが単一でないことである.つまりステロイド薬が,ステロイドレセプターに結合した後核内に移行し,多数の遺伝子をup or down regulateすることにより,強力な免疫抑制効果を発揮する.したがって臨床効果は複数の遺伝子群の発現調節の結果であり,総和である.両刃の剣といわれているように,その結果,人体に対する副作用も多岐にわたるということを十分に理解すべきと考える.

自己免疫疾患—各論

全身性エリテマトーデス

著者: 倉沢和宏

ページ範囲:P.989 - P.991

ポイント
 全身性エリテマトーデス(SLE)の発症には,リンパ球の活性化異常,自己抗体の産生が関与している.
 SLEの診療では,臓器障害および活動性の評価が重要である.
 SLEの臓器病変はすべての臓器に起こりうるが,腎,中枢神経が特に起こりやすい.
 SLEの活動性の評価には臨床症状のほか,補体値,抗DNA抗体値など免疫学的指標を用いる.
 SLEの治療ではステロイドなどの免疫抑制剤を使用するが,その使用法は臓器病変,活動性により決定される.

強皮症

著者: 黒川真奈絵 ,   加藤智啓

ページ範囲:P.992 - P.994

ポイント
 強皮症(SSc)は,皮膚硬化を主病変とする慢性炎症疾患である.病因は不明であるが,自己免疫疾患と考えられている.SScの末梢血および皮膚より,増殖T細胞クロノタイプが検出されたが,それらのTCRβ鎖CDR3領域のアミノ酸配列は全く異なっていた.SScの皮膚浸潤T細胞は皮膚特異的な抗原を認識して反応し,病態に関与している可能性が考えられる.

多発性筋炎・皮膚筋炎

著者: 高林克日己

ページ範囲:P.996 - P.1000

ポイント
 多発性筋炎・皮膚筋炎は臨床症状が同じではない.一般に,皮膚筋炎では悪性腫瘍の合併やステロイド抵抗性間質性肺炎がみられ,予後の悪い例が多い.
 予後を左右する間質性肺炎は,皮膚筋炎で問質性肺炎発症時にCKの上昇のないもので予後が悪い.
 悪性腫瘍の合併は皮膚筋炎のほうが多い.
 ステロイド抵抗性間質性肺炎に対しては,早期からシクロスポリンA,シクロホスファミド大量投与療法が薦められる.

Sjögren症候群

著者: 松村竜太郎

ページ範囲:P.1001 - P.1003

ポイント
 乾燥症状の自覚の有無を問わない新しいSjögren症候群の診断基準が提唱され,一般に用いられている.
 本症候群の唾液腺炎,涙腺炎においては,主として活性化したCD4陽性T細胞が浸潤している.
 唾液腺,涙腺の導管上皮が,抗原提示細胞としてT細胞を活性化し,さらにアポトーシス関連分子を新たに発現し,自らアポトーシスに陥ると考えられる.
 上皮細胞が炎症のターゲットとなり,その変化が病変成立に重要であることから,本症候群を自己免疫性上皮炎として理解できる.

抗リン脂質抗体症候群

著者: 市川健司

ページ範囲:P.1004 - P.1007

ポイント
 抗リン脂質抗体症候群は,自己抗体である抗リン脂質抗体が血中に出現するのに伴い,習慣流産や各種動・静脈血栓症が起こる疾患である.
 代表的抗リン脂質抗体には,抗カルジオリピン抗体(抗β2-グリコプロテインI抗体),ループスアンチコアグラントがある.
 抗リン脂質抗体は,β2-グリコプロテインI,プロトロンビンなどのリン脂質結合蛋白が対応抗原である。
 抗リ脂質抗体症候群の治療として,抗血栓療法が行われる.

自己免疫性血液疾患

著者: 奥山美樹

ページ範囲:P.1008 - P.1011

ポイント
 ITPは明らかな原因や基礎疾患の存在なく,慢性的に血小板が減少し出血症状をきたす疾患で,診断は除外診断が基本である.
 AIHAは,赤血球膜上の抗原に対する自己抗体が産生され溶血をきたす疾患で,確定診断は直接抗グロブリン試験(Coombs試験)で自己抗体の存在を証明することによる.
 AAは汎血球減少と骨髄低形成を特徴とする疾患であるが,その原因として免疫学的な機序が考えられている.診断は除外診断が基本である.

自己免疫性内分泌疾患

著者: 杉原茂孝

ページ範囲:P.1012 - P.1016

ポイント
 内分泌疾患は障害される臓器により様々な臨床像を呈するが,発症原因を考えると自己免疫疾患であるものが多い.
 ホルモン産生過程の酵素やプロホルモン,ホルモン自体が自己抗原となる.
 内分泌臓器の自己免疫反応には,胸腺,Tリンパ球,MHC(major histocompatibilitycomplex)が重要な役割を担っている.
 動物モデルの解析から,免疫学的寛容の機序としてactive regulationやclonaldivesionという考え方が重要であろう.
 橋本病や1型糖尿病では,サイトカインや細胞傷害性T細胞(CTL)による組織傷害が病態の中心だが,Graves病ではTSHレセプター抗体による刺激が主体となる.

アレルギー性疾患

気管支喘息の診断と治療

著者: 岩本逸夫

ページ範囲:P.1017 - P.1019

ポイント
気管支喘息は,気道のアレルギー性炎症が本態と考えられており,その結果気道過敏性が成立し,可逆的気道閉塞が起こる.アレルギー性気道炎症はTh2細胞活性化による好酸球性炎症で,それによるロイコトリエンなど炎症性メディエーターが気道閉塞の病態を形成する.したがって,喘息の薬物療法は気道炎症を抑える吸入ステロイドが基本となる.

スギ花粉症

著者: 大久保公裕

ページ範囲:P.1021 - P.1023

ポイント
 スギ花粉症は増加しているI型アレルギーである.
 malor allergenのCryj1, Cry j2が特異的IgEと結合し発症する.
 ヒスタミン,ロイコトリエン,トロンボキサンA2が発症に関与する.
 鼻症状,結膜症状を中心とするが,全身症状もある.
 問診と血清中特異的IgEが診断に重要である.
 抗原回避,減感作療法を基本として薬物療法を組み合わせ,総合的に行う.
 薬物療法は経口薬と局所点鼻をうまく組み合わせる.

アナフィラキシーショック

著者: 平野隆雄

ページ範囲:P.1024 - P.1026

ポイント
アナフィラキシーは,IgEを介するI型アレルギー反応とIgEを介しないアナフィラキシー様反応に分類される.基本反応は血管拡張と血漿漏出によるhypovolemic shockであり,治療目的は速やかに呼吸・循環不全を改善することである.予防が最も大切で,原因物質のアレルギー歴に関する問診が重要である.

免疫不全症

原発性免疫不全症

著者: 小野寺雅史

ページ範囲:P.1028 - P.1031

ポイント
 原発性免疫不全症は,遺伝性素因により発症するT細胞,あるいはB細胞機能不全と定義され,複合免疫不全症,抗体欠乏症,ほかの明確に定義された免疫不全症の3群に大別される.
 現在までADA欠損症,SCID-X1,慢性肉芽腫症に対して遺伝子治療が行われ,一部の症例で治療効果を認めている.

AIDS治療—最近の動向

著者: 根岸昌功

ページ範囲:P.1033 - P.1035

ポイント
 抗HIV剤は開発途上にあり,使用経験が蓄積されつつある.
 使用方法のガイドラインは頻回に改訂されているので,最新のガイドラインを参考にすべきである.
 抗HIV剤治療には限界があり,感染者と医療者の話し合いが重要である.

腫瘍免疫

T細胞認識腫瘍抗原とその臨床応用

著者: 河上裕

ページ範囲:P.1036 - P.1038

ポイント
 T細胞が認識する各種ヒト腫瘍抗原が同定されつつある.
 腫瘍抗原の同定により,癌細胞に対する免疫応答の詳細な解析や,新しい免疫療法の科学的な開発が可能になった.
 同定した腫瘍抗原を用いた免疫療法の臨床試験が行われ,一部では抗腫瘍効果が認められている.

ドナーリンパ球輸注療法(DLI)

著者: 村田了一 ,   塩原信太郎

ページ範囲:P.1040 - P.1043

ポイント
 ドナーリンパ球輸注療法(DLI)は,同種造血幹細胞移植後の再発例に対し,ドナーのリンパ球を輸注して再寛解導入を目指す同種細胞療法である.
 治療効果は疾患と病期によって異なり,重要な副作用として移植片対宿主病(GVHD)が挙げられる.
 graft versus leukemia(GVL)効果の標的抗原としてマイナー組織適合抗原(mHA)が考えられている.

白血病に対する樹状細胞療法

著者: 高橋強志 ,   平井久丸

ページ範囲:P.1044 - P.1046

ポイント
 樹状細胞は,抗原末感作のT細胞を抗原特異的に活性化することのできる最も強力な抗原提示細胞である.
 ln vitroにおいて,樹状細胞を用いて白血病細胞特異的CTLの誘導が可能である.
 白血病に対する樹状細胞療法は,比較的副作用の少ない免疫療法であるが,まだ十分な抗白血病効果は得られていない.

演習 心電図の読み方・8

STの異常(2)—ST低下

著者: 近森大志郎 ,   山科章

ページ範囲:P.1059 - P.1066

Case
 症例1:62歳,男性.主訴:胸痛.
 既往歴:20年来の糖尿病でインシュリン治療中.
 現病歴:1ヵ月半前より階段を上がったり急いで歩いたりすると,胸の中央部を圧迫するような鈍痛を自覚するようになったため,近医にて加療を受けた.胸痛は安静にすると2〜5分で消失し,頻度は週に1回程度であった.ところが,2週間前より軽労作でも前胸部痛が出現するようになり,今回の発作ではニトログリセリンを舌下しても,胸痛が20分以上持続するため救急外来を受診した.
 身体所見:血圧132/84mmHg,脈拍80/min.聴診では胸骨右縁第2肋間でLevine 2/6の収縮期駆出性雑音を聴取する.呼吸音に特記すべき異常なし.腹部にて異常所見を認めない.

図解・病態のメカニズム—呼吸器疾患・8

呼吸器疾患とインフルエンザウイルス

著者: 中島捷久

ページ範囲:P.1068 - P.1071

かぜとインフルエンザ
 呼吸器疾患としての上気道感染症,一般に「かぜ」,の大部分は上気道に種々のウイルスが感染することによって起こる.しかし,「インフルエンザ」は一般のかぜとは違って,感染すると症状も重くなり,周りの人に伝染する力が強く,ほかのウイルスや細菌などの感染と区別することができる.インフルエンザ(influenza 英語;俗語としてはflue)の名前の由来としては,この病気の原因が星の影響であるとされていた1504年(1357年という人もいる)の流行の際に,インフルエンス(影響)という言葉をイタリア人が使ったのが初めとされている.1933年,イギリスの国立医学研究所のアンドリュースとスミスにより,フェレットを用いてヒトインフルエンザウイルスが分離された.

プライマリケアにおけるShared Care—前立腺肥大症患者のマネジメント・5

座談会—前立腺肥大症に対するShared-Care

著者: 岩本耕太郎 ,   渡邊節男 ,   福井準之助

ページ範囲:P.1072 - P.1083

有機的なshared careとは
 福井(司会) 遠方から出席していただきましてありがとうございました.本日は前立腺肥大症のShared Careについて先生方のお話をお伺いしたいと思います.
 英国の泌尿器科医Kirby. Rが書いた前立腺肥大症の本には,専門医とかかりつけ医が建設的な協力関係の下で患者の治療にあたることが,shared careであると述べられています.shared careとは病診連携,診診連携と同じ概念であり,単にその関係を築くことだけではなく,さらにもう一歩進めて,診断や治療において,おのおのの立場に応じた分担を行い,医師間および医師-患者間の効率の良い運用によりお互いの利益を得ることを指しています.最近,厚生労働省が医療費削減の一施策としてプライマリケアの重要性を唱えていますが,shared careの効率の良い運用は医療費削減に直結しています.

カラーグラフ 消化管内視鏡検査—知っておきたい基礎知識・6

胃—正常内視鏡像

著者: 榊信廣

ページ範囲:P.1085 - P.1088

胃の解剖学的特徴
 胃は,食物を分泌した酸や消化酵素と蠕動運動の働きで粥状にして,消化・吸収を行う十二指腸以下に送り出すという働きをしている中空の臓器である.胃壁は内腔面から粘膜,粘膜下層,固有筋層,漿膜下層,漿膜の5層構造をもっている.しかし,超音波内視鏡を除く内視鏡では,内腔面に面した粘膜面を観察している.さらに,詳しく言えば,粘膜表面を覆っている円柱上皮である被蓋上皮部分を観察していることになる.そこで,内視鏡診断において,最も必要な知識は粘膜面の胃粘膜の形態学的特徴ということになる.
 胃内腔を覆う胃粘膜は,正常では固有腺細胞の違いから,噴門より約2cmの幅の噴門腺領域,口側2/3の最も広い胃体部を占める胃底腺領域,肛門側1/3の前庭部を占め幽門に至る幽門腺領域に分けられる.胃底腺は胃酸やペプシノーゲンなどを分泌する腺細胞で形成された単一管状腺である.一方,幽門腺は単一胞状腺で彎曲分岐している.そのために,拡大内視鏡観察をすれば,両者は基本的に異なった形態を示す1)

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.1089 - P.1094

今求められる説明義務・3

説明の省略

著者: 古川俊治

ページ範囲:P.1095 - P.1097

 説明の省略が認められる場合
 医師の患者に対する説明の省略・簡略化が認められるのは,次のような場合である.

新薬情報・11

塩酸フェキソフェナジン(アレグラ®錠)

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.1098 - P.1100

適応■アレルギー性鼻炎,蕁麻疹
剤型■フェキソフェナジン60mgを含む錠剤

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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