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雑誌目次

雑誌文献

medicina38巻7号

2001年07月発行

雑誌目次

今月の主題 内科医が知っておきたい外科的治療のUpdate

理解のための31題

ページ範囲:P.1224 - P.1230

脳神経外科

脳動脈瘤に対するカテーテル治療

著者: 根本繁

ページ範囲:P.1108 - P.1110

ポイント
 脳動脈瘤の治療原則は開頭クリッピングであるが,治療困難な症例は血管内治療が適応となる.
 開頭クリッピング可能な症例でも,血管内治療が適応となる場合がある.
 血管内治療ではless inVasiveに治療が可能である.
 治療成績とリスクを考慮して適応決定には慎重でなければならない.

脳腫瘍に対するNeuronavigatorを使った手術

著者: 沖修一 ,   右田圭介 ,   磯部尚幸

ページ範囲:P.1111 - P.1114

ポイント
 脳腫瘍手術を正確に行うために,いくつかの手術支援用の術中navigation装置が実用化されている。
 Neuronavigatorも術中navigation装置の一つであり,あらかじめCTもしくはMRIの画像をcomputerに取り込んでおき,術中に現在の手術部位をcomputer displayに示されるCTもしくはMRIの画像上にリアルタイムに表記する装置である。
 術中navigation装置に共通する問題としてbrain shiftと誤差がある。
 brain shiftと誤差を解決する方法としてmobile CT,open MRIの方向に進んでいる。

眼科

白内障に対する手術と眼内レンズ

著者: 吉富文昭

ページ範囲:P.1115 - P.1117

ポイント
 現代の白内障手術は小切開創手術である.
 ほとんどの場合,注射による局所麻酔は必要ない(点眼麻酔である).
 術後の全身投薬は必須ではない.
 白内障手術に際して内科的疾患の治療を中断する必要はない.
 進行した白内障例では他の眼疾患が見逃されることがある.
 術後1週間以内に発症する感染による術後眼内炎は緊急手術が必要である.

近視に対する屈折矯正手術

著者: 山口達夫

ページ範囲:P.1118 - P.1119

ポイント
 近年,近視,乱視,遠視の矯正のための手術が種々開発されてきた.なかでもエキシマレーザーを用いたLASIK,PRKが主に行われており,かなり良い成績が得られている.術中のトラブル,手術の精度,創傷治癒など,まだ多少の問題点はあるが,改良が進んでおり,将来も有望な術式である.

糖尿病網膜症に対する硝子体手術

著者: 佐藤幸裕

ページ範囲:P.1120 - P.1122

ポイント
 黄斑剥離例では,良好な術後視力は限られている.このため,より早期に手術を行う傾向が強まっている.また,従来の適応とは全く異なった適応として,黄斑浮腫の軽減を目的とした硝子体手術も始まっている.陳旧性の黄斑剥離では手術適応はない.

耳鼻咽喉科

難聴に対する人工内耳挿入術

著者: 金丸眞一 ,   伊藤壽一

ページ範囲:P.1124 - P.1126

ポイント
 人工内耳の基本原理は,蝸牛内に入れた電極を用いて聴神経を電気刺激し,音を認識させようとするものである.
 人工内耳は補聴器などとは全く異なり,装用した直後からことばが聞き取れるというものではなく,頭の中の音(ことば)の体系を(再)構築する作業であるリハビリテーションが必要である.
 人工内耳はできる限り早い年齢で装用するほうが,脳内に言語のネットワークを構築するうえで有利である.

アレルギー性鼻炎に対するレーザー治療

著者: 鈴木直弘

ページ範囲:P.1127 - P.1128

ポイント
▶レーザー手術は,減感作療法とは異なりアレルギー性鼻炎を治癒させる方法ではなく,症例により術後に鼻症状の再発,悪化は認められる.
▶レーザー治療は術式が単一ではなく,患者の重症度・病型・社会的要因などにより術式が選択される.
▶レーザー手術は,アレルギー性鼻炎症例の治療法の一つであるが,第一選択にはならない.

睡眠時無呼吸症候群の外科治療

著者: 西村忠郎

ページ範囲:P.1129 - P.1131

ポイント
 外科治療には鼻内手術,UPPP,LMG,気管切開,および扁桃・アデノイド手術(主に小児)などがある.
 これらの手術適応の決定と手術方法選択のためには,問診(いびき・日中傾眠など),局所所見(鼻内,咽頭,口腔などの狭窄の有無など),睡眠下上気道の内視鏡所見および超高速MRI所見が重要である.
 手術に際しては,鼻咽腔狭窄,鼻への流動物逆流,耳管機能不全などの術後合併症が起こらないように注意する.

呼吸器外科

内視鏡下の肺ブラ・肺腫瘍切除術

著者: 白日高歩

ページ範囲:P.1133 - P.1135

ポイント
 自然気胸や巨大肺嚢胞に対するブラ切除は胸腔鏡下で実施される.
 自然気胸治療の第一選択は胸腔鏡下ブラ切除である.
 巨大肺嚢胞は,発見された時点で無症状であっても,手術を勧めたほうがよい.
 末梢型肺癌のTINOMOに対しては胸腔鏡下手術が応用される.

肺気腫に対するlung volume reduction surgery

著者: 伊達洋至 ,   清水信義 ,   宗田良

ページ範囲:P.1136 - P.1138

ポイント
 びまん性肺気腫患者は,過膨張した気腫肺のために,横隔膜などの呼吸筋が最大吸気位で固定された状態にある.lung volume reduction surgeryは,最も気腫化の強い部分を切除することによって,胸腔内に余裕を作って,呼吸筋の機能を回復させる手術である.これによって,患者の呼吸困難は著明に改善する.

循環器外科

狭心症に対するTMLR(レーザー心筋内血管新生術)

著者: 忽滑谷通夫

ページ範囲:P.1140 - P.1141

治療概要
 現在,虚血性心疾患の治療にはPTCA,ステント治療,ロータブレーターといったカテーテル治療と冠状動脈バイパス術があるが,いずれも冠状動脈を経由した血行再建術であるため,冠状動脈狭窄病変が広範囲に及んでいたり,冠状動脈が細いなどの理由でこれらの治療が不可能とされる症例も存在する.
 一方,TMLA(trans myocardial laser revascularization)は,冠状動脈に直接手を加えて血行再建を行う上記の治療とは異なり,虚血にさらされている左室心筋にレーザー光線にて直径1mm程度の小孔を開けることにより心筋内に毛細血管を新生させ,冠状動脈を介さず直接心筋に対する血行を再建しようとする治療である.したがって,冠状動脈病変がどのようなものであっても行いうるという特徴がある(図1).この治療はヒトの心臓が冠状動脈により灌流されているのに対し,ハ虫類の心臓では,心筋血流の一部は直接心室内腔より灌流されていることに着目し,1165年Senらがイヌの心筋に針を用いて小孔を開けることにより心筋灌流を改善しようとした研究に始まる.その後,この治療にレーザーが用いられるようになり,1988年に現在の炭酸ガスレーザーを用いたTMLR装置(ハートレーザー®)が完成した.

大動脈瘤に対するステントグラフト治療

著者: 安田慶秀

ページ範囲:P.1142 - P.1144

ポイント
 大動脈瘤に対するステントグラフト治療は,従来の手術に比べ,比較にならないほど低侵襲で,胸部大動脈瘤や腹部大動脈瘤,吻合部動脈瘤,大動脈解離に応用されている,本法は,手術以外に根本的な治療法がなかった大動脈瘤の治療体系に大きな変革をもたらすものであり,期待されている.

末期心不全に対する人工心臓

著者: 妙中義之 ,   西中知博

ページ範囲:P.1145 - P.1149

ポイント
 人工心臓には全人工心臓と補助人工心臓がある.
 ドナー不足に悩む心臓移植の有効な補助手段として補助人工心臓は認知されつつある.
 次世代型人工心臓として,連続流型補助人工心臓の研究開発が進められている.

心移植

著者: 川合明彦

ページ範囲:P.1150 - P.1151

ポイント
 心移植の1年生存率は約85%,3年生存率は約80%と良好である.
 心移植以外に治療法がなく,最大限の内科治療によってもNYHA III〜IV度の心不全症状をもつ症例が対象となる.
 心不全の重症度・予後判定には運動負荷試験が重要である.
 活動性感染,不可逆的肝・腎障害,悪性疾患の合併は絶対的禁忌である.

拡張型心筋症に対する左室縮小手術(Batista手術)

著者: 須磨久善

ページ範囲:P.1152 - P.1154

ポイント
 拡張型心筋症に対して左室縮小手術は有用な治療法となりうるが,適切な症例の選択と手術時期が重要である.
 全身状態が急速に悪化している時期での緊急手術はきわめてリスクが高く,安定した状態で手術を行うべきである.
 左室各部のバイアビリティの評価が重要であるが,その検査法はいまだ確立されておらず,今後の発展が待たれる.

消化器外科

胃食道逆流症に対する内視鏡下手術

著者: 柏木秀幸 ,   石橋由朗 ,   青木照明

ページ範囲:P.1156 - P.1158

ポイント
 胃食道逆流症の病像として,食道炎,逆流症状,そして呼吸器合併症が出現する.
 滑脱型食道裂孔ヘルニアの合併が90%前後にみられる.
 24時間食道内pHモニタリング検査が診断に有用である.
 腹腔鏡下噴門形成術の適応は,プロトンポンプ阻害薬(PPT抵抗例である.
 PPI維持療法に対する代替療法としての適応もある.

胃癌に対する縮小外科手術

著者: 市倉隆 ,   小川敏也 ,   望月英隆

ページ範囲:P.1159 - P.1161

ポイント
 局所切除は術後QOLはきわめて良好だが,適応症例は少ない.
 幽門保存胃切除では,ダンピング症状や十二指腸内容の残胃への逆流が軽減される。
 噴門側胃切除では逆流性食道炎の予防と術後内視鏡検査の容易さとのバランスが重要である.
 迷走神経温存やリンパ節郭清縮小は術後QOLの改善に有用である.
 定型手術を行えばきわめて予後良好な早期胃癌に縮小術式を行うには,厳密な適応が求められる.
 今後,sentinei lymph node概念の臨床応用が期待される.

炎症性腸疾患に対する外科治療

著者: 藤井久男 ,   石川博文 ,   小山文一

ページ範囲:P.1162 - P.1166

ポイント
 潰瘍性大腸炎に対する外科治療は,良好な成績が得られるようになった.
 潰瘍性大腸炎に対する最も標準的な手術術式は,大腸全摘・直腸粘膜抜去・回腸嚢肛門吻合術(IAA),または大腸亜全摘・回腸嚢肛門管吻合術(IACA)である.
 Crohn病に対する外科的治療は,内科的コントロールが困難な症状や合併症に対する処置を軽減消失し,QOLを高めることを目的として行われる.
 Crohn病の限局した小腸狭窄病変に対しては狭窄形成術が行われる.
 近年,炎症性腸疾患に対し,より侵襲の少ない腹腔鏡補助下手術が試みられるようになってきた.

血液疾患に対する腹腔鏡下脾臓摘出術

著者: 赤星朋比古 ,   橋爪誠 ,   杉町圭蔵

ページ範囲:P.1168 - P.1170

ポイント
 近年の内視鏡下外科手術器具の発展により,腹腔鏡下脾臓摘出術は,低侵襲で安全に施行可能となった.
 薬物治療にて抵抗性を示すITPにも70%以上で有効である.
 悪性リンパ腫や原因不明の脾腫の診断に腹腔鏡下脾臓摘出術は有効である.
 脾腫を伴うものにも腹腔鏡下脾臓摘出術は施行可能である.

生体肝移植—成人における適応

著者: 菅原寧彦 ,   幕内雅敏

ページ範囲:P.1172 - P.1173

ポイント
 成人生体部分肝移植は,疾患によっては一部保険適用となり,一般的な治療法として確立しつつある.
 レシピエントが肝移植の適応条件を満たすのみならず,適当なドナーのいることが必要である.
 移植適応時期は,胆汁うっ滞症,ウイルス性肝炎,劇症肝炎など,病態により異なる.

乳腺外科

乳癌に対する乳房温存療法と乳房再建手術

著者: 大渕徹 ,   雨宮厚

ページ範囲:P.1176 - P.1178

ポイント
 Stage Ⅰ,Ⅱの乳癌に対する乳房温存手術は,乳房切除術と生命予後は同等である.
 乳房温存療法は,放射線照射および薬物療法と組み合わせることで成立する.
 乳房再建手術は,再建を望むすべての患者に適応がある.
 乳房温存療法・乳房再建手術は,それぞれの適応.方法に施設問のばらつきが大きい.

泌尿器科

前立腺肥大症に対する温熱療法

著者: 井門愼介 ,   井川靖彦 ,   西沢理

ページ範囲:P.1180 - P.1182

ポイント
 最近の温熱治療は前立腺部尿道に空洞形成も可能な高エネルギータイプが出現し,他覚的所見の改善が得られる.
 前立腺温熱療法は,合併疾患のため観血手術が困難な患者,高齢者および観血的手術後の射精障害を嫌う方に適した侵襲の少ない治療法である.
 前立腺温熱治療は前立腺の形や大きさで適応を判定するため,観血的手術も同時に施行している施設での診断治療を勧める.

尿失禁に対する外科治療

著者: 高橋悟 ,   本間之夫

ページ範囲:P.1184 - P.1186

ポイント
 尿失禁は症候名であり,その治療法はそれぞれの病態によって選択される.
 腹圧性尿失禁は,侵襲性の比較的少ない外科治療により完治が期待できる.
 前立腺肥大症による溢流性尿失禁には,通常経尿道的前立腺切除を行う。
 切迫性尿失禁は,薬物療法が第一選択である.

尿路結石に対する破砕術

著者: 伊藤恭典 ,   安井孝周 ,   郡健二良

ページ範囲:P.1187 - P.1189

ポイント
 結石破砕装置の多くで無麻酔治療が可能であり,入院をせず外来治療を行っている施設が増加している.
 1度の治療で数千回の衝撃波を当て,治療時閻は30分〜1時間30分である.
 合併症には肉眼的血尿,腎被膜下血腫,stone street,高血圧症がある.
 自然排石を期待できる大きさ(長径8mm,短径5mm以下)であっても,瘤痛発作が頻回な場合,3ヵ月して自排しない場合にはESWLを行う.
 禁忌は妊婦の結石,破砕されても排石されない結石,未治療の発熱を伴う上部尿路感染を合併する結石,未治療の出血傾向のある患者である.
 完全排石しても10年で約半数の患者に結石の再発がみられる.

皮膚科

しみ・そばかすに対する治療

著者: 鈴木晴恵

ページ範囲:P.1190 - P.1194

ポイント
 機能性のしみには保存的治療,器質性のしみには外科的治療が基本になる.
 治療のなかで最も重要なのは,適切なスキンケア指導である.
 日光黒子(老人性色素斑)にはQスイッチレーザー照射が著効するが,約40%に色素沈着が生じる.
 肝斑にはトラネキサム酸の内服,美白剤の外用やイオントフォレーシスが有効だが,いずれも根治療法ではない.
 フォトフェイシャル(TM)は普遍性と選択性を兼ねそろえ,ダウンタイムがなく,ケミカルピーリングに取って代わりつつある方法であるが,日光黒子の治療には限界がある.

産婦人科

不妊症に対する体外受精・胚移植

著者: 亀井清

ページ範囲:P.1196 - P.1199

ポイント
 体外受精・胚移植(IVF-ET)では,通常複数胚を移植するので,外妊のみならず子宮内外同時妊娠にも注意する,
 IVF-ETで通常行われる性腺刺激ホルモン製剤による排卵誘発は,卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の原因となり,腫大卵巣による急性腹症を呈し,重症になると脱水からの血栓症をきたすことがある.
 IVF-ETにおいて,黄体機能補助療法としてのヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)注,妊娠,多胎などはOHSSの増悪因子となる.

婦人科疾患に対する内視鏡下手術

著者: 堤治

ページ範囲:P.1200 - P.1201

ポイント
 婦人科の良性疾患(子宮筋腫,子宮内膜症,卵巣嚢腫,子宮外妊娠,不妊症)の大部分には内視鏡下手術が適応される.
 内視鏡下手術は開腹を回避するのみならず,精密な手術であり,入院期間の短縮,医療費の節減などにも役立つ.
 エストロゲン依存性疾患(子宮筋腫,子宮内膜症)の術前にはGnRHアナログによる偽閉経療法が有効だと考えられる.

整形外科

特発性側彎症に対する手術

著者: 丸山徹

ページ範囲:P.1203 - P.1205

ポイント
 特発性側彎症の多くは思春期に発症する.
 肋骨隆起により胸郭変形を知りうる.
 胸郭変形が大きいと肺活量が低下する,
 X線上Cobb角で側彎の大きさを表す.
 Cobb角50度以上が手術対象.
 手術の主流は後方矯正固定術.
 手術による矯正率は50〜60%.
 神経合併症の頻度は0.3〜0.7%.
 手術範囲の脊柱の可動性の消失と,より尾側の変性変化が問題になる.

腰椎椎間板ヘルニアに対する手術

著者: 松井寿夫

ページ範囲:P.1206 - P.1209

ポイント
 腰椎椎間板ヘルニアによる神経根症状の自然治癒傾向は強い.手術療法では術後早期に疼痛から開放されるのに比べ,保存療法では個々の症例によってかなり異なる回復経過を示す.どちらの治療法を選択するかはQOLに関する問題であり,患者の社会的・家庭的背景をよく考慮し説明のうえ,患者自身が治療法を決定する.本疾患の手術療法の絶対的適応は激烈な癒痛,高度かつ高位レベルの下肢運動麻痺,膀胱直腸障害などで,それ以外は手術の相対的適応である.

手根管症候群に対する内視鏡下手術

著者: 吉川泰弘 ,   仲尾保志

ページ範囲:P.1210 - P.1212

ポイント
 鏡視下手根管開放術の大きな利点は,皮切および手術侵襲が小さく,日常生活への復帰が早い点である.
 鏡視下法の良い適応は主に軽症例であり,病態の観察や追加処置が必要と思われる症例には,直視下法の適応となることが多い.
 鏡視下法は神経,血管損傷などの合併症を危惧する意見もあるが,手技や器材の工夫によりその発生率は減少している.

脊柱管狭窄症とその手術的治療—殊に,腰部脊柱管狭窄症について

著者: 河合伸也 ,   田口敏彦 ,   豊田耕一郎

ページ範囲:P.1214 - P.1217

ポイント
 腰部脊柱管狭窄症は中年以降に発症することが多く,腰部の鈍痛,下肢のしびれ,間欠性跛践行を主症状としている.その治療に当たり,日常生活指導が大切であるが,保存的治療が奏効しない場合や下肢や膀胱機能の麻痺が進行する場合などに手術的治療を考慮する.手術により,概して間欠性跛行はよく改善するが,しびれ感は改善する傾向が乏しく,腰痛はその中間である.

新しい骨折治療—骨粗鬆症に伴う脆弱性骨折

著者: 小林千益 ,   湯澤洋平 ,   高岡邦夫

ページ範囲:P.1218 - P.1220

ポイント
 骨粗鬆症診療のゴールは骨折の予防である.骨粗鬆症の診断の後,各患者で骨折の危険因子を同定し,是正することが重要である.
 転位が大きい四肢の骨折は,手術治療を要することが多い.
 脊椎圧迫骨折は保存的に治療することが多いが,稀に偽関節となり疼痛が持続することがある.仰臥位X線側面像とMRIが診断に有用である.新しい治療として比較的侵襲が少ない「骨セメント注入+後方固定術」がある.本法は早期離床,早期リハビリテーションができる利点がある.

演習 心電図の読み方・9

T波の異常(1)—陰性T波

著者: 山科章 ,   近森大志郎

ページ範囲:P.1232 - P.1240

Case
 症例1:78歳女性.約1ヵ月前から労作時に胸部圧迫感があり来院.安静時に胸痛はない.この1週間は症状がない.身体所見で第2肋間胸骨右縁に収縮期駆出性雑音(Ⅱ/Ⅵ)と心尖部にⅢ音を聴取.

図解・病態のメカニズム—呼吸器疾患・9

HIV陽性者にみられる肺病変

著者: 川名明彦 ,   照屋勝治

ページ範囲:P.1241 - P.1244

 HIV陽性者には,種々の呼吸器合併症がみられるが,特に問題となるのは細胞性免疫能の低下を背景とした日和見感染症である.なかでも,結核,カリニ肺炎,サイトメガロウイルス肺炎などが特異的に多くみられる.病期が進行すると,複数の日和見感染症を合併し,病態はより複雑になる.本稿では特に,HIV陽性者に多くみられる呼吸器感染症について概説する.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.1245 - P.1250

カラーグラフ 消化管内視鏡検査—知っておきたい基礎知識・7

胃炎

著者: 川口実

ページ範囲:P.1252 - P.1256

胃炎の分類とSydney System
 胃炎の研究は古くから行われ,その分類は内視鏡的立場,病理学的立場などから提唱されてきた.
 またそれぞれに多くの分類があり,臨床上,胃癌肉眼分類のごとき“共通の言語”としての役割を果たした分類は少ない.
 このように胃炎の分類が混沌としているときに,1990年新しい胃炎分類“The Sydney System”が提唱された1)(図1).“The Sydney System”は内視鏡部門,組織部門に分けられ,さらに組織部門では組織形態(morphology),分布(topography),病因(aetiology)に亜分類されている.The Sydney Systemは従来の分類を取り入れながら,病因としてHelicmacter pylori(以下,H. pylori)を加えたのが特徴である.1996年にはThe Sydney Systemの一部が改正され,The Updated Sydney Systemが発表されている2)

今求められる説明義務・4

施療上の指導義務

著者: 古川俊治

ページ範囲:P.1258 - P.1261

施療上の指導義務の概要
 内科的慢性疾患のなかには,日常生活上の励行事項・制限事項を遵守させることが,病態改善のための第一義的治療となる疾患が少なくない.例えば,糖尿病患者に対する運動療法指導,心不全患者に対する水分摂取制限指導,肝硬変患者に対するアルコール摂取禁止指導などで,いずれもそれ自体が重要な治療行為である.この施療上必要な説明は,重要な診療行為そのものであり,診療契約上,他の技術的措置の施行義務と同じく,医師に当然要求される施療義務なのであるが,医師法23条でも,「医師は,診療をしたときは,本人又はその保護者に対し,療養の方法その他保健の向上に必要な事項の指導をしなければならない」として,この説明義務が明記されている.
 施療上必要な説明の時期や範囲については,患者の病状・社会的環境・性格などを考慮して適宜決められるべきであり,インフォームド・コンセントに関する説明と比較して,医師の裁量を認める必要性が高いと考えられている.しかし,説明内容については,その他一般の技術的治療行為と同様の水準で評価される.典型的判例としては,慢性肝炎から肝硬変に移行している患者に対し,一般開業医が飲酒の絶対的禁止を警告しなかったという事案について,「医師には,慢性肝炎を診断し,肝硬変に移行していればこれを察知し,アルコールの絶対的禁止の警告,早期の転入院の勧告等をなすべき義務がある」として医師の責任を認めたものがある1)

新薬情報・12

リン酸オセルタミビル(タミフルカプセル®

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.1262 - P.1264

適応■症候性のAまたはB型インフルエンザウイルス感染症の早期治療.この薬物はインフルエンザ以外の熱性ウイルス感染症には無効である.また,インフルエンザ感染症でも症状発現から2日以内に服用を開始しなければ有効性は保証されない.また,現時点で予防的な適応は認められていない.
用法・用量■1カプセル(75mgのオセルタミビルを有する)を1日2回,5日間経口投与する.
作用機序■A型およびB型インフルエンザウイルスのエンベロープ(被殻)には2種類の共通な糖蛋白[ヘマグルチニン(HA),ノイラミニダーゼ(NA)]が存在し,A型ウイルスには特有なM2蛋白も存在する.ウイルス被殻上のHAは感染対象細胞の膜表面にあるノイラミニン酸と結合することで細胞に吸着され,膜とともに細胞内に侵入する.細胞内で増殖したインフルエンザウイルス遺伝子産物は感染細胞の細胞膜の一部を被殻としてまとい,細胞膜から出芽・遊離し,周囲の未感染細胞に広がるが,遊離に際しては,ウイルス被殻のHAと宿主細胞のノイラミニン酸との結合が妨害となる.インフルエンザウイルスの有するNAは,この結合を切断することによりウイルスの感染細胞からの飛散を助けるのである.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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