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今求められる説明義務・4
施療上の指導義務
著者: 古川俊治12
所属機関: 1慶應義塾大学医学部外科 2TMI総合法律事務所
ページ範囲:P.1258 - P.1261
文献購入ページに移動内科的慢性疾患のなかには,日常生活上の励行事項・制限事項を遵守させることが,病態改善のための第一義的治療となる疾患が少なくない.例えば,糖尿病患者に対する運動療法指導,心不全患者に対する水分摂取制限指導,肝硬変患者に対するアルコール摂取禁止指導などで,いずれもそれ自体が重要な治療行為である.この施療上必要な説明は,重要な診療行為そのものであり,診療契約上,他の技術的措置の施行義務と同じく,医師に当然要求される施療義務なのであるが,医師法23条でも,「医師は,診療をしたときは,本人又はその保護者に対し,療養の方法その他保健の向上に必要な事項の指導をしなければならない」として,この説明義務が明記されている.
施療上必要な説明の時期や範囲については,患者の病状・社会的環境・性格などを考慮して適宜決められるべきであり,インフォームド・コンセントに関する説明と比較して,医師の裁量を認める必要性が高いと考えられている.しかし,説明内容については,その他一般の技術的治療行為と同様の水準で評価される.典型的判例としては,慢性肝炎から肝硬変に移行している患者に対し,一般開業医が飲酒の絶対的禁止を警告しなかったという事案について,「医師には,慢性肝炎を診断し,肝硬変に移行していればこれを察知し,アルコールの絶対的禁止の警告,早期の転入院の勧告等をなすべき義務がある」として医師の責任を認めたものがある1).
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