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雑誌目次

雑誌文献

medicina38巻8号

2001年08月発行

雑誌目次

今月の主題 Cognitive Disorder—内科医が知っておくべき認知機能障害

理解のための28題

ページ範囲:P.1408 - P.1413

cognitive disorderとは

cognitive disorderの概念と病態

著者: 長谷川修

ページ範囲:P.1274 - P.1275

ポイント
 認知機能障害とは,脳高次機能,全般的な判断力,実行機能が障害された状態である.
 痴呆では,記憶障害を含む多彩な認知欠損により社会生活ができなくなる.
 せん妄は,変動する質的な意識障害に伴う.
 部分的な認知機能の障害は,失語・失行・失認,あるいは記億障害などと呼ばれる.

どのようなときにcognitive disorderを疑うか

著者: 小澤浩 ,   天野直二

ページ範囲:P.1277 - P.1279

ポイント
 cognitive disorder疑う際には,一般的な精神症状の症状把握の手順に従い,特に軽度の意識障害の評価に留意する.
 せん妄は意識障害に認知機能障害が加わった一過性の病態であり,痴呆は意識障害を伴わない進行性の認知機能障害を中核症状とする.健忘は認知機能障害のうち記憶障害のみを呈する病態である.

認知機能障害の診かた

著者: 板東充秋

ページ範囲:P.1281 - P.1283

ポイント
 認知機能障害は,高次機能障害の広範な領域を扱い,正常から連続的に推移する境界域や軽度のものや,様々な機能障害の複合を含み,多彩な疾患が対象となる.
 何ができて,何ができないか,どのように誤るかを具体的に知ることが重要である.
 スクリーニング検査と,より詳しい検査を場合に応じて使い分ける必要がある.

認知機能障害の症候

著者: 大塚美恵子 ,   植木彰

ページ範囲:P.1285 - P.1287

認知機能障害
 知的能力は記憶力,計算力,一般的知識(インテリジェンス),図形の類似性の認識や順序の把握などのパターン認識,状況・文脈の認知,構成能力,抽象概念の理解などからなる総合的な判断能力である.これらの要素的な知的能力の障害が認知機能障害であり,結果として日常生活能力,家事能力,生活上の知恵,職業的な能力の障害が現れる.
 cognitive disorderにはせん妄,痴呆,健忘があるが,本稿では内科外来において遭遇する機会が最も多い痴呆性疾患,なかでもAlzheimer病における認知機能障害の症候を中心とし,その多彩な臨床症状をどう理解すべきかについて述べる.

認知機能の簡易な臨床的評価法

著者: 米田孝一

ページ範囲:P.1289 - P.1291

ポイント
 認知機能の評価には,標準化された検査が信頼度の高い方法である.
 簡易な検査で認知機能のスクリーニングを行うことができる.

認知機能障害に画像検査はどのように役立つか

著者: 松田博史

ページ範囲:P.1293 - P.1295

ポイント
 認知機能障害の画像検査には,脳機能を検索できるPET,SPECT,fMRIが用いられる.
 痴呆の早期診断や鑑別診断,せん妄時や一過性全健忘発作中の検索などには,PET/SPECTが有用である.
 1人の患者の認知機能の検索には,放射線被曝がなく空間および時間分解能に優れたfMRIによる賦活検査が役立つ.

認知機能障害に生理検査はどのように役立つか

著者: 大澤美貴雄

ページ範囲:P.1296 - P.1300

ポイント
▶大脳誘発電位のフラッシュ法視覚誘発電位と聴性中間反応は,Alzheimer型痴呆でのコリン作動性ニューロンの機能評価に有用である.
▶事象関連電位は,情報処理の時間的推移や各処理過程間の時系列に関する情報をオンラインかつリアルタイムで検討しうる.
▶P300は,意識的・統御的な情報処理過程を反映し,軽微な認知機能障害の生理学的指標として有用である.
▶mismatch negativityは,自動的な早期の情報処理過程を反映し,乳幼児や昏睡患者においてもその認知機能障害の予後判定に有用である.
▶N200は,注意制御過程で刺激同定後の分類過程を反映する.

薬物と認知機能障害

著者: 北川泰久

ページ範囲:P.1301 - P.1303

薬剤が誘発する認知機能障害の特徴
 薬剤が誘発する認知機能障害は,せん妄などの意識障害を基盤として起こることが多い.せん妄は認知機能の低下,睡眠障害や錯乱を伴った急性の精神障害で,中脳・視床・皮質系の機能低下すなわち意識の混濁だけではなく,辺縁系での脳内の興奮が関与しているとされている.せん妄を基盤とする薬剤による認知機能障害は単独で起こることは稀で,幻覚,異常行動など,他の症状を伴って起こることが多い.薬剤誘発性の認知機能障害は服用後,短期間のうちに出現することが多く,1日のうちでも変動しやすく,高齢者で発症するなど患者側の要因によっても影響を受ける.本稿では認知機能障害を誘発する薬剤とその特徴を述べてみる(表1).

認知機能障害の鑑別診断

著者: 武田克彦

ページ範囲:P.1304 - P.1305

ポイント
 認知機能障害が疑われる場合は,失認などの受容機能の障害,記憶と学習の障害,計算能力などの思考の障害,失語,失行,構成行為の障害などの表出機能の障害を鑑別することが重要である.

精神科疾患における認知機能障害

著者: 兼行浩史 ,   渡辺義文 ,   山田通夫

ページ範囲:P.1306 - P.1308

ポイント
 精神科診断では,横断的な状態像の把握,縦断的な症状経過の聴取,多元的な病態への推察,が重要なコツとなる.
 精神分裂病の認知機能障害モデルとして,①意図した行動,自己モニター,他人の意図を推量する能力の障害,②作業記憶の障害,③注意力を結集し適切な課題へと配分する情報処理能力の障害,④精神活動の協調が困難となった認知の測定障害(cognitive dysmetria)などがある.
 精神疾患の基盤にある特定の神経回路網の機能障害に対して,脳の可塑性へ働きかける薬物療法および認知・行動療法の技法が洗練されることが期待される.

認知機能障害の治療

著者: 加藤元一郎

ページ範囲:P.1309 - P.1311

ポイント
 認知リハビリテーションは,脳損傷に直接的に起因する認知機能障害を訓練によって回復に導こうとする治療法である.
 障害された脳機能が回復するメカニズムには,再建と再組織化という2つの方法がある.
 認知リハビリテーションの方法には,反復訓練,神経心理学に依拠した訓練,全体論的アプローチを使った訓練などがある.

せん妄

内科疾患によるせん妄

著者: 井田雅祥

ページ範囲:P.1314 - P.1315

ポイント
 せん妄は,意識の混濁を背景として大脳皮質の機能低下をきたして発症する興奮,多動状態であるが,可逆性である.
 高齢者の全身性疾患に伴って発症することが多く,痴呆との鑑別を要するが,痴呆を伴っていることもある.
 治療の原則は基礎疾患の治療である.

薬物とせん妄

著者: 尾崎茂

ページ範囲:P.1316 - P.1318

ポイント
 せん妄は,様々な認知機能障害と思考障害を伴い,一過性で変動しやすい意識変容状態である.
 薬物の中毒症状として,あるいは離脱症状として,せん妄が出現する.
 アルコール離脱時にみられる振戦せん妄では,身体状態をモニターしながら,体液・電解質の補正とビタミン類の投与を行い,長時間型のベンゾジアゼピン系薬物を中心とした薬物療法を行う.

痴呆

遷延性意識障害と痴呆の違い

著者: 埴原秋児

ページ範囲:P.1321 - P.1324

ポイント
 最近は痴呆の概念が拡大され,痴呆は慢性の知的障害を広く指し用いられている.
 痴呆とせん妄は,記憶障害・見当識障害・幻覚妄想など類似する症状を呈するが,原因や治療が異なり両者の鑑別は重要である.
 せん妄は身体疾患が背景にあることが多く,診断と同時に原因疾患の治療を優先して行うことが大切である.

いわゆるtreatable dementia

著者: 小濱るり子 ,   吉井文均

ページ範囲:P.1325 - P.1327

ポイント
 痴呆のなかに“治療可能な痴呆(treatable dementia:TD)”があり,その頻度は1〜30%と幅がある.臨床的には3つのタイプに分類できる.
 TDは狭義の痴呆と比べて,臨床症状や臨床経過に種々の特徴がある.病歴や検査所見を参考に原因疾患の精査を進める.
 TDといっても,回復するのはTD全体の10〜15%であり,特に老年者では予後が悪い.

痴呆を呈する変性疾患の鑑別診断

著者: 長友秀樹

ページ範囲:P.1328 - P.1330

ポイント
 痴呆を呈する変性疾患の分類は,神経病理学的知見に基づいており,臨床的に鑑別しうる疾患は限られている.
 中心症状が,記憶・見当識障害,失語,失行などの中核的・要素的認知機能にあるか,人格変化・精神症状・行動異常にあるか,これに,早期から錐体外路系・小脳系などの神経学的症状が重畳するか,が鑑別点となる.
 発症早期には,SPECTなどの機能画像が有用である.

脳血管障害と痴呆

著者: 早川功 ,   松本麻理

ページ範囲:P.1332 - P.1334

ポイント
 脳血管病変と痴呆との関連性が,症候学的にも時間的にも矛盾がないときに,脳血管性痴呆(VD)の診断を考える.
 VDの病態は多様であり,個々の症例での成因を決定する必要がある.
 VDは治療可能な痴呆疾患であり,早期診断が重要となる.

痴呆の治療

著者: 森悦朗

ページ範囲:P.1335 - P.1337

ポイント
 塩酸ドネペジルは,Alzheimer病の病理学的な進行を抑制する効果はないが,認知機能障害や行動異常を改善させることで結果的に症状の進行を抑制する.
 行動異常・精神症状にはまず身体的不快の除去や環境の調整などを行い,次に抗精神病薬や抗うつ薬などの薬物で対処可能である.
 塩酸ドネペジルのコリン作動性の副作用,抗精神病薬によるパーキンソニズムや週度の鎮静に注意する.

失語・失行・失認

失語・失行・失認患者の診かた

著者: 大槻美佳

ページ範囲:P.1339 - P.1342

 失語・失行・失認は大脳の神経症候であり,局所サインとして臨床上有用である.しかしこれらは一見難解で,普遍性を欠くと誤解されがちである.誤解の一因として,近年の新しい有用な知見が十分普及しておらず,19世紀の未修正仮説がそのまま用いられている場合が少なくないこと,また用いられてきた用語・分類・定義の晦渋さがある.本稿では,病的意義を有し,局在診断に役立つ特異的所見を抽出する実践的ポイントを提供する.

失語・失行・失認を呈する脳血管障害

著者: 河村満

ページ範囲:P.1344 - P.1346

 本稿では,血管支配別に失語・失行・失認などの神経心理学的症候を整理し解説する.

失語・失行・失認を主症状とした変性疾患

著者: 古本英晴

ページ範囲:P.1347 - P.1349

ポイント
 変性疾患の一部に,軽度の全般的痴呆症状を伴いながらも失語・失行・失認様症状が前景に立つ症例が存在する.「脳血管性痴呆以外はAlzheimer病」というわけではない.
 その多くは,臨床的には前頭側頭葉変性症(fronto-temporal lobar degeneration)の範疇で整理されるが,高次機能障害の症状から病理学的基礎疾患を推定するのは困難である.診断には神経心理学的検査とともにMRIやSPECT・PETのような画像診断が必要である.
 一部の高次機能障害が特に強く障害されている症例も,時間の経過とともに全般的な痴呆へ移行すると考えられている.

失語・失行・失認の治療

著者: 石合純夫

ページ範囲:P.1351 - P.1352

ポイント
 高次脳機能障害の正確な診断が重要である.
 障害された機能と保存された機能の評価に基づき,コミュニケーションの方法を見いだし,日常生活の自立,向上を目指した包括的リハビリテーションを実施する.
 補助的に薬物治療として,メシル酸プロモクリプチンなどを用いると有効な場合がある.

記憶障害

痴呆との違い

著者: 平山和美 ,   藤井俊勝

ページ範囲:P.1354 - P.1356

ポイント
 痴呆と純粋な記億障害の違いのポイントは他の認知機能障害の有無である.
 経験と結びつけられるエピソード(出来事)記憶と,知識としての意昧記憶がある.
 エピソード記憶の障害は,Papezの回路に属する脳部位などの損傷で起こる.
 意昧記億の障害は,その情報を現在形で処理する脳部位に近い場所の損傷で起こる.

Korsakoff症候群

著者: 吉益晴夫

ページ範囲:P.1357 - P.1359

ポイント
 Korsakoff症候群はアルコール依存症の合併症として知られているが,ハンガーストライキや拒食症など,飲酒と無関係の飢餓状態でも生じる可能性がある.
 認知機能障害は記憶障害が中心であるが,短い情報を直後に反復するような即時記憶の課題では成績低下を認めないことが多い.また,自分の年齢や現在の物価を尋ねることが逆向性健忘のスクリーニングになりうる.

一過性全健忘

著者: 塩田純一

ページ範囲:P.1360 - P.1362

 外傷や脳血管障害など明らかな原因がなく,突然に著しい記銘力障害(前向性健忘)と過去の記憶障害(逆向性健忘)を呈し,意識障害や他の神経症状を伴わない短時間の健忘症候は一過性全健忘(transient global amnesia:TGA)と呼ばれる.Hauge(1954),Bender(1956)の報告後,Fisher & Adams(1958)がTGAと命名してから数多くの報告があり,いくつかの診断基準も示されているが原因については明らかではない.本稿では自験例を示し,その症候の特徴,検査所見,鑑別診断について以下に概説する.

認知機能障害を呈する疾患

頭部外傷後遺症

著者: 渡邉修 ,   安保雅博

ページ範囲:P.1364 - P.1365

ポイント
 頭部外傷者は生産性の高い若年男性に多く,就学・就労が大きな問題となる.
 身体的障害に加え,神経心理学的問題,および心理社会的問題を有している.
 重症例では,医療・福祉スタッフは,患者・家族に対し,長期的支援体制が必要となる.

てんかん

著者: 田邉豊 ,   山本勇夫

ページ範囲:P.1366 - P.1368

ポイント
 側頭葉てんかんの複雑部分発作では,既視感などの前兆,意識減損,自動症,発作後朦朧状態が認められる.
 非痙攣性てんかん発作重積状態では,見当識障害から昏迷に至る意識レベルの変動がみられる.
 発作間歇期には,記憶障害が認められ,側頭葉の関与が考えられている.
 抗てんかん薬は,発作を抑制すると同時に,認知機能障害を引き起こす.

プリオン病

著者: 戸田宏幸 ,   金子清俊

ページ範囲:P.1370 - P.1371

ポイント
 Creutzfeldt-Jakob病(CJD)の第1期には,約2/3にmental symptomがみられ,約30%が痴呆で発症する.
 CJDの認知機能障害は,知能低下や精神症状が意識障害を伴って進行するという複雑な病像を呈する.
 約20%が視覚障害で発症する.

脳炎後遺症の特徴

著者: 原元彦 ,   亀井聡

ページ範囲:P.1372 - P.1374

ポイント
 脳炎では意識障害や認知機能障害などが多く認められる.
 単純ヘルペス脳炎では発熱や髄膜刺激症状を伴わず,精神症状(異常行動,せん妄,性格変化など)で初発する症例が約2割ある.
 単純ヘルペス脳炎後遺症で多く認められる認知機能障害として,記銘力障害・見当識障害・痴呆・感覚性失語などが挙げられる.

患者管理

どんなときに入院が必要となるか

著者: 亀井徹正

ページ範囲:P.1376 - P.1378

ポイント
 cognitive disorderでは言動の異常を伴うことが多く,それが受診のきかっけとなる.
 急性発症のcognitive disorderは,身体的疾患が原因であることが多い.
 身体的疾患の存在,自己や他人に危害を与える可能性,自身の健康管理が困難な状況などは入院の適応である.

在宅診療のコツ

著者: 北野邦孝 ,   根本芳枝

ページ範囲:P.1380 - P.1381

 在宅診療は昔の日本では当たり前の地域の医療形態であった.あらためて“在宅”という言葉が使われ始めて,そのうちに日本国中で“在宅,在宅”の大合唱が始まったのはいつ頃からだっただろうか?私は経済学者ではないのでよくわからないが,そのような現象は日本経済が破綻したあの頃と符合するような気がしてならない.障害者の増加もさることながら,高齢社会を迎えて虚弱高齢者の激増の実態はつとに述べられていることなのでここではその統計には触れない.日本の医療・福祉環境のなかで,在宅療養という形態の必然性は十分理解できる.ただ,療養者への主体性抜き,哲学抜き,医療経済優先の“在宅”が,いわば療養者や介護者に押しつけられてはいないだろうかと思うのである.ここで「在宅医療のコツ」を書くに当たって,まずはそのような問題点を指摘したい.

福祉および社会資源の利用法

著者: 水落和也

ページ範囲:P.1382 - P.1384

ポイント
 認知機能障害を有する患者は知的障害者,身体障害者,精神障害者いずれかの福祉制度を利用する.
 認知機能障害児の制度として就学前は通園施設があり,就学後は特殊学級,養護学校がある.
 成人認知機能障害者の社会参加,職業復帰を目指す制度として,更生援護施設,授産施設などがある.
 福祉制度の利用には療育手帳,身体障害者手帳,精神保健福祉手帳の取得が必要である.

トピックス

Alzheimer病研究の進歩

著者: 柳澤勝彦

ページ範囲:P.1386 - P.1387

ポイント
 早発性家族性Alzheimer病の原因として発見されたpresenilin遺伝子がアミロイドβ蛋白産生酵素の1つ(γ-secretase)をコードする可能性が強く示唆された.
 Alzheimer病モデル動物に対してアミロイドβ蛋白・ワクチン療法が試みられ,老人斑の形成のみならず,行動実験上の障害も抑制されることが確認された.このことは新しい治療戦略の道を開いたと同時に,アミロイド仮説の正当性をあらためて支持した.

認知機能障害のcontroversies

著者: 田川皓一

ページ範囲:P.1388 - P.1392

ポイント
 認知機能障害の画像診断からみたcontroversiesについて症例を供覧した.
 CTスキャンの病巣は形態学的病変であり,必ずしも機能的障害を反映していないことがある.
 CTスキャンの病巣は,いつでも見いだせるものではない.原疾患による経時変化を考慮した撮影が必要である.
 CTスキャンは,必ず病巣を描出できるわけではない.症候とその責任病巣を考慮した撮影が望まれる.

座談会

認知機能障害をめぐって

著者: 鹿島晴雄 ,   北野邦孝 ,   相馬芳明 ,   長谷川修

ページ範囲:P.1395 - P.1405

 長谷川(司会)今日はお忙しいなかをお集まりいただき,どうもありがとうございます.
 今回,「cognitive disorder」という,内科の先生方にとってはあまり耳慣れない特集を組ませていただきました.認知機能というのは人間が人間として生きるためにきわめて重要な機能だと考えられますので,今回は認知機能に関連して,各論文では表現しきれないニュアンスや,専門家間の見解のずれ,あるいは項目ごとの重要度の違いなどを読者に感じ取っていただければと思い,このような座談会を企画しました.

演習 心電図の読み方・10

T波の異常(2)—T波の増高

著者: 山科章 ,   近森大志郎

ページ範囲:P.1415 - P.1419

Question
 提示した心電図は,異なる症例のV1-3誘導記録である.いずれもT波の増高がみられる.病歴の記載もなく,3誘導のみの記録であり,実際の診療ではありえない状況ではあるが,頭の体操と思い,それぞれ考えられる病態・診断を挙げ,鑑別診断をしてほしい.

図解・病態のメカニズム—呼吸器疾患・10

耐性菌の発生メカニズム

著者: 平泻洋一

ページ範囲:P.1420 - P.1424

はじめに
 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)が社会的な問題となって以来,薬剤耐性菌に対する関心が深まっている.しかし,1940年代にペニシリンの臨床使用が開始された直後には,ペニシリナーゼと呼ばれるペニシリンを分解する酵素を産生し,ペニシリンに耐性を示す黄色ブドウ球菌が発見されている.さらにこのようなペニシリナーゼ産生黄色ブドウ球菌に対して,ペニシリナーゼに安定なメチシリンが合成されたが,その直後にはMRSAの出現が報告されている.細菌は人類の想像をはるかに超えた適応力を有しており,抗菌薬の開発使用の歴史は,同時に新しい薬剤耐性菌の出現の歴史となっている.
 本稿では,現在臨床上問題となっている,あるいは今後問題となる可能性の高い薬剤耐性菌のなかで,呼吸器感染症の原因菌として重要なものにポイントを絞って,その発生および伝播のメカニズムについて概説する.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.1426 - P.1431

カラーグラフ 消化管内視鏡検査—知っておきたい基礎知識・8

胃ポリープ・腺腫

著者: 両角敦郎 ,   江口英雄 ,   藤野雅之

ページ範囲:P.1433 - P.1436

 ポリープは語源的に“多数の足”を意味し,タコのような形をしたものを指し示す用語である.したがって,胃でポリープという場合,胃内腔に突出する限局性の隆起ということになる.わが国では,一般的に胃の限局性良性上皮性隆起性病変を胃ポリープと呼ぶ.肉眼形態上,明らかな胃癌や粘膜下腫瘍は胃ポリープとは呼ばないが,鑑別困難な小病変に対して,便宜上,ポリープという語を使うことがある.

今求められる説明義務・5

転医のための説明義務

著者: 古川俊治

ページ範囲:P.1438 - P.1441

 転医のための説明義務の2類型
 医師の説明義務は,患者の身体への侵襲行為について患者の承諾を得るための説明と,診療行為そのものとしての説明の2種類に大別できるが1),転医のための説明義務も,これに応じて2類型が区別される(表1).

新薬情報・13

リネゾリド(ザイボックス®注射液600mg,ザイボックス®錠600mg)

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.1442 - P.1443

適応■リネゾリドに感受性のあるバンコマイシン耐性腸球菌(Enterococcus faecium)感染症で菌血症の併発を含む.米国FDAでは,上記のほかに,院内感染の黄色ブドウ球菌または肺炎球菌性肺炎,黄色ブドウ球菌などによる単純性および複雑性皮膚・軟部組織感染症,肺炎球菌,ブドウ球菌による市中感染肺炎を挙げている.
用法・用量■ザイボックス注射液・錠ともに1日1,200mgを2回に分けて,1回600mgを12時間おきに投与する.注射液の場合は,30分から2時間かけて点滴静注する.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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