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雑誌目次

雑誌文献

medicina39巻1号

2002年01月発行

雑誌目次

今月の主題 呼吸器薬の使い方 2002 Editorial

呼吸器診療における「標準化」—ガイドラインとクリティカルパス

著者: 青島正大

ページ範囲:P.6 - P.9

ガイドラインを用いた呼吸器診療
1.ガイドラインとは
 ガイドラインは,1980年代から米国を中心として診療に用いられ始めた.ガイドラインの目標は,①不適切な診療を減らすこと,②医師間や病院間での診療の差をなくすこと,③医療のための社会資産利用の効率化である1).米国では国家レベルでガイドラインをきわめて重要な役割を担うものと位置づけ,ガイドラインを評価認定する機構をいち早く設置した.呼吸器の分野では肺炎,気管支喘息,慢性閉塞性肺疾患(COPD)などで診療の標準化を目指しガイドラインが作られ,本邦でも1990年代終わりから,前述の3疾患の診療ガイドラインが公表された.本邦と欧米のガイドラインの比較は他稿に譲るが,策定の経緯には大きな差異がある.

気管支喘息

気管支喘息治療の原則

著者: 放生雅章 ,   工藤宏一郎

ページ範囲:P.10 - P.12

ポイント
 喘息治療の究極の目標は,正常に近い肺機能の維持,健常人と同じ日常性活の維持および喘息死の回避である.
 吸入ステロイド薬を中心とした十分な抗炎症治療が必要不可欠である.
 ピークフロー値を客観的な指標とする自己管理システムの導入は,急性増悪への早急な対処のみならずコンプライアンスの向上にも大いに資する.

コントローラーとリリーバー

著者: 山下直美

ページ範囲:P.13 - P.16

ポイント
 気管支喘息は慢性炎症疾患と理解され,発作のない状態を維持し,QOLを向上させることが治療の目標である.そこで治療は長期管理のためのコントローラーと急性増悪時の発作治療のためのリリーバーの特徴を理解し,患者の重症度に合わせて使用することが重要である.

吸入ステロイド薬の使い方

著者: 鈴木直仁

ページ範囲:P.17 - P.19

ポイント
 吸入ステロイド療法は気管支喘息の長期管理におけるファーストラインである.
 吸入ステロイド薬は初期投与量を十分多く設定し,維持量をできるだけ少量とする.
 吸入テクニックやスペーサーの使用の有無で臨床効果や副作用の出現に差が生じるので,吸入法を丁寧に指導することが必要である.

キサンチン製剤の使い方

著者: 東憲孝 ,   谷口正実 ,   秋山一男

ページ範囲:P.20 - P.25

ポイント
 キサンチン製剤の位置づけは,吸入ステロイドの追加薬剤として認識されているが,とりわけ急性期管理におけるわが国と欧米のガイドラインにおける解釈には,若干違いがみられる.
 薬物間相互作用に注意すべき代表的な薬剤の一つである.
 テオフィリンは有効血中濃度と中毒域が近接していること,代謝性・有効性に対して個人差があることを理解したうえで,血中濃度のモニタリングにより副作用を回避することに心がけなければならない.

吸入および経口β2刺激薬の適応と使い方

著者: 美濃口健治 ,   宮本正秀

ページ範囲:P.27 - P.29

ポイント
 短時間作用性吸入β2刺激薬は最強かつ最速の気管支拡張作用を有し,喘息急性発作時(増悪時)には発作治療薬として必要かつ不可欠な薬剤である.
 長時間作用性吸入β2刺激薬と経口および貼付型のβ2刺激薬は,吸入ステロイド薬に併用する薬剤である.

抗アレルギー薬の分類と使い分け

著者: 平松哲夫 ,   松本修一 ,   吉田光伸 ,   伊藤光

ページ範囲:P.30 - P.33

ポイント
▶あくまで喘息治療の中心は吸入ステロイド薬であるが,併用することで効果が期待できる症例がある.
▶抗アレルギー薬は長期管理薬として使用されるべきであり,発作時の症状改善薬としての効果はほとんど期待できない(救急室で使用する機会ははいと考えてよい).
▶抗アレルギー薬のなかでは,ロイコトリエン拮抗薬が喘息の治療において,現在,最も期待されている.
▶一定の期間使用し効果が上がらないものに対しては,漫然と投薬の継続をしない.

吸入抗コリン薬の適応と限界

著者: 塩谷隆信

ページ範囲:P.34 - P.36

ポイント
 抗コリン薬は,アセチルコリンのムスカリン受容体への結合に拮抗し,気道平滑筋を弛緩させることにより気管支を拡張させる.
 現在,気管支喘息で,抗コリン薬の有用性のエビデンスが確立されているのは,β2刺激薬との併用による喘息発作治療薬(リリーバー)としての気管支拡張作用である.
 抗コリン薬が有効と考えられる喘息の病態として,①老年喘息,②喘息合併COPD,③ 運動誘発性喘息,④夜間・早朝喘息などがあるが,これらの病態における抗コリン薬の有用性については今後の検証が必要である.
 抗コリン薬には抗炎症作用がないことから,慢性喘息における長期治療薬(コントローラー)としての意義はない.

急性増悪の治療

著者: 加藤元一 ,   辰田仁美 ,   岡田健一郎

ページ範囲:P.37 - P.39

ポイント
 気管支喘息の急性増悪には,喘息そのものの増悪の場合と気道感染に伴う場合がある.
 治療の基本は,交感神経β2刺激薬の吸入とステロイドの全身投与である.
 低酸素血症を伴う場合は,酸素吸入を行う必要があり,増悪傾向があれば早期に挿管,呼吸管理を行う.

アスピリン喘息の機序と対応

著者: 榊原博樹 ,   姫野一成 ,   内山康裕

ページ範囲:P.40 - P.43

ポイント
 アスピリン喘息はアスピリン様薬物(非ステロイド性抗炎症薬)によりアラキドン酸シクロオキシゲナーゼ(COX)が阻害される結果,気道局所でプロスタグランジンE2が減少し,システィニル-ロイコトリエンの過剰産生が起こることで喘息発作が誘発される.アスピリン様薬物以外の発作誘発物質に注意する必要がある.

慢性閉塞性肺疾患

COPD治療の原則

著者: 桂秀樹

ページ範囲:P.45 - P.49

ポイント
 COPDは現在,世界の死亡原因の第4位であり,今後さらに増加が予想され,その対策が求められている.
 COPDの管理においては禁煙が最も重要である.
 薬物療法では抗コリン薬,β2刺激薬などの気管支拡張薬の吸入が第1選択薬であり,病期に応じて段階的に,テオフィリン内服や吸入ステロイド薬の併用を行う段階的薬物療法を実施する.
 安定期の治療は呼吸リハビリテーションの一環として,疾患の増悪予防に関する幅広い指導を医療チームにより包括的に実施する.

吸入抗コリン薬の使い方

著者: 西村浩一

ページ範囲:P.50 - P.52

ポイント
 抗コリン薬吸入は,慢性閉塞性肺疾患(COPD)安定期の薬物治療における第1選択薬である.
 症状を有するすべてのCOPDが気管支拡張薬治療の適応となる.
 現在わが国では,臭化イプラトロピウム,臭化オキシトロピウム,臭化フルトロピウムの3種類の抗コリン薬が,定量式噴霧装置(MDI)として発売されている.最大の気管支拡張効果には差はない.

キサンチン製剤の適応と使い方

著者: 坪井永保

ページ範囲:P.54 - P.56

ポイント
 COPD患者の治療に用いられるキサンチン製剤は,テオフィリンが主である.
 テオフィリンは,気管支拡張作用,呼吸筋力増強作用,呼吸中枢刺激作用などにより,COPDに有効とされている.
 通常は,徐放性テオフィリン製剤が用いられる.
 抗コリン薬,β2刺激薬などの他の気管支拡張薬と併用されることが多い.

吸入ステロイド薬の意義

著者: 池田賢次

ページ範囲:P.57 - P.60

ポイント
 慢性閉塞性肺疾患に対するステロイド薬の長期間投与は慎重となるべきである.
 臨床効果は客観的のみならず主観的パラメータをも考慮する必要がある.
 喘息要素を有す,若年者で喫煙歴の少ない症例に対して効果的である.

急性増悪時の対応

著者: 木野博至

ページ範囲:P.61 - P.63

ポイント
 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪時には,気管支拡張薬,ステロイド薬.抗生物質,酸素療法および非侵襲的陽圧換気(NIPPV)が有用とされている.
 予後としては急性増悪前の状態への回復が期待できるが,進行した重症のCOPDでは倫理面を熟慮した対応が望まれる.

呼吸器感染症

かぜ症候群とインフルエンザの治療

著者: 中浜力

ページ範囲:P.66 - P.67

ポイント
 かぜ症候群のなかには重篤な合併症もあり,特に高齢者では慎重な対応が必要である.
 解熱薬の投与は,その適応と選択に十分な注意を要する.
 インフルエンザ流行の早期の的確な診断のためには,疫学情報の収集と診断キット使用が有用である.

市中肺炎の治療の原則

著者: 石田直

ページ範囲:P.68 - P.71

ポイント
 本邦の市中肺炎ガイドラインは欧米のガイドラインに比してエビデンスが少ない.
 起炎菌検索を積極的に行うかどうかは各ガイドラインにより姿勢が異なる.
 本邦のガイドラインでは,細菌性肺炎と非定型肺炎を鑑別して治療することが特徴の一つとなっている.
 患者背景,重症度,薬剤感受性を考慮したエンピリックセラピーを行う必要がある.

非定型肺炎の診断と治療

著者: 佐藤匡 ,   青島正大

ページ範囲:P.72 - P.74

ポイント
 非定型肺炎の特徴を理解したうえで細菌性肺炎との鑑別を行うことが大切である.
 確定診断には時間を要するためempiric therapyを行つ必要がある.マクロライド系・テトラサイクリン系抗菌薬が第1選択となる.

免疫不全患者の肺炎の治療

著者: 樫山鉄矢

ページ範囲:P.76 - P.79

ポイント
 免疫不全の種類によって,考えるべき感染症の種類,順位が異なる.
 好中球減少症患者の発熱.肺炎では,早急にエンピリカルな治療を開始するべきである.
 細胞性免疫不全患者の肺炎では,生検などの侵襲的な検査も積極的に施行する.
 画像診断に頼ることは禁物である.
 非感染性の病態を忘れない.

院内肺炎の治療

著者: 青木信樹

ページ範囲:P.80 - P.84

ポイント
 院内肺炎の原因微性物は市中肺炎と異なり,緑膿菌,黄色ブドウ球菌,腸内細菌が主であり,免疫不全患者では,Pneumocystis carinii,cytomegalovirus,結核菌,Legionellaも念頭に置く必要がある.
 抗菌薬の選択は,宿主病態,肺炎の重症度を勘案して行い,段階的な治療を避け,最初から広域かつ強力な抗菌薬を十分量使用し,可能な限り短期間で治療は終了する.

肺抗酸菌感染症の治療

著者: 永井英明

ページ範囲:P.85 - P.87

ポイント
 肺結核は耐性菌でなければ順調に治癒するが,多剤耐性菌は治療困難で外科的な治療を考慮しなければならないことがある.Mycobacterium avium complex症の治療は有効な薬剤がないために一般に困難である.外科療法が有効な場合がある.Mycobacterium kansasii症は抗菌薬に良好に反応する.

膿胸の治療

著者: 渡辺秀裕 ,   関根秀明

ページ範囲:P.88 - P.90

ポイント
 原因疾患は肺感染症からの波及が多く肺化膿症の合併もあるが,悪性疾患の可能性も念頭に入れておくべきである.嫌気性菌の関与が多く,積極的に胸腔ドレナージ,穿刺排膿を行い膿胸腔を消失させること,適切な抗菌化学療法を選択することが重要であり,状況に応じてUK療法,VATS療法などを積極的に選択することも大切と思われる.

慢性下気道感染症の治療

著者: 榎本達治 ,   吾妻安良太

ページ範囲:P.91 - P.93

ポイント
 慢性下気道感染症には気道における防御系障害が先行する.
 慢性下気道感染症の感染型には急性増悪と持続感染が存在する.
 急性増悪に対する抗菌療法と基盤としての抗炎症療法は使い分けが必要である.
 マクロライド療法は慢性下気道感染症の悪循環を断ち切るものである.

免疫異常が関与する肺疾患

びまん性間質性肺炎(IPF,NSIP,BOOP)に対するステロイド治療の適応と限界

著者: 本間栄

ページ範囲:P.96 - P.98

ポイント
 特発性間質性肺炎(IIPs)の分類は慢性型と急性型の2型があり,慢性型にはIPF/UIP,NSIP,BOOP,LIP,DIP,RBILDがある.急性型はAIPで,IPF/UIPの急性増悪とは異なる病態である.
 IIPsの治療反応性,予後はその組織型により大きく異なり,NSIPは予後良好なBOOPと不良なUIPの間に位置する.

過敏性肺臓炎(過敏性肺炎)

著者: 三宅修司

ページ範囲:P.99 - P.101

ポイント
 過敏性肺炎は吸入抗原に対する肺の免疫反応であり,最も頻度の高い夏型過敏性肺炎はTrichosporon属の真菌が原因物質である.
 治療の基本は抗原隔離であり,入院のみでも症状は改善することが多い.入院中に自宅の腐木や床が腐っている所を改築させる.
 抗原隔離に加え,短期間ステロイド薬を投与し,早期に症状を軽快,消失させる.長期投与にならないように注意する.一方,重篤な低酸素血症をきたした症例ではステロイドパルス療法を行う.
 さまざまな物質が抗原となって急性や慢性の過敏性肺炎を発症するため,間質性肺炎の診断に際しては居住環境,生活歴,ペット歴などの詳細な病歴聴取が重要である.

肺胞出血症候群

著者: 平川吾郎 ,   佐藤哲夫

ページ範囲:P.102 - P.105

ポイント
 びまん性肺胞出血症候群は,さまざまな疾患に伴い起こりうる重篤な合併症の一つである.
 原因としてANCA関連血管炎症候群や膠原病関連疾患の頻度が高い.
 ANCA関連血管炎症候群は早期の免疫抑制療法や血漿交換療法が有効な場合が多い.

肺好酸球増多症の分類と治療

著者: 望月吉郎

ページ範囲:P.106 - P.108

ポイント
 高熱を伴い急性発症し,びまん性間質影主体の胸部陰影を呈するとき,急性好酸球性肺炎を疑う.
 約1ヵ月の経週で,咳漱・発熱などを主訴とし,抗性物質不応の胸部陰影を認めたとき慢性好酸球性肺炎を疑う.
 典型例では,肺浸潤影と末梢血好酸球増多,BALF好酸球増多のみで診断可能.いずれもステロイド薬が著効する.

肺疾患に対する免疫抑制剤の適応と使い方

著者: 近藤康博 ,   谷口博之

ページ範囲:P.109 - P.111

ポイント
 IPFに関する国際合意声明では,ステロイド薬と免疫抑制剤(シクロホスファミドあるいはアザチオプリン)の併用療法が推奨療法とされた.
 皮膚筋炎・多発性筋炎に伴う間質性肺炎では,シクロスポリンが有効な場合がある.
 Wegener肉芽腫症では,緩解率,再発率,生存率の観点からステロイド薬とCPAの併用療法が第1選択の治療法である.
 びまん性肺胞出血では,重症な場合やステロイド療法への反応性が不良の場合は,早期に免疫抑制剤を併用すべきである.
 ステロイド依存性喘息において,メトトレキサートやシクロスポリンによりステロイド減量が可能な場合がある.

サルコイドーシス

著者: 生島壮一郎

ページ範囲:P.112 - P.114

ポイント
 本症は約70%の症例で2〜3年のうちに自然寛解を示す予後良好な疾患であり,無症状のBHL(bilateral hilar lymphadenopathy)の例は,基本的には経過観察のみで治療は必要ない.
 ステロイド薬投与は長期にわたり,時には,一生の投与を余儀なくされることもあるため,十分なインフォームドコンセントのうえで,その後の長期管理に責任をもちうる体制を整えてから開始する必要がある.
 プレドニゾロン30mg/日相当で開始し,症状改善の後,5mg/月の速度で10〜15mg/日まで減量し,約3ヵ月間維持し,以後ゆっくりと減量していく.

肺癌

非小細胞肺癌の化学療法

著者: 河原正明

ページ範囲:P.117 - P.119

ポイント
 有効な新規抗癌剤にはパクリタキセル,ドセタキセル,ビノレルビン,ゲムシタビン,イリノテカンがある.切除不能III期には化学療法+放射線治療が標準である.IV期ではプラチナベースの化学療法によって,best supportive careに比べ,死亡のリスクは27%減少し,1年生存率は10%増加する.新規抗癌剤+プラチナ製剤の2剤が標準である.セカンドラインにはドセタキセルが有効である.

小細胞肺癌の化学療法

著者: 久保田馨

ページ範囲:P.120 - P.122

ポイント
 シスプラチンを含む併用化学療法が小細胞肺癌の治療の基本である.
 限局型では,シスプラチン+エトポシド+胸部放射線同時併用療法が標準治療である.
 進展型では,シスプラチン+イリノテカンが標準的なレジメンの一つである.
 治療期間は4コースが標準であり,再発時には2nd lineの化学療法を考慮する.
 今後,分子標的薬剤の検討が計画されている.

その他

慢性の咳の診断と治療

著者: 藤村政樹

ページ範囲:P.125 - P.127

ポイント
 慢性の乾性咳嗽の2大原因疾患は,アトピー咳嗽と咳喘息である.
 慢性の湿性咳嗽は,大部分が副鼻腔気管支症候群であり,14員環マクロライド療法が有効である.
 胃食道逆流は,慢性の乾性咳の原因となりうるが,本邦での頻度は低い.
 咳嗽が軽快しなければ,気管支鏡検査が必要である.

去痰薬の使い分け

著者: 近藤光子

ページ範囲:P.129 - P.131

ポイント
 去痰薬は喀痰の粘稠度を低下させたり,分泌を促進させる薬剤である.
 喀痰が持続する慢性炎症性気道疾患が主たる適応である.
 効果の評価は主に自覚症状による.
 COPDの急性増悪の頻度を去痰薬は低下させる.
 気道分泌の病態生理に即した疾患別治療を行うことが,分泌のコントロールには重要である.

呼吸器診療におけるNSAIDの位置づけ

著者: 須甲松伸

ページ範囲:P.132 - P.133

ポイント
 上気道炎などの呼吸器疾患にNSAIDを使用する頻度は多いが,副作用への注意が必要.
 小児のインフルエンザ,水痘などのウイルス性疾患へのNSAIDの投与は,Reye症候群を誘発する危険がある.
 アスピリン喘息への投与は喘息発作,ニューキノロン系抗菌薬との併用は痙攣発作の副作用がある.

長期(在宅)酸素療法と人工呼吸療法

著者: 蝶名林直彦 ,   佐藤匡 ,   森美賀子

ページ範囲:P.134 - P.138

ポイント
 長期(在宅)酸素療法は,慢性呼吸不全患者の予後を改善するエビデンスがあり,安静時の基準(Pao2<55 Torr)のみならず,睡眠時や運動時のさらなる低酸素血症の程度に応じて,効率良く酸素を投与しなければならない.
 近年普及しつつある鼻マスクによるNPPVは従来のIPPVに比して,挿管しない点から多くのメリットを有するが,意識障害や痰の喀出困難,循環動態が不安定などの場合は,速やかにIPPVへ移行しなければならない.

理解のための34題

ページ範囲:P.142 - P.149

演習 心電図の読み方・15

左室肥大および拡張

著者: 近森大志郎 ,   山科章

ページ範囲:P.151 - P.156

Case
 症例:50歳,男性.主訴:夜間発作性起坐呼吸.
 既往歴:特記すべきことなし.

プライマリケアにおけるShared Care—尿失禁患者のマネジメント・4

尿失禁の分類法と症状の評価法

著者: 後藤百万

ページ範囲:P.157 - P.162

 尿失禁の発生には種々の病態が関与するが,病態によって対処法が全く異なるため,適切な治療あるいは排尿管理を行うためには,症状を正しく評価して,尿失禁の病態の診断,すなわちタイプ分類を行う必要がある.本稿では,尿失禁タイプ分類と診断法について述べる.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.163 - P.164

カラーグラフ 消化管内視鏡検査—知っておきたい基礎知識・13

胃粘膜下腫瘍

著者: 大谷吉秀 ,   北島政樹

ページ範囲:P.171 - P.174

粘膜下腫瘍の定義
 消化管粘膜下腫瘍は,消化器内視鏡用語集によれば「粘膜よりも下方に存在する壁内病変により粘膜が挙上されて生じた隆起の総称」である1).内視鏡や消化管造影での形態診断であり,病理組織学的診断名ではない.その内訳は,GIST(gastrointestinal stromal tumor)に代表される間葉系腫瘍,嚢腫,異所性膵組織,炎症性線維性ポリープ,悪性リンパ腫,カルチノイド,脂肪腫,血管腫,粘膜下に進展する癌などが含まれる.

今求められる説明義務・10

臨床研究におけるインフォームド—コンセント

著者: 古川俊治

ページ範囲:P.176 - P.179

「臨床研究」の範囲
1.「臨床試験」と「治験」
 医学における研究一般を「臨床試験」と呼ぶことがあるが,混同を避けるため,ここでは,「臨床研究」と「治験」を区別して用いる.「臨床研究」とは標準的治療とはいえない治療の一切を含む.市販後医薬品の標準的とはいえない併用,標準的治療薬の大用量投与なども含む.対象症例数が1例であっても該当する.施設内倫理委員会の審査の対象になる.一方,「治験」とは,臨床研究の一つで,薬事法第14条第3項の規定により提出すべき臨床試験の試験成績に関する資料の収集を目的とする試験の実施をいう(薬事法第2条第7項).
 治験と治験以外の臨床研究との比較の概要を表1に示した1).なお,臨床研究の一つとして,製薬企業が主体となって医薬品の有効性・安全性を確認するために行う市販後臨床試験があり,これは正確には「治験」ではないが,適用されるガイドラインであるGPMSP(good post marketing surveillance practices:医薬品市販後調査の実施に関する基準)において,治験に適用されるGCP(good clinical practice)に準じて実施することが求められているため,本稿で扱う問題については,治験と同様に考えておく必要がある.

新薬情報・18

モンテルカストナトリウム(シングレア®錠10,シングレア®チュアブル錠5,またはキプレス錠®10,キプレス錠®チュアブル錠5)

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.180 - P.182

適応■寒冷または運動誘発性の気管支喘息の予防と軽〜中等度の慢性的喘息症状の治療において,気管支拡張薬として用いるβ2作動薬や,抗炎症薬として用いる副腎皮質ステロイド薬の補助薬としてコントローラーの位置づけで用いる.
用法・用量■成人に対しては,10mgの錠剤を1日1回就寝前に経口投与する.6歳以上の小児には5mgのチュアブル錠を口腔内で溶かすか,かみ砕いて1日1回就寝前に経口投与する.米国では2歳以上の小児への使用が承認されているが,日本では6歳以上とやや適応年齢が高い.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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