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雑誌目次

雑誌文献

medicina39巻10号

2002年10月発行

雑誌目次

今月の主題 一般医も診なければならないB型・C型肝炎 Editorial

新しい動きのみられる今,B型・C型肝炎診療の主役は一般医

著者: 山田春木

ページ範囲:P.1642 - P.1644

ポイント
 C型肝炎ウイルスキャリアと気付いていない人は多い.
 C型肝炎の進行を具体的な数字の動きで捉えることは不可能に近い.
 B型肝炎ウイルスキャリアと気づきながら放置している人は多い.

B型肝炎とC型肝炎とではこれほど違う

HCVキャリアの自然経過

著者: 穂苅厚史 ,   戸田剛太郎

ページ範囲:P.1645 - P.1647

ポイント
 急性C型肝炎はA型,B型に比べ自覚症状が軽く,トランスアミナーゼの上昇も軽度.
 HCV感染後の慢性化率は60〜80%ときわめて高い.
 慢性C型肝炎では,黄疸を伴うような強い急性増悪は稀.
 HCV感染では,成人での感染で高率にキャリア化する.
 慢性C型肝炎の自然治癒例は非常に稀.
 肝炎の線維化の進展速度は年率で約0.133.
 肝炎の線維化の進展は,初感染時40歳以上,男性,アルコール飲用者において速い.
 慢性C型肝炎患者の33%は20年以内に肝硬変に進展するが,31%は進展しない.
 C型のASCにおいては,ほとんどの症例で門脈域を中心とする極軽度のリンパ球浸潤を認める慢性肝炎像を呈している.
 生化学的著効例では,ウイルス学的著効例と同様に,肝細胞癌発生リスクが非投与例の1/5に低下している.

HBVキャリアの自然経過

著者: 丸山稔之

ページ範囲:P.1648 - P.1651

ポイント
 公費負担による母子感染防止事業が開始され,HBVの母子感染は著明に減少し,HBVキャリア数も減少してきている.
 HBVキャリアの経過観察には,肝機能検査に加えてTMA法によるHBVウイルス量測定が必要である.慢性肝炎が持続する症例に対しては,いかにタイミング良く抗ウイルス療法(ラミプジン,インターフェロン)を開始するかが,予後を改善するうえで大きなポイントとなる.

HBV・HCVスクリーニングの現況と期待される成果

著者: 森實敏夫

ページ範囲:P.1652 - P.1655

ポイント
 国民健康保険加入者が対象である住民健診に肝炎ウイルス検診が追加され,2002年4月から実施されている.政府管掌健康保険,企業の健康保険加入者に対しても,同様の健診が導入される方向である.今まで潜在していたHCVキャリアが発見されることになる.
 血清ALT値正常のHCVキャリアの取り扱いについて,議論が必要である.

B型・C型肝炎の診断・検査

検診でALT上昇を認めた際の問診,診察,検査のポイント

著者: 佐藤芳之 ,   池田有成

ページ範囲:P.1657 - P.1659

ポイント
 新規のB型・C型肝炎患者が自ら診療科を受診する機会は少なく,検診など偶然の採血が発見の契機となる.
 軽度の肝機能異常をみたとき,すぐに検査依頼をするのではなく,鑑別診断を念頭に置いた問診,診察を十分に行うことで,見落としやむだな検査を避けることができる.
 ALT上昇の原因を,肥満があるから脂肪肝,飲酒習慣があるからアルコール性などと短絡的に決めてかかると,重大な疾患を見逃す危険がある.
 AST上昇が顕著な場合など,原因として非肝疾患も考慮すべき例が存在する.

HCV・HBVキャリアと判明した際の診断の進め方

著者: 山中太郎 ,   針生真矢

ページ範囲:P.1660 - P.1666

ポイント
 B型肝炎ウイルス(HBV)による肝細胞癌は,HBe抗原陰性例は,HBe抗原陽性例と同数以上存在している.
 B型慢性肝疾患の追跡には,HBe抗原・抗体系だけではなく,血中HBV-DNA量(アンプリコア法)を測定する必要がある.
 現在のC型肝炎ウイルス(HCV)抗体スクリーニングでは中力価の設定が重要である.
 ALTが正常のC型肝炎例でも,厳重な追跡が必要である.

専門医がすすめる肝癌スクリーニングの血液検査プラン

著者: 村島直哉 ,   中山聡

ページ範囲:P.1667 - P.1669

ポイント
▶肝癌の確定となる画像診断をオーダーする重みづけとして,腫瘍マーカーであるAFP・AFP-L3分画・PIVKA-IIがある.
▶高リスク症例には上記すべての検査を月1回,通常の肝疾患では交代に月1回ずつ行う.
▶これらのマーカーは,絶対値ではなく,上昇傾向を捉えることが重要である.
▶高リスクは,γ-GTP高値・高齢・食道静脈瘤・肝癌の既往なども考慮して判定する.

専門医がすすめる肝癌スクリーニングの画像検査プラン

著者: 伊東和樹

ページ範囲:P.1670 - P.1672

ポイント
 各画像検査法の特長を理解して使い分ける.
 初診時に,体型などからエコーが有効な患者かどうかを判定するとともに,症例のF-ステージを同定する.慢性肝炎後期以降なら,肝癌除外のワーク・アップが必須.
 症例の発癌リスクに応じて設定した検査を終生にわたり継続し,画像・腫瘍マーカーいずれか1つでも陽性所見を認めたら,「肝癌疑診」例として専門医に紹介する.

B型肝炎ワクチンの投与方法およびHBV・HCV針刺し事故への対応

著者: 松本晶博 ,   清澤研道

ページ範囲:P.1674 - P.1676

ポイント
 B型肝炎撲滅には,high risk groupに対するHBワクチン接種が重要である.
 C型肝炎撲滅には,針刺し事故や医療事故を起こさないよう,注意を喚起するためのシステム作りが重要である.

C型肝炎 治療法の選択と一般医の役割

治療薬の種類と基本的な選択

著者: 堀池典生 ,   恩地森一

ページ範囲:P.1678 - P.1679

ポイント
 C型慢性肝炎の治療にあたり,HCVを排除するか,ALTをコントロールするか,目標を明確にする.
 インターフェロン(IFN)の適応は,肝生検組織像がF2,F3あるいは活動性の高いF1である.リバビリンとの併用療法の適応は,IFN治療難治例および再投与例である.
 一般肝庇護療法の適応は,IFN療法不能例および無効例である.ALT 50単位以下を目標とする.

ASTとALTをどう評価するか

著者: 中田良

ページ範囲:P.1680 - P.1682

ポイント
 AST・ALTは肝細胞に含まれる酵素である.ASTは他臓器(心筋など)性の場合もあるが,ALTは肝特異性が高い.
 AST・ALTの血清内半減期の違いから,その値の程度と変化より,急性期,回復期,増悪期などの判断が可能である.
 AST・ALTの肝細胞内の局在により,肝細胞の傷害部位を予測し,原因を想像することが可能である.

AST・ALTはどこまで下げればよいか

著者: 五藤忠 ,   小俣政男

ページ範囲:P.1684 - P.1686

ポイント
 ALT値は下げられるならば,できるだけ下げる.正常範囲内が望ましい.また下げた後,そのALT低値を維持する.
 肝病変の進展度(=線維化度)で肝癌の発生率が異なるので,これを理解したうえでALT値をみる.
 肝硬変では,ALT値が低くても発ガンリスクは高い.

肝庇護薬の正しい使い方

著者: 多羅尾和郎

ページ範囲:P.1687 - P.1689

ポイント
 SNMC,UDCA,漢方薬など,肝庇護薬に対するC型慢性肝炎患者の個々の感受性は著しく異なる.
 したがって,個々の症例に対してALT値を80単位未満にすべく,各薬剤を投与してみる必要がある.
 単剤でALT値が下がらない場合には,2剤併用,さらに3剤併用などの多剤併用でALTが下がる症例も多数存在する.
 多剤併用で有効な組み合わせは,SNMC+UDCA,UDCA+小柴胡湯,SNMC+UDCA+小柴胡湯,SNMC+UDCA+十全大補湯であった.

抗ウイルス療法の適応はどこまで広げてよいか

著者: 柴田実 ,   三田村圭二

ページ範囲:P.1690 - P.1692

ポイント
 わが国では,C型肝炎に対する抗ウイルス療法の適応は慢性肝炎に限られている.
 医学的には小児慢性肝炎,急性肝炎,肝硬変,肝細胞癌,ALT正常のHCVキャリアなどの肝疾患および膜性増殖性糸球体腎炎,晩発性皮膚ポルフィリン症,本態性クリオグロブリン血症などのHCV関連肝外合併症についての適応が検討されている.
 抗ウイルス療法の適応を広げる際には,最新の臨床試験の成績を根拠として,対象患者の予測される自然経過,重症度,有効性および副作用を総合的に評価して決定すべきである.

インターフェロン療法中の患者で一般医が気をつけること

著者: 杉原潤一 ,   冨田栄一 ,   西垣洋一

ページ範囲:P.1694 - P.1697

ポイント
 インターフェロン投与初期には,発熱,関節痛,全身倦怠感などのインフルエンザ様症状はほぼ必発である.
 消化器症状,不眠,意欲低下,脱毛などの症状もしばしばみられるが,うつ病や間質性肺炎などの重篤な副作用には特に注意が必要である.
 臨床検査値の異常としては,尿蛋白,尿糖,高血糖,白血球や血小板の減少,貧血(特にリバビリン併用時)などの出現に留意すべきである.

B型肝炎 治療法の選択と一般医の役割

治療薬の種類と基本的な選択

著者: 長谷川潔 ,   城里穂 ,   鳥居信之

ページ範囲:P.1699 - P.1701

ポイント
 B型慢性肝炎は自然経過で改善することもあり,また抗ウイルス薬によってもウイルスを完全に排除できないため,治療方針の基準を設定することが難しい.
 インターフェロンもラミブジンも,投与開始時のALTが正常上限の5倍以上ある患者でそのseroconversion率が高い.
 HBe抗原陰性の慢性活動性肝炎ではラミブジンが適応となるが,中止時期の決定が難しい.

治療目標の設定と導入—専門医と一般医の役割

著者: 矢野右人

ページ範囲:P.1702 - P.1703

ポイント
 B型肝炎は,持続感染が成立すると長期間感染が持続し,健康キャリア期,活動性慢性肝炎期,その後の安定期もしくは肝硬変進展による肝不全期と,多様な臨床形態をとる生涯にわたる疾患である.
 HBVキャリアは,日本に100万人以上存在し,その全病期を専門医が対応するのは困難で,一般医の管理が中心となる.
 ケア,キュアの要所要所で,専門医との連携が原則である.

一般医も知っておくべき治療の進歩

コンセンサスインターフェロンの成績と今後の課題

著者: 林茂樹

ページ範囲:P.1704 - P.1706

ポイント
 コンセンサスインターフェロンは,ゲノタイプ1bで700KIU/ml未満の高ウイルス群の治療に優れた成績を示す.
 コンセンサスインターフェロンは,ゲノタイプ2aで700KIU/ml未満の高ウイルス群と低ウイルス群の治療にも優れた成績を示す可能性がある.
 副作用の発現頻度が高い傾向があるため,注意を要する.

リバビリン初回投与の成績と今後の課題

著者: 泉並木

ページ範囲:P.1708 - P.1710

ポイント
 リバビリンは経口薬で,インターフェロンとの併用でC型肝炎ウイルス排除率を高める.
 リバビリンとインターフェロンが効きやすい例はセログループ2であり,HCV-RNA量とは関連しない.
 リバビリン治療中と治療終了後6ヵ月は,男女とも妊娠を避ける.
 併用治療初期4週間は貧血に注意し,ヘモグロビン値が10g/dl以下になったら,リバビリンを1錠減量する.

C型肝炎へのインターフェロン再投与の成績

著者: 芥田憲夫 ,   熊田博光

ページ範囲:P.1712 - P.1713

ポイント
 初回IFN単独投与終了時のHCV-RNA陽性例での再投与VR率は3.3%,陰性例は27.4%である.
 IFN再投与時,ウイルス量1Meq/ml以上の症例での再投与VR率は7.5%,1Meq/ml未満では44%である.
 genotype 1bでのIFN再投与VR率は15.2%,genotype 2a,2bは42.2%である.

C型肝硬変への抗ウイルス療法

著者: 岩﨑良章 ,   下村宏之 ,   白鳥康史

ページ範囲:P.1714 - P.1717

ポイント
 C型慢性肝炎から肝線維化の進行により,約30年(進展速度0.1〜0.15unit/年)で肝硬変へと進展する.
 肝線維化の進展に伴って,肝発癌のリスク(F1:0.5%/年,F2:2%/年,F3:5%/年,F4:8%/年)が増大する.
 IFN治療は肝発癌率を減少させる.
 肝発癌抑止はIFN治療効果(ウイルス駆除,生化学的鎮静化)と関連している.
 肝硬変のIFN治療におけるウイルス駆除率は,慢性肝炎に比べて低い.
 肝硬変のIFN治療では,低ウイルス量,ウイルス型は2aでウイルス駆除率が高い.
 リバビリンとIFNの併用療法やPEG-IFNによる治療効果の改善が今後期待される.

“リバビリン後”のC型肝炎治療薬展望

著者: 飯野四郎

ページ範囲:P.1718 - P.1719

ポイント
 C型慢性肝炎の治療はこの10年で原因療法として非常な進歩がみられているが,遺伝子型1b高ウイルス群に関しては不十分といわざるを得ない.
 しかし近い将来,Peg-IFNが登場することにより,一歩前進すると考えられる.
 さらにIFN製剤の改善が望まれ,リバビリンに代わるIFN増強薬の開発が期待される.

B型肝炎へ長期投与可能となったインターフェロン療法の成績

著者: 柴山隆男

ページ範囲:P.1721 - P.1723

ポイント
 B型慢性肝炎の治療でHBVを体内から完全に排除することは困難である.
 治療目標はHBe抗原の陰性化あるいは抗HBe抗体へのセロコンバージョンと,ALTの持続正常化である.
 インターフェロン(IFN)は抗ウイルス作用と免疫賦活作用を有し,IFN長期投与は有効率が高く有力な治療法であるが,IFN単独では限界がある.

ラミブジンはどのような人に始め,どのようにやめるか

著者: 大石和佳 ,   茶山一彰

ページ範囲:P.1725 - P.1727

ポイント
 ラミブジンの飲み忘れ,自己判断による中止は急性増悪や劇症化の危険性があることを,投与前に患者に十分説明する必要がある.
 ラミブジン投与開始後6ヵ月以降に変異株が出現する可能性があるが,変異株が出現しても投与を中止せず継続すべきある.
 成人発症の重症急性肝炎・劇症肝炎に対するラミブジン投与は,有効な治療法である.

抗ウイルス療法終了後のB型肝炎重症化・劇症化

著者: 井上和明

ページ範囲:P.1728 - P.1729

ポイント
 抗ウイルス療法後にB型肝炎が重症化するのは,抗ウイルス薬による増殖抑制がはずれると,ウイルス増殖が急速に起こる場合である.
 抗ウイルス療法を終了した後には,血中のHBV-DNAレベルを慎重にモニターしていく必要がある.
 ウイルスが再び増殖して肝炎が再燃した場合には,重症度に合わせて治療を再開する必要がある.

B型・C型肝炎患者への教育

ALT正常者・上昇者,おのおのどのように指導するか

著者: 原田英治 ,   福井秀雄 ,   田中晃久

ページ範囲:P.1730 - P.1734

ポイント
 C型慢性肝炎は自覚症状は軽いが,自然経過では寛解することはなく,長い期間をかけて肝硬変へと進行する.
 ALTが正常であれば,肝病変は軽微であり,肝障害の出現が起こらないかをとらえる意味での経過観察でよい.
 B型肝炎ウイルスキャリアの9割は,自然経過で無症候性から肝炎期を経て再び無症候性となり,臨床的治癒に至る.
 患者がどの病期かを説明し,経過をみて,6ヵ月〜1年以上,HBe抗原からHBe抗体への転換がみられないものや,HBe抗体にもかかわらずALTの異常高値,HBV-DNAの増加が続く例には,抗ウイルス薬の治療が必要である.

母児感染・夫婦間感染のリスクをどのように説明するか

著者: 溝上雅史 ,   加藤孝宣

ページ範囲:P.1736 - P.1738

ポイント
 HBVはその感染予防法がほぼ確立されている.
 HCVの垂直感染,夫婦間感染の頻度は低い.
 分子系統樹を使用した解析により,感染ルートが推定可能である.

血中ウイルス陰性・HCV抗体陽性の患者にどのように説明するか

著者: 四柳宏

ページ範囲:P.1740 - P.1741

ポイント
 血中ウイルス陰性の診断はRT-PCRを用いた定性検査で行う.
 HCV抗体陽性者に対してはまずamplicor-M法によるウイルスの定量測定を行う.測定感度以下の場合,amplicor定性法によりHCV-RNAの有無を確認する.
 HCV抗体陽性・HCV-RNA陽性の場合は,C型肝炎として対応する.
 HCV抗体陽性・HCV-RNA陰性・肝機能が正常の場合,腹部超音波検査を施行し,異常が認められないことを確認する.
 HCV抗体陽性・HCV-RNA陰性・肝機能が異常の場合,他の肝疾患の存在について確認する.

ちょっとくらい飲んでよいか?と聞かれたら許可するか

著者: 平田啓一 ,   藤原研司

ページ範囲:P.1742 - P.1743

ポイント
 アルコールはウイルス性肝疾患の増悪因子である.
 常習飲酒者のHCV感染において,肝細胞癌の発生頻度が高い.禁酒は肝癌を予防するうえで重要である.

慢性肝炎患者への仕事,学校,運動などの生活指導

著者: 橋本直明 ,   松浦広 ,   松川雅也 ,   関川憲一郎 ,   高倉裕一

ページ範囲:P.1745 - P.1749

ポイント
 慢性肝炎患者の生活指導について,EBMは確立されていない.
 過度の生活制限は必要でないが,肝硬変への進展に伴って制限が強まる.
 病気療養は衣食住と基本的生活習慣の確立が前提であり,慢性肝炎ではさらに炎症や線維化の程度,B型・C型肝炎ウイルスの別,年齢などを考慮して,生活指導を行う.
 飲酒,肥満,過労を避け,適度な運動と適正な食事が肝要である.
 長期療養のため,患者の気持ちを引き立て,前向きにする,医師の心配りも大切である.

その他,B型・C型肝炎で一般医も知っておくべき知識

B型・C型肝炎ウイルス重感染の臨床的意義

著者: 三好秀征 ,   小池和彦

ページ範囲:P.1750 - P.1752

ポイント
 HBVとHCVの重感染は,ウイルス干渉作用によりどちらか片方が優位に顕在するが,肝障害は単独感染よりも重症化しやすいとの報告がある.
 治療は単独感染に準じて行うが,インターフェロン療法の効果は低くなるといわれている.
 重感染が肝発癌のリスクを高めるかどうかについては,一定した見解が得られていない.

日常診療でみられるC型肝炎の自己免疫現象

著者: 柴田実

ページ範囲:P.1754 - P.1756

ポイント
 C型肝炎ウイルスは種々の自己抗体の産生および自己免疫疾患の発症に関与する.
 自己抗体としては抗核抗体,リウマトイド因子,抗平滑筋抗体が高頻度に検出される.
 自己免疫疾患では,自己免疫性甲状腺炎,唾液腺炎,特発性血小板減少性紫斑病などを合併しやすい.
 さらに,インターフェロン治療は潜在する自己免疫疾患を顕性化する可能性がある.

HBVキャリアへのステロイド・免疫抑制剤投与は要注意

著者: 三浦英明 ,   山田春木

ページ範囲:P.1758 - P.1761

ポイント
 肝機能正常のHBVキャリアへ抗癌剤や免疫抑制剤を投与した後に,時として致死的な重症肝炎が惹起されることがあるが,これはHBVの再活性化(reactivation)が原因である.
 reactivationの機序は,抗癌剤や免疫抑制剤によってHBV感染肝細胞が拡大した後に,薬剤の中止により再活性化したCTL(細胞傷害性Tリンパ球)がこの感染肝細胞を広範に破壊することによると考えられている.
 HBVのreactivationに対しては,ラミブジンにより良好な治療成績が得られている.

座談会

B型・C型肝炎の病診連携

著者: 泉並木 ,   木島冨士雄 ,   長谷川潔 ,   山田春木

ページ範囲:P.1762 - P.1773

 節目検診の実施や新たな検査法の開発により,新たなHCVキャリア・HBVキャリアが明らかになってきた.
 B型肝炎・C型肝炎の治療において,検査値からの病態把握,患者への初期教育,そして治療方法の選択をいかに行うか.病診連携の実際と一般開業医・専門医の役割について,お話し頂いた.

理解のための32題

ページ範囲:P.1775 - P.1781

演習 腹部救急の画像診断・4

自動車同士の事故で搬送された54歳男性

著者: 大橋正樹 ,   兼子晋 ,   葛西猛 ,   八代直文

ページ範囲:P.1783 - P.1787

Case
 症例:54歳,男性.
 主訴:右前胸部痛から右上腹部痛.
 既往歴:特記すべきことなし.
 現病歴:自動車同士の正面衝突事故で搬送された.被害者はシートベルトを装着していなかった.意識は清明であり,強い右前胸部痛から右上腹部痛を訴えていた.
 現症:血圧 70mmHg(触診),脈拍数 120/min,呼吸数 28回/min,体温 34.2℃.意識障害なし.右肺呼吸音減弱.腹部は膨隆し,右上腹部に圧痛あり.血液検査:Hb 10.9g/dl,Ht 30%,WBC 191×10/μl,PT-INR 1.16,APTT 28.8秒,GOT 830IU/l,GPT 621IU/l,LDH 2,378IU/l,CK 441IU/l.

プライマリケアにおけるShared Care—尿失禁患者のマネジメント・13

海外の尿失禁治療におけるShared Care(2)—尿禁制クリニックの有用性と尿禁制管理計画

著者: ,   杉村享之

ページ範囲:P.1788 - P.1791

はじめに
 前回は,尿禁制クリニックが患者や介護者に対して,どのような治療や指導を行っているか,また,どのような患者を専門医に紹介しているのかを述べた1)
 今回は,実際,イギリスやオーストラリア,ニュージーランドで行われている尿禁制クリニックの有用性,運営費,尿禁制クリニック改善のための計画について注目する.これらに挙げた国々は,それぞれ独自のシステムを展開させている.

新薬情報・25

ガチフロキサシン水和物(ガチフロ錠®100mg)

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.1792 - P.1794

適応■日本の抗生物質の添付文書の効果・効能では,まずMICデータは特に明示されずに感受性菌の羅列があり,その後臓器感染症が列挙される.以下には,その様式にならうが,この様式は国際的に見て標準的ではない.米国添付文書では,適応には,まず臓器感染症が提示され,MICについては別項に数値記述があるのが普通である.また,日本と米国では適応が同じではない.概して,米国のほうが適応が狭い.以下の適応では米国での適応に下線を付した.
 ブドウ球菌属,連鎖球菌属,腸球菌,肺炎球菌,淋菌,モラクセラ・カタラーリス,大腸菌,シトロバクター属,クレプシエラ属,エンテロバクター属,セラチア属,プロテウス属,モルガネラ・モルガニー,プロビデンシア属,緑膿菌,インフルエンザ菌,バーグホルデリア・セパシア,ステノトロホモナス・マルトフィリア,アシネトバクター属,ペプトストレプトコッカス属,バクテロイデス属,アクネ属,クラミジア・トラコマティス,クラミジア・ニューモニエ,肺炎マイコプラズマのうち本剤感受性菌による下記感染症.

カラーグラフ 消化管内視鏡検査—知っておきたい基礎知識・22

虚血性大腸炎・薬剤性大腸炎

著者: 五十嵐正広 ,   小林清典 ,   勝又伴栄

ページ範囲:P.1796 - P.1800

虚血性大腸炎
 1.内視鏡の特徴
 虚血性大腸炎は,臨床経過により,狭義には一過性型と狭窄型の2型に,広義には壊死型を加えた3型に分類されている.病変は,下行結腸を中心に分布し,いわゆる区域性にみられることが多い.この3型の典型的な内視鏡像と特徴を以下に示す.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.1801 - P.1806

内科医のためのリスクマネジメント—医事紛争からのフィードバック・7

思いこみは禁物

著者: 長野展久

ページ範囲:P.1808 - P.1812

先入観
 医師になって数年が経過すると,ひととおりの医学知識が身につき,臨床的なセンス,あるいは勘といったものにもだんだんと磨きがかかり,無駄の少ないプロセスで的確な診断ができるようになると思います.その一方で,症例によっては時間の経過とともに本来の病態がはっきりとし,診療途中で方向修正を余儀なくされたり,初期段階の先入観にとらわれて思わぬ落とし穴にはまってしまうことも時に経験します.そのような場合には,医学書や関連文献を参照したり,他の医師に意見を求めるなどといった配慮が望まれますが,ほんのちょっとしたことに気づかず治療が後手にまわり,患者の容態が悪化して残念な結果になることもあります.
 今回紹介する症例は,あとから振り返るとそれほど診断が難しくないにもかかわらず,初期段階の先入観から抜け出すことができずに,最終的には患者が死亡した裁判例です.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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