column
新薬の臨床試験
著者:
阿部正和1
所属機関:
1東京慈恵会医科大学
ページ範囲:P.252 - P.252
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最近,治験の参加者を募集する一面全紙の新聞広告をよく見掛ける.「治験への参加は患者全体の利益になるからぜひ参加して下さい」と訴える医師もいる.それでも新薬の臨床試験(治験)は遅々として進まないのが現状であろう.新聞広告で治験の透明性を高めることが,患者の治験の参加を容易にさせる効果はあるかもしれない.しかし,この場合でも,治験を実施する医師は患者の納得・同意(informed consent)を得ることは必須である.「いい薬が出ましたから試してみましょう」という医師の呼びかけに,「お任せします」と答えて,止むなく治験に参加させられる場合が,今でもあるのではないかと危惧している.
古い話で恐縮だが,昭和61(1986)年7月30,31日の2日間にわたって,生存科学研究所とハーバード大学公衆衛生大学院との共催の形で,「医薬品の開発と行政および倫理」に関する国際シンポジウムが開催された.その席で私は「日本のGCP(Good Clinical Practice)」と題して講演を行い,後のパネルディスカッションにも参加した.