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文献詳細

雑誌文献

medicina39巻11号

2002年10月発行

文献概要

column

地獄で仏

著者: 大菅俊明1

所属機関: 1相川内科病院

ページ範囲:P.280 - P.280

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 これは実際の話です.52歳男性.大学教授.診察室のドアを青菜に塩の様子で現れ,「体がだるいし食欲もない」と言います.「自分は肝硬変と診断されており,最近進行しているように思い,眠れない,講義もできない」とも訴えました.診察の結果,たしかに肝硬変はありますが,完全に代償されています.そこで,「肝硬変といってもパンが固いというのと同じで,慢性肝炎とはっきりした差はない.いまの状態は江戸時代だったら発見されず,健常人と同じ.積極的に活動しなくては人生の損」といささか乱暴な説明をしました.しばらくして来られたときは,これが同じ人かとびっくりするような元気な顔つきで,「韓国へ出張講義をしてきた」とのことでした.
 その後,この先生は無事定年まで勤務され,さらには他大学の学長として活躍し,天寿を全うされました.このような例はしばしば経験されます.心臓(気管支ではない)喘息で起座呼吸している男性に聴診器を当てたら,一再ならず収まったこともあります.“病は気から”で,医学的に正確な説明が必ずしも患者さんを元気にするとは限りません.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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