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雑誌目次

雑誌文献

medicina39巻12号

2002年11月発行

雑誌目次

今月の主題 画像でせまる呼吸器疾患 Editorial

呼吸器疾患の画像をいかに学ぶか

著者: 山口哲生

ページ範囲:P.1822 - P.1825

 最近のほとんどの医療機関では,胸部X線撮影をオーダーすると,自現機を使って即現で目の前に写真が出されてくる.読影医が研修医であろうが,他科の医師であろうが,好むと好まざるとにかかわらず即現の写真を読まなければいけない状況にある.胸部の画像診断が他疾患のそれと違う最も大きな点である.胸部X線写真読影の十分な修練を積むことは,少なくともこれからの研修医の義務であり,同時に,そのトレーニングを行うことはわれわれ指導医の責務であるといえる.
 また,胸部CT像の読影は,慣れてくればむしろ胸部単純X線像の読影を補助してくれるものであり,決して余分な仕事を増やすものではない.だから,ぜひ胸部CT読影にも慣れ親しんでほしいと思う.

胸部X線像の理解

正常胸部X線像と縦隔CT像

著者: 瀧澤弘隆

ページ範囲:P.1826 - P.1830

ポイント
単純X線写真では,高圧撮影を行って,肺尖部の骨陰影,中央陰影,肺門陰影,横隔膜下陰影,胸郭陰影などに重なる肺の所見が明瞭に現れる良いX線写真を撮る.
胸部の構造と機能に関する十分な知識をもって読影に臨み,構造的ノイズの影響を頭脳的に排除しつつ診断作業を行う.
構造的ノイズに重複する部位や縦隔の解析は,X線CTを駆使して行う.

胸部単純X線像の記述用語

著者: 黒﨑敦子

ページ範囲:P.1832 - P.1838

ポイント
胸部単純X線写真1枚は,実に多くの情報を満載している.まず,正常構造から逸脱している構造を浮き彫りにし,その陰影の性状を解析し,病理学的にどういう事態が起こっているのかを類推できれば,自ずと正しい診断に結びつくのである.
肺の基本構造が,肺胞(実質)と間質から成り立っていることを念頭に置いて,陰影が肺胞性陰影か,間質性陰影か,あるいは結節性陰影かを判断し,そしてその病変の空間的・時間的広がりについても考察することが,重要である.
しかし,単純な陰影のパターン認識による読影のみでは,実際には限界がある.これらの陰影は混在することがあるし,片方がもう一方のパターンを覆い隠してしまうこともある.また,既存の疾患によりいわゆる教科書的な陰影を呈するとは限らないからである.

重要なサイン

著者: 千田金吾

ページ範囲:P.1839 - P.1843

ポイント
胸部X線写真所見における各種サインは,診断に有用である.
有用という意味は,pathognomonic(ある疾病に特徴的な)ということではなく,鑑別診断を想起するのに役立つということである.例外はつきものである.
運用にあたっては『サインはVならず』であることを念頭に置くことが,さらに読影解析力を向上させる.

この所見だけは見逃すな

著者: 佐藤雅史

ページ範囲:P.1845 - P.1847

ポイント
胸部単純X線写真の読影には,臨床情報がきわめて重要である.
大変に軽微な所見が,臨床上重要な疾患の診断の鍵となることがある.
胸部疾患は,呼吸器のみならず縦隔,心臓,胸壁,胸膜まで含めると画像所見も関連する疾患も非常に多彩であり,十分な知識をもったうえで臨床業務に携わる必要がある.
安易に胸部CTを依頼せず,胸部単純X線写真を正確かつ丁寧に読影する習慣をつける.

無気肺を読む

著者: 八木橋国博 ,   栗原泰之 ,   中島康雄

ページ範囲:P.1848 - P.1852

ポイント
無気肺は,肺内空気量の減少により容積の低下を起こしたものである.
無気肺の原因メカニズムにより,①resorption atelectasis,②relaxationatelectasis,③adhesive atelectasis,④cicatrization atelectasisに分類される.
胸部単純X線写真では,正面像よりも側面像が有用なことが多い.

空洞陰影の鑑別

著者: 梶原景子 ,   佐藤雅史

ページ範囲:P.1853 - P.1856

ポイント
▶肺の透亮性欠損像には,空洞,ニューマトシル,先天性気管支嚢胞,嚢状気管支拡張症,気腫性嚢胞(プラ)などがある.
▶空洞性病巣の診断には,その壁の厚さ,存在部位,単発か多発か,周囲浸潤影の有無,基礎疾患,そして臨床情報が重要である.
▶一般に空洞性病院では,壁が不均一で厚さが15mmを超えると悪性疾患の可能性が高く,結核性空洞や膿瘍などと鑑別が必要となる.

「陳旧性肺結核」といわれるもの

著者: 山口哲生

ページ範囲:P.1858 - P.1860

ポイント
強力な抗結核薬の登場以前は,肺結核の治療として肺虚脱療法が行われていた.
胸郭変形をきたすほどの陳旧性肺結核では,高炭酸ガス血症を伴う慢性呼吸不全例が多い.
胸部X線像から,過去の肺結核治療の概要を推定することができる.

肺野CT像(HRCT)の理解

肺野CT像の記述用語

著者: 佐藤功 ,   小林琢哉

ページ範囲:P.1862 - P.1864

ポイント
画像を肺胞性(実質性)陰影や間質性陰影としてパターン化して覚えるのではなく,病変の場がどこで,どのような変化が生じるかを理解する.
画像を表す同じ用語でも,単純X線写真,通常の1cm厚のCT,HRCTでは,現れる像が異なる.
喫煙関連疾患の理解が必要.

肺末梢構造とHRCT像

著者: 徳田均

ページ範囲:P.1865 - P.1867

ポイント
肺の解剖学的・機能的最小単位は小葉である.小葉は大きさ約1cm,小葉間隔壁,肺静脈や胸膜に囲まれ,中心部には3〜5本の終末細気管支および肺動脈が入っている.
CTで観察すると,各種の肺疾患のこれら小葉構造から見た分布は幾通りかのパターンをとることが知られ,それを把握することにより,疾患の本体,診断に迫りうる.
肺胞,小葉,血管,気管支など肺の基本構造と,それが健常者ではCTでどこまで把握できるかを示す.

びまん性肺疾患のCT像

著者: 徳田均

ページ範囲:P.1868 - P.1872

ポイント
経気道的に成立した疾患では,しばしば細気管支周囲に病変が形成される.これはCT上胸膜などの小葉の辺縁から2〜3mm離れ,規則正しく配列する粒状影として現れる.これを小葉中心性分布と呼ぶ.
リンパ路に沿って進展する疾患では,広義間質(小葉間隔壁,胸膜,気管支血管束)の肥厚がみられる.

結節性病変のCTによる鑑別診断

著者: 楠本昌彦 ,   立石宇貴秀 ,   森山紀之

ページ範囲:P.1874 - P.1878

ポイント
肺結節の診断にあたっては,高分解能CTは形態の描出に優れるため,結節の辺縁性状,結節の内部構造,結節周囲の肺や気管支の状態などを注意深く読影することが肝要である.また造影CTや造影MRIを用いることにより,結節内部の血流情報を得て診断に至る場合があり,病態の熟知と検査法の適切な選択が重要である.

画像でせまる呼吸器疾患 腫瘍性疾患

小細胞肺癌

著者: 小倉高志

ページ範囲:P.1881 - P.1883

ポイント
小細胞肺癌の画像診断においては,外科的適応の検討ではTNM分類でstageIを拾い上げること,化学療法・放射線療法の検討では限局型と進展型の病期を正確に決定することが重要.
肺門型小細胞癌は,粘膜上皮の下に浸潤して気管支上皮を保ったまま進展するので,扁平上皮癌と違い,閉塞性肺炎・無気肺を伴わないことが多い.
末梢型小細胞癌は,辺縁明瞭で,周囲組織へ圧排傾向強い結節影を呈することが多い.小型でも,リンパ節転移しやすい.

末梢型扁平上皮癌と腺癌

著者: 檜田直也 ,   柿沼龍太郎 ,   西脇裕

ページ範囲:P.1884 - P.1886

ポイント
末梢型肺癌の高分解能CTは,すりガラス濃度,すりガラス濃度+充実型,充実型に大別される.
すりガラス濃度とは,スライス厚の薄い高分解能CT上での所見であり,肺血管や末梢気管支の辺縁が観察される濃度のことである.
肺胞上皮置換性に腫瘍細胞が進展し,肺胞の含気が保たれている場合,高分解能CT上ですりガラス濃度を呈する.

肺胞上皮癌と癌性リンパ管症

著者: 酒井文和 ,   藤村幹彦 ,   藤村香織

ページ範囲:P.1888 - P.1891

ポイント
細気管支肺胞上皮癌(BAC)は,結節を形成するタイプとびまん性陰影を示すタイプがあるが,いずれもスリガラス濃度を示すことがある.
高分解能CTはBACの病理像をよく反映した画像を示す.
癌性リンパ管症は広義間質病変を示すが,下肺野優位で胸水やスリガラス影,結節影を伴うことが多い.

縦隔病変

著者: 滝口恭男

ページ範囲:P.1892 - P.1895

ポイント
縦隔腫瘍には発生する組織の解剖的な位置によって好発部位があり,画像所見と併せて鑑別診断を進めていく.
CT検査は縦隔病変の精査に必須の検査であり,腫瘤の局在・辺縁の性状・内部の性状・周辺臓器との位置関係などがより正確に把握できる.他疾患の鑑別にも有用である.さらに造影CTを追加することによって,より詳細な情報が得られ,経皮的生検の術前検査としても有用である.

感染性疾患

肺炎

著者: 中森祥隆

ページ範囲:P.1896 - P.1900

ポイント
肺炎の診断の第一は胸部X線であり,胸部X線でわかることは,主病変の場所と原因菌の推定,病変の広がり,既存病変,重症度,治療効果などである.
肺炎は細菌性肺炎も非定型肺炎も頻度が高く,また有効抗菌薬が両者で異なるので,肺炎治療開始にあたり細菌性肺炎と非定型肺炎を鑑別することが必要である.

インフルエンザウイルス肺炎とレジオネラ肺炎

著者: 松岡緑郎

ページ範囲:P.1901 - P.1903

ポイント
両肺炎とも画像診断のみで確定できるものではない.
しかし,画像上の特徴を理解し,臨床所見より,両肺炎をまず疑うことが必要である.
感染症の診断は細菌,ウイルスの培養によるが,両者とも抗原検査(インフルエンザは咽頭拭い液,レジオネラは尿)の有用性が確立しているので,迅速な対応が必須である.

日和見肺感染症

著者: 永井英明

ページ範囲:P.1904 - P.1908

ポイント
易感染宿主では弱毒菌であっても重篤な感染症を発症することがある.これを日和見感染症といい,起炎病原体を日和見病原体という.
代表的な日和見肺感染症としてはニューモシスチス・カリニ肺炎,侵襲型肺アスペルギルス症,肺クリプトコッカス症,肺カンジダ症,サイトメガロウイルス肺炎などがある.

肺真菌症(日和見感染症を除く)

著者: 赤川志のぶ

ページ範囲:P.1910 - P.1913

ポイント
代表的な肺真菌症であるアスペルギルス症とクリプトコッカス症は日和見感染としても発症するが,健常人にもみられる.
アスペルギルス症に特徴的とされる所見が画像的に確認されれば診断は容易であるが,それ以外の場合は画像は非特異的である.

肺結核症

著者: 村田喜代史 ,   高橋雅士 ,   新田哲久 ,   高桜竜太郎 ,   西本優子

ページ範囲:P.1914 - P.1918

ポイント
肺結核初期病変の基本的CT所見は,tree-in-bud appearanceと表現される末梢気管支肺動脈束の腫大と,これに連結する小粒状影である.
局所ごとの病変の進展程度の違いによって,同じ肺内でも多彩な像を呈することが多い.
結核症の画像所見は,患者の免疫能低下や低栄養などの宿主因子が加わると,下葉優位の分布,リンパ節腫大,大葉性肺炎,粟粒結核といった非定型的な所見を示す頻度が高くなる.

肺非定型抗酸菌症

著者: 露口一成 ,   井上義一 ,   鈴木克洋 ,   坂谷光則

ページ範囲:P.1920 - P.1923

ポイント
肺非定型抗酸菌症(非結核性抗酸菌症)の画像所見は,肺結核症に比してある程度の特徴もあるが区別できないことも多く,診断にあたっては菌を証明して同定を行うことが重要である.
肺M.avium complex(MAC)症の代表的な画像所見として,肺尖部に好発し空洞を伴う結節を主体とするタイプと,中葉舌区に好発し小結節と気管支拡張を主体とするタイプの2つがある.
肺M.kansasii症の画像所見は,肺尖部に好発し空洞を有することが多く,肺結核症に類似している.

びまん性肺疾患

特発性間質性肺炎

著者: 野間恵之 ,   田口善夫 ,   小橋陽一郎

ページ範囲:P.1924 - P.1930

 間質性肺炎の歴史は,慢性で原因のわからないものを特発性として,通常型(usual interstitial pneumonia:UIP),剥皮型(desquamative interstitial pneumonia:DIP),細気管支型(bronchiolitis obliterans-interstitial pneumonia:BIP),リンパ球性(lymphoid interstitial pneumonia:LIP),巨細胞型(giant cell interstitial pneumonia:GIP)の5つに分けたLiebowの分類に始まる1)
 その後,間質性肺炎の分類は紆余曲折を経てATS/ERS(米国胸部疾患学会・ヨーロッパ呼吸器病学会)のコンセンサス・ステートメントにまとめられてきた2)(表1).しかしながら表1を見ればわかるように,「特発性」の名のもとに,はっきりしたetiologyのわかっているrespiratory bronchiolitis interstitial lung disease(RBILD)などが入れられていることを見ても,分類に混乱のあることがわかる.

好酸球性肺炎

著者: 近藤康博 ,   西山理 ,   谷口博之

ページ範囲:P.1932 - P.1935

ポイント
急性好酸球性肺炎は,単純X線ではびまん性の浸潤影,スリガラス様陰影を認め,KerleyのA,B lineも伴う.HRCTでは,びまん性に濃淡の濃度上昇域,小葉間隔壁,気管支血管周囲間質の肥厚像や胸水を認める.
慢性好酸球性肺炎は,単純X線では末梢優位に非区域性に広がる浸潤影を認める.HRCTでは斑状の濃い濃度上昇域,スリガラス様陰影,板状影を認め,胸膜直下優位の分布を示す.

薬剤性肺炎

著者: 大野彰二 ,   杉山幸比古

ページ範囲:P.1936 - P.1938

ポイント
びまん性陰影を見た場合には薬剤性肺炎を考える.
薬剤投与前の画像と比較読影する.
HRCTでは5パターンに分けられ,chronic pneumonitis and fibrosisやnoncardiogenic pulmonary edema and/or diffuse alveolar damage(DAD)が予後不良である.

サルコイドーシス

著者: 西村浩一

ページ範囲:P.1939 - P.1942

ポイント
胸部X線写真でBHL(両側肺門リンパ節腫脹)を認めた場合,90%以上がサルコイドーシスであり,その発見動機となることが多い.
HRCTにおける基本的な病像は,気管支血管像の不規則な腫脹および気管支血管系に接した小結節性病像である.これらは,肺組織における広義の間質である気管支血管周囲間質に形成された肉芽腫性病変に対応した所見である.

過敏性肺炎

著者: 稲瀬直彦 ,   吉澤靖之

ページ範囲:P.1943 - P.1946

ポイント
過敏性肺炎は吸入抗原により細気管支および間質に病変をきたすアレルギー性疾患であり,急性型と慢性型に大別される.
急性過敏性肺炎の主な画像所見として,びまん性の小葉中心性粒状影やモザイク状に分布する汎小葉性のスリガラス陰影がある.
慢性過敏性肺炎の画像所見は多彩で,蜂巣肺,牽引性気管支拡張,小葉間隔壁肥厚,限局性スリガラス陰影,濃い浸潤影などが混在するが,陰影の分布として「気管支血管束に沿う」,「中・下肺野のみでなく上肺野にも認める」,「左右差がある」などが特徴的である.
進行した慢性過敏性肺炎においては,蜂巣肺が主体となり,特発性肺線維症(IPF)や非特異性間質性肺炎(NSIP)と区別が困難な画像所見を呈する場合がある.

気管支拡張症とびまん性汎細気管支炎

著者: 前田光一 ,   笠原敬 ,   三笠桂一

ページ範囲:P.1947 - P.1949

ポイント
気管支拡張症の胸部X線像では,気管支壁の拡張・肥厚を反映した複数の線状影や索状影,大小の輪状影などが観察される.
びまん性汎細気管支炎の胸部X線像は両肺野のびまん性粒状影と肺の過膨張所見,CT像は小葉中心性結節が特徴的である.
両疾患ともに,単純X線では描出されにくい軽微な病変の検出にはhigh-resolutionCT(HRCT)が有用である.

その他の肺疾患

肺気腫

著者: 小場弘之 ,   菅谷文子 ,   今勇人

ページ範囲:P.1950 - P.1952

ポイント
肺気腫の胸部単純X線像における主な所見は,肺の過膨張所見と心血管系の変化であり,肺容積の増加,肺野透過性の亢進,肺末梢血管影の減少・狭小化として認められる.
胸部CTでは気腫病変は低吸収域(LAA)として描出され,肺気腫のsubtypeにより形状,分布に特徴を有する.
CTを用いることにより,早期から進行した肺気腫まで確実な形態診断が可能である.

じん肺

著者: 戸島洋一

ページ範囲:P.1954 - P.1956

ポイント
粒状影を主体とする古典的珪肺は減少しているが,遊離珪酸と珪酸塩の混合粉じんを吸入した結果生じるMDP(mixed dust pneumoconiosis)が増加している.
間質性肺炎・肺線維症の鑑別診断に,粉じん吸入歴の聴取が重要である.

肺高血圧症

著者: 巽浩一郎

ページ範囲:P.1957 - P.1959

ポイント
 急性肺塞栓症の胸部X線画像では,肺門部の肺動脈影の拡大が起こり(plump hilar shadow),肺門部の肺動脈が急に途絶したように見える(knuckle sign).
 慢性肺血栓塞栓症の肺動脈造影では,器質化血栓と肺動脈血管内膜の再構築が反映され,pouch defects,webs and bandsなどの特徴的な所見が得られる.

希少疾患のCT像

著者: 赤宗明久 ,   池添潤平

ページ範囲:P.1960 - P.1963

ポイント
肺好酸球性肉芽腫症および肺リンパ脈管筋腫症による嚢胞性病変を肺気腫による変化と区別するには,嚢胞壁がCT上同定されるか否かが重要である.
肺好酸球性肉芽腫症と肺リンパ脈管筋腫症の鑑別は,嚢胞性病変の肺内分布の相違と結節影の有無である.
肺胞蛋白症のHRCT像として,いわゆる“craze paving appearance”が特徴的であるが,この所見は肺胞蛋白症以外の疾患でも認められることがあるので注意が必要である.
肺胞微石症の診断は臨床症状と画像所見の乖離が重要であるが,CT所見としては,肺野条件で認められた小粒状影が縦隔条件で石灰化像として認識されることが特徴である.

理解のための28題

ページ範囲:P.1965 - P.1971

medicina Conference・34

増大傾向を示す胸部腫瘤を生検するも確診できなかった72歳,女性

著者: 坂田成一郎 ,   森康一 ,   山根則夫 ,   柴田匡邦 ,   荻須信夫 ,   草深裕光

ページ範囲:P.1972 - P.1985

 症例:72歳,女性.
 主訴:前胸部痛,発熱.
 

演習 腹部救急の画像診断・5

左下腹部痛・背部痛が出現した54歳男性

著者: 阿部理恵 ,   八代直文 ,   葛西猛

ページ範囲:P.1987 - P.1991

Case
症 例:54歳,男性.
主 訴:心窩部痛,背部痛,嘔吐.
既往歴:高血圧,高脂血症,胆石症.
現病歴:昼食にサンマの塩焼きを食べた.夕より左下腹部痛,背部痛が出現.その後,症状が持続し,嘔吐が出現したため,救急外来を受診した.
現症:腸管蠕動音低下,左上腹部,下腹部に圧痛あり.
検査所見:WBC 15,900/μl,TP 4.5g/dl,T-Bil 1.8mg/dl,AST 46IU/l,ALT 61IU/l,LD 696IU/l,Amy 920mg/dl,CRP 0.98mg/dl.図1に腹部CT像を示す.

カラーグラフ 消化管内視鏡検査—知っておきたい基礎知識・23

Crohn病

著者: 櫻井俊弘

ページ範囲:P.1992 - P.1996

 Crohn病の診断に関しては,欧米では古くから鑑別診断基準が発表されている.わが国でも独自の診断基準が作成され,1996年には厚生省(現,厚生労働省)難治性炎症性腸管障害調査研究班によってCrohn病の診断基準案(以下,新診断基準)が改訂された1,2).従来の診断基準では一部の小腸型Crohn病を確診例とできなかったが,新診断基準では小腸病変(縦走潰瘍や敷石像)の診断特異性を重視し,さらにアフタ様潰瘍(以下,アフタ)ないしは不整型潰瘍にも診断特異性をもたせてある.一方,病理学的診断項目である非乾酪性類細胞肉芽腫(以下,肉芽腫)の重みをより軽くし,必須項目ではなくした.その結果,①縦走潰瘍または敷石像を有するもの,②「縦列配置する不整形潰瘍またはアフタ」+肉芽腫,③「上部消化管と下部消化管の両者に認められる不整形潰瘍またはアフタ」+肉芽腫,の3項目によってCrohn病と確診される.ただし,これらの形態学的所見は絶対的な特異性はなく,他の疾患によっても生じうる.したがって,他疾患による所見が疑われる場合には確診とはならない.以下にCrohn病の典型的所見について解説する.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.1997 - P.2002

プライマリケアにおけるShared Care—尿失禁患者のマネジメント・14

失禁ケアの重要性—看護の立場から

著者: 斎藤順子 ,   近藤良得

ページ範囲:P.2004 - P.2006

はじめに
脳血管障害後遺症患者の入院が8割を占める当院では,高齢者・失禁・寝たきりの方が多く入院されている.このため,当院看護部では失禁ケアと寝たきり防止を重点に,1992年より「おむつ0,褥瘡0」運動に取り組んできた.本稿では,当院の失禁ケア方法とおむつ着用の実態の報告を通して,失禁ケアの重要性を述べる.

内科医のためのリスクマネジメント—医事紛争からのフィードバック・8

内視鏡検査と医療事故(2)

著者: 長野展久

ページ範囲:P.2010 - P.2014

消化器内視鏡検査と偶発症
消化器内視鏡検査のように,ある程度の侵襲が予測される検査に関連して,それまでは不自由のなかった患者に重篤な後遺障害が発生した場合には,担当医師の心中は決して穏やかでなくなると思います.例えば,下部消化管内視鏡検査で不幸にも大腸穿孔を起こした若手の医師に対し,心配した先輩医師が「これで君も一人前だな,以後は気をつけるんだよ」というような励ましの言葉をかけていたという話も,数年前までは聞くことができました.このような事故に遭遇した場合はひとまず「偶発症」と考えて,患者や家族には不可抗力による事故という説明をする医師が多いと思います.しかし昨今の医事紛争をみると,偶発症という考え方自体に大きな疑問が投げかけられているように思います.今までの定義では,事前に予測できず不可抗力によって起こるものを「偶発症」,ある程度の予測はできるが過失は存在しないものを「合併症」と位置づけ,「過誤」といえば未熟な技術や注意不足によって起こるものを指していました.ただしこれはあくまでも医師の側からみた分類であり,患者側,あるいは医師以外の第三者からみると,全く別の考え方になることがあります.

新薬情報・26

臭化水素酸エレトリプタン(レルパックス®錠20mg)

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.2016 - P.2018

適応■(国際頭痛学会の診断基準に合致する)片頭痛の治療.予防投与は適応となっていない.
用法・用量■通常,成人にはエレトリプタンとして1回20mgを片頭痛発現時に経口投与する.効果が不十分な場合には投与後2時間以上経てば20mgを追加できる.ただし,1日総量の上限は40mg.また,初回に40mgを要した場合には次回から40mgで投与開始可能.同薬は末梢血管収縮作用があるため,虚血性心疾患や,脳血管障害,一過性脳虚血発作の既往歴をもつ患者,コントロール不良の高血圧症患者では禁忌であり,重度の肝障害患者(動態の項目参照),エルゴタミン薬やHIVプロテアーゼ阻害薬(相互作用の項目参照)服用患者でも禁忌である.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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