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雑誌目次

雑誌文献

medicina39巻13号

2002年12月発行

雑誌目次

今月の主題 内科臨床における“こころ”と“からだ” Editorial

日常診療にみる“こころ”と“からだ”

著者: 本郷道夫

ページ範囲:P.2028 - P.2030

ポイント
医療の目的は病者の苦悩・苦痛からの解放にある.
患者の求める“こころ”への配慮.
“こころ”の問題は患者の満足だけではない.
健康関連QOLはより健康な“こころ”への欲求.
精神・神経・内分泌・免疫系は“こころ”と“からだ”のかけはし.
生活習慣・行動の問題は“こころ”と深くかかわる.
良医は“こころ”と“からだ”を同時に診ている.

患者のこころとの対話/医療の基本姿勢とスキル

患者—医師コミュニケーションスキル—医療面接の基本

著者: 木村琢磨 ,   松村真司

ページ範囲:P.2031 - P.2034

ポイント
病いに対する患者固有の解釈モデルと,疾病に対する生物医学的アプローチを中心とした医師の視点や論理には相違があり,その補完のためにコミュニケーションが必要である.
医療面接は機械的な言葉(内容)や技法のみでは不十分で,感情(文脈)や個別性・多様性が必要である.言外の交流や,その観察と対応を意識しながら日々練磨することが重要である.

医師と患者の対話

著者: 斎藤清二

ページ範囲:P.2035 - P.2037

ポイント
対話の構造は,「私」と「あなた」と「話題」によって構成される三者関係を基本とする.
対話において医師が心がけるべきことの第一は,患者に話題選択の主導権を譲ることである.
患者の語る「病いの体験」について,医師と患者が理解を共有することは,医療における対話の本質的な事項である.

“こころ”と“からだ”の対話—精神神経免疫内分泌反応の基礎知識

著者: 久保千春

ページ範囲:P.2038 - P.2040

ポイント
ストレスに対して生体は,神経・内分泌・免疫系の調節系により,内部環境の恒常性が維持されている.これらの3つの系は情報伝達のしくみを共有している.
情報伝達物質には,ホルモン,ニューロトランスミッター,サイトカインなどが含まれる.
精神状態は,視床下部・下垂体・副腎系あるいは自律神経系を介して免疫系に影響を及ぼす.

日常診療に役立つ医学心理学

著者: 山中学 ,   貝谷久宣

ページ範囲:P.2041 - P.2043

ポイント
▶心理学は近年,科学的実証主義に基づく研究,臨床活用が進められており,単に疾患を診るのみではない医療を実践するうえで,医学と心理学の協同は重要である.
▶日常診療においては,臨床心理学の一分野である交流分析が,医師-患者関係を考えるうえでも役に立つ.交流分析理論に基づいた質問紙法エゴグラムは,外来で簡便に実施することが可能である.

内科日常診療にひそむ徴候・疾患に気づくヒント

著者: 三ッ浪健一 ,   寺田雅彦 ,   松原英俊

ページ範囲:P.2044 - P.2046

ポイント
“こころ”の病気と思われたものが,詳細な身体診察により“からだ”の病気とわかる場合がある.
“こころ”の病気と決めつけずに“からだ”の病気がないかを探索することが重要である.
詳細な身体診察により,たしかに“こころ”の病気と診断できる場合がある.

診療の現場での心身医療

初診患者との“こころ”の対話

著者: 青井一展

ページ範囲:P.2047 - P.2049

ポイント
▶医業はリーダーシップとパートナーシップに基づくサービス業である.
▶こころに添う面接技法の一つとして「BATHE法」がある.
▶こころの対話は医師と患者の両者にとって,等しく有益である.

抑うつと不安への対応

著者: 佐藤朝子 ,   坪井康次

ページ範囲:P.2051 - P.2053

ポイント
▶抑うつや不安は,精神症状のみでなく身体症状として現れることがある.
▶傾聴,十分な説明などで築く良好な医師-患者関係が,不安軽減や自殺の予防に重要な役割を果たす.
▶標準的な治療で1ヵ月以内に改善しない場合は,早めに専門科に紹介する.

「悪い知らせを伝える」—癌告知/難病告知に際しての“こころ”の対話

著者: 小泉俊三

ページ範囲:P.2054 - P.2055

ポイント
医師としてのあなたへの信頼の源は,隠し立てがないことと最後まで逃げ出さないこと.したがって,「悪い知らせ」だけでなく,「常にあなたの味方です」というメッセージが同時に伝わっていることが信頼関係の条件である.「あのときは,癌という言葉を聞いたとたん,頭の中が真っ白になってその後の説明は憶えていません」という告白を患者や患者家族から聞くことがある.1回限りの「告知」で何もかも伝えようとすることは的外れ.患者が一度に飲み込める情報の量に配慮するとともに,聞くことに神経を集中して患者の意向を繰り返し確かめ,患者の知りたい程度に応じて,時間をかけて伝えてゆくプロセスが本当のbad news tellingである.

終末期医療における“こころ”の対話

著者: 中保利通 ,   島田哲 ,   山室誠

ページ範囲:P.2056 - P.2058

ポイント
身体的な痛み,せん妄の診断に際し,対話のなかから得られる情報は少なくない.
悪い知らせは心理的順応を助けるよう工夫しながら伝える.患者を受容し,共感的態度で誠実に接することが対話の基本である.
緩和医療では死を早めること(安楽死)も遅らせること(延命処置)もしないが,苦痛などを除去するというやり方でQOLを高める努力をする.

年代別の心身医療

思春期の“こころ”と“からだ”

著者: 佐々木夏恵 ,   村松芳幸 ,   下条文武

ページ範囲:P.2059 - P.2061

ポイント
人間では成長のピークが2つあり,第一のピークが0歳から3,4歳までの間であり,第二のピークが10歳頃から始まる.この第二のピークの時期には第二次性徴と呼ばれる変化が出現し,この時期を思春期と呼ぶ.
思春期とは自我が確立し,親からの自立が進む時期である.またこの時期は心身のバランスが乱れやすく,ストレスが災いして体の病気が起こりやすい時期といえる.からだの調子の悪さがこころの不調に影響しやすく,反対にこころの不安定さがからだの不調を招きやすい.そのため新しい体の変化に適合した新しいこころを作っていくことが必要となる.

壮年期の“こころ”と“からだ”

著者: 谷口純一 ,   木川和彦

ページ範囲:P.2062 - P.2065

ポイント
壮年期はライフサイクルの点からさまざまな変化をきたし,種々のライフ・イベントを経験し,色々なストレスが生じやすくなる.この時期はこころの問題として特にうつ病の発生とそれに伴う自殺が起こりやすい.
うつ病はさまざまな身体症状で内科を受診する場合も多い.内科医もこころの問題があるケースに対応が必要で,「傾聴」だけでも有効な場合がある.

更年期の“こころ”と“からだ”

著者: 代田琢彦 ,   石塚文平

ページ範囲:P.2066 - P.2068

ポイント
更年期の症状は女性ホルモンの低下・欠落に起因するが,個人の家族的・社会的状況などによって大きく左右される.また,その多岐にわたる症状から,他の疾患を適切に除外することが診療において重要である.
患者の訴えに対する治療のみならず,特にホルモン補充療法(HRT)は治療のリスクをしっかり理解して使用することが必要である.

職場環境ストレスの“こころ”と“からだ”への影響

著者: 永田頌史

ページ範囲:P.2069 - P.2071

ポイント
近年の経済・産業状況を反映して,職場のストレスが増え,ストレスによる心身の健康障害,自殺者が増えている.
問診で病歴とともに職場や家庭での生活状況(生活歴)についても聴取する.
身体疾患に対しても精神疾患と同様に,必要に応じて向精神薬の併用,生活指導,心理療法(精神的支援,配転などの環境調整,ほか)を行う.

老年期の“こころ”と“からだ”

著者: 黒田直明 ,   柏瀬宏隆

ページ範囲:P.2072 - P.2074

ポイント
狭義の心身症が老年期になって初発することは稀である(以前からの再燃・再発が多い).
糖尿病,虚血性心疾患,脳卒中などの身体疾患はうつ病を合併しやすい.逆にうつ病患者は心筋梗塞や糖尿病に罹患しやすい.
特に脳卒中後うつ病,また警告うつ病に注意する.
身体愁訴が執拗な老年期患者に対しては,訴えを傾聴し受容的に接する,心理的な不平・不満がないかを尋ねてみる,うつ病の可能性も考えて精神症状も尋ねてみる.
老年期患者には心→身療法(psychosomatic therapy)と身→心療法(somatopsychic therapy)との両方が有用である.

慢性疾患と心身医療

生活習慣病患者との健康教育を通した“こころ”の対話

著者: 横谷省治 ,   津田司

ページ範囲:P.2075 - P.2077

ポイント
生活習慣病の予防にも,治療にもライフスタイルの改善(行動変容)が欠かせない.
行動変容を促すには,一方的な情報提供ではなく,対象者を中心に据えたアプローチを心がける.
行動変容は段階を経て確立する.対象者がどのステージにいるかを理解する.
対象者の考え方や感情をも理解し,ラポールを築くことがコツである.
LEARNのアプローチを用いて対象者自身が意思決定に深くかかわれるようにする.

透析患者との“こころ”の対話

著者: 春木繁一

ページ範囲:P.2078 - P.2079

ポイント
あまり早く解決しようとしない.
安易に慰めたり,励ましたりしない.
沈黙のうちに聞き入り,うなづく.
自己の能力を超えてまで,献身的に振る舞わない.
患者の訴えをまずよく聞くこと.
病気,症状のみならずその人の人生や個性の全貌を知ろうと努めたい.

肥満・高脂血症

著者: 小泉順二

ページ範囲:P.2080 - P.2082

ポイント
肥満と高脂血症は,男性・女性を問わず中高年では約50%にみられる状態である.
肥満と高脂血症は,食生活・運動などの生活習慣と遺伝的背景により生じる.
肥満者では,気晴らし食い,やけ食い,イライラ食い,夜食など,心理的背景による食行動パターンが認められる.
食事・運動の効果を高めるためには行動療法が有用である.

糖尿病

著者: 小竹英俊 ,   及川眞一

ページ範囲:P.2083 - P.2085

ポイント
糖尿病の治療は,食事や運動習慣に対する自己管理(セルフケア行動)がその成否を握っているといっても過言ではない.
個々の患者でセルフケア行動に影響を与える種々の因子を十分に把握しつつ問題を解決していく手法,すなわち心理行動科学的アプローチの必要性が高まってきている.

高血圧

著者: 早野順一郎

ページ範囲:P.2086 - P.2088

ポイント
高血圧の治療の目標は心血管系リスクの低減である.降圧はその手段であり,目的ではない.
高血圧の原因の60〜70%は環境因子によるものである.生活習慣の改善は,高血圧の重要な原因療法である.
治療の成功のためには,高血圧に対する患者の理解と,患者の個人的な生活状況に対する配慮が重要である.

アルコール依存

著者: 塚原美穂子 ,   白倉克之

ページ範囲:P.2090 - P.2092

ポイント
アルコール依存とは,①飲酒のコントロール障害,②身体的・精神的離脱症状の存在,の2つにより診断される.
アルコール依存と診断された場合は,可及的早期に専門機関へ紹介することが望ましい.
アルコール依存の治療は断酒が原則である.

禁煙指導

著者: 山本蒔子

ページ範囲:P.2093 - P.2095

ポイント
日本においては,禁煙指導は治療として行われてこなかった.しかし,喫煙という疾病の原因やリスク因子をそのまま放置して治療することは,無駄である.タバコを徐々に減らしても禁煙は不可能であり,きっぱりやめることが正しい禁煙方法である.喫煙者はニコチン依存症であり,禁煙には医療従事者の支援が必要である.

臓器・疾患別にみた心身医療

虚血性心疾患

著者: 千田彰一

ページ範囲:P.2097 - P.2100

ポイント
虚血性心疾患には心理社会的因子がかかわり,その予防のためには,個人の性向や精神心理面の把握に基づく診療が不可欠である.
タイプA行動パターンは,独立した冠危険因子として知られ,日本人のそれは仕事中心,内向的である.
抑うつ気分は稀な疾患ではなく,古典的な冠危険因子の悪化を介さない,虚血性心疾患の直接的予後悪化因子である.

気管支喘息,過換気症候群

著者: 佐藤弥都子 ,   村上正人

ページ範囲:P.2101 - P.2104

ポイント
気管支喘息と過換気症候群は,呼吸器心身症の代表的疾患である.
ともに長期管理においては,薬物治療のみならず,心理的アプローチが重要となる.
 発作の繰り返しは,喘息では気道の非可逆的な構造変化から重症化につながり,また,過換気症候群ではQOLを低下させることとなるため,心身両面からのコントロールが必要である.

機能性胃腸症,消化性潰瘍

著者: 金子宏

ページ範囲:P.2105 - P.2107

ポイント
H.pylori除菌によって消化性潰瘍の再発予防が可能になってきたが,それのみで解決できない消化性潰瘍が存在し,抗潰瘍薬に並行してライフスタイルの変容や向精神薬の使用が必要である.
機能性胃腸症の病態には消化管運動障害とともに心理社会的因子が関与する.患者への十分な病態の説明が重要であり,難治例では生活レベルの向上が目標となる.

過敏性腸症候群

著者: 野村泰輔

ページ範囲:P.2109 - P.2111

ポイント
過敏性腸症候群の診断基準は,腹痛と便通異常を主体とする.
ストレスによる症状の増悪を示し,消化管の運動異常・内臓知覚過敏が病態に大きく関与する.
消化管治療薬以外に,食生活・生活全般の改善・心理療法が治療に役立つ.

機能性腹痛,慢性膵炎

著者: 神原憲治 ,   福永幹彦 ,   中井吉英

ページ範囲:P.2112 - P.2114

ポイント
機能性腹痛は機能性消化管障害の一つであり,心身両面からのアプローチが有効なことが多い.
機能性腹痛様の症状の場合には慢性膵炎の除外も必要である.
慢性膵炎は,器質的な消化器疾患のなかで心身医学的側面の大きい疾患であり,心身医学的側面としては,生活習慣・行動の歪み,アルコール依存,機能性消化管障害の合併,慢性疼痛,うつ状態の合併などが重要である.
機能性腹痛や慢性膵炎の患者に対して行動医学的アプローチが有効である.

特定の客観的所見をもたない疾患群

頭痛

著者: 作田学

ページ範囲:P.2116 - P.2117

ポイント
頭痛の患者をみたら,その患者のバックグラウンドを問診で明らかにしていく努力が必要である.
緊張型頭痛には,筋収縮性頭痛のほかに心因性頭痛とうつ病(仮面うつ病)による頭痛があり,治療効果,予後がそれぞれ違ってくる.また筋収縮性頭痛もストレスによって血流が低下し,阻血性筋収縮を起こしやすくなることを忘れてはいけない.

パニック障害

著者: 吉内一浩 ,   久保木富房

ページ範囲:P.2118 - P.2120

ポイント
パニック障害では,ある日突然,心悸亢進,胸痛,めまい,呼吸困難のような身体症状とともに不安が発作的に起こる.
広場恐怖,うつ病を合併することがある.
内科を受診することが多く,正しく診断されないことが多い.
治療には,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの抗うつ薬,抗不安薬とともに認知行動療法などの心理療法を併用する.

疼痛性障害

著者: 中野弘一

ページ範囲:P.2121 - P.2123

ポイント
心理的要因と身体的要因の両方が関連したものが大部分である.
疼痛行動に対する対処は,中立的な反応が望ましい.
治療目標は,痛みの減少ではなく共存である.
薬物は,用いるとすればSSRIなど抗うつ薬が望ましい.
鎮痛薬やベンゾジアゼピン系抗不安薬の連用は,依存や中毒をつくりやすい.

摂食障害

著者: 佐藤祐美 ,   野添新一

ページ範囲:P.2124 - P.2126

ポイント
摂食障害の患者数は増加傾向にあり,最近は神経性過食症の割合が急増している.また,患者の若年化傾向や年齢域の拡大もみられている.
摂食障害の病態は,食行動異常という形態での現実回避行動または適応障害として説明できる.その発症・経過に誤った親子関係など心理社会的要因が複雑に関与しているため,多面的アプローチが重要である.

“こころ”に配慮した治療

心理療法・行動療法

著者: 芦原睦 ,   村山浩由 ,   佐田彰見

ページ範囲:P.2127 - P.2130

ポイント
心理療法とは“こころ”を対象とした治療法である.
内科の臨床において,心身医学療法は使いやすい心理療法である.
行動療法は,心身医学療法のなかの一つに位置づけられている.
行動療法は効率的で,かつ客観的に判断しやすく内科臨床での有用性が高い.
外来で誰もが容易に行える行動療法の技法に,セルフモニタリング法と系統的脱感作法がある.

薬物療法(抗うつ薬,抗不安薬など)

著者: 田中正敏

ページ範囲:P.2131 - P.2134

ポイント
▶心身症の治療には,向精神薬による精神薬物療法がきわめて重要である.主に使用される薬は,抗不安薬,抗うつ薬であるが,不眠を伴った症例も多いので,睡眠薬もよく使用される.
▶適切な抗不安薬の使用は,患者の不安を緩和し,患者-医師関係を円滑にするだけではなく,その後心理療法を進めていくうえでも有効である.また抗うつ薬の使用は,最も重要なうつ病治療法である.

内科の限界とコンサルテーション

著者: 大野裕

ページ範囲:P.2136 - P.2137

ポイント
うつ病の治療では,まず身体疾患の有無を鑑別したうえで,抗うつ薬による薬物療法を開始する.
うつ病治療中に迷ったときには,精神科医など専門の医師に紹介することを考える.
専門の医師に紹介する場合,患者が見捨てられたような感覚にならないように配慮する.

理解のための33題

ページ範囲:P.2138 - P.2144

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.2151 - P.2156

カラーグラフ 消化管内視鏡検査—知っておきたい基礎知識・24【最終回】

感染性腸炎

著者: 櫻井幸弘

ページ範囲:P.2158 - P.2161

 感染性腸炎の基礎知識
 感染性腸炎とは,細菌,ウイルス,原虫などの感染による大腸を中心とした炎症である.一般に感染性腸炎は急性疾患であるが,診断がつかず,慢性に経過する症例があり,経過が長いからといって感染性腸炎を否定してはならない.

演習 腹部救急の画像診断・6

ハンドル外傷による心窩部痛

著者: 葛西猛 ,   郡太郎 ,   不動寺純明 ,   八代直文

ページ範囲:P.2163 - P.2167

Case
症例:40歳,男性.
現病歴:2002年8月11日17時頃,軽自動車運転中ガードレールに激突し,ハンドルで心窩部を打撲.エアバッグは作動したが,シートベルトは装着していなかった.患者は呼吸苦と上腹部痛を訴えていた.
現症:血圧120/90mmHg,脈拍数104/min,呼吸数40/mini.意識清明.左下部肋骨部に圧痛,上腹部に圧痛と筋性防御を認めた.
緊急検査:WBC 23,500/μl,AST 382IU/H,ALT 326IU/l,LDH 1,182IU/l,CK 165IU/l(MB 42),血清アミラーゼ 214IU/l,Pao2 85.7mmHg,Paco2 34.6mmHg,BE-5.9mEq/l.胸部X線写真:左第12肋骨骨折.胸部CT:異常所見なし.

内科医のためのリスクマネジメント—医事紛争からのフィードバック・9

院内感染と医療過誤

著者: 長野展久

ページ範囲:P.2168 - P.2172

院内感染
院内感染とは,病院内の医療行為や患者との接触を介して微生物に感染することであり,「入院後あるいは特定の病棟に転科後48時間以降に起きた感染症」と定義されています.その特徴として,抗菌薬や消毒薬に耐性を示す細菌や真菌など,健康人には感染を惹起しない弱毒性の病原体により,感染抵抗力が減弱した患者に発症する傾向があります.原因微生物としてはMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌),VRE(バンコマイシン耐性腸球菌),緑膿菌,セラチアなどの細菌と,カンジダ,アスペルギルスなどの真菌が問題になることは,もはや医学的常識といってもよいでしょう.多くの施設では院内感染防止対策に熱心に取り組んでいて,感染症対策委員会の開催,感染症対策マニュアル作成などは当然のこととなってきました.さらに厚生労働省は,院内感染防止対策が不備の施設には診療報酬を減算するという行政指導を行っています.
ところが,このような院内感染の知識普及が進んでもなお,院内感染に関連した医事紛争は後を絶ちません.最近も東京都内の有床診療所でセラチアによる院内感染が発生し,24歳から91歳までの入院患者7名が死亡するという事件が報道されました.

新薬情報・27

エキセメスタン(アロマシン®錠25mg)

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.2174 - P.2176

適応■閉経後乳癌.
剤型■エキセメスタン25mgを含む錠剤(糖衣錠).
用法・用量■通常,成人にはエキセメスタンとして1日1回25mgを食後に経口投与する.用法・用量は米国,英国でも同じである.

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「medicina」第39巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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