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雑誌目次

雑誌文献

medicina39巻2号

2002年02月発行

雑誌目次

今月の主題 臨床栄養Update

理解のための29題

ページ範囲:P.322 - P.327

食事摂取と質の変化

日本人の食事摂取の変遷

著者: 平野聖治

ページ範囲:P.194 - P.196

ポイント
 1960年以降の高度経済成長を境に,食の多様化が進み,糖質中心の食事から高脂肪食へ移行してきている.
 朝食を抜く20〜30歳代が増加しており,青少年期から習慣化することが多く,早い時期から適正な食習慣を身につけることが重要である.

世界の食事の特徴

著者: 中村丁次

ページ範囲:P.197 - P.198

ポイント
 人間は,限られた環境のなかで,食べることに適する動物・植物を食物とした.
 各国の食事内容は,食物の獲得方法により狩猟型,農耕型,牧畜型に分類できるが,今日のような国際化,情報化が進むなかでは,多くが混合型になり,国家間ではなく,むしろ農村と都市,社会層,宗教,情報,価値観などの違いや格差により異なってきている.
 発展途上国では,食習慣が生活習慣病の危険因子となる共通問題を抱えている.

先進国と後進国の疾患と食事

著者: 板倉弘重

ページ範囲:P.199 - P.201

ポイント
 後進国では乳児死亡が多く,感染症の合併が栄養障害を引き起こす.
 先進国では悪性新生物,動脈硬化が多く,メタボリック症候群が増加している.
 先進国は脂肪摂取量が多く,穀物,豆類の摂取量が少ない.

日本人の食事中脂肪酸,中性ステロール

著者: 田辺節子 ,   荒木一恵 ,   福田能啓

ページ範囲:P.203 - P.206

ポイント
 食生活の欧米化が顕著に進んでおり,わが国の脂質摂取量,特に動物性脂質の摂取量が年々増加している.
 炎症性腸疾患や生活習慣病が年々増加しており,食生活の欧米化との関連性が指摘されている.
 n-6系脂肪酸の摂取比率の増加は,免疫反応に影響を及ぼす可能性がある.
 脂質摂取量の抑制とn-6/n-3比の低下を目的とした食事指導が重要である.

栄養評価とは何か

栄養評価の基本スキル

著者: 馬場忠雄

ページ範囲:P.209 - P.210

ポイント
 栄養評価は,栄養治療法の選択とその効果を知りうる有用な指標である.
 まず身体計測を行い,血清総蛋白アルブミン値を測定する.
 短期間に栄養状態を評価するには,短半減期蛋白のプレアルブミンが有用である.
 間接カロリーメトリー法は動的栄養指標である.

微量元素の生理機能

著者: 高木洋治

ページ範囲:P.211 - P.214

ポイント
 必須微量元素は,不足でも過剰でも生理機能に障害を生じ,生体に異常を生じる.
 必須微量元素の関連酵素の働きを理解・検討することが重要.
 欠乏症,過剰症,至適投与(または摂取)量を理解・検討することが重要.

加齢と栄養評価

著者: 渡辺明治

ページ範囲:P.215 - P.217

ポイント
▶高齢者の栄養評価として,末梢血リのパ球の数や遅延型皮膚反応などの免疫検査を行い,細胞性免疫能を調べる.
▶加齢に伴う低栄養状態(栄養評価の異常)は,栄養治療を含む生活改善などの包括的な対応によって改善する.

栄養療法とその意義

著者: 加藤昌彦 ,   田近正洋 ,   武藤泰敏

ページ範囲:P.219 - P.221

ポイント
 栄養療法は,患者の栄養状態を改善することにより患者の予後を改善し,同時に患者のQOLを高めるといった側面をもつ.
 栄養療法は,①栄養アセスメント,②栄養治療法の選択,③栄養治療の実施,④栄養治療の効果判定,といった一連の流れからなる.

侵襲下の栄養代謝

著者: 大柳治正

ページ範囲:P.222 - P.223

ポイント
 侵襲下のエネルギー消費量は侵襲の程度に応じ,非侵襲時の1.2〜1.8倍程度になる.
 糖質利用は非侵襲時に比し,中等度侵襲では変わりなく,大侵襲では約70%になる.
 侵襲下の蛋白代謝回転は亢進し,肝での蛋白合成亢進にもかかわらず,筋での分解が強く,筋蛋白の喪失が生じる.
 侵襲下の内因性の脂質利用は亢進する.

低栄養と免疫機能(易感染性)

著者: 金原市郎 ,   廣田則彦 ,   辻野守泰 ,   中村光男

ページ範囲:P.224 - P.226

ポイント
 栄養状態と生体防御機構は密接にかかわり合い,低栄養状態下では免疫能が低下している.
 感染症罹患時には栄養状態が悪化しやすく,感染症の治療抵抗性・遷延化につながる.
 良好な栄養状態を維持することは,感染症の発症率の低下および重症化・遷延化の予防の点からも重要であると考えられる.

腸管免疫と食事

著者: 石井直樹 ,   三浦総一郎

ページ範囲:P.227 - P.228

ポイント
 腸粘膜のcontrolled inflammationにGALTが重要である.
 食事因子,なかでも長鎖脂肪酸の吸収は腸管免疫系を賦活化する役割がある.
 n-3系の多価不飽和脂肪酸は抗炎症作用を有している.
 TPNは腸管免疫系に萎縮と抑制をもたらすが,EDは著しい抑制効果をもたらさない.

疾患別栄養評価とその対策

肝硬変

著者: 荒川泰行 ,   森山光彦

ページ範囲:P.230 - P.233

ポイント
 非代償性肝硬変では,蛋白・エネルギー低栄養状態,アミノ酸インバランス,耐糖能異常,水・電解質異常,ビタミン不足などに基づく多様な栄養代謝障害や免疫機能低下が起こるため,栄養評価が重要である.
 分岐鎖アミノ酸を主体とするアミノ酸の供給は,肝性脳症を改善するばかりでなく,筋肉の蛋白質代謝を改善し,窒素代謝異常を是正することができるので,栄養学的にも重要な意義がある.

慢性膵炎

著者: 丹藤雄介 ,   中村光男 ,   渡辺拓

ページ範囲:P.234 - P.236

ポイント
 急性増悪期には,絶食,輸液による栄養管理と,蛋白質,抗酸化ビタミンの補給に注意する.
 代償期では,体重の減少に注意し,摂取エネルギーを把握したうえで,過度の脂肪制限にならないよう食事指導を行い,除痛治療も考慮する.
 非代償期では,十分な消化酵素製剤の補充とインスリンによる血糖管理を行う.
 個々の症例に応じて,ビタミン欠乏や微量金属欠乏に注意する.

Crohn病

著者: 日比紀文 ,   岡本真紀代

ページ範囲:P.238 - P.240

ポイント
 Crohn病において,成分栄養法は緩解導入に有効な治療であり,また維持療法としても,病態の活動性や生活のスタイルに合わせて効果的に行える.
 成分栄養剤は窒素源が精製アミノ酸であることより,食事抗原が排除され免疫異常反応が起こらないこと,脂肪が少量であるため腸管の安静が保たれることが治療効果に関与している.
 Crohn病の食事療法の原則は,低脂肪で,十分なエネルギーを摂り,刺激物を避けることである.

消化管切除後

著者: 加固紀夫 ,   岩渕圭 ,   稲葉馨

ページ範囲:P.241 - P.243

ポイント
 消化管切除周術期の栄養評価はdynamic assessmentであるが,予後指数のPNI(小野寺)も有用である.
 消化管切除後の栄養法は,手術侵襲の程度と絶食期間によりPPNまたはTPNが選択されるが,TPNとENの併用も効果的である.
 縫合不全が発生しても,適切なドレナージのもとにTPNを行うと70〜8O%の症例は3〜4週で治癒する.

腎不全

著者: 中尾俊之

ページ範囲:P.244 - P.246

ポイント
 急性腎不全では,原疾患の侵襲が大きいほど低栄養に陥りやすいので,エネルギー補給を十分に行う.
 保存期慢性腎不全では,低蛋白食が腎機能低下の進行抑制に効果的である.
 維持血液透析患者では,塩分・水分・カリウムの制限のほか,3大栄養素を健常人で提唱される量や内容に近似させる.

慢性閉塞性肺疾患

著者: 加藤昌彦 ,   平岡潤子 ,   森脇久隆

ページ範囲:P.248 - P.250

ポイント
 COPD患者の多くはマラスムス型の栄養障害をきたしている.
 COPD患者の低栄養状態は,消費エネルギー量の増大と摂取エネルギー不足によるエネルギーバランスの異常に基づく.
 栄養療法では,投与エネルギー量,エネルギー基質,および投与法を考慮する.

高齢者の食事摂取量と栄養状態

著者: 高野良子

ページ範囲:P.251 - P.252

 高齢者の栄養問題はさまざまな要因により惹起されるが,「適正な栄養量の摂取」が行えないことによる低栄養状態が重要課題であるといわれている.そこで食事摂取量と栄養状態について,管理栄養士としての視点から述べてみる.

経腸栄養療法と在宅栄養

著者: 津川信彦

ページ範囲:P.254 - P.256

ポイント
 経腸栄養療法は生理的であり,安全性が高く,しかも簡便である,栄養剤の開発により病態に応じた栄養剤が選択できるようになり,栄養療法の第一の選択となった.
 在宅経腸栄養法の合併症は,経路栄養チューブに起因した合併症と,経腸栄養剤とその投与法に関連した合併症と,代謝性合併症が主である.
 在宅での身長・体重の身体計測や,上腕三頭筋部皮下脂肪厚や上腕筋周囲長なども継続して測定する.血液生化学検査では血清総蛋白・アルブミン・総コレステロール・微量元素を定期的にフォローする.

糖尿病のエネルギー投与量の再評価

著者: 林洋一 ,   森田毅憲 ,   荒川泰行

ページ範囲:P.258 - P.259

ポイント
 糖尿病患者の食事指導に当たって,従来法から算出した指示エネルギー量と,簡易熱量計で測定した安静時エネルギー消費量と,ライフコーダーにより算出された1日必要エネルギー量は,ほとんどの症例では差はなかったが,なかには大きく異なる症例も認められた.
 糖尿病の病型,血糖コントロール状態や倹約遺伝子の多型などで,安静時エネルギー量が異なり,個々の患者に簡易熱量計での安静時エネルギー消費量の測定が重要である.

骨粗鬆症

著者: 岡部玲子

ページ範囲:P.260 - P.262

ポイント
 骨粗鬆症の一次予防のため,食生活が重要である.
 日本人の平均カルシウム摂取量は推奨所要量に満たない.
 栄養バランスの取れた食生活を送ることが大切と考えられる.

痛風

著者: 山中寿

ページ範囲:P.264 - P.266

ポイント
 痛風患者の栄養評価のポイントを示す.
 体重減量とインスリン抵抗性の改善を目的として総エネルギーの制限を行う.
 プリン体制限は必要であるが,強調しすぎない.
 アルコール飲料の制限は必要.
 飲水を励行し,アルカリ性食品の摂取を勧める.
 「元気だが健康でない人の病気」であることを認識する.

補助食品と栄養療法

生理機能を重視した食品の開発

著者: 田島眞

ページ範囲:P.268 - P.269

ポイント
 生理機能を重視した食品には,健康食品,栄養機能食品,特定保健用食品がある.
 特定保健用食品には252品目あるが,7割がお腹の調子を整える食品である.
 一般人の健康志向食品の利用度は高いが,特定保健用食品の利用度はまだ低い.

食品の特定機能成分

著者: 小林修平

ページ範囲:P.270 - P.271

ポイント
 食品の特定機能は,栄養機能,嗜好機能に次ぐ第3の機能で,体調調節機能である.
 特定機能成分を含む食品で,科学的にその機能が評価され,表示が政府によって認可されたものが特定保健用食品である.
 特定保健用食品は生活習慣病の一次予防への活用が期待されているが,その成分,効果,ならびに作用機構はますます多様化しつつある.
 特定機能成分の内容は食物繊維,抗酸化物質,多価不飽和脂肪酸をはじめ,急速にその種類が増加しつつあり,国際的商品化しつつある.

カロテノイド,フラボノイド

著者: 寺尾純二

ページ範囲:P.272 - P.274

ポイント
 カロテノイドとフラボノイドはどちらも植物性色素であり,植物性食品に広く含まれる非栄養素である.抗酸化作用をもつことから,最近では癌や生活習慣病予防機能が注目されている.
 カロテノイドにはβ-カロテン以外にも多様な種類が存在する.
 フラボノイドに富む植物素材は動脈硬化予防に期待されているが,欧州ではすでに血管障害の改善薬として実際に利用されている.

機能性オリゴ糖

著者: 谷口肇

ページ範囲:P.275 - P.277

ポイント
 澱粉やショ糖を原料にして,多彩なオリゴ糖が作られている.
 多くのオリゴ糖は,整腸作用,ミネラル吸収,免疫賦活などの生理効果を示す.

グルタミン,アルギニン

著者: 大和滋

ページ範囲:P.279 - P.280

ポイント
 アミノ酸であるグルタミンとアルギニンは,生体の免疫機能を高めることが種々の実験モデルにおいて確かめられており,「immunonutrition」として臨床的にその投与が試みられている.
 グルタミンやアルギニンの投与により,外傷や内科系・外科系の重症患者において,感染症の減少や入院期間の短縮などの効果が報告されている.
 アルギニンは,血管内皮細胞の機能を維持することも期待され,高脂血症などの動脈硬化性疾患への投与も試みられている.

短鎖脂肪酸

著者: 佐々木雅也 ,   荒木克夫 ,   馬場忠雄

ページ範囲:P.281 - P.283

ポイント
 食物繊維のうち,水溶性のものは腸内細菌による発酵を受け,酪酸,酢酸,プロピオン酸などの短鎖脂肪酸を産生する.
 水溶性食物繊維を補助食品として摂取することにより,短鎖脂肪酸の産生を増加することができる.
 短鎖脂肪酸は,大腸粘膜増殖効果,水・電解質吸収促進作用,血流増加作用のほか,免疫調節作用も有している.
 食物繊維は,炎症性腸疾患,特に潰瘍性大腸炎の治療法として期待されている.
 癌細胞株の研究により,酪酸にはアポトーシス誘導作用や発癌運伝子の抑制効果が確認されているが,疫学的研究では,食物繊維による大腸癌予防効果は不確実である.
 補助食品としての食物繊維と,ビタミンなどを豊富に含んだ野菜や果実などの高繊維食とを同義と考えるには問題がある.

欠乏症の診断のポイントと治療

亜鉛,銅

著者: 根津理一郎

ページ範囲:P.285 - P.287

ポイント
 経静脈栄養法(TPN),経腸栄養法の普及に伴い,純化学的に合成された製剤が長期使用される機会も増加し,亜鉛,銅など各種微量元素欠乏症が報告されている.
 亜鉛欠乏症,銅欠乏症の診断においては,臨床症状の認識と患者の背景(発症機序からみた欠乏症のhigh risk例か否か)の評価が最も重要である.
 長期にわたるTPN,経腸栄養時においては,病態に応じた所要量の推定,各種指標の定期的なモニタリングによる過不足のない投与が必要である.

セレン,クロム,マンガン

著者: 松枝啓 ,   有賀元 ,   天野智文

ページ範囲:P.288 - P.291

ポイント
 微量元素は食物連鎖により供給されているため,長期にわたる経静脈栄養や経腸栄養では,微量元素の欠乏症が起こる可能性が高い.
 微量元素の欠乏は重篤な合併症をもたらすが,特にセレン欠乏症では心筋障害を起こすため,注意が必要である.
 微量元素欠乏症は,微量元素の血清レベルと体内貯蔵量が相関しないため診断に困難を伴うことが多く,臨床的症状から欠乏症を推測するとともに,予防的処置を行うことが重要である.

見逃してはいけない水溶性ビタミン欠乏症

著者: 松井淳 ,   葛西伸彦 ,   中村光男

ページ範囲:P.292 - P.294

ポイント
 ビタミンB1欠乏症のなかで,脚気はB1含量の少ないインスタント食品の摂取と清涼飲料水多飲による糖質の過剰摂取が,Wernicke脳症はアルコール多飲が主因となっている.
 ナイアシン欠乏症(ペラグラ)は,原因としてアルコール性が多いが,最近は偏食・低栄養も重要な誘因となっている.
 ビタミンB12欠乏症(巨赤芽球性貧血,亜急性連合性脊髄変性症)は,胃切除に伴う内因子の不足などによる吸収障害が主因となっている.

脂溶性ビタミン

著者: 守田則一 ,   守田佳子

ページ範囲:P.295 - P.297

ポイント
 脂溶性ビタミンであるビタミンA・D・E・K欠乏症が単独でみられることは,比較的稀である.
 脂溶性ビタミン欠乏症は,脂肪吸収障害や,栄養障害を伴う疾患,長期間の抗生物質や抗腫瘍薬の使用,妊娠や授乳時,中心静脈栄養施行時に二次障害としてしばしばみられる.その場合,脂溶性ビタミンのみならず,水溶性ビタミン欠乏症も同時にみられることが多い.
 治療に際し,過剰症に注意する.

生活習慣と消化器疾患

食生活と消化器系疾患の変遷

著者: 小林登史夫

ページ範囲:P.299 - P.301

ポイント
 個人別の食生活実態を,どう簡便に計測・定量化するか.
 個人別の消化器系生理機能を,どう簡便に計測・定量化するか.

小児肥満と進行性肝病変

著者: 田澤雄作 ,   村上潤 ,   野口博生

ページ範囲:P.302 - P.304

ポイント
 小児生活習慣病は成人生活習慣病の予備軍であり,その温床は肥満である.成人と同様に,小児肥満では非アルコール性脂肪性肝炎および進行性肝病変の合併が報告されている.現在,わが国の肥満児は約10%,その約20%に脂肪肝,その約1/3に進行性肝病変が認められる.将来,NASHが新たな国民的肝臓病として浮上すると推定されるが,その最前線は小児期肥満にある.

生活習慣病としての脂肪肝—その増加は国力衰退の原因となりうる

著者: 松崎松平 ,   小嶋清一郎 ,   渡辺光行

ページ範囲:P.305 - P.307

ポイント
 近年,脂肪肝が著しく増加している.
 種々の生活習質病と密接な関連性を有する.
 若年女性における増加は少子化助長因子となりうる.

食道・胃疾患とアルコール,喫煙

著者: 芳野純治 ,   中澤三郎

ページ範囲:P.308 - P.309

ポイント
 食道癌の発症には喫煙・飲酒の関係が強いとされ,危険度は両者により相乗的に増加する.
 逆流性食道炎では,喫煙・飲酒が下部食道括約筋圧の低下に関与すると報告される.
 胃潰瘍では喫煙が発症,治癒,再発に影響を及ぼすが,飲酒については否定的である.
 胃癌では喫煙により相対危険度は高くなるが,飲酒は関係ないとされる.

膵炎の成因,発症後の食事・アルコール

著者: 柳町幸 ,   丹藤雄介 ,   中村光男

ページ範囲:P.310 - P.313

ポイント
 膵炎の成因ではアルコールが最も高頻度であるが,アルコール多飲歴に加え,高脂肪・高蛋白食も膵炎のリスクファクターである.
 急性膵炎は膵組織が修復されるまでの期間(2〜6ヵ月間),30g/day以下の脂肪制限を行う.
 慢性膵炎代償期では,疼痛消失時は積極的に食事エネルギーを増加させる.一方,非代償期は十分量の消化酵素製剤の投与と40〜60g程度の脂肪摂取が必要となる.

茶葉ポリフェノールと消化器生理機能・疾患予防

著者: 松井輝明 ,   菊池浩史 ,   荒川泰行

ページ範囲:P.314 - P.317

ポイント
 以前よりお茶の産地では,胃潰瘍,胃癌,大腸癌などの消化器疾患が,他の地域に比べ低いことが知られている。近年,胃潰瘍,胃癌の誘因としてHelicobacter pyloriの感染が報告され,除菌療法が広く行われるようになつた,しかし薬剤の副作用,耐性菌の出現,再発などさまざまな問題があり,抗菌薬に代わる,体に優しい除菌法が模索されている.そこで,茶葉ポリフェノール(カテキン)のもつ抗菌作用で除菌が可能か否か,また消化管ホルモンにいかなる影響があるか検討した.

生活習慣病の一つとしての炎症性腸疾患・大腸癌・大腸ポリープ

著者: 千葉満郎 ,   守田則一 ,   中村彰

ページ範囲:P.318 - P.319

ポイント
 Crohn病,潰瘍性大腸炎は,人々の暮らしが豊かになり食生活が変化するとともに増加しており,食事を主とした生活習慣病として捉えうる.西洋食品が危険因子で,和食が予防因子である.
 大腸癌・大腸ポリープは増加しており,リスク増大因子はアルコールと肉で,減少因子は野菜と運動である.食物繊維の抑制効果には疑問が投げかけられている.

ヒトビタミンD受容体の腸管での発現と骨粗鬆症

著者: 武田英二 ,   新井英一 ,   山本浩範

ページ範囲:P.320 - P.321

ポイント
 ヒトビタミンD受容体遺伝子の腸管特異的発現にかかわるプロモーター領域に遺伝子多型を見いだした.多型と腸管特異的転写因子(Cdx-2)との結合能,VDRの転写活性,閉経後女性の骨密度との間に明らかな相関関係が認められた.以上より,本遺伝子多型は閉経後骨粗鬆症発症の予知因子と考えられた.

medicina Conference・32

フィリピンに渡航後,高熱にて入院した24歳女性

著者: 志越顕 ,   鈴木隆三 ,   中川靖章 ,   大西健児 ,   北原光夫

ページ範囲:P.329 - P.339

 症例:24歳日本人女性,会社員
 主訴:発熱
 既往歴:9歳時に肺炎の既往がある以外に特記事項なし.
 家族歴:特記事項なし.

演習 心電図の読み方・16

右心系の異常

著者: 近森大志郎 ,   山科章

ページ範囲:P.341 - P.348

Case
 症例1:54歳,男性.主訴:労作性呼吸困難.
 既往歴:特記すべきことなし.
 現病歴:3〜4年前より坂道などを登ると,軽度の息切れを自覚するようになった.今年の定期健診の際に聴診にて心雑音を指摘され,また,胸部X線写真で心拡大も認められたために紹介となった.
 身体所見:身長171cm,体重70kg.血圧110/70mmHg,脈拍88/分.聴診上,第II音の固定性分裂と胸骨左縁第2肋間を中心にLevine 3/6の収縮期駆出性雑音を聴取する.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.349 - P.384

カラーグラフ 消化管内視鏡検査—知っておきたい基礎知識・14

十二指腸—正常内視鏡像

著者: 稲土修嗣

ページ範囲:P.356 - P.360

 解剖学的特徴と内視鏡観察のポイント
 十二指腸は胃に連続する臓器で,その名称はギリシヤ語のdodekadaktulon(12本の指の幅の意味)に由来し,小腸の最口側20〜30cmを占めるにすぎない.しかし,それに続く空・回腸とは異なり,大部分は壁側腹膜で固定され可動性に乏しく,胃液の流入・胆管・膵管開口部の存在など,古くから消化吸収の場として重要な部とされ,十二指腸の各部位には,多くの解剖学的名称がつけられている1)(図1).
 通常,上部消化管内視鏡検査には直視鏡が使用され,スコープの性能が向上した今日,下行部までの観察がルーチン化されている.しかし主乳頭の観察(図2)や逆行性膵胆道造影および関連する治療処置には,側視鏡の使用は不可欠であり,目的に応じてスコープを選択する必要がある.なお十二指腸の内視鏡観察は胃の観察に先んじて行うのが良いと考えられる.その理由は通常,左側臥位で検査を行うため胃の観察を優先すると,送気により胃・十二指腸全体が伸展してしまい,スコープの挿入が困難になるとともに腸蠕動が誘発され観察が困難になることがあるからである.

プライマリケアにおけるShared Care—尿失禁患者のマネジメント・5

尿失禁に対する理解と診療の基本

著者: 鈴木康之

ページ範囲:P.362 - P.366

診断と治療のためのフローチャート
 高齢者人口が少なかった時代,本邦では尿失禁治療に消極的で,これを訴える患者が放置されることも少なくなかった.しかし,日本人の平均寿命が著しく延長し,高齢者が爆発的に増大すると尿失禁は緊急に対処すべき重大疾患となった.このため一部の専門医が精力的かつ積極的に尿失禁を研究・診断・治療するようになり,本邦の尿失禁専門施設の医療水準は世界の最先端といっても過言でないまでに発展した.
 ここでは,尿失禁の病態を解説し,尿失禁患者を診察する手順を解説したい.

今求められる説明義務・11

遺伝子研究におけるインフォームド-コンセント

著者: 古川俊治

ページ範囲:P.367 - P.372

遺伝子研究に関して考慮すべき患者の権利
 前稿(「medicina」2002年1月号「臨床研究におけるインフォームド-コンセント」)では,臨床研究一般におけるインフォームド-コンセント(IC)について検討したが,特に,ヒトゲノム・遺伝子解析研究は,個人を対象とした研究に大きく依存し,また,研究過程で得られた遺伝情報は試料提供者やその血縁者の遺伝的素因を明らかにするため,その取り扱いによっては,さまざまな法的問題を生じる可能性がある.そのため,遺伝子研究におけるICは,臨床研究一般におけるICの必要項目をすべて充足したうえで,さらに別個の検討を要する.
 遺伝子研究に関して考慮を要する患者の権利としては,以下のものが挙げられる.

新薬情報・19

リツキシマブ(リツキサン®)注10mg/ml

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.374 - P.376

適応■低悪性度または濾胞性非Hodgkinリンパ腫とマントル細胞リンパ腫で腫瘍細胞にCD20抗原が陽性な患者.CD20抗原は免疫組織染色またはフローサイトメトリー法などで確認する.米国の適応では,現時点では再発性または標準的化学療法に抵抗性の上記疾患の制限があるが,日本の添付文書では,特にこのような制限は外されている.
用法・用量■成人に1回量375mg/m2を1週間間隔で,4回(4週間)点滴静注で投与する.ただし,投与中のアナフィラキシー様反応を回避するため,特に初回投与時には,最初の1時間は25mg/hrの投与速度で開始し,副作用がなければ次の1時間を100mg/hrで投与し,最終的に200mg/hrに増加する.注射剤型としては,10mg/mlの注射液として10ml(1瓶10Omg含有)と50ml(1瓶500mg含有)の製剤が利用できる.また,薬物は,いずれの剤型も用時に生理食塩水または5%ブドウ糖注射液で10倍に希釈して使用する.溶解後の安定性は高く,2〜8℃で24時間,その後室温で48時間保存しても安定である.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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