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雑誌目次

雑誌文献

medicina39巻4号

2002年04月発行

雑誌目次

今月の主題 動脈硬化と高脂血症 動脈硬化の発症機構

高脂血症の役割

著者: 武城英明

ページ範囲:P.566 - P.568

ポイント
 粥状動脈硬化の発症機序は,Rossらによる傷害反応仮説によると,その過程にリポ蛋白LDLが関与し,酸化LDLが重要な役割を有する.
 動脈硬化発症における高脂血症の重要性は,in vitro実験のみならず,モデル動物を用いた解析,近年の大規模臨床試験から明らかにされた.
 最近,プラークの安定化に重要な内膜平滑筋細胞について新たな知見が示され,その解析が期待されている.

心血管イベント発症とプラーク

著者: 三浦光弘 ,   豊島秀男

ページ範囲:P.569 - P.571

ポイント
 心血管イベントの発症に対して不安定プラークの破綻およびびらんが重要と考えられている.
 プラークの破綻には,脂質コアを覆っている線維性被膜の脆弱化の関与が大きい.
 マクロファージは,プラーク内で活性化され,さまざまなサイトカインを産生し血管壁における細胞成分と反応する.

高脂血症と細胞機能

血栓,線溶,血小板と高脂血症

著者: 丸山征郎

ページ範囲:P.573 - P.575

ポイント
 血管内皮細胞は抗血栓活性を有しているが,酸化変性LDLや糖化蛋白で傷害される.
 血管内皮細胞の傷害は血小板の活性化を引き起こし,これによって血小板からPDGFが遊離してきて,動脈硬化が起こる.
 粥腫の中のマクロファージは血栓性,血管新生性,炎症性など多彩なベクトルを発現して,粥腫破綻のカギを握る.

内皮細胞機能と高脂血症

著者: 久木山清貴

ページ範囲:P.576 - P.578

ポイント
 高コレステロール血症および高中性脂肪血症は,それぞれ酸化LDLおよびレムナントリポ蛋白を介し,血管内皮細胞のさまざまな機能を変化させることで,粥状動脈硬化の発生に深くかかわっている.

マクロファージの泡沫化

著者: 石橋俊

ページ範囲:P.579 - P.582

ポイント
 マクロファージは非変性リポ蛋白と変性リポ蛋白を認識する受容体を複数発現している.
 細胞内のコレステロールは,ACAT-1によってコレステロールエステルとなる.
 コレステロールはABCA1によって細胞外に放出される.
 レセプターによるリポ蛋白の取り込みLXRα,変性リポ蛋白受容体の発現や炎症性変化はPPARなどの核内受容体によって調節されている.

平滑筋細胞機能と細胞外マトリックス

著者: 倉林正彦

ページ範囲:P.583 - P.585

ポイント
 血管平滑筋細胞には未分化型(合成型)と分化型(収縮型)がある.
 プラーク内の血管平滑筋細胞は未分化型であり,増殖因子やその受容体を発現する.
 細胞外マトリックスを分解する酵素として,プラスミンとMMP(matrix metalloproteinase)が重要である.
 プラスミンとMMPはプラーク破裂を促進する.

atherogenicリポ蛋白の機能およびその診断と検査法

動脈硬化の診断と検査

著者: 都島基夫

ページ範囲:P.587 - P.590

ポイント
▶動脈硬化の量的診断を行い,進行例にはプラークの質的評価を留意する.
▶危険因子の存在は動脈硬化の進行の予知診断となる.
▶臨床徴候として,黄色腫,血管雑音,拍動触知などがある.
▶脈波伝播速度はsclerosis,中年以後では動脈硬化の広がりの指標となる.
▶量的のみならず質的な評価法として頸部エコー,CT,MRIがある.

LDLと酸化LDL

著者: 木下誠

ページ範囲:P.591 - P.593

 粥状動脈硬化症は,虚血性心疾患や脳梗塞などを引き起こす基礎病変である.粥状動脈硬化症の形成には,血清のLDL(low density lipoprotein)が重要な因子であることはよく知られている.

レムナントと中性脂肪

著者: 田中明

ページ範囲:P.594 - P.596

ポイント
 高TG血症では,低HDL-C血症,耐糖能異常,高血圧,上半身肥満,インスリン抵抗性,高インスリン血症を合併しやすく,各因子が関連し合って動脈硬化を生じる.
 レムナントの増加する高脂血症をⅢ型と呼ぶ.本型では高コレステロールおよび高TG血症を示す.リポ蛋白電気泳動ではプロードβバンドを認めるのが特徴である.家族性Ⅲ型高脂血症では,E2/2のアポEフェノタイプを呈する.

small,dense LDL

著者: 芳野原 ,   平野勉 ,   鹿住敏

ページ範囲:P.598 - P.603

ポイント
 疫学的に最も心筋梗塞の発症との因果関係が明らかなリスクファクターは血中コレステロール,特に低比重リポ蛋白(low density lipoprotein:LDL)-コレステロールであるが,さらに最近ではサイズの小さく比重の重いsmall,dense LDLの動脈硬化惹起性が注目されている.
 small,dense LDLを保有する症例は“パターンB”と呼ばれ,正常なサイズのLDL粒子をもつ“パターンA”に比べると,冠動脈疾患発症のリスクが3倍となる.
 small,dense LDLは冠動脈疾患を有する症例の70%以上が保有しており,日本人における新たな冠動脈疾患のリスクファクターとして注目される.
 small,dense LDLは酸化LDLの良きsubstrateであり,LDLレセプターに認識されにくく血管壁におけるproteoglycanとglycosaminoglycanに対する親和性の増加がその動脈硬化惹起性の一因と考えられている.
 妊娠中毒症のみならず正常妊娠においてもLDL粒子は小型化する.

HDL

著者: 松山晃文 ,   山下静也 ,   松澤佑次

ページ範囲:P.604 - P.606

ポイント
 HDLの質的・量的異常はコレステロール逆転送系の異常を反映し,動脈硬化防御機構が有効に機能していないことを示す.
 HDL-C値はコレステロール逆転送系の異常を簡便に知りうる検査項目である.
 低HDL-C血症は冠危険因子であり,著しい高HDL-C血症もまた冠危険因子である.

Lp(a)

著者: 横出正之

ページ範囲:P.607 - P.609

ポイント
 Lp(a)は低比重リポ蛋白(LDL)類似粒子上にアポB100とS-S結合したアポ(a)が存在する構造をとるリポ蛋白である.
 アポ(a)はプラスミノーゲン類似のクリングルと呼ばれる構造単位数からなる遺伝子多型を有するとともに血中濃度も広範な多様性を示す.
 Lp(a)は動脈硬化疾患の危険因子となることが示されてきており,血中濃度に加え遺伝子多型も考慮する必要があろう.

治療ストラテジー

高脂血症治療のあり方とガイドライン

著者: 横山信治

ページ範囲:P.611 - P.616

ポイント
 高LDL血症の治療は,虚血性心疾患の予防という意味では確立されたが,わが国における公衆衛生学的位置づけと費用対効果の検討がガイドライン制定において必要である.
 トリグリセライドやHDLなど,他のリポ蛋白質・脂質パラメータの治療目標の設定が,特にわが国において重要な課題である.

生活習慣と非薬物療法

食事療法

著者: 衛藤雅昭 ,   斉藤美恵子

ページ範囲:P.618 - P.620

ポイント
 高脂血症と診断されれば,まず少なくとも3ヵ月は食事療法を行う.
 高トリグリセライド血症の場合,総摂取エネルギーの制限,アルコールの制限,糖質の制限,ω-3系脂肪酸の摂取を指導する.
 高LDLコレステロール血症の場合,総摂取エネルギーの制限,脂肪の制限と適正脂肪酸組成(P/M/S比=3:4:3),コレステロールの制限,食物繊維の摂取,抗酸化物の摂取を指導する.

運動療法

著者: 佐々木淳

ページ範囲:P.621 - P.623

ポイント
 運動不足は生活習慣病の原因である.
 運動による生活習慣病の予防効果が確かめられている.
 軽い有酸素運動が効果・安全性のうえから適している.

タバコと高脂血症・動脈硬化

著者: 石川俊次

ページ範囲:P.624 - P.626

ポイント
 喫煙は能動・受動にかかわらず,動脈硬化性疾患の独立した危険因子である.
 喫煙者では総コレステロール,LDLコレステロール,トリグリセライド,VLDLが増加し,HDLコレステロールが減少している.
 タバコの成分により抗酸化機構が障害され,LDL,HDLが変性されやすくなる.
 動脈硬化の予防のため,禁煙対策はきわめて重要であり,かつ大変有効である.

アルコールと高脂血症・動脈硬化

著者: 佐久間長彦

ページ範囲:P.627 - P.629

ポイント
 アルコール摂取は血清LDLコレステロールを増加させない.
 高トリグリセライド血症の素因のあるヒトが,過量のアルコールを摂取すると高トリグリセライド血症を発症する.
 アルコール摂取はHDLコレステロールを増加させる.
 疫学的にみて飲酒群の冠動脈疾患の発症率は非飲酒群に比べ少ない.ただし,冠動脈疾患予防のための飲酒は,アルコール依存症を引き起こすおそれもあり勧められない.

薬物療法

高コレステロール血症の治療

著者: 岡島史宜 ,   及川眞一

ページ範囲:P.630 - P.633

ポイント
 高コレステロール治療薬は,脂質代謝に対する影響とpleiotropic effectが相俟って抗動脈硬化作用に働く.
 病態によっては,スタチン系薬剤よりもフィブラート系薬剤のほうが有効な場合がある.
 スタチン系薬剤とフィブラート系薬剤の併用療法は,横紋筋融解症の危険性が高いといわれており注意が必要である.

高トリグリセライド血症の治療

著者: 多田紀夫

ページ範囲:P.635 - P.637

ポイント
 高トリグリセライド血症の治療法としては食事,運動療法などの生活療法が一義的.
 薬物療法はおおむね4〜6ヵ月の生活療法にても適正化されない場合に適用となる.

複合型高脂血症の治療

著者: 鈴木誠司

ページ範囲:P.638 - P.639

ポイント
 家族性複合型高脂血症は,多因子遺伝による常染色体優性遺伝性疾患である.
 頻度は100人に1人で,Ⅱa,ⅡbないしⅣ型のいずれかのタイプをとる.
 高インスリン血症,肥満,高血圧,耐糖能障害などを合併することが多く,動脈硬化症をきたしやすい.

高脂血症治療のエビデンス

著者: 井藤英喜

ページ範囲:P.640 - P.643

ポイント
 高脂血症治療のエビデンスとして大規模脂質介入試験は重要である.
 大規模脂質介入試験の結果の読み取りに際しては,どのような対象を,どのように治療し,どのような観点から治療の有効性を評価したかを理解することが必要である.
 個々の患者の治療に,このような情報を生かすことがEBMの実践といえる.

薬剤の相互作用と副作用

著者: 中谷矩章

ページ範囲:P.644 - P.646

ポイント
 ニコチン酸では皮膚症状が高頻度に認められる.
 陰イオン交換樹脂は便秘,腹部膨満をもたらす.
 フィブラート系薬剤では肝酵素の上昇を認めることが多い.
 フィブラート系薬剤,スタチンはミオパチーをもたらすことがある.
 フィブラート系薬剤とスタチンの併用では横紋筋融解症が生ずる可能性がある.

難治性高脂血症における併用療法,LDLアフェレーシス

著者: 酒井尚彦 ,   山下静也

ページ範囲:P.647 - P.651

ポイント
 LDLアフェレーシスは家族性高コレステロール血症(FH)を中心とした難治性高コレステロール血症のきわめて有効な治療法である.
 LDLアフェレーシスの方法として,わが国においては硫酸デキストランを利用したLDL吸着療法が主体である.
 主にFH症例を中心に,LDLアフェレーシスによって冠動脈病変の退縮・急性冠イベントの抑制効果が認められている.
 閉塞性動脈硬化症・巣状糸球体硬化症も保険適用であり,ほかにも脳血管障害・突発性難聴・急性の網膜虚血・急性膵炎などの微小循環障害での効果も期待されている.

注意すべき病態と治療

糖尿病における高脂血症治療

著者: 山崎義光

ページ範囲:P.653 - P.655

ポイント
 糖尿病では,レムナントやsmall,dense LDLの増加する異脂質血症を呈することが多い.
 糖尿病患者に対するスタチンの効果は,非糖尿病患者より大きい.

肝障害時の高脂血症治療

著者: 松島照彦

ページ範囲:P.656 - P.657

ポイント
 肝障害と高脂血症の共通原因(過食,飲酒など)があれば改善を指導する.
 非代償性の肝障害がある場合は肝庇護の治療を優先する.
 高脂血症治療薬による肝障害助長に注意する.

腎障害時の高脂血症治療

著者: 笈田耕治

ページ範囲:P.658 - P.660

ポイント
 ネフローゼ症候群では高LDL-C血症が必発であり,慢性腎不全や透析患者では高TG血症,低HDL-C血症が多く,Lp(a)は増加する.
 腎疾患では動脈硬化性疾患の合併頻度が高く,その理由の一つに高脂血症の存在が考えられる.
 脂質代謝異常によって腎機能低下をきたす疾患として,LCAT欠損症とリポ蛋白糸球体症がある.
 横紋筋融解症がフィブラート系薬やスタチン系薬の副作用として重要であり,特に腎機能低下例では注意が必要である.

高血圧と高脂血症合併症の注意点

著者: 井上郁夫 ,   片山茂裕

ページ範囲:P.661 - P.665

ポイント
 利尿薬およびISAのないβ遮断薬は,TGを上昇させ,インスリン感受性を低下させる.
 ISAのあるβ遮断薬,Ca拮抗薬は糖-脂質代謝へはニュートラルである.
 ACE阻害薬およびα1遮断薬は,TGを低下させ,インスリン感受性を上昇させる.

肥満の診断と治療

著者: 大野誠

ページ範囲:P.666 - P.669

ポイント
 BMIを基に肥満を判定し,さらに肥満症か否かの鑑別診断を進める.この際,体脂肪を測定して,身体組成を把握しておくと役立つ.
 脂肪細胞から分泌される多彩なアディポサイトカインを介して,内臓脂肪型肥満には多様な生活習慣病が併発していることが多い.そこで,合併症に対する検索を入念に行い,肥満症の病態を正確に把握する必要がある.
 肥満症治療の基本は,食事・運動療法に行動修正療法などを加えて,個体特性に適した減量指導をすすめ,生活習慣の変容を促すことが大切である.

動脈硬化と高脂血症のcontroversy

抗酸化療法の現状と問題

著者: 渡辺嘉郎 ,   代田浩之

ページ範囲:P.671 - P.674

ポイント
 多くの疫学調査により,ビタミンEの摂取量の多い集団において冠動脈疾患の死亡率の低いことが認められている.
 高脂血症家兎を用いた動物実験において,抗酸化物による動脈硬化症の予防効果が認められている.
 しかしながら,抗酸化ビタミンを用いた大規模介入試験においては,明らかな予防効果は認められない.今後,新しい抗酸化薬および新しいアプローチが必要と考えられる.

HRT療法の現状と問題

著者: 佐久間一郎 ,   北畠顕

ページ範囲:P.675 - P.677

ポイント
 HRTで結合型エストロゲンを用いると総コレステロール,LDLコレステロール,ApoB,ApoE,Lp(a)が低下し,HDLコレステロールとApoA 1,さらに中性脂肪が増加する.
 HRTは,わが国ではまだ施行率が低いが,閉経後女性のquality of life改善のためにもっと普及されるべき治療法である.

高齢者の高脂血症治療

著者: 神崎恒一

ページ範囲:P.678 - P.680

ポイント
 高脂血症の動脈硬化への寄与は加齢とともに減少するため,高齢者に対する高脂血症の治療の必要性に関しては一定の見解は得られていない.高齢者は身体年齢に個人差が大きいので,暦年齢で管理基準を設けるよりも,各個人の身体年齢や社会活動性,そして合併する危険因子や動脈硬化性疾患の有無によって治療方針を決定する.

女性の高脂血症治療

著者: 宇都宮一典

ページ範囲:P.682 - P.684

ポイント
 閉経は女性にとって心血管疾患のリスクである.
 糖尿病は,閉経の有無にかかわらず心血管疾患のリスクとなる.
 女性の高脂血症治療薬の第1選択はスタチン系薬剤である.
 スタチン系薬剤の骨密度への効果は確定されていない.

コレステロールを下げすぎるとよくないか

著者: 野原淳 ,   馬渕宏

ページ範囲:P.686 - P.690

ポイント
 薬物療法と関連なくコレステロール低値群では癌死および非心血管死が多い.
 スタチン投与と,癌死および非心血管死に,関連は認められていない.
 必要な症例に適切なコレステロール低下療法を行うことが重要である.

鼎談

高脂血症治療の意義と有用性

著者: 大内尉義 ,   寺本民生 ,   山田信博

ページ範囲:P.692 - P.703

 山田(司会)本日は,お忙しいところ「高脂血症治療の意義と有用性」と題しました鼎談にご出席いただきましてありがとうございます.
 日本人の死亡原因においては,循環器疾患は大変大きな比重を占めてまいりました.そのなかで高脂血症は治療しなければいけない生活習慣病の1つとして位置付けられてきていると思います.また高脂血症治療も,この10年間,特にスタチン系の薬剤(HMG-CoA還元酵素阻害薬)が出てから革命的な変化を遂げました.そうした状況のなかで,本日は高脂血症治療の意義と,一般内科医にもわかりやすい高脂血症治療のポイントをお話しいただければと思います.

理解のための32題

ページ範囲:P.705 - P.711

内科医のためのリスクマネジメント—医事紛争からのフィードバック・1【新連載】

薬剤投与直後の死亡

著者: 長野展久

ページ範囲:P.717 - P.720

連載を始めるにあたって
 「medicina」読者のみなさんは,医師免許を取得してから今日に至るまで,真摯な態度で日々患者と接し,また,進歩し続ける医学・医療の世界で,常に研鑽を積まれてきたことと思います.
 ところが,昨今,世間で「医療過誤」が大きく取り沙汰されることによって,誠実に医療に取り組んでいる医師たちに対しても,世間からの厳しい目が向けられるようになりました.患者の心のなかには,病院での治療にどこか過剰な期待を抱いていることもあってか,治療の結果に満足できないとすぐに医療ミスを思い浮かべるような風潮さえ出てきました.

演習 心電図の読み方・18【最終回】

電解質による影響

著者: 大久保豊幸 ,   山科章

ページ範囲:P.721 - P.727

Case
 症例1:74歳男性.
 主訴:食欲不振,胸部不快感.
 経過:以前より健康診断などで心房細動,糖尿病,腎障害を指摘されていたが放置していた.最近になり食欲不振,全身倦怠感を自覚し,近医受診し入院となった.入院翌日より胸部不快感出現,脈拍数35/分の著明な徐脈を認めた.その際の心電図を図1に示す.意識清明,血圧162/58 mmHg,血糖値240mg/dlであった.

プライマリケアにおけるShared Care—尿失禁患者のマネジメント・7

環境の変容による失禁の対応

著者: 今丸満美

ページ範囲:P.728 - P.731

 排泄手段を決定する際,トイレがファーストチョイスされるが,必ずしも選択肢は一つではない.トイレを使うとしても,完全に正常な排泄を正常な動作で行えているのか定かではない.例えば,トイレまで間に合わない場合があるからパッドを当てていたり,失禁することが心配で尿意もないのにトイレに行くというような場合である.最終決定された排泄手段が,正しいアセスメントに基づくものか,あきらめによるものかにより,本人や介護者のQOLは大きく変化する.排泄ケアにかかわる場合は,その手段の決定の際,あらゆる側面からクライアントにふさわしい選択を行う必要がある.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.736 - P.741

カラーグラフ 消化管内視鏡検査—知っておきたい基礎知識・16

大腸—正常内視鏡像

著者: 清水誠治 ,   富岡秀夫 ,   木本邦彦

ページ範囲:P.732 - P.735

 今日,大腸内視鏡検査は大腸疾患の画像診断において中心的な役割を果たしている.正常像の成り立ちとバリエーションを理解することが,異常像を認識するうえで必須であることはいうまでもない.しかし往々にして技術習得が先行して,正常像を正しく理解しないまま検査を行っている人が意外に多いのが現状である.
 大腸内視鏡検査で観察できる範囲は肛門管から回腸終末部までである.一般に内視鏡で得られる情報は凹凸と色調に関するものである.以下に,大腸,回腸終末部,肛門管に分けてそれぞれの正常内視鏡像について述べる.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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56巻1号(2019年1月発行)

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55巻9号(2018年8月発行)

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55巻3号(2018年3月発行)

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