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雑誌目次

雑誌文献

medicina39巻6号

2002年06月発行

雑誌目次

今月の主題 頭痛とめまい—外来診療ガイド

理解のための28題

ページ範囲:P.1020 - P.1024

頭痛を知る

頭痛の分類と疫学

著者: 根来清

ページ範囲:P.914 - P.916

ポイント
 国際頭痛学会分類では,頭痛発作の病態分類・整理に重点が置かれ,同義語,疾病概念の簡単な概説,診断基準が明記されており,頭痛を理解するうえで大変有用である.
 日本人における片頭痛,緊張型頭痛などの慢性頭痛の有病率は40%と報告され,多くの慢性頭痛患者が存在すると推定される.

頭痛患者のQOL

著者: 大生定義

ページ範囲:P.917 - P.919

ポイント
 QOLとは,患者のこうありたいというexpectationと実際の状況とのギャップとも表現できる.
 片頭痛疾患特異的QOL尺度には,The 24-hour Migrainne-Specific Quality of Life Questionnaire,the Migraine-Specific Quality of Life Questionnaireなどがあるが,MIDAS(The Migraine Disability Assessment)などがその簡便性もあって使われてきている.
 片頭痛患者のQOLは,それらのスケールでみれば他の慢性疾患に匹敵するほど低く,効果的な薬物が使える現在,患者の適切な拾い出しが重要であり,患者はきちんと診てくれる医師と薬や頭痛についての説明を切望している.

頭痛を聴く

頭痛患者の病歴と鑑別診断:どのように何を聴くか

著者: 五十嵐久佳

ページ範囲:P.920 - P.922

ポイント
 発症様式と随伴症状に注意する.
 今まで経験したことのない頭痛は要注意である.
 発症が急激,または進行性の場合は直ちに検査を施行し,専門医を呼ぼう.
 神経徴候,発熱を伴う場合は症候性頭痛の可能性が高い.
 各種頭痛の興型例を把握し,典型例から外れた場合は注意を払う.

頭痛を診る

頭痛患者の身体診察:どのように何を診るか

著者: 山田人志 ,   黒岩義之

ページ範囲:P.924 - P.925

ポイント
 診断にあたって最も重要なことは,直接生命にかかわる頭蓋内器質病変による頭痛を見逃さないことである.
 所見をとるにあたって,緊急に治療が必要な疾患であるかどうかを迅速に判断することが重要である.

頭痛患者の画像診断:どういうときに何が必要か

著者: 畑隆志

ページ範囲:P.926 - P.929

ポイント
 頭痛の大多数は機能的疾患であり,画像診断がその診断と治療に全く結びつかないことも多い.
 画像診断の目的は,特別な治療が要求される疾患を診断することにある.
 突然起こった頭痛,いまだかつて経験したことのない頭痛,神経学的異常所見のある患者には画像診断が必要である.
 頭痛のスクリーニングには今後はMRIが重視されるようになる.
 急性期くも膜下出血のfirst-line検査はCTであるが,いくつもの落とし穴があり,軽症であればあるほど正診率が低下する.

頭痛診療のポイント

初めての頭痛,今までで最悪の頭痛

著者: 篠原伸顕 ,   北川泰久

ページ範囲:P.931 - P.933

ポイント
 かつてないほどの激しい頭痛の場合は,くも膜下出血,髄膜炎などをまず第一に考える.
 くも膜下出血や髄膜炎の場合は,意識障害や局所神経徴候を伴わないこともある.
 患者の頭痛に対する表現内容で頭痛の鑑別が可能なこともある.
 側頭動脈炎や緑内障発作などでも激しい頭痛を認めることがある.

高齢者の頭痛

著者: 下村登規夫 ,   小谷和彦 ,   村上文代

ページ範囲:P.934 - P.936

ポイント
▶高齢者の頭痛は訴えが明確でないことが多いので十分な問診を行う.
▶緊張型頭痛は高齢者における機能性頭痛の中心的存在である.
▶高齢者の頭痛は器質的病変を伴っている可能性を念頭に置いておく.
▶全身性疾患に伴って頭痛が起こってくる場合がある.
▶内服薬などの薬物による頭痛も存在することを考慮する必要がある.

女性の頭痛

著者: 内山富士雄

ページ範囲:P.938 - P.941

ポイント
(男性医師たちへ)女性はわれわれが予想する以上に頭痛で困っている.「たかが頭痛」と軽んじることなく共感的なアプローチをこころがけよう.
 妊娠・授乳中の投薬はできるだけ控える.もし使うときは本稿中の表などで安全性を確認してから.

脳腫瘍,脳血管障害の頭痛

著者: 内潟雅信

ページ範囲:P.942 - P.943

ポイント
 突然発症する頭痛は,頭痛の程度に関係なく,くも膜下出血を疑う.
 くも膜下出血は,早期(24時間以内)に再発しやすく,また,致命的になることがある.
 くも膜下出血のほとんどは,早期のCT検査で診断可能であるが,約10%は異常を示さない.この場合,腰椎穿刺が必要.
 くも膜下出血発症早期の髄液は血性〜黄色調を呈すが,1〜2週経つと陰性のことがある.
 高齢者,大酒家,血液透析患者が,頭痛のほか意識レベル低下,性格異常,片麻痺などを呈し,かつ症状に変動性を示す場合は慢性硬膜下血腫を疑い,速やかにCT検査を行う.
 小脳出血は頭痛をきたしやすく,さらに嘔気・嘔吐を伴う.この点からくも膜下出血との鑑別を要す.いわゆる小脳症状を呈することは少ないので注意を要する.
 脳梗塞は,脳出血に比し頭痛を呈することは少ないとされるが稀ではない.一過性脳虚血発作でも約1/4に頭痛を伴う.頭痛で始まる(頭痛を伴う)脳梗塞の場合,原因として動脈解離を念頭に置く.
 脳腫瘍例の頭痛の特徴は,起床時に嘔気・嘔吐を伴って出現すること(目覚め型)である.
 脳腫瘍の経過中,突然頭痛が出現するときは腫瘍内出血を疑う.

脳炎・髄膜炎の頭痛

著者: 阿久津二夫

ページ範囲:P.944 - P.947

ポイント
 持続性の頭痛と発熱を認める患者は髄膜炎を念頭に置いて診療する.
 発熱,頭痛以外に意識障害,痙攣,脳皮質症状を認める場合は脳炎を考慮する.
 髄膜炎を疑った場合は腰椎穿刺により,髄液細胞数増加の有無を検査する.
 項部硬直の存在は髄膜炎の有力な症状であるが,高齢者では不明なこともある.
 細菌性髄膜炎,ヘルペス脳炎,急性散在性脳脊髄炎は迅速な診断・治療が必要である.

耳鼻科,眼科疾患の頭痛

著者: 山根清美

ページ範囲:P.948 - P.950

ポイント
 耳鼻科・眼科領域の疾患も頭痛の原因となるので,頭痛の鑑別診断として念頭に置く.
 頭痛を呈する耳鼻科・眼科疾患として副鼻腔炎,中耳炎,緑内障,VDT症候群などの頻度が高い.
 副鼻腔炎は拍動性頭痛を呈することがあり,片頭痛との鑑別を要する.
 頭痛を呈する患者で副鼻腔炎の可能性があるときは副鼻腔CT(MRI)が診断に有用である.

頭痛を治す

エビデンスに基づく片頭痛の新しい治療戦略

著者: 鈴木則宏

ページ範囲:P.951 - P.955

ポイント
 片頭痛治療の最も重要な段階は,片頭痛を正確に診断することである.
 片頭痛急性期治療ではトリプタン系薬剤が安定した有効性のエビデンスを有する.
 片頭痛予防治療ではβ遮断薬,抗うつ薬,抗てんかん薬が有効性のエビデンスを有する.

緊張型頭痛とその治療

著者: 作田学

ページ範囲:P.956 - P.958

ポイント
 緊張型頭痛は,心因性頭痛やうつ病からくる頭痛との鑑別を要する.うつむき姿勢により,後頭筋,後頸筋が緊張し,後頭下に痛みが起こる.これが放散したものが頭痛となる.したがって,長時間のうつむき姿勢,高い枕をやめることが大切である.後頸部が張ってきたら,すぐに姿勢を正し,5分くらい楽にする.痛みが起こってからでは遅い.

群発頭痛とその治療

著者: 内藤寛 ,   葛原茂樹

ページ範囲:P.959 - P.961

ポイント
 群発頭痛は,一定期間に反復する眼窩周辺〜前頭・側頭部の片側性激痛発作で,自律神経症状を伴う.
 片頭痛や眼窩内疾患,海綿静脈洞病変,症候性頭痛を鑑別して除外する.
 頓挫療法は純酸素吸入,スマトリプタン皮下注,エルゴタミンが有効.
 予防にはカルシウム拮抗薬,ステロイド,エルゴタミン,リチウム,バルプロ酸が有効.
 飲酒は血管を拡張することで頭痛の誘因になる.

鎮痛薬の使い方と薬剤誘発性頭痛

著者: 間中信也

ページ範囲:P.962 - P.965

ポイント
 軽症片頭痛には消炎鎮痛薬の早期服用で対処可能である.
 鎮痛薬は制吐薬と併用すると悪心・嘔吐が抑制でき,薬剤効果発現が早まる.
 鎮痛薬もしくはエルゴタミン製剤を長期連用すると(アスピリンにして1ヵ月間に50g以上),薬剤誘発性頭痛となる.
 急性期治療薬を月10回以上服用する患者は,片頭痛予防的投薬を併用する.

頭痛患者の生活指導

著者: 川田純也

ページ範囲:P.966 - P.968

ポイント
 詳細な病歴の聴取により頭痛の誘因を探し,できる限りそれを取り除く.
 病歴聴取で誘因が不明の場合は,生活歴を含む頭痛日誌をつけると手がかりを見いだすことができることがある.
 頭頸部周囲筋の緊張を和らげたり,ストレスを解消させる方法を指導する.
 漸進的筋弛緩療法や自律訓練法は一般外来でも簡単に指導できる.

めまいを知る

めまいの疫学と患者のADL

著者: 宮田英雄

ページ範囲:P.969 - P.971

ポイント
 めまいは,その性状をしっかり問診することでかなりの診断が推定できる.
 めまいの種類は,回転性,浮動性,眼前暗黒感,平衡障害の4つに分類でき,この違いは原因疾患が何であるかによる.
 めまいの起こり方と持続時間は,発作性,一過性,頭位性,持続性に分けられる.
 ADLは,頭位・体位変換,固視,直立,歩行,回転に関する動作の障害を訴える.

めまいの分類と病態生理

著者: 冨安斉 ,   平塚真紀 ,   吉井文均

ページ範囲:P.972 - P.975

ポイント
 めまいの性状はさまざまで,その病態も異なる.一般的にめまいは末梢性と中枢性に分類されるが,ここでは問診からアプローチする分類法を示した.まず回転性めまいと非回転性めまいに大きく分け,後者をさらに浮動性めまい,頸部体幹の不安定感,動揺視や気が遠くなる感じなどに分類する.
 めまいの性状から大まかに障害部位を推測し,続いて発症様式や持続時間,眼振の性状,随伴症候,誘発因子,MRI所見や脳波所見などを参考にして原因疾患の診断を進める.

めまいを聴く

めまい患者の病歴と鑑別診断:どのように何を聴くか

著者: 村井麻衣子 ,   高木誠

ページ範囲:P.977 - P.979

ポイント
 めまいは,回転型(vertigo),失神型(near-faint dizziness),動揺型(dysequilibrium)に大きく分けられる.
 回転型=末梢性,動揺型=中枢性とは限らない.
 詳しい問診(性状・発症様式・増悪因子・時間経過・随伴症状・既往歴・薬物歴・家族歴)にて,めまいの病態と原因のおおよその鑑別は可能である.

めまいを診る

めまい患者の身体診察:どのように何を診るか

著者: 井田雅祥

ページ範囲:P.980 - P.982

ポイント
 めまいの診察で重要なのは,病変部位が末梢か中枢かを鑑別することである.
 蝸牛症状(耳鳴,難聴,耳閉塞感)と平衡障害以外の神経症状を伴う場合は,中枢神経障害を考える.
 眼振の所見は重要で,末梢性前庭障害では,水平回旋混合性眼振,定方向性,注視による抑制,時間経過で変化という特徴がある.注視方向性,純水平・回旋性・垂直性の眼振では,中枢性を念頭に置く.

めまい患者の検査計画:どういうときに何が必要か

著者: 高橋正紘

ページ範囲:P.984 - P.987

ポイント
 高血圧や心臓病の合併,脳梗塞の既往例のめまいでは,脳血管障害を考慮しMRIを調べる.
 良性発作性頭位眩量症,起立性調節障害,Meniere病,緊張性頭痛などが多い.
 回転感を伴う眼振は末梢性に多く,めまいが弱い起立歩行の障害では中枢障害を疑う.
 起立検査,眼振検査,Schellong試験,聴力検査,脳画像検査を適宜行う.

めまい診療のポイント

脳血管障害,脳底動脈循環不全のめまい

著者: 岡安裕之

ページ範囲:P.988 - P.989

ポイント
 脳血管障害で回転性めまいをみたときは,椎骨脳底動脈系病変を考える.
 回転性めまいだけであっても,血管障害の危険因子の多い患者では,VBIを疑って血管病変の有無をよく調べることが重要.頭蓋内だけでなく頭蓋外の病変の可能性も考える.
 末梢性のめまいが血管障害で起こることもある.

循環器疾患によるめまい

著者: 堀進悟

ページ範囲:P.990 - P.992

ポイント
 循環器疾患に基づくめまいはfaint,syncopeで,「一過性」の血圧低下が原因である.したがって,診療に際して血圧低下を証明することが難しく,病歴,身体所見,心電図所見が大切で,ガイドラインに沿って検索する.
 心原性の失神やめまいは生命にかかわる可能性がある.心原性を疑う条件は,心電図異常,器質的心疾患,胸痛,不整脈の既往,70歳以上などである.

薬物によるめまい

著者: 杉原浩 ,   高橋洋一

ページ範囲:P.993 - P.995

ポイント
 薬物によるめまいは,日常診療において多い副作用である.
 めまいの症状には,めまい感と回転性めまいがある.
 多くの薬物では投与中止により改善する.
 内耳障害をきたす薬物は,非可逆性めまいにより平衡障害を恒久的にきたすことがあり,注意が必要である.

高齢者のめまい

著者: 森田ゆかり ,   大崎康史 ,   土居義典

ページ範囲:P.996 - P.998

ポイント
 めまいは高齢者において比較的多い訴えの一つであり,その原因もさまざまである.
 高齢者のめまいの原因としては,若年者一般に多いもののほかに脳血管障害や不整脈などの重篤な疾患が隠れている可能性があり,十分な原因検索と対応が必要である.
 めまいがきっかけで転倒・骨折などを起こし,身体活動の著しい低下につながる可能性もあるため,注意を要する.

耳鼻科疾患によるめまい

著者: 水野正浩 ,   伊藤彰紀

ページ範囲:P.999 - P.1001

ポイント
 蝸牛症状を伴う,自発性,反復性のめまいはMeniere病.
 高度難聴を伴う単発性のめまいは,めまいを伴う突発性難聴.
 頭位変化に誘発され,蝸牛症状を伴わない,反復性のめまいは良性発作性頭位眩暈症.
 上気道炎に続発し,蝸牛症状を伴わず,急性高度の末梢前庭機能低下を示す,単発性のめまいは前庭神経炎.
 中耳炎,外耳ヘルペス,顔面神経麻痺などに注意.
 突発性難聴,外リンパ瘻,内耳炎などでは緊急の専門的治療を要す.

めまいを治す

抗めまい薬の使い方と薬物治療のエビデンス

著者: 武田憲昭

ページ範囲:P.1002 - P.1003

ポイント
 抗めまい薬の有効性に関するエビデンスは十分ではないが,抗めまい薬はめまいの自覚症状を改善する作用があると考えられる.
 抗めまい薬の併用による治療効果の向上や,長期投与による平衡機能の回復に関するエビデンスはない.
 急性期のめまいには炭酸水素ナトリウムの静脈内投与が,めまいに伴う悪心・嘔吐には古典的な抗ヒスタミン薬が有効であるとされている.

良性発作性頭位めまい症と理学療法:理論と解説

著者: 小宮山純

ページ範囲:P.1004 - P.1006

ポイント
 良性発作性頭位めまい症は市中病院におけるめまい全体の半数近くを占め,最も多い.
 頭位変換時に,耳石残屑が三半規管内を移動することで内リンパ液の圧変化と引き続くクプラの偏倚が生じ,めまい・嘔気が数秒〜数分間起こる.
 治療は耳石残屑を三半規管から卵形嚢に戻すために,耳石置換術を行う.後半規管型にはEpley法を,水平半規管型には健側側臥位12時間維持やLempert法を施行する.

良性発作性頭位めまい症の理学療法:エビデンスはあるか

著者: 木村眞司

ページ範囲:P.1007 - P.1012

ポイント
 BPPVに対する理学療法についてはかなりのエビデンスが蓄積されてきている.
 case seriesによる研究では,高い成功率が報告されている.
 Epley法・Semont法については,ランダム化臨床試験によるエビデンスがある.
 vestibular habituation trainingについてのエビデンスは経験的なものが大部分であり,不十分である.

入院とコンサルテーション:どのようなときに必要か

著者: 小﨑真規子

ページ範囲:P.1014 - P.1015

ポイント
 中枢性疾患,耳鼻科系疾患,心血管系疾患,精神疾患を疑う場合は専門科へのコンサルトが必要なことがある.特に脳血管障害を疑う場合は速やかにコンサルトする必要がある.
 末梢性めまいであっても,症状が激しい場合は入院を考慮することがある.

めまい患者の生活指導

著者: 栗原由佳 ,   生坂政臣

ページ範囲:P.1017 - P.1019

ポイント
 慢性めまいの治療としては,薬物,外科療法だけでなく,リハビリテーションや精神的なサポートも重要である.
 リハビリテーションでは,頭と目を積極的に動かす段階的な訓練プログラムによって,めまいの回復を促進する.
 患者の多くは心理的要因をかかえているので,治療的会話などによりストレス軽減に努める.

medicina Conference・33

腹部腫瘤と腹水を呈していた不明熱症例

著者: 川畑雅照 ,   川村昌嗣 ,   菊池隆秀 ,   水澤有香 ,   富山順治

ページ範囲:P.1028 - P.1039

 症例:37歳,男性.中古車販売業.
 主訴:発熱,腹痛,腹部膨満感.
 家族歴:特記事項なし.
 既往歴:35歳肛門周囲膿瘍.
 生活歴:喫煙歴なし,飲酒歴なし.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.1040 - P.1046

カラーグラフ 消化管内視鏡検査—知っておきたい基礎知識・18

鋸歯状腺腫

著者: 松本主之

ページ範囲:P.1047 - P.1049

鋸歯状腺腫とは
 大腸ポリープとして発見される隆起性病変の大部分は,過形成性ポリープないし腺腫で,後者の一部が癌化すると考えられてきた.一方,1990年にLongadreとFenoglio-Preiser1)が,従来の腺管腺腫や絨毛腺腫とは組織学的に異なった良性上皮性腫瘍の存在を提唱し,鋸歯状腺腫と命名している.
 鋸歯状腺腫の組織学的特徴は,過形成性ポリープに類似した鋸歯状腺管と,通常の腺腫に類似した腫瘍性変化(核小体の明瞭な核の重層化と未熟な杯細胞)に要約される.鋸歯状腺腫に関する研究はいまだ日も浅いが,大腸内視鏡検査が広く普及し,発見頻度が増加したことで臨床病理学的特徴が明らかになりつつある.

短期連載 医師が出遭うドメスティック・バイオレンス・1【新連載】

DV法と医師からの通報—救急医療の場で診るDV被害患者

著者: 荻野雅弘

ページ範囲:P.1051 - P.1054

はじめに
 19世紀ドイツの哲学者F.W.ニーチェは『結婚生活は長い会話である』と言っている.「楽しい会話であるとき,退屈な会話であるとき,激しいやりとりの会話であるとき,いずれにせよ長い会話である」.しかし今日では,激しいやりとりが一つ間違えると犯罪となる.

プライマリケアにおけるShared Care—尿失禁患者のマネジメント・9

治療—行動療法・電気刺激法ほか

著者: 田中純子

ページ範囲:P.1058 - P.1061

行動療法
 1.腹圧性尿失禁に対する行動療法
 1)骨盤底筋訓練法
 骨盤底筋訓練(pelvic floor Muscle training)は,米国のKegelが1948年に提唱した腹圧性尿失禁の代表的な治療方法で,日本においても広く用いられている.
 尿道括約筋を含む恥骨尾骨筋を繰り返し随意に収縮/弛緩させることにより,骨盤底筋力を増強させ,尿失禁を防止または軽減させる.

内科医のためのリスクマネジメント—医事紛争からのフィードバック・3

薬剤添付文書の重要性

著者: 長野展久

ページ範囲:P.1064 - P.1067

薬剤関連事故
 日常診療で使い慣れているはずのありふれた薬剤であっても,その投与量,投与回数,投与方法,コメディカルへの指示方法,そして患者へ説明するときの注意事項などをめぐって,思わぬ医事紛争へと発展することがあります.例えば,消化管出血をきたした患者の内服薬指示箋に,担当医師は「トロンビン1V(バイアル)」と記載して経口投与の指示を出したつもりなのに,コミュニケーションが不十分で担当看護師は「トロンビンi.v.」すなわちトロンビンを静脈注射する指示と勘違いし,「禁静注」であるトロンビンが静脈内投与されて不幸にも患者が死亡したというようなケースさえあります.
 薬剤投与にあたっては,医師や看護師は医療のプロであって間違えるはずはない,いつも基準通り適切に使用されるはずだ,と世間の誰もが認識しています.そのため,ひとたび薬剤に関連した患者の死亡・重度後遺障害残存という結果につながると,担当医師は厳しくその責任を問われることになります.

新薬情報・22

リセドロン酸ナトリウム水和物(アクトネル®錠2.5mg,ベネット®錠2.5mg)

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.1068 - P.1070

適応■骨粗鬆症の診断が確定した女性患者〔添付文書での適応は骨粗鬆症とのみ記されているが,使用上の注意として男性患者での安全性および有効性は確立していないとの記述があるので,実質的には上記のようになる(詳しくは「臨床効果のエビデンス」の項を参照)〕.
用法・用量■成人にはリセドロン酸ナトリウムとして2.5mg(1錠)を1日1回服用する.この薬物は粘膜刺激性があるため,口腔内で噛んだり舐めたりせず,また,食道停留により食道炎や潰瘍を生じる可能性があるので,約180mlの水とともに経口投与し,服用後少なくとも30分は横にならないようにする.就寝時や起床前には服用しない.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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