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雑誌目次

雑誌文献

medicina39巻9号

2002年09月発行

雑誌目次

今月の主題 内科医に必要な血管疾患診療の知識

理解のための33題

ページ範囲:P.1581 - P.1587

血管疾患の基礎知識

動脈と大動脈の解剖と病理

著者: 高橋啓 ,   大原関利章 ,   直江史郎

ページ範囲:P.1450 - P.1452

ポイント
 動脈は,大動脈に代表される弾性型動脈と,冠状動脈や脳動脈などの筋型動脈とに分類される.
 動脈は内膜,中膜,外膜の3層構造を有し,それぞれの間には内弾性板,外弾性板が存在する.
 弾性型動脈の中膜には弾性線維が何十層も配列し,その間に平滑筋細胞が介在する.
 筋型動脈は明瞭な内弾性板と平滑筋細胞の密な配列からなる中膜とが特徴的である.
 動脈を炎症の場とする諸疾患を考えるとき,いずれのサイズの血管が侵襲されているか,組織像は壊死性炎か肉芽腫性炎かを念頭に置く必要がある.

血管壁の生理機能

著者: 向井靖 ,   下川宏明

ページ範囲:P.1454 - P.1457

ポイント
 血管は,血流と血管壁の恒常性を維持する機構を備えた巨大な臓器である.
 血管内皮は抗血栓性を有するほか,さまざまな生理活性物質を産生・遊離している.
 血管病発症に先行して,内皮機能障害など,正常な血管機能の破綻が存在する.

粥状動脈硬化症の進展と退縮

著者: 高木洋介 ,   由谷親夫

ページ範囲:P.1458 - P.1460

ポイント
 粥状動脈硬化症の進展は,時間的に一様に進むわけではなく,いくつかの転機が存在する.
 内皮障害反応説(response to injury hypothesis)は,動脈硬化に先立って内皮細胞への障害が起こるという説である.
 内皮細胞障害の結果,透過性亢進が起こる.
 内皮細胞直下に沈着したリポプロテインは酸化などの修飾を受けやすい.
 マクロファージは酸化されたLDL(oxidized low-dencity lipoprotein)を貪食し,泡沫細胞となる.
 種々のサイトカインや成長因子により平滑筋細胞の遊走,形質転換,増殖,分泌が誘導される.

人工血管についての基礎知識

著者: 岡崎幸生 ,   伊藤翼

ページ範囲:P.1462 - P.1463

ポイント
 現在使用されている人工血管は,材質の違いからポリエステル糸(Dacronなど)を編んで作成したものとexpanded polytetrafluoroethylene(e-PTFE)とに大別できる.
 ポリエステル製編み織り人工血管には,平織り(woven)とメリヤス編み(knitted)がある.
 porosity(有孔率)は,人工血管内に水を用いて120mmHgの圧をかけたとき,1cm2当たり1分間にどれだけの水が漏出するかをmlの単位で表した数値として示される.
 人工血管の課題は,小口径人工血管開存性向上と人工血管の耐感染性の向上である.
 小口径人工血管の遠隔閉塞の主要原因は吻合部内膜肥厚である.

血管疾患診断へのアプローチ

症候と身体所見のポイント

著者: 上松正朗 ,   永田正毅

ページ範囲:P.1464 - P.1466

ポイント
 血管に狭窄が生じると,その支配領域にしびれ,脱力,鈍痛,疼痛,痙攣,皮膚温低下,蒼白,潰瘍形成などの虚血症候を生じる.
 肺梗塞や大動脈解離などは緊急治療を要するため,迅速な対応が必要である.
 間欠跛行の程度により,閉塞性動脈硬化症の重症度を判定しうる.
 深部静脈血栓症は肺梗塞の原因となるため,注意が必要である.

血液検査は何に役立つか

著者: 小柳左門

ページ範囲:P.1467 - P.1469

ポイント
 血液検査は多くの血管疾患においてその病因や病態を把握し,経過や治療効果を判定するうえで有益な情報を与える.血管炎では炎症所見のほかに免疫機能の判定が,また血栓性閉塞性血管疾患では血液凝固線溶系の病態把握が重要である.
 最近では動脈硬化の進展と炎症の関連が注目され,血清高感度CRPの重要性が指摘されている.

超音波断層法による画像診断

著者: 大滝英二

ページ範囲:P.1470 - P.1473

ポイント
▶エコー法は,施行者の能力により得られる画像が変わることが,利点であり欠点でもある.
▶装置の改良により末梢動静脈の診断も可能となりつつある.
▶狭窄の程度をみるだけではなく,血管壁の正常まで判定する必要がある.

超音波ドプラ法による評価

著者: 加地修一郎 ,   赤阪隆史

ページ範囲:P.1475 - P.1477

ポイント
 急性大動脈解離の診断においては,経胸壁心エコー図は合併症である大動脈弁閉鎖不全症と心タンポナーデの有無の診断に有用であり,経食道心エコー図は存在診断の精度が高い.またカラードプラ法を使用することにより,entryあるいは偽腔内の血流の有無の診断が可能である.
 腹部大動脈瘤の診断において腹部超音波は,径の測定や,内腔の血栓化の状態などを非侵襲的に評価することが可能であり,診断的価値は高い.
 末梢動脈の超音波診断としては,頸動脈においてよく行われ,高解像度の探触子と,Bモードとドプラ法を使用することによって,精度が高い狭窄の診断が可能になる.

X線CTによる画像診断

著者: 渡辺滋

ページ範囲:P.1478 - P.1480

ポイント
 体軸横断面における血管の解剖学的構造(位置と大きさ)を知っておくことが大切である.
 動脈瘤,肺動脈血栓,大動脈硬化,冠動脈石灰化,大血管の先天異常などの診断に有用性が高い.
 大動脈瘤の破裂や大動脈解離の急性期の診断に造影CTが有用である.
 末梢動脈の狭窄の診断には造影3次元構築像が有用である.
 冠動脈石灰化は冠動脈狭窄のスクリーニングにも利用される.
 肺動脈血栓の診断と血栓溶解療法の効果判断に造影CTが利用される.

MRIによる血管疾患の画像診断

著者: 石田正樹 ,   佐久間肇 ,   竹田寛

ページ範囲:P.1481 - P.1484

ポイント
 MRIによる血管疾患の画像診断は,大動脈解離,大動脈瘤,閉塞性動脈硬化症,下肢深部静脈血栓症などの診断や,これらの疾患の術前・術後検査,経過観察などに有用である.
 血管疾患のMRI検査では,疾患に応じて適切な撮像法を用いることにより,非侵襲的に診断価値の高い情報が得られる.

血管造影法

著者: 長谷部光泉 ,   橋本統 ,   栗林幸夫

ページ範囲:P.1485 - P.1489

ポイント
 血管造影を安全に施行するためには正しくSeldinger法を習得する必要がある.
 血管造影法は診断のみにとどまらず,その治療的応用(Interventional Radiology:IVR)が現代医療の中心となっている.
 各手技の習得は,経験のある専門医の下で指導を受ける必要がある.

血管疾患治療の理解のために

薬物治療

著者: 並木温

ページ範囲:P.1490 - P.1492

ポイント
 冠動脈硬化症,脳動脈硬化症,下肢閉塞性動脈硬化症は全身性動脈硬化症の一つの表現型であり,それぞれが合併する頻度は高い.
 閉塞性動脈硬化症の薬物治療には抗血小板薬と血管拡張薬があり,臨床的な有用性が少しずつ証明されつつある.
 閉塞性動脈硬化症の生命予後を改善させる薬物療法は,冠動脈疾患や脳血管疾患などの心血管イベントをも抑制する作用を有するものである.

カテーテルによる拡張治療

著者: 中山知博 ,   原和弘

ページ範囲:P.1493 - P.1495

ポイント
 カテーテルによる拡張治療は動脈硬化性疾患の治療法の一つである.
 拡張治療によるメリット・デメリットを術前に十分検討する必要がある.

血管塞栓術

著者: 古井滋 ,   神武裕

ページ範囲:P.1496 - P.1499

ポイント
 動脈塞栓術は出血の止血,血管性病変や腫瘍の治療,血流変更などを目的に行われる.
 塞栓術は,胃食道静脈瘤など静脈系の病変の治療にも用いられている.
 塞栓術に使用する塞栓物質には液体のものと固形のものとがあり,対象となる疾患の種類や部位などによって使い分けられている.

ステントグラフトによる治療

著者: 石丸新

ページ範囲:P.1500 - P.1503

ポイント
 治療の原理は,ステントグラフトを動脈瘤の中枢および末梢側の健常部位に固定して,瘤内の減圧を図ることである.
 適応疾患は,遠位弓部の一部を含む胸部下行大動脈領域の瘤もしくは解離と,腎動脈分岐部末梢の腹部大動脈瘤である.
 治療成績には,適応の選択,システム機能の理解と技術的な習熟が関連する.
 本治療法の確立には,なお長期にわたる耐久性の検証が必要である.

手術治療

著者: 重松宏

ページ範囲:P.1504 - P.1507

ポイント
 閉塞性動脈病変に対しては,血栓内膜摘除術とバイパス術を病変の部位と範囲に応じて適切に使い分けるが,解剖学的経路に沿った再建が望ましい.
 動脈瘤に対しては,基本的には瘤を切除し代用血管で置換するのが原則である.
 一次性下肢静脈瘤の治療は,深部静脈から表在静脈への逆流を適切に処理することが最も大切である.

急性血管疾患の診療

急性動脈閉塞症

著者: 石橋宏之 ,   太田敬 ,   尾崎行男

ページ範囲:P.1509 - P.1511

ポイント
 急性動脈閉塞症には血栓症と塞栓症があり,この鑑別が重要である.
 症状は5P〔pain(疼痛),pallor(蒼白・チアノーゼ),pulselessness(動脈拍動消失),paresthesia(知覚障害),paralysis(運動神経麻痺)〕で表現される.
 知覚障害や運動神経麻痺が存在する場合には緊急血行再建術が適応となるので,早急に外科医にコンサルトする.

急性大動脈解離

著者: 加地修一郎 ,   吉田清

ページ範囲:P.1512 - P.1514

ポイント
 急性大動脈解離は,胸痛の鑑別診断として常に念頭に置くべき疾患であり,未治療で放置すれば予後不良のため,診断は的確かつ迅速に行わねばならない.
 急性大動脈解離の診断においては,解離の形態はさまざまであるため複数の画像診断を組み合わせて病態を把握することが重要である.
 治療は,上行大動脈に解離が及んでいるかどうかが一つのポイントになる.一般に,上行大動脈に解離が存在するA型の場合,緊急手術の適応であり,上行大動脈に解離が及ばないB型の場合,内科治療の適応である.

深部静脈血栓症,血栓性静脈炎

著者: 成瀬好洋

ページ範囲:P.1515 - P.1517

ポイント
 診断には血栓の成因を探る十分な問診が必要で,超音波検査は本症に対する検査法の第一選択である.
 ヘパリンによる抗凝固療法を行うが,発症後2週間以内の症例ではウロキナーゼによる血栓溶解療法を考慮する.
 重症例では症状の軽減のため,血管内治療や外科的な血栓摘除術の適応となる.
 炎症症状の消退後はできるだけ早期に離床を図るが,その際には肺塞栓症に対する注意が必要である.

肺動脈血栓塞栓症

著者: 太田雅弘 ,   中野赳

ページ範囲:P.1518 - P.1521

ポイント
 静脈血栓症をきたしやすい発症状況にないか注意する(Virchowの3徴).
 心エコーによる右心負荷の有無が治療法選択の参考となる.
 本疾患は再発性の疾患であることを認識する.初回の発作が軽症であっても常に再発を念頭に置き,二次予防に努める.

慢性血管疾患の診療

胸部大動脈瘤,胸腹部大動脈瘤

著者: 許俊鋭

ページ範囲:P.1522 - P.1525

ポイント
 胸部大動脈瘤には真性大動脈瘤と大動脈解離,外傷性仮性大動脈瘤がある.紡錘型で横径5〜6cm以上に拡大した場合,手術適応となる.
 慢性期の胸部大動脈瘤に対する内科治療は,主としてサイズの拡大を防止する降圧治療が基本であるが,大動脈瘤の成因に感染や炎症が関与している場合や,嚢状形態のもの,あるいは外傷性仮性大動脈瘤は,サイズにかかわらず手術治療の適応となる.

腹部大動脈瘤

著者: 安田慶秀

ページ範囲:P.1527 - P.1529

ポイント
 腹部大動脈瘤の多くは無症状で,腹部拍動性腫瘤で発見されることが多く,腹部エコー,CTなどの画像検査で診断が確定する.
 有症状例,破裂例は緊急手術を行う.low risk群では瘤径5cm以上,high risk群では6cm以上が待機手術の適応である.
 待機手術例の成績は良好だが,破裂性腹部大動脈瘤の成績は著しく不良である.

高安動脈炎(大動脈炎症候群)

著者: 渡辺重行

ページ範囲:P.1530 - P.1533

ポイント
 高安動脈炎は,大動脈弓とその主要分枝,そしてしばしば肺動脈を侵す非特異的動脈炎である.
 炎症の主体は外中膜にあるが,内膜にも炎症性肥厚が及び汎血管炎をなす.
 本症の症状は炎症に起因する全身症状と,動脈の狭窄・拡張に起因する局所症状とからなる.
 若年者,特に若年女性の大中血管の狭窄・拡張症状や高血圧,四肢の脈・血圧差,血管雑音に注目し,本症を疑う.

成人でみられる川崎病後遺症

著者: 菅原洋子 ,   石井正浩 ,   赤木禎治

ページ範囲:P.1534 - P.1536

ポイント
 川崎病は4歳以下の乳幼児に発症する疾患であるが,後遺症をもったまま成人期に移行する患者が増えている.γグロブリン治療の導入によって冠動脈瘤の発生頻度は5%以下に低下したが,いまだ完全に抑制できていない.原因不明の冠動脈瘤を伴う若年成人の虚血性心疾患をみた場合,第一に考えるべき疾患である.

その他の血管炎—分類と診断を中心に

著者: 鈴木憲明 ,   大田明英

ページ範囲:P.1537 - P.1539

ポイント
 血管壁に生ずる炎症性病変を血管炎という.
 全身症状のほか,侵襲される血管の部位,大きさを反映した種々の臓器症状を示す.
 ANCA測定はANCA関連血管炎の診断に有用である.

頸動脈狭窄症

著者: 山本浩之 ,   光藤和明

ページ範囲:P.1541 - P.1543

ポイント
 わが国でも欧米と同様に,頸動脈狭窄を有する患者の頻度が増加している.
 頸動脈狭窄の合併症には脳塞栓があり,その発症を抑制する治療法には,薬物療法,頸動脈内膜剥離術,頸動脈形成術がある.
 現在,頸動脈内膜剥離術と頸動脈形成術の有効性はコントラバーシャルであるが,多くのRCT試験が行われており結果が待たれている.また,頸動脈形成術はデバイスの改良,ニューデバイスの出現によりさらに発展する可能性がある.

腎動脈狭窄症

著者: 戸川証 ,   菱田明

ページ範囲:P.1544 - P.1546

ポイント
 腎動脈狭窄症は,腎血管性高血圧,虚血性腎症の原因として重要である.
 レニン分泌刺激試験,レノグラム,ドプラエコー,MRアンギオグラフィ,ヘリカルCT,血管造影が診断に用いられる.
 腎機能の保持を治療の第一目標とし,これが期待できる場合PTRAなどの血行再建術を行うことを検討する.

閉塞性動脈硬化症(ASO)

著者: 木村壮介

ページ範囲:P.1547 - P.1549

ポイント
 動脈硬化に起因する動脈の狭窄または拡張性病変は,冠動脈,弓部大動脈分岐部,腹部大動脈(下部),大腿動脈の4カ所に発症しやすい.これらの部位に好発する疾患群の一つとしてASOを捉える必要がある.
 間歇性跛行の病態を患者によく説明し,正確な重症度の判定をする.状況によっては一緒に歩くことも必要.また,他の疾患のため安静,運動制限を強いられている症例では,間歇性跛行で重症度を判定することはできない.
 ABPI(ankle-brachial pressure index)の測定は,brachial arteryが大動脈の血圧を反映しているという前提で意味がある.上肢の左右差がないこと,安定状態の血圧であることを確認のうえ,計測する.
 カテーテル治療,バイパス手術は,医学的な適応に加え,患者本人の期待している日常生活活動,合併疾患による制限などを加味して判断する.

閉塞性血栓血管炎(Buerger病)

著者: 佐藤伸一

ページ範囲:P.1550 - P.1552

ポイント
 若年者の男性に多いが,女性にも発症する.
 喫煙と密接な関係があり,患者の多くは直接あるいは間接の喫煙歴がある.
 四肢末梢に発症し,上肢の末梢動脈も罹患する.
 血管全層の炎症である.動脈炎のみではなく静脈炎も起こしやすく,遊走性静脈炎として見いだされることが多い.
 動脈硬化症を引き起こす原疾患やその結果を示す所見があれば,本症を除外する.
 動脈造影では,動脈の突然の途絶や先細りを示し,樹根状,コルク栓抜き状の側副血行路を認める.

Raynaud病・Raynaud症候群

著者: 金井美紀 ,   橋本博史

ページ範囲:P.1554 - P.1557

ポイント
 Raynaud現象は,細小動脈が発作的あるいは周期的に収縮し,皮膚色調が蒼白,チアノーゼ,紅潮に変化する現象をいう.
 指尖脈波,加速度脈波,サーモグラフィなどでRaynaud現象の臨床評価を行う.
 原発性のものを「Raynaud病」と呼び,二次性にみられるものを「Raynaud症候群」と呼ぶ.
 治療は血管拡張薬,抗凝固薬が主体である.

上大静脈症候群

著者: 平山治雄

ページ範囲:P.1558 - P.1561

ポイント
 上大静脈症候群は悪性腫瘍や大動脈瘤によって上大静脈が圧迫され,上半身のうっ血を特徴とする.
 原因の80%以上は悪性腫瘍であり,予後不良である.
 臨床症状と側副血行の状態およびCTによって診断は容易である.
 悪性腫瘍が原因の場合,治療は放射線療法,抗癌剤が中心になるが,姑息的治療にならざるを得ない.
 上大静脈の圧迫による狭窄閉塞の解除にはステントが有用である.

下肢静脈瘤

著者: 安達秀雄

ページ範囲:P.1562 - P.1565

ポイント
 下肢静脈瘤は下肢の静脈が拡張・蛇行し,静脈瘤を形成するもので,静脈疾患のなかでは最も頻度が高い.
 静脈弁の機能不全が原因で症状・所見が発症したものを一次性(原発性)静脈瘤といい,深部静脈血栓症などが関与して発症してきたものを二次性(続発性)静脈瘤と呼んでいる.外来でみられる大部分の下肢静脈瘤は一次性(原発性)静脈瘤である.大伏在静脈の弁不全が最も多い.
 治療は大別して,弾性ストッキングによる保存治療,静脈硬化剤注入による硬化療法,ストリッピング手術(静脈抜去術)の3つに分けられる.それぞれを併用することも多い.最も確実な治療方法はストリッピング手術である.

トピックス

X線CT,MRIによる冠動脈の描出

著者: 似鳥俊明 ,   横山健一 ,   高橋修司 ,   蜂屋順一

ページ範囲:P.1566 - P.1568

ポイント
 X線CT,MRIの限られた機種で,冠動脈の描出が可能になった.
 臨床的位置づけはまだ定まっていないが,実用化に向けての期待が高まっている.
 CT冠動脈造影は,今後検出器の多列化による飛躍的な分解能の向上が期待できる.
 MRIは,冠動脈の形態評価を含め,comprehensive cardiac examinationとしての役割を期待される.

閉塞性動脈硬化症に対する血管新生治療

著者: 室原豊明 ,   佐々木健一郎 ,   明石英俊

ページ範囲:P.1569 - P.1574

ポイント
 重症末梢動脈閉塞症に対し,血管新生療法が行われるようになった.
 内皮前駆細胞や骨髄細胞による細胞治療が行われるようになった.

抗血栓薬の最新情報

著者: 坂本知浩 ,   小川久雄

ページ範囲:P.1575 - P.1577

ポイント
 アスピリンは,トロンボキサンA2の生成抑制により血小板凝集を阻害し,血管イベントを抑制する.
 アスピリンは急性心筋梗塞,不安定狭心症,陳旧性心筋梗塞,脳卒中,一過性脳虚血発作,安定狭心症,間歇性跛行,心房細動を有する患者の血管イベントを抑制する.
 アスピリン単独による75〜150mg/日の使用が,現在証明されている最も効果的な抗血小板療法である.

再狭窄のこないステント

著者: 上妻謙

ページ範囲:P.1578 - P.1580

ポイント
 経皮的冠動脈形成術の最大の問題点は再狭窄である.
 冠動脈ステント植え込み後の再狭窄はむしろ難治性となることがある.
 シロリムスやパクリタキセルを用いた薬剤溶出性ステントの出現により,この問題はほぼ完全に解決される可能性が出てきた.

演習 腹部救急の画像診断・3

下腹部痛・嘔気で入院した81歳女性

著者: 井原信麿 ,   八代直文 ,   葛西猛 ,   山田成寿

ページ範囲:P.1588 - P.1593

Case
 症例:81歳,女性.
 主訴:下腹部痛.
 現病歴:20年前および6ヵ月前に子宮脱で開腹手術の既往がある.2日前より下腹部痛・嘔気が出現し,近医に入院した.イレウスの診断で治療されたが症状が増悪,また腹部エコーで腹水が認められたため当院に転院となった.
 身体所見:意識JCS II-10,体温38.7℃,血圧85/60mmHg,脈拍103/min.腹部には筋性防御とBlumberg兆候があり,右下腹部に限局した腫瘤と著明な圧痛を認めた.
 検査所見:白血球数11,900/μl↑,尿素窒素33mg/dl↑,クレアチニン1.5mg/dl↑,CRP 13-95mg/dl↑.
 画像所見:受診当日の造影CT後の腹部単純X線写真(臥位正面像,図1a),および造影腹部・骨盤CT(図1b,c)を示す.

カラーグラフ 消化管内視鏡検査—知っておきたい基礎知識・21

潰瘍性大腸炎

著者: 岩男泰 ,   長沼誠 ,   日比紀文

ページ範囲:P.1595 - P.1598

炎症性腸疾患の内視鏡診断
 炎症性腸疾患の診断は,臨床症状に加え,X線・内視鏡などの画像診断,細菌学的検査,病理学的診断を併せて総合的に行う必要がある.特に内視鏡の役割は大きく,診断だけでなく治療内容の決定を行ううえでも必須の検査法である.腸管に炎症を生じる疾患は数多くあり,診断にあたっては,それぞれの内視鏡所見の特徴を熟知しておく必要がある.腫瘍性病変を診断する場合との大きな違いは,病理学的診断が必ずしもgoldenstandardになりえないことにある.潰瘍性大腸炎(UC)とCrohn病は最も重要な疾患であり,この両者の診断をマスターすることができれば,他の疾患の診断・鑑別も容易になる.特にUCは最も頻度が高く,大腸の炎症性疾患を診断をする際に,まず鑑別すべき疾患である.厚生労働省の班研究による診断基準では,UCの確定診断には他の類似疾患の除外診断が必要とされているが,その特徴的な内視鏡所見があれば診断は決して難しくはない.ただし,病期によって感染や虚血,治療の影響などの要因が加わり,多彩な所見をとりうることを知っておく必要がある.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.1600 - P.1606

プライマリケアにおけるShared Care—尿失禁患者のマネジメント・12

海外の尿失禁治療におけるShared Care(1)—尿禁制クリニック

著者: ,   杉村享之

ページ範囲:P.1610 - P.1614

はじめに
 尿失禁は年齢・性別にかかわりなく認められる病態であり,患者のQOLを大きく左右する疾患である.
 尿失禁に悩む患者は多い.そのため“彼らが何を必要としているか”についてあらためて認識しておく必要がある.今回のテーマは,尿禁制クリニックが尿失禁患者のQOL改善のために,“Shared Careという形で,専門医と協力して何ができるのか”ということである.本稿では,患者側からみたさまざまな問題点と,“尿失禁患者がわれわれ医療側にどのような治療を期待するのか”ということに注目する.次回は,実際にイギリス,オーストラリア,ニュージーランドで広く行われている尿禁制クリニックの実状(さまざまな治療法,それにかかる治療費など)に注目する.

短期連載 医師が出遭うドメスティック・バイオレンス・4【最終回】

マサチューセッツ総合病院におけるDV対応プログラムと医療スタッフトレーニング

著者: 山田真由美

ページ範囲:P.1615 - P.1619

医療・健康問題としてのDV
 女性に対する暴力は,深刻な社会問題である.そしてその多くは,被害者のパートナー(夫,ボーイフレンドなど)の手によってなされている.アメリカにおける研究によれば,3〜5人の女性のうち1人は,夫や前夫,パートナーや以前のパートナーから暴力の被害に遭うといわれている1).これらの親密な関係の間で起こる暴力,ドメスティックバイオレンス(DV)は,アメリカの25〜44歳までの女性の重度外傷の主因であり,その件数は強盗,性暴力,交通事故による外傷の合計数を上回っている2).また,それらDVに関連する傷害に費やされる医療費は,全米で約18億ドルにも上ると推定されている3)
 アメリカの医療界においては,ここ約10年ほどの間にDVへの対応が急速に進められてきた.1992年,Joint Commission on Accreditation of Healthcare Organizations(JCAHO)が,研修指定病院において,虐待・ネグレクト(放置,保護の怠慢のこと.

内科医のためのリスクマネジメント—医事紛争からのフィードバック・6

ありふれた疾患に潜むリスク

著者: 長野展久

ページ範囲:P.1620 - P.1623

上気道炎
 上気道炎といえば,専門領域にかかわらず日常的にみることの多いありふれた疾患の一つです.病原体の80〜90%はウイルスであり,残りは細菌,マイコプラズマ,クラミジアなどが占めます.治療としては,ウイルス感染に伴う不快な諸症状を緩和し,全身状態を改善させ,二次的な細菌感染などの合併症を防止することが重要です.そのようなことを念頭に置いたうえで,熱が出た,喉が痛い,鼻がつまる,咳が出る,身体がだるいというような症状を主訴として患者が来院すれば,問診,喉の診察,聴診などを一通り行い,重大な所見がなければとりあえず総合感冒薬,解熱鎮痛薬,鎮咳薬,場合によっては抗生物質を処方して経過観察を行うことが多いと思います.おそらく上気道炎のほとんどが,対症療法を主体とした1週間程度の経過で自然治癒へと向かい,大きな問題にはなりません.ところが,ご存じの通り上気道炎を契機として原疾患が悪化したり,当初は上気道炎と思われたのに実は背後に重大な病気が潜んでいたということもあり,危険なサインを見逃して重大な事態へと発展するケースがあります.
 そこで今回は,ごく短時間のあいだに容態が急変したきわめて重症の「上気道炎」を2例取り上げることにします.

新薬情報・24

ロラタジン(クラリチン®錠100mg)

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.1624 - P.1626

適応■アレルギー性鼻炎,蕁麻疹,皮膚疾患(湿疹・皮膚炎,皮膚掻痒症)に伴う掻痒.
剤型■ロラタジン10mgを含む錠剤.米国では1O年以上前から市販されており,現在では徐放性剤型や小児用のシロップも発売されているが,日本では当面速放性の錠剤のみが発売される.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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