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雑誌目次

雑誌文献

medicina4巻10号

1967年10月発行

雑誌目次

Leading ArticLe

病人の心理—医師・患者関係の背後にあるもの

著者: 池田数好

ページ範囲:P.1405 - P.1407

病識と生の欲望との矛盾
—臨床医学はそれを解決できない—
 すべての病人は,あるときは明らかに,あるときは潜在的に二つのものに苦悩する。第一は症状そのものにたいしてであり,第二は「病気であるという事実」にたいしてである。ときに第一のものを欠くことはあつても(自覚症状をともなわない時期),一般に第二のものが病人の心から消え去ることはない。 いうまでもなく,第二のものが現われるということは,自己の病気を自覚する能力が,われわれにそなわつているからであり,精神の未発達な子供や,特定の精神病者をのぞいて,この能力—病識とよばれているもの—を欠くことはないからである。したがつて,病気というものが人間の心にひきおこす心理的な反応は,まず何よりも,ここから考察されなくてはならない。病識をうむ人間のこのような能力は,同時に,人間の生存が有限であるということを,的確に認知する能力でもある。ところが一方では,すべての人間の心のなかには,この能力にもまして普遍的に,いつまでも生きていたい,死にたくないという生の欲望がうずまいていることも自明である。

100万人の病気

薬物アレルギー—ペニシリン・アレルギーを中心に

著者: 堀内淑彦

ページ範囲:P.1408 - P.1414

 ヒトの薬物アレルギーの機序はほとんどわかつていないというのが現状であるが,ペニシリン・アレルギーだけは最近ようやくその全貌が明らかにされつつある。ペニシリン・アレルギーをもとにしながら,他の薬物アレルギーの機序を類推した。

座談会

病歴管理—その中央化をめざして

著者: 加納寛一 ,   日野原重明 ,   高橋政祺 ,   栗田静枝 ,   小野田敏郎

ページ範囲:P.1416 - P.1423

 カルテを各自が分散して持つことにより,これを共通のデータにすることもできず,また患者と症例を「私有化」する結果ともなるために,病院全体としての正確な医療評価もできないまま過ぎてきたのが,大方の実情といえよう。これは,臨床医学の進歩にとつても,また患者にとつても,まさしく不幸なことであるに相違ない。

診断のポイント

膵癌

著者: 築山義雄

ページ範囲:P.1425 - P.1426

 膵がんの診断は現在においてももつともむずかしいものの一つである。特に黄疸,腫瘤を認めない時期における診断は非常にむずかしい。また膵腫瘤を触れた場合でもがんか炎症かを区別するのにきわめて困難なことがある。

フィラリア症(糸状虫症)

著者: 佐藤八郎

ページ範囲:P.1427 - P.1428

フィラリア症流行地
 フィラリア症(わが国では大部分はバンクロフト糸状虫症)は本来,熱帯,亜熱帯に多い疾病である。わが国においても古くより本症に関する記載,報告がなされ四国,九州,沖縄などが本症の流行地として知られていた。
 現今の本症浸淫状況を,昭和37年より実施されている「フィラリア病予防対策」の集団検診成績よりみてみると,昭和37年より昭和41年まで鹿児島,長崎,熊本,宮崎,大分,愛媛,高知,東京,新潟の9府県において約170万名という膨大な人員の検血を行ない,鹿児島,長崎,熊本,宮崎,愛媛,高知,東京の7府県において,本症の仔虫(ミクロフィラリア,Mf.)陽性者が発見されている。すなわち総数約31,000名のMf・陽性者が発見されたが,このうち98%は鹿児島(約80%),長崎(約18%)より発見されている。さらにこの両県においても,奄美大島五島列島など離島の住民に高率にMf.陽性者が見出されている。このように現在では本症の流行はかなり限局されていることが判明しているので,診断にあたつては,患者の現住所のみではなく,出生地,以前の居住地,その他生活歴を詳細に問うことが肝要であろう。

白血球アルカリフォスファターゼ

著者: 服部絢一

ページ範囲:P.1429 - P.1430

 白血球アルカリフォスファターゼ(AP)が臨床検査として実用化したのはそれほど古いことではない。それは1955年Kaplow3)のアゾ色素法の発表に始まるといつても過言ではあるまい。もともとこの酵素は腎臓,肝臓,腸上皮など広範に分布しているが,白血球に存在することは約40年前に推定され,以後,生化学的な方法や組織化学的な方法で検索されるようになつた。なかでも組織化学的な方法にはGomori-高松のコバルト法,武内のカルシウムー銀または鉛法があるが染色時間が永いため実用化にいたらず,Mentonらのアゾ色素法(1944)をKaplowが血液細胞に応用して,その方法の安定性,簡便さから初めて臨床に用いられるようになり,さらに最近では,Naphthol AS-MX phosphateなどの基質(Ackerman,朝長ら4))がつぎつぎに開発され鋭敏度を加えるにいたつた。
 この酵素は血液疾患のうちでは,慢性骨髄性白血病に著減し,これとまぎらわしい類白血病性反応特に骨髄線維症では増加するし,また,諸種の感染症ではその症状の程度に応じて上昇する。以下,最近,われわれの研究室で開発したもつとも簡便で安価な方法(浅山1))を紹介し,その応用面につき叙述してみたい。

治療のポイント

小児とビタミン過剰投与

著者: 小林収

ページ範囲:P.1432 - P.1433

発見しにくい予防的摂取による過剰
 近時ビタミン剤は非常に高濃度に精選された製剤になつているためビタミン過剰投与,それによる障害すなわち過剰症発生の危険が多くなつている。多くのビタミンが製剤として出されているがこれらの過剰投与による障害は脂溶性ビタミンによるものが報告されていて,水溶性ビタミン例は明らかでないが注意しておかねばならない。脂溶性ビタミンは分解排泄がおそく,多くは肝内に蓄積され体内に高濃度になり,一つの中毒症すなわち過剰症を起こすことになる。小児ではビタミンA,D,Kの過剰投与がみられる。治療によつて発現することは比較的まれで,医師,保健所などのすすめによる予防的摂取による過剰が多いのである。治療による過剰投与は発見しやすいが,予防的内服のときには詳細に聞かなければ養育者はこれをなかなか思い出せないことがあり,われわれもにがい経験をもつている。

喘息とステロイド剤

ページ範囲:P.1434 - P.1435

心筋硬塞回復期の指導

著者: 高木誠

ページ範囲:P.1436 - P.1437

 急性心筋硬塞から回復した患者の3分の2以上はもとの職業に復し,ほぼ発病前と同じ生活を楽しむことができる。一方廃疾者となるものは,広範な病変のため心機能がいちじるしく低下したものより,むしろ過度の恐怖や自信喪失による精神的敗北者が少なくなく,医師の誤つた指導が後者の原因となつていることがある。
 心筋硬塞回復期患者の取り扱いの目標は患者にthe pinkな健康と人生がふたたびよみがえりうるとの希望をもたせ,またそうなるように安全かつ積極的に管理指導することである。

外傷性頸性頭痛症候群(むち打ち症候群を含む)

著者: 近藤駿四郎

ページ範囲:P.1438 - P.1439

原因は頸部交感神経の失調に
 こんにちまでの多くの学者の本症候群発生の原因についての考察では,その関心が頸椎に向けられてきたが,筆者は最初から(1955)この説は肯向しえなかつた。これらの学者の注目したところはまず頸椎のOsteoarthrosis deformansであつたし,また椎間板ヘルニアを重視した人もある。筆者の経験によれば,多くの外傷性頸性頭痛症候群を呈する患者の頸椎はなんらの変化をレ線学的には示さない。むしろ正常であることのほうがふつうである。また頸椎の変化を示したとしても,それは外傷によるものと考えるより,年齢との相関のほうがはるかに深いものである。このようなことから筆者は本症候群発生に「レ線学にとらえられるような頸椎の変化」は第一次的な意味はないと考えている。
 頭部外傷にせよ,また「むち打ち」にせよ,外力が作用する部位が頸部であり,これの過伸展,過屈曲が急激に生じたときに本症候群が発生するのであるが,おそらくこの症候群発生の原因としてもつとも重要な役割を演じているものは頸部自律神経系,ことに交感神経系であろう。頸部において血管筋肉その他の軟部組織の損傷が起こりこれが頸部交感神経系の刺激状態を招来することもあろうし,交感神経系の直接の刺激状態というものもありうるであろう。

目で見る神経病学・3

乳幼児の診察

著者: 本多虔夫

ページ範囲:P.1448 - P.1450

 乳幼児の神経系の診察方法は,成人のものとたいへん異なる。これは乳幼児は医師の求めに応じて目を動かしたり,四肢を動かしたりできないことのためばかりでなく,この年齢においては神経機能がまだ完全に発達しておらず,知能,運動機能,平衡機能などの正常範囲が成人のそれとまつたく異なるからである。
 今回,写真でお目にかけるのはちようど,坐ることができるようになり,まもなく,はいはいもしようとする6〜10カ月の乳児の診察法であるが,この方法は,2〜3歳の小児までにも応用できる。

造影剤の選び方

血管造影剤のえらび方

著者: 橋本義雄 ,   榊原文作

ページ範囲:P.1442 - P.1444

造影剤の概略
 血管撮影法が,臨床に用いられるようになつてから,30年あまりの間に,血管造影剤の面でも非常に進歩して,数多くの製剤がつくられてきたが,現在われわれが,日常実際に使用しているのは,コンレイ(60%),アンギォコンレイ(80%)およびウログラフィン(60%と80%)であつて,これらのものは,血管撮影の目的である造影力の面でも,またそのさいに考慮しなければならぬ副作用についても,それ以前のものと比較して,はるかにすぐれたものである。
 これらの成分などを,表1にかかげるが,ウログラフィンは,わが国では1954年以来,広く使用され,その優秀性・安全性などについては,十分な実績がある。コンレイとアンギオコンレイとは,1965年から用いられるようになつた新造影剤であつて,従来のものに比して,いろいろすぐれた性質をもつている。表2に見られるようにいずれも1分子中に,ヨウソ3原子を含む有機化.合物であつて,側鎖や塩基に差のある近縁の物質である。

正常値

糖質負荷試験の種類とその判定基準

著者: 平田幸正

ページ範囲:P.1440 - P.1441

糖質負荷試験の種類
 負荷する糖質としては,ブドウ糖,澱粉,米飯,ブドウ糖以外の単糖類,蔗糖,などがあげられ,また投与法としては,経口的,あるいは静脈内,さらにゾンデによる小腸内投与など,各種の方法がある。また投与回数として,1回のみの投与,2回投与,さらにそれ以上の場合などがある。また,前処置として,コーチゾン,プレドニソロンなどの投与をあらかじめ行なつておいて,糖質負荷試験を施行することもある。

EDITORIAL

病歴管理

著者: 小野田敏郎

ページ範囲:P.1451 - P.1451

 病院における病歴の中央管理ということが,近ごろ大分軌道に乗つてきたようである。病歴のファイリングの専門家を育てて医師がその煩を免れようということが,おそくはあつたが緒についてきたのである。
 ずいぶんいろいろなことが進んでいる中で,この病歴管理ということが遅れをとっている理由がふたつあろうかと思う。

薬効と薬害

著者: 砂原茂一

ページ範囲:P.1452 - P.1452

 近年日本におけるカンフル誘導体研究の歴史をかえりみただけでも,薬効の評価はどれほどおとし穴にみちたものであるかは明らかである。薬効の研究はいうまでもなく厳正な薬理学的研究から出発すべきものであるが,いささか乱暴なもののいい方がゆるされるなら鼻くそでも何でも人間ことに患者に効果があることがまぎれのない方法で証明されさえすればそれでいいともいえる。ただ鼻くそにまず手をつけたのでは成功率がきわめて小さく能率が悪いというだけの話である。
 薬効の評価については臨床試験が最大の関門であることを正しく認識してここに医学の叡智とエネルギーとそして資本を投入しなくてはならない。

グラフ

フィラリア症

著者: 佐藤八郎

ページ範囲:P.1394 - P.1395

 日本に存在する人体寄生のフィラリアは,バンクロフト糸状虫とマレー糸状虫の2種類であるが,大半がバンクロフト糸状虫である.本種は蚊(我国では主としてアカイエカ)で伝播され,成虫は白色糸状の細長い線虫で,主として人間のソケイ部リンパ節や精系リンパ管に寄生している.
 臨床像は,リンパ管,リンパ組織を中心とする炎症性病変とリンパ管の閉塞による病変およびそれらの後遺症であり,急性期の熱発作(くさふるい),慢性期の象皮病,陰嚢水腫,乳び尿らが特徴的である.

自動診察装置

著者: 難波和

ページ範囲:P.1397 - P.1400

 最近,どこの病院でも患者の殺到していないところは少ない。そのうえ,医師や看護婦が不足がちである。公的病院では1人の医師は平均30人くらいの入院患者を受持ち,そのうえ1日に50人から60人くらいの外来患者を診なければいけない。その結果は1人の患者に対する医療サービス実時間を短縮しなければならなくなる。だいたいどこの病院でも患者は待合室でさんざん待たされる。やつと自分の順番がきて,たよりにしていた診察が「あつ」というまにかたづけられる。診察の結果,検査の指示を受け,検査科へ行つたら受付け終了。また翌日出なおさなければならない。しかも,この人たちは病人なのだ。元気な人でもこれではたまらない。一方医師のほうもたてつづけに患者を診ているわけで,連続3〜4時間このようなことをしつづけることは,頭脳・肉休労働ともに限界であろう。これはどうにかならないものであろうか。現在の日本はあらゆる分野で近代化を行なつている。しかし,病院の機能構造をみると近代化という点ではもつとも遅れているといえる。日本の医療形態の慣習に対し,医師側も患者側も反省を怠つているのではないであろうか。病院を患者という入力に対し,合理的な処置をほどこして出力する修理工場とみて,他の企業で行なつているような近代化を行なう必要がある。人間である医師を神と信ずる患者の盲信を正して,医療形態の合理化をはかる必要がある。

肺疾患と指

著者: 本間日臣

ページ範囲:P.1401 - P.1402

 慢性肺疾患のさいに桴状指がしばしば認められることは,紀元前にヒポクラテスの記載があるほど古くから知られた事実である。肺疾患でない場合,すなわち1)先天性,2)心疾患,3)肝疾患,4)胃腸疾患,5)その他レイノー病,紫斑病,腎盂炎,赤血球増多症の場合にも現われうるので注意を要するが,肺疾患では,気管支拡張症,肺気腫,肺線維症,肺がんなどの場合にしばしば認められ,重要な徴候の一つである。なぜなら肺がん以外の上記疾患では,疾患が長期かつ広汎でかなりの肺機能障害が考えられるからであり,肺がんでは,早期に発現して肺がん発見の端緒となることがあるからである。筆者は,肺疾患患者の診察にあたつては視診のさいに桴状指の有無を必ず確かめて病歴に記載することにしている。

心電図講座・10

心筋硬塞—異常Qと部位診断

著者: 難波和 ,   藤垣元

ページ範囲:P.1474 - P.1479

 古い硬塞では,ST・Tの変化が消失して,異常Qのみが残る。この異常Qの出現する誘導により,硬塞の部位を診断することができる。では,いつたい,異常QとはどのようなQをいうのか,また,部位診断の具体的方法はどのようにして行なわれるか。

他科との話合い

薬の効果と副作用

著者: 鈴木哲哉 ,   日向野晃一 ,   鈴木秀郎

ページ範囲:P.1480 - P.1488

 数多い新薬の中から何を選んで使うべきか,現在使つている薬剤ははたして効くのだろうか,副作用の危険はないのだろうか,という疑問は臨床家の正直な悩みであろう。代表的な薬剤をとりあげながら,これらの問題について卒直にお話合いいただいた。

臨床血液学

血小板の機能

著者: 山中学

ページ範囲:P.1489 - P.1492

 血小板の機能を一言でいえば止血である。ひとたび血管に変化がおこれば,有形成分としてその部に付着集合して止血栓をつくり,また崩壊して自ら内蔵する物質を放出して,止血に全力を捧げる。まことにけなげなものである。

症例 全身性疾患と肺(X)

癌と呼吸器—その1—胃癌の胸郭内転移2例

著者: 三上理一郎 ,   北村潔 ,   北川正信

ページ範囲:P.1493 - P.1498

症例1 いわゆる癌性リンパ管炎様所見を呈した胃癌の肺転移例
 浅○,42歳,男子(ON 8347)
 家族歴 特記すべきことはない。

原発巣を認められなかつた絨毛上皮癌の肺転移

著者: 山根暁一

ページ範囲:P.1499 - P.1501

 絨毛上皮がんは比較的早期に血行性に転移を起こし,急速に増悪する,予後不良の悪性腫瘍の一つであり,転移部は肺(75%以上),っいで腔(50%),その他外陰部,脳,腎,肝などに起こつてくる。
 大部分は妊娠に続発し,しかも胞状奇胎(70%)流産(25%),またときには産後に発生することもある。

検査データ どう読みどうする?

正赤血球性貧血

著者: 日野志郎

ページ範囲:P.1389 - P.1389

いかなる場合正赤血球性というか
 貧血がある場合,それが正赤血球性であるという前に,考えなければならないことが3つある。
 (1)これは.赤血球の大きさの平均値が正常のものに近いということであつて,大小不同が著明であつても,平均値さえ正常範囲にはいれば正赤血球性と称していること。

この症例をどう診断する?・23

出題

ページ範囲:P.1392 - P.1392

症例
 41歳 女
主訴:全身倦怠,悪心嘔吐,下痢,むくみ

討議

著者: 大貫寿衛 ,   田崎義昭 ,   本間光夫 ,   金上晴夫 ,   和田敬 ,   島野毅八郎

ページ範囲:P.1511 - P.1515

 和田 大貫先生,この症例に対して,病歴で特にお聞きになるような点ございますでしようか。

統計

乳児死亡の社会経済面調査(1)

著者: 菅沼達治

ページ範囲:P.1391 - P.1391

 保健に関する諸統計についても,近年社会経済的観察の必要性が認められていますが,この調査は乳児死亡について,昭和40年4月から翌年3月までの1年間実施したものであります。地域は岩手、福島,徳島,長崎,鹿児島の乳児死亡の高い県と,神奈川,静岡の低い県から39保健所を選び,そこに発生した1,674の乳児死亡世帯を保健婦が訪問調査するとともに,母親の保健指導を行ないました。
 ここに述べるのは,いわば第1部ともいえるもので,96,294の出生児を1年間追究した結果,1,844の乳児死亡が発生し(乳児死亡率出生1,000対19.1),この乳児死亡についての調査は,現行の人口動態調査の調査項目にとどめました。

ルポルタージュ

山の上にあるホスピテル—香雪記念病院

著者: 木島昻

ページ範囲:P.1508 - P.1510

 きようもからからの天気,梅田から乗つた阪急特急の窓から流れ込む風も熱気をおびている。西宮北口で下車,タクシーに乗る。
 「六甲山の国立公園のなかにできたデラックスな病院ですよ。5月27日に開院式があつたはずですが」

治療経験から

臨床催眠医学治験

著者: 小島信一

ページ範囲:P.1431 - P.1431

 催眠術は神秘的なものであつて特殊な人にのみ可能な霊術のごとく考えられていたが,現代においては心理学の一分野として科学的に解明され,ひととおりの修業をつめば,実地医家に必要な程度の技術は習得可能なものであることが闡明され,九大池見内科において心身症の治療に大きくとりあげられ,ようやくわが国においても臨床応用が漸次脚光をあびるにいたつた。
 臨床催眠医学の応用範囲は多岐にわたるが,最近とみに増加しつつある精神身体障害には,従前の治療法に依存しては難治なものに薬物療法と併用または単独に試みて卓効を奏する場合のあることが報告されている。 私は斯学に志して日なお浅い者であるが,たまたま著効を奏した症例に遭遇したのでこれを報告し,先輩諸賢のご参考に供したいと思う。

臨床メモ

乳児が泣きやまぬとき

著者: 大塚昭二

ページ範囲:P.1501 - P.1501

 日常,乳児が原因不明で啼泣することはよくみかけるものである。この啼泣も一時的であれば,さほど母親が不安にならぬだろうが,このテーマのように,ある程度長い間泣きやまぬとき,ことに夜間においては,いつそう不安になるようである。このことは夜間の時間外患児に,この種の訴えで来院するものがかなり多いことで裏づけられる。しかし実際問題として,この泣きやまぬ原因をさがし出すことは,一般的でありながら必ずしも容易ではないことがしばしばある。すなわち決め手がわからぬことが多いということである。そこでこの場合の考えるポイントについて簡単に述べてみたいと思う。まず原因を大きく分けて乳児に異常のない場合と異常のある場合と二つに考えると便利である。
 1異常のない場合

話題

望まれる治療機器の研究と開発—第7回国際医用電子(ME)・生体工学(BE)会議から

著者: 清原迪夫

ページ範囲:P.1415 - P.1415

 前回の本会議は東京で2年前に開かれたので,まだその記憶も消えていないうちに,第7回の国際会議がStokholm(Sweeden)で,本年8月14日から19日までの6日間にわたって開催された。

文献抄録

一般実地医家の労働時間とその対策—Brit. Med. J. 1966, 2, 1549-1554

著者: 浦田卓

ページ範囲:P.1506 - P.1507

 一般にホーム・ドクターは,その任務をいかにすればもつとも有効に達成できるかに深甚の関心をはらつているのみならず,いわば個人的な経験の囚入ともいうべく,自己の経験を同僚のそれと比較検討することがいろいろな点で困難でもあるので,一般実地診療の仕事を従来以上に理解しておくことは,きわめて必要であるといえる。一方,医療サービスの消費者としての大衆は,生活水準が上昇するにつれて,ますます多くのものを,一般実地診療から期待するのも事実である。
 以上のような理由によつて,マンチェスターの医療研究所は,一般実地診療に関して一連の研究を実施しているが,今回は"一般医大学"Collegeof General Practitionerの要請にもとづき,研究所の集めたデータを上記の大学に貸与し,その分析に供した。本論文の基礎となつた材料はホーム・ドクターがみずからすすんで提供した記録で,一般実地医家が一週間に診た患者数と,それに対してかれらがその時間をどう割り当てたかを主眼点としたものである。

今月の表紙事

肺癌の細胞診

著者: 田嶋基男

ページ範囲:P.1414 - P.1414

 肺癌は組織型により,予後,治療が相当異なるので,細胞診もできるだけ型分類をする必要がある。
 喀痰中の癌細胞(Papanicolaou染色)

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脳卒中・心筋硬塞および 狭心症発生からみた循環器管理

著者: 福田安平

ページ範囲:P.1445 - P.1447

定年以前の脳・心事故の防止
—管理の最低目標をまずここに—
 現在高年齢者のいる職域集団では大小を問わず循環器管理が行なわれようとしている。それはやはり一般の理解と必要性があるからといつてよいであろう。さて循環器管理の直接の目的はなんであろうか。日本人の平均寿命は男でも70歳になろうとしている。55〜60歳定年という日本の職場の人々が脳卒中や心筋硬塞や狭心症でたおれるようなことは,本来の姿とはいえない。これらの疾患は70歳をこえてからにしてもらいたいものであるし,そう近づけねばならない。ここらが最低の管理のねらいといつてよいかと思う。

きのう・きょう・あした

著者: 河盛勇造

ページ範囲:P.1453 - P.1453

1967.9.9
 国立病院に移つて,4カ月経った。とは言うものの,この病院,「まぼろしの病院」である。この3月まで国立療養所の看板がかかつていたのが,4月1日から国立泉北病院と名前が変わっただけのこと。目下,建物患者さん,その他一切がもとのまま,私一人が余計に加わつたに過ぎない。
 しかし明後年の3月には,別の場所に新しく500ベッドの綜合病院が建ち上る「はず」である。元来楽天的な男であつた私も,この数年来,何事にも少なからず懐疑的になっているので,本当にでき上つてしまうまでは「まぼろしの病院」と呼ぶことにしている。

これからの医療を語る

著者: 佐藤俊樹 ,   本島正雄 ,   佐藤辰男 ,   松本慶蔵 ,   松山恒明 ,   春日豊和 ,   浦田久 ,   秋月源二

ページ範囲:P.1456 - P.1460

 昔と今の医学教育はどこが違うか。専門医とGPの役割。よい医者とは?などについて,現役の大学医局員,開業医それぞれの立場からお話合いいただいた。

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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