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雑誌目次

雑誌文献

medicina4巻2号

1967年02月発行

雑誌目次

特集 尿糖

尿糖の検査—アンケートの結果をながめて

著者: 丹羽正治

ページ範囲:P.211 - P.213

 尿糖検査は従来から尿検査の重要な部分を占め,タンパク,ウロビリノーゲンなどとともに,もつともしばしば定性あるいは定量されている項目に属する。

Joslin Research Laboratoryにおける糖尿病の研究

著者: 三木英司

ページ範囲:P.228 - P.229

診療・研究・教育三位一体の体制
 当研究所は米国ボストンにあり,糖尿病を中心として研究することを目的とする特色を有する研究所です。この名自身はあるいは,なじみがうすいかもしれませんが,Joslin Clinicといえばもつと多くの方がご存じと思います。この研究所,クリニック,それに隣接したNew England Deaconess Hospitalの三つはほとんど一体として,Dr.H.F.Rootのもとに糖尿病財団(Diabetes Foundation)として,糖尿病の研究,患者の診療,教育にあたつており,この三つをはつきりべつべつに論ずることはできません。しかし研究は臨床的なものであつてもかなりの研究所が行なつており,筆者は1964年(昭和39年)7月より,1966年(昭和41年)6月まで2年間この研究所にいたという二つの理由からJoslin Research Laboratoryを中心に紹介いたします。
 この研究所は筆者の渡米当時ようやく新しい研究所として発足したばかりで,まだ入つていない機械もかなりありました。ちなみに,この研究所の前身はBaker Clinic Research Laboratoryといい,前述の隣接した病院のなかに長いあいだありましたので,あるいはこの名のほうをご存じの方が多いかもしれません。

尿糖の症例

1.腎性糖尿

著者: 池田義雄 ,   斉藤浩 ,   安沢竜徳 ,   種瀬富男

ページ範囲:P.193 - P.194

 50gブドウ糖経口負荷試験(以下50g GTT)時に,0.1%以上のブドウ糖尿を検出する例は血糖値の推移から2群に分けられる。すなわち,正常の腎糖排泄閾値をこす高血糖で尿糖陽性になるグループと,血糖値はまつたく正常範囲内にあるにもかかわらず,尿糖が陽性になるグループである。前者は,糖尿病者,あるいは急峻高血糖(oxyhyperglycemia)を伴う例であり,後者は,いわゆる広義の腎性糖尿者である。
 日常私たちが遭遇する尿糖陽性者のなかには,いわゆる腎性糖尿者がかなりの頻度に存在している。以上のように腎性糖尿を広い立場からとればまつたく無害性のものとして放置するわけにはいかない。というのは、各種の新しい,糖尿病状態を特徴づける検索方法の進歩と,上述のごとき腎性糖尿者の長期観察結果から,これらの例のなかには,糖尿病的な性格の強い症例が存在する可能性,あるいは糖尿病へ移行する例がみいだされるからである1)

2.薬物と糖尿

著者: 門田一郎

ページ範囲:P.195 - P.197

 薬物による糖尿としては古くフロリジン糖尿,またPAS糖尿が知られているが,これらは糖代謝異常を伴わない。ここで問題になるのは糖負荷試験によつて血糖上昇のみられる糖代謝異常をきたし,糖尿の現われる場合である。ステロイド剤,サイアザイド剤,ニコチン酸などの投与によつて起こる糖代謝異常がその代表的なものである。これらは二次性糖尿病といわれ,持続すると糖尿病に移行する可能性があり,またいずれも有用な薬剤として現在繁用されるので臨床上その意義は大きい。

3.甲状腺機能亢進症と糖尿

著者: 伊藤国彦 ,   鈴木琢弥

ページ範囲:P.198 - P.199

 甲状腺ホルモンは催糖性であるとされているが,その作用機序については不明の点が少なくない。しかし甲状腺機能亢進症にしばしば糖尿がみられることは,よく知られている事実である。JoslinはLahey Clinicにおける甲状腺疾患500人のうち,primary hyperthyroidismに38.6%,adenomatous goiter with hyperthyroidismに27.7%,nontoxic goiterに14.6%,(control group13.6%)に糖尿の発現をみている。われわれの昭和39年11月より1年間の甲状腺機能亢進症979例についてみると,初診時に糖尿をみたものは61例,6.2%であるが,その後一過性に出現した症例は多い。

4.肝障害と糖尿

著者: 森克巳

ページ範囲:P.200 - P.201

症例
 1.山○博 18歳 男
 主訴 全身倦怠感・嘔吐

5.妊婦と糖尿

著者: 徳田源市

ページ範囲:P.202 - P.203

症例
 27歳 家婦
 生来健康で大きな病気はないという。25歳のとき健康な現在の夫と結婚した。遺伝歴としては本人の父および父の妹が糖尿病にかかつており現在治療中である。某病院で子宮が妊娠月数に比較して異常に大きいから帝王切開をするようすすめられたが開腹されることを拒み,経腟分娩を希望して当院に入院した。分娩は長びき頭部娩出後肩胛部の娩出も遅れ,鎖骨を切断することによりかろうじて娩出せしめえたが,胎児は4,750gで娩出時にはすでに死亡していた。

6.膵臓癌と糖尿および糖尿病

著者: 後藤由夫

ページ範囲:P.203 - P.205

糖尿病と誤診した膵がんの症例
 初めに糖尿病の症状にのみ注意し,腹部にひそむ膵がんを見逃がしたにがい経験について述べよう。
 症例1.1962年10月,某医より糖尿病と思われるが今後の治療方針などにつき教示さ褥時にれたい旨の69歳の婦人が紹介された。5ヵ月前より糖尿病様症状が現われ入院治療中であるがうまくコントロールができないとのことであつた。栄養良好,身長151cm,体重58kg,空腹時血糖値226mg%で胸部,腹部に理学的に異常所見はみられない。Regular insulinの注射を指示し紹介医のもとで治療し,月に一度ずつ糖尿病外来で経過を観察することにした。しだいに血糖値は下がり132mg%となり体重も増したので,レンテインスリンに変えることにした。6カ月後には相当に改善したが,ほぼ1年経過したころから姿を見せなくなつた。それから5ヵ月後に主治医よりがん性腹膜炎で死亡したとの報告を受けた。剖検しなかつたので正確なことはわからないが臨床経過からみていちばん考えられるのは膵がんである。

7.情動と糖尿

著者: 池見酉次郎 ,   大野喜暉

ページ範囲:P.205 - P.207

 外来の初診時や,入院当初の尿糖検査にさいして陽性を示した患者が,他日再検すると陰性になつていることは,しばしば経験されるところである。このような一過性糖尿は,食餌,ブドウ糖注射,外傷およびショック,中枢神経系疾患,内分泌疾患,飢餓,薬物中毒,月経,妊娠などにさいしてみられる。このほかに,精神的興奮,不安,苦痛などにさいしても糖尿がみらることがあり,これは情緒性糖尿とよばれている。ここでは、以前に私どもの教室で経験した情緒性糖尿の症例を紹介するとともに,その発生機転について,若干の考察を加えてみたい。

8.小児と糖尿

著者: 丸山博

ページ範囲:P.208 - P.209

 小児期には糖尿をみることがまれでない。成人あるいは老年にみられる糖尿が,その大部分が,ブドウ糖尿であるのに比べて,小児,ことに乳児期における糖尿ではブドウ糖以外の糖尿が多くみられるのが特徴である。
 糖尿があるときに,これを鑑別するには種々の方法があるが,最近では一次元ペーパークロマトグラフがよく使われる1)。ごく簡単な装置でできるので,なれさえすればいちばんよい方法であろう。しかし,そのようなものがなくてもある程度の鑑別をすることができる(表1)
 。

9.腎疾患と糖尿

著者: 兼子俊男

ページ範囲:P.209 - P.210

 尿細管は糸球体濾液中のブドウ糖を全部再吸収するので,腎疾患で糖尿の認められるのは,尿細管でのブドウ糖再吸収量が減少した場合で,これは一般に腎性糖尿とよばれるものである。このように尿細管機能の異常によつて,単一のある物質のみの再吸収が障害されて,その物質が尿中に出現する疾患としては腎性糖尿,glycinuria,phosphaturia,renal acidosisがあげられるが,腎性糖尿をのぞいて腎疾患に糖尿のみられる場合は,比較的まれなことで,ネフローゼ症候群のさいに一過性に糖尿のみられる場合と,腎疾患末期で広汎な尿細管機能の障害を伴う場合のほかには,特殊な遺伝性疾患としてphospho-gluco-aminoaciduriaがあげられる。これはいわゆるFanconi症候群とよばれていたもので,尿細管の単一物質の再吸収障害と異なり,近位尿細管のmultiple dysfunctionによつて起こる疾患である。
 phospho-gluco-aminoaciduriaはもともとDe Toniが1933年に酸性症,hypophosphatemia,腎性糖尿,腎性くる病を伴った侏儒症の1例を報告して,これが尿細管機能障害による新しい症候群であろうと指摘したことから始まったものである。

座談会

糖尿をめぐって

著者: 阿部正和 ,   平田幸正 ,   丹羽正治 ,   日野佳弘

ページ範囲:P.214 - P.222

尿糖陽性の場合,糖尿病は,いくつかの原因に考えをめぐらした後に,たどりつかねばならない診断であろう。その考えの進め方,糖尿検査のおとし穴と注意など………

Leading Article

第9回国際癌会議をかえりみて

著者: 太田邦夫

ページ範囲:P.177 - P.179

 国際対癌連合の主催する国際癌会議は、1932年Madrid以来,1962年Moscowにいたるまで,すでに8回を閲していたのであるが,開催地は,欧州および米州にかぎられ,世界で最大の人口を有するアジア地域には開かれたことがなかつた。日本は1935年Brussels会議にさいしてアプローチを受けたほどで,山極-市川,佐々木-吉田と,発がん研究の基礎的方向において,いちじるしい貢献の歴史があるとともに,アジア開催となると,経済的諸条件のうえからも最大の候補者となるにふさわしいことは論をまたないところである。1960年日本において連合の理事会が開催せられたのを期として,故田崎勇三博士が中心となつて,1960年の会議を日本に招請する努力が行なわれ,1962年のMoscow会議でこの案が決定された。
 国内では1962年決定の直後,日本学術会議がん研究連絡委員会を中心に,国内組織委員会を結成し,会期,会場,学術プログラム,資金,その他の万般にわたって準備を進めた。その事務局は東京において,財団法人がん研究会がん研究所内におき,委員長吉田富三博士の指揮のもとに,関係者は万事を放擲して働いた。幸いにして資金面もかなり明るい見通しがたてられたのは、その後のながい財界の不景気にもかかわらず,財務委員長として樋口一成博士が努力せられたことによる。

100万人の病気

胃がん—日本人胃がんの実態と早期発見のために

著者: 岡部治弥

ページ範囲:P.180 - P.187

 わが国は胃がん王国といわれる。最近,広く胃がんの早期発見のための集検が行なわれるようになつたが,その方法論や診断能力についてはいまだに多くの議論がある。わが国の胃がんの実態,早期がん発見に横たわる問題など,臨床家のもつとも興味ある問題を解説した。

EDITORIAL

胃がんの集検

著者: 山形敞一

ページ範囲:P.223 - P.223

日本胃集検協議会の結成
 わが国は世界の文明国のうちでは消化器病,ことに胃がんの多いことで著名であるから,日本対がん協会が結成されるや,その地方支部では重要事業の一つとして胃がんの集検がとりあげられたのは当然のことである。
 日本消化器病学会でも胃集団検診を昭和35年度総会のシンポジウムにとりあげたが,そのとき一緒にシンポジウムを担当した演者らが中心となり日本胃集団検診学会が組織され,さらに全国的規模に拡大して,日本胃集検協議会が結成されるにいたつた。従来日本胃集団検診学会では胃集検の基礎的な問題や集検方式などが学術的立場から発表され,討議されているが,今度結成された協議会では胃集検の実施に必要な諸問題がとりあげられ,胃集検が地域住民の福祉に直接結びつくのに役だつものと考えられる。

自然発症糖尿病動物

著者: 中村三雄

ページ範囲:P.224 - P.224

 Lazarusの単行本1)に記されているごとく,犬猫などの家畜において糖尿病の自然発症がときどきみられることはすでに20世紀の初めごろから報告されている。これに反して齧歯類においては,1951年Mayerら2)がobeseマウス(アメリカで発見された肥満マウス)に高血糖をみたのをもつてこの方面の研究の嚆矢とする。この論文に刺激されて私は1957年日本産を中心としてわが国で手に入いる近交系マウスの飽食時血糖値を調べる仕事に着手した。2年後私は肥満,多食,多尿,鈍重なKK系という国産マウスが他の系統より平均血糖値が高いこと,5ヵ月齢以上の個体に尿糖陽性(テステープで+〜++++)反応および200mg/dl以上の高血糖がしばしばみられることを発見した。ここで私が考えたのは「KK系マウスが顕著な高血糖形質を表現するのは比較的高齢においてであるが,もつと若い月齢においても糖同化力そのものは低いに違いない。」ということで,さつそく糖負荷試験を行なつてみた。その結果は予想どおりであつた。一方膵インスリン量は正常よりも高く,また膵組織にはラ氏島の肥大,B細胞の脱顆粒などの変化がみられた。そしてこれらの所見を綜合して「KK系マウスはobeseマウスと同じく成人型の糖尿病のモデルとなりうるものである。」との結論に達し1962年発表3)したのであつた。

グラフ

早期胃癌の胃カメラ所見

著者: 芦沢真六

ページ範囲:P.166 - P.167

 早期胃癌はX線や内視鏡でどのような姿で表現されるかを,一度確実に知つてみると,その後は案外容易に発見されるものである.いまはとにかく,そのような早期癌を少しでもたくさん皆で見つけることが大切であり,早期癌の定義,それを生ずる胃粘膜の前駆状態,進行癌との関係,さらには予後などの問題については,いま少しく時をおいて多くの症例を集めたあとで議論することにしたい.
 早期癌が現在のように各所で次々と発見されるようになるのに1つのきつかけをつくつた胃カメラによる撮影像を供覧する.

InsulinのRadioimmunoassay

著者: 尾上久吾 ,   小橋邦維 ,   藤中真一

ページ範囲:P.169 - P.174

 immunoassayによつて測定しうるinsulin(immuno reactiveinsulin,IRIと略)は論議はあるけれども内分泌学的に活性をもつinsulinと考えられている。IRIの測定は血糖の測定とともに糖尿病の診断,病態の診断に必要である。ことに血糖で診断不能であるprediabetes,早期の軽症糖尿病はもちろんinsulinの欠乏,hyperinsulinism,insulin insensitivity,糖尿病の薬物,食餌療法を行なうさいには不可欠といつても過言ではない。その他insulinの代謝に影響を与える各種代謝異常ことに肝疾患,肥満,心筋硬塞,動脈硬化,高血圧症ならびに各種内分泌疾患,膵臓疾患,加齢,妊娠など,その他の疾患の病態生理を知るうえにもまた必要である。ただinsulinの投与を受けその抗体の存在する場合にはいまのところ,この測定法では正確な値は得られがたい。

心電図講座・2

甲状腺疾患の心電図

著者: 難波和 ,   藤垣元

ページ範囲:P.243 - P.247

 バセドウ氏病および粘液水腫に代表される甲状腺機能異常はともにそれぞれ特徴ある心電図を示す。一方は機能亢進であり一方は機能低下であるから互いに相反する所見,すなわち,前者では頻脈およびRの増高,後者では逆に徐脈およびRの減高(低電位差)を示すことは当然とはいえ興味深い。

他科との話合い

検査の限界—患者中心の立場から検査を考える

著者: 小酒井望 ,   阿部正和 ,   上野幸久

ページ範囲:P.248 - P.253

 医学の進歩によつて,検査の数は非常に増えているが,それに伴う患者の負担もまた増大した。患者中心の医療の立場に立つて考えるとき,検査のやりかたにはまだまだ,改良の余地が残されているのではあるまいか。

正常値

年齢別胃液酸度の正常値

著者: 増田久之 ,   井上修一

ページ範囲:P.256 - P.258

胃液酸度
 胃液酸度は正常人でも胃疾患患者でも個人差があり,また同一人でも日変動を示し,季節変動のあることが知られている。このような変動は胃液の複雑な分泌機構によるもので,神経性因子,局所性因子(拡張,食餌,温度,pHなど),ガストリン,セロトニン,副腎皮質ホルモンなどの影響を受けるためである。
 また胃液酸度を比較する場合,ことにその再現性で問題になるのは分泌刺激剤である。分泌刺激剤としては以前は試験食が用いられたが,最近ではカフェイン,アルコール,インスリン,ヒスタミン,histalogなどが使用されている。しかし作用機序が異なり,用量による差もあるので,再現性を問題にするには最大刺激が必要で,ヒスタミンでは0.02〜0.04mg/kg,histalogでは1.0〜2.0mg/kgとされている。また従来は濃度としての酸度(臨床単位またはmEq/L)が測定されていたが,遊離酸度や総酸度の概念があいまいなため,現在では胃液分泌量(ml/hour)や塩酸分泌量(mEq/hour)として表現されることが多い。

臨床生化学

インスリン阻害物質

著者: 種瀬富男

ページ範囲:P.260 - P.264

 最近,血漿インスリンの測定がひろく行なわれるようになつてきたが,一方において,ラットの剔出横隔膜のブドウ糖利用を促進させるインスリン作用を抑制する物質が血中に存在することも知られてきた。しかも,このインスリン阻害物質を中心として,一次性糖尿病の病因を解明しようとする試みまで提唱されている。

症例 全身性疾患と肺(II)

膠原病と呼吸器その2—汎血管炎の2例

著者: 三上理一郎 ,   柴田整一

ページ範囲:P.265 - P.270

 汎血管炎の臨床像はきわめて多彩であつて,臨床診断に困難を感ずることが多い。ここに呈示する2例は肺血管障害を主症状とした多くの示唆に富んだ症例である。

石灰沈着を伴つた胃膠様がんの1例

著者: 日野和徳 ,   斎藤泰弘 ,   柴山豊 ,   阿部昭治 ,   堂前章 ,   渋谷敏朗 ,   多田靖 ,   関野壮

ページ範囲:P.271 - P.274

 病変の存在する組織に,石灰の沈着をみる場合には,炎症性変化で治癒機転が完成に近づきつつある証左と考えるのが一般であるが,悪性腫瘍内に石灰の沈着する場合も報告されている。しかしその頻度ははなはだ低く,本症例のごとく胃がんで石灰沈着を伴つたものについては,約20例の報告が見られるにすぎない。しかもそれらのすべてが膠様がんであつた点は興味深い事実といえるであろう。

検査データ どう読みどうする?

梅毒反応陽性

著者: 皆見紀久男

ページ範囲:P.163 - P.163

陽性ならば病歴をくわしく
 梅毒血清反応陽性ということは,もちろん梅毒にかかつているということである。しかしながら血清反応の抗原は牛心から抽出されたカルジオライピンを使用しているので,スピロヘータを直接に抗原として使用していないため,非特異的反応もあることに注意しておかなければならない。そのため血清反応の種類にも注目しなくては、その特異度,鋭敏度にも差があるということを知つておくべきである。現在の標準梅毒血清反応としては補体結合反応としてワッセルマン緒方法,沈降反応としてガラス板法と凝集法,以上の三法を標準法としているのでまず信用のある検査所を選ぶことが第一である。この三法が陽性であれば、つぎに患者に対してくわしく既往歴および現病歴を尋ねる。もちろん不潔な感染があつたかどうか,あればいまから何カ月前にあつたか,局所あるいは身体のどこかに発疹ができたかどうかを,詳細に聞く必要がある。

この症例をどう診断する?・16

出題

ページ範囲:P.164 - P.164

■症例
67歳 男 会社員
主訴 呼吸困難,吐血・下血

討議

著者: 日野志郎 ,   和田敬 ,   田崎義昭 ,   清水直容

ページ範囲:P.280 - P.284

慢性腎炎と吐血
 清水 いままでこの会では,比較的珍しい症例が出されておりましたがこの症例は,それほどまれでなく臨床検査成績のおさらいみたいになりますが。既往歴で古い腎臓の病変があつたということは明らかですがそれに吐血をくりかえしているという点から,考えていただきたいと思います。
 和田 この吐血というのは,真赤な血液だつたわけでしよう。多少黒くなつたかもしれないが,初めはとにかくコーヒーのかすみたいな黒さでない。というのは胃の中にながく停滞していたものじやないでしようね。よく1回目で,死ななかつたですね。

Bed-side Diagnosis・13

A Case of Cough, Dyspnea and Back Pain in a Middle Aged Man

著者: 和田敬

ページ範囲:P.278 - P.279

 Dr. A (Medical Resident):Well, well well. Here is the man whom I was just looking for.
 Dr. B (Rentogenology Resident):Hello, Dr. A What is your trouble ?

統計

丙午による出生の減少

著者: 菅沼達治

ページ範囲:P.161 - P.161

 昭和41年は60年に一度まわつてくる丙午の年にあたり,年初からマスコミでこのことがかなりとりあげられていました。明治39年も丙午であり,このときは6万の出生減にとどまりました。もつとも当時は年間平均5万の出生が増加していたので,実際には11万の出生が減少したとも考えられます。
 さて,60年前とは社会生活も人の考えかたも変わつた昭和のこんにち,丙午による影響がどの程度出生に表われるかは大変興味深いものでありましたが,表にみるとおり,7月までで実数にして28万9千,27.4%という驚くべき減少を示したのであります。おそらく1年間で50万の減少をみることになりましよう。明治時代には受胎調節や人工妊娠中絶などがほとんど行なわれず,女児の出生の年を前年または翌年にずらすというようなことで操作したと考えられます。これは出生性比が38年102.7,39年108.7,40年102.7で示されていることによつてもうなずけます。しかし現在ではこのような操作が多少はあつても大きなものではなく,結婚の延期,人工妊娠中絶,受胎調節などが主役を演じていると思われます。

保険診療への発言・1

審査内部からみたその不合理性

ページ範囲:P.225 - P.227

 アメリカ医療の実情を見聞するにつけても,患者の立場になれば日本の医療保障の内容は守られなければならないと思うが,それすなわち,医療の内容と平行しないところに,医師と患者共通の医療制度の問題点がある。
 すでに多くの紙面で,保険診療の不合理,その問題は語られてきているが,今回は,長年審査委員をつとめてこられた経験者A,B,Cの3氏に,その内部からみた,実情と問題を,おおいに語らつていただいた。こうすれば審査がとおる—という請求のコツ,技術でなく保険診療の内容を高める発言として,その請求とありかたを,今後も提示していきたい。

If…

8年間の努力の結集—世界消化器病学会を終つて—川島クリニック第3回世界消化器病学会長・川島震一氏に聞く

著者: 所沢

ページ範囲:P.230 - P.231

世界の学者を注目させた日本のレベル
 所沢 まず最初に,第3回世界消化器病学会の成果についてお伺いいたしたいと存じます。日本の学問のレベルについても,また学会そのものについても,たいへん評価の高かつた,立派な学会であつたと伺つておりますが。
 川島 日本の消化器病研究者の層の厚さ(学会員4,300人)にまず驚いたようです。会員のうち500人は各大学の現役人として,内外に優秀な研究を発表していますし,研究のレベルも非常に高くなってきています。4年前西ドイツのミュンヘンで,日本での国際学会開催が決まつてから,実際には8年前に,日本で国際学会を希望したときから準備にとりかかりました。春秋の学会の折に,この国際学会をめざして発表その他の練習をしてきました。また,奥さん方が婦人委員会を組織し,各地区で積極的に学会の接待を行ない,今回にそなえました。

ルポルタージュ

開業医の公害対策—沼津医師会の地域活動

著者: 川上武

ページ範囲:P.275 - P.277

 開業医の地域活動の重要性が強調されるようになつた。臨床医が眼を診療室から医療機関をささえている地域にむけることは,その社会的責任をはたすというにとどまらず,診療内容の質をも深める力をもつているはずである。しかし,地域というのは医学の概念とちがつて複雑である。これをどう展開するかは今後の臨床医の課題である。

診療相談室

冠拡張剤の効果判定,他

著者: 増山善明 ,   島生

ページ範囲:P.285 - P.287

質問 冠不全の症例に,冠拡張剤を投与してE. K. Gで,その変化を追求していく場合,効果判定のCriteriaがありますか。厳密にいえば,胸部誘導でも,まつたく同一の個所で検査ができないので,たとえば,0.5mVくらい,STが上がつても下がつても,これをもつて効果の有無を判定するのは無意味のように思いますが。(福岡・島生)

今月の表紙

消化管アニサキス症

著者: 吉村裕之

ページ範囲:P.259 - P.259

 臨床的に胃腫瘍,胃潰瘍または急性腹症を疑わせる消化管の好酸球性肉芽腫の起病体の一つとしてアニサキス様幼虫(Anisakis-like larva)と呼称される種々の海産魚類に寄生する幼線虫が注目されている。この種の幼線虫は海獣(クジラ,イルカなど)の胃に寄生する回虫の幼虫でその発育史に海魚を中間宿主とするものである。海魚を生食(さしみなど)する食習慣と密接な関係があり,食品衛生の観点からも無視できない。ここ数年においてわが国での本症の報告例は既に100例をこえておりこの幼線虫の胃壁粘膜下迷入が全例のほぼ65%を占めていることから全症例の40%近くに胃腫瘍(胃がん?)が術前疑われていることも興味深い。残りの30%は小腸または大腸で急性腹症を主訴とするものが多い(吉村:日本医事新報2204号,昭41.7.23参照)。このような新しい寄生虫病について最近臨床医の方々からしばしばその虫体(形態・大きさなど)およびその診断的根拠となる病理組織学的所見などについて問われるので,ここにかぎられた写真で尽しえないが数葉をかかげた。これを機に本課題に関心が得られれば幸いである。

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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