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文献概要
臨床的に胃腫瘍,胃潰瘍または急性腹症を疑わせる消化管の好酸球性肉芽腫の起病体の一つとしてアニサキス様幼虫(Anisakis-like larva)と呼称される種々の海産魚類に寄生する幼線虫が注目されている。この種の幼線虫は海獣(クジラ,イルカなど)の胃に寄生する回虫の幼虫でその発育史に海魚を中間宿主とするものである。海魚を生食(さしみなど)する食習慣と密接な関係があり,食品衛生の観点からも無視できない。ここ数年においてわが国での本症の報告例は既に100例をこえておりこの幼線虫の胃壁粘膜下迷入が全例のほぼ65%を占めていることから全症例の40%近くに胃腫瘍(胃がん?)が術前疑われていることも興味深い。残りの30%は小腸または大腸で急性腹症を主訴とするものが多い(吉村:日本医事新報2204号,昭41.7.23参照)。このような新しい寄生虫病について最近臨床医の方々からしばしばその虫体(形態・大きさなど)およびその診断的根拠となる病理組織学的所見などについて問われるので,ここにかぎられた写真で尽しえないが数葉をかかげた。これを機に本課題に関心が得られれば幸いである。
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