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雑誌目次

雑誌文献

medicina4巻3号

1967年03月発行

雑誌目次

Leading Article

日本のパラメディカルスタッフの現状と将来

著者: 島内武文

ページ範囲:P.337 - P.339

パラメディカルとは
 こんにちの医療の特徴の一つは,専門化が進んだ結果医師が行なう医療が看護婦およびパラメディカル職種の協力によることが多くなつたことであろう。医療がそのつどその場で症状の変化に即応して個人的に処置される必要から,その当面の責任者たる医師は医療のあらゆる部面の知識と実際的な技術を要求されてきた。しかし1人の医師に期待できる能力にはおのずから限界があつて,医師のあいだにも一般医と各科の専門医が分かれてきた。このことから医療の機能のなかで医師でなくてもできる仕事は,これをパラメディカルと称される技術者に委任することが有利であることになつた。
 パラメディカルとは,医療において主治医の指示や処方にもとづいて診療に協力することを主とする職種である。歴史的にもつとも古く専門化してきたものが薬剤師である。看護婦も医師の指示にもとづいて診療を助けるが,その本来の任務は,診療とは分けて医療の重要な要素とされる看護にあるので,パラメディカルには数えないこととしたい。

100万人の病気

麻疹—その概念と予防

著者: 平山宗宏

ページ範囲:P.340 - P.345

 麻疹はほとんどすべての小児が罹患する。いいかえればもつともありきたりの疾患でありながら,ごく最近まで医学がそれに対処すべき方法を知らなかつた疾患の1つであつた。昨年来,わが国でもワクチンが市販されるにいたり,古くて,しかも新しい疾患として再認識された機会に,この麻疹について現代の医学がもつている知識を略述した。

座談会

発疹を伴うウイルス性疾患

著者: 籏野倫 ,   柳下徳雄 ,   平山宗宏 ,   浦田久

ページ範囲:P.346 - P.356

 発疹を伴うウィルス性疾患といつても,発疹とウイルス感染との因果関係のはつきりしていない場合もあり,また化学療法剤が頻繁に使用される最近では,中毒疹との鑑別もむずかしくなつてくる。一方,発疹をよく見れば,それだけで診断のつくものも数多くある。その鑑別と診療上の注意について。

診断のポイント

中年者の不整脈

著者: 高階経和

ページ範囲:P.357 - P.358

不整脈の臨床徴候
 臨床的に不整脈があるかどうかというのは,なんといつても,患者の主訴や病歴によることが第一である。まずつぎのような症状を訴えるときは,必ずといつてよいほど,不整脈が起こつている。
 1)心悸亢進や,速脈が急に起こつて,また急に止まつたりするとき,

アミロイドージス

著者: 菊谷豊彦

ページ範囲:P.359 - P.361

 アミロイドージスは最近急激に報告数が増加し,筆者が集めた原発性アミロイドージスの報告例は57例になり,本邦では地理病理学的にもまれな疾患とはいわれなくなつた。その増加は食生活ならびに診断技術の向上によるものであろう。アミロイドージスは,基礎疾患を認めるか認めないかにより,続発性と原発性の二つに分けられる。骨髄腫を伴つたアミロイドージスの分類は議論が分かれている。続発性アミロイドージスは結核,癩,梅毒,慢性化膿性疾患を基礎疾患として多く認める。原発性アミロイドージスは心,肺,血管,消化管,皮膚などの非定型臓器に血管・筋肉・間葉性にアミロイド沈着が起こり,続発性アミロイドージスは沈着臓器が肝,脾,腎,副腎などの定型臓器を中心として,毛細血管および腺周囲性に沈着を起こすといわれたが,両者に移行が多いということは多数の者が認めており,本邦例ではアミロイドの沈着分布上の差がないといわれる。さらに続発性アミロイドージスの基礎疾患がはたしてアミロイドージスの原因になっているかまぎらわしい症例にぶつかることがある。筆者の例でも過去に慢性中耳炎と肺結核があり,非定型的アミロイド沈着を認めた例があるが,慢性中耳炎と肺結核が続発性アミロイドージスを起こしたか否か,その臨床像を相互に結びつける規準は,一般的にもないし,また,病理学的にも決定的な像はつかまれていない。

尿石症と副甲状腺機能亢進症

著者: 園田孝夫

ページ範囲:P.362 - P.363

 近年,尿石症はわが国においても増加の一途をたどる傾向にあり,日常臨床医家にとつて,尿石症に接する機会が非常に多くなつてきた。
 しかし,尿石症の発生原因については,まだほとんどわかっていないのが現状であつて,われわれが取り扱う尿石症患者についてみても,その原因の明らかなものは全体の10%以下にすぎない。したがつて,尿石症を治療する場合,その原因の追求とともに,原因に対する根本的治療が,結石の再発あるいは多発を防止するうえにはなはだ重要である。

治療のポイント

病人の入浴

著者: 横山巌

ページ範囲:P.364 - P.365

 入浴が皮膚の清潔をたもち,また疲労の回復を促すことから,健康な生活にとつて欠くことのできないものであることはいうまでもない。
 さらに入浴は皮膚の清潔以外に1)末梢の血液循環をさかんにして,各種の器官の機能を亢進させる。2)皮膚,筋肉,関節などに起因する疼痛に対して鎮痛作用を発揮する。3)筋緊張を低下させて,拘縮やけいれんを緩解する。4)精神的な疲れや緊張をのぞく。5)代謝産物,病的分泌物の吸収を促進せしめるなどの効果をもたらすので,慢性疾患あるいは回復期の患者の治療上に積極的な意義があるわけである。

マニトールの適応と危険

著者: 和田孝雄

ページ範囲:P.366 - P.367

 マニトールは長いあいだ腎糸球体沪過量と細胞外液量を測定するのに用いられていた。ところが最近その滲透圧利尿効果に注目がおかれ,外科系内科系を問わず広く用いられるようになつてきた。しかしその使用がどのくらい適確に行なわれているかということになると疑問がある。マニトールの使用が誤られる理由にはいくつかあるが,その第一は滲透圧利尿という意味がよく理解されていないことであろう。これを単なる利尿剤の一つとして(サイアザイド,水銀利尿剤などのごとく)考えたのでは,マニトールをうまく利用して効果をあげることはできないし,危険をまねくこともある。そこで第一にマニトールの作用を説明し,つぎに実際面にふれてみよう。

ダンピング症候群

著者: 日野貞雄

ページ範囲:P.368 - P.369

症状と病態について
 ダンピング症状とは,胃切除後生ずる一連の血管運動障害にもとづく症状を指している。すなわち,食後に生ずる動悸,発汗,熱感または冷感,胸内苦悶脱力感などを主症状とするもので,通常食後数分以内(ときには食事中)に現われる。胃部の膨満感,悪心を先駆として現われ,30分内外継続したのち漸次寛解する。以前後期症状として食後2〜3時間後に現われる同様症状もダンピング症状として取り扱われていたが,最近では除外される傾向にある。
 本症の概念は症候群とよばれているもののつねとして確立されていない。たとえば頻脈と徐脈,熱感と冷感など対称的と思われる症状が本症の主症状となつている。かかる点より病態も一つでないことが考えられる。鏡は本症の病態を3つに分けている。第1型は血圧低下と徐脈を特徴とするもので比較的まれなものである。第2型は血圧低下と頻脈を特徴とするもので,本症候群の1/3にみられる。第3型は血圧上昇と頻脈を示すもので,約半数を占めている。

乳幼児の化学療法

著者: 藤井良知

ページ範囲:P.370 - P.371

化学療法の限界
 感染症に対する治療法としての化学療法に限界があることは乳幼児の場合も成人と異ならない。いな一般抵抗力においてはなはだ劣るところのある年齢層だけにその限界はいつそう明らかに示され,乳幼児に対して化学療法を行なう場合はつねにこのことを認識して,種々の併用療法を行ない乳幼児の自然治癒力を助ける方向にもつてゆかなければ治療成績をあげることはできない。しかしそれは事実であるとしても化学療法の効果は他の併用療法と比較にならないほど大きく,これなくして小児期感染症を論ずることはほとんどできないほどである。
 大学病院に入院する肺炎,膿胸患児の実数が化学療法時代にはいつて漸減するにもかかわらず入院肺炎患児の死亡率は変化しない理由を入院肺炎患児の質的の変化,すなわち戦後は先天奇形,未熟児,栄養失調児,下痢,悪性腫瘍,初めなんらかの抵抗性の減弱を伴う疾患に合併した重症肺炎患児の入院が増加した点にみいだして,化学療法の限界があり,これに対して特別の考慮をはらうべきことをすでに12年前に述べたことがある1)。

フアースト・エイド

発作性心急拍症

著者: 太田怜

ページ範囲:P.372 - P.374

 頻脈とは,心拍数が100以上に増加した状態で,運動時や精神感動のさいみられる。このような頻拍は,洞からの刺激発生が多くなつたためで,外見上発作性と思われるものでも,けつして突発的に現われることはない。これに反して,洞以外の場所からの刺激発生が多くなつたために生ずる頻脈は,その始まりが,はなはだ突発的である。発作性心急拍とは,この後者のような頻拍発作をいうのであり,心拍数も一般には前者よりも多く,150以上あるのがふつうである。このような発作性心急拍は,したがつて,その刺激発生部位の相異により,つぎの3種に分けられる。

器械の使い方

車椅子—その構造と扱いかた

著者: 上田敏

ページ範囲:P.375 - P.377

 日常よく眼にふれ,その構造も取り扱い法もすつかり知つているつもりでいて,さてあらためて考えてみると案外そうでもない物が世に少なくない。車椅子などもおそらくその部類に属するものであろう。とくにわが国の車椅子はつい最近まで木製の重い旧式のものがはばをきかせていて,金属パイプ・折たたみ式の現代的なものの普及が遅れていた事情もあつて,一般の理解・知識にいろいろのギャップがあるのも,やむをえないようである。

正常値

プロトロンビン時間

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.378 - P.379

 プロトロンビン時間段法の測定はいまから約20年前Quickが初めて創案して以来,こんにちまで外因性凝固異常の診断にきわめて重要な検査として日常広く用いられている。

EDITORIAL

風疹

著者: 永山徳郎

ページ範囲:P.383 - P.383

 風疹は19世紀初めごろから臨床的に独立疾患として認められるようになつたが,症状のかるい重要でない小児の病気として取り扱われてきた。1941年オーストラリアの眼科医Greggが妊婦が妊娠初期に風疹に罹患すると先天異常をもつ子どもが生まれることを報告して以来,本症の重要性が認められるようになつた。
 組織培養による風疹ウイルスの分離は1962年にParkmanらおよびWeller & Nevaによりそれぞれ独立になされた。これは風疹が先天異常をつくる,その謎を解く有力な手がかりを得たことであり,風疹の研究がふたたび脚光をあびるようになつた。

肺以外の疾患のときの肺レ線所見

著者: 本間日臣

ページ範囲:P.384 - P.384

 全身性疾患の部分現象として肺にみられる変化,あるいは他臓器疾患の合併症として肺に生ずる変化については,まだ十分明らかでない点も多く一般の関心もうすく,したがつてそのレ線陰影についての解釈が誤られたり,見逃がされたりしていることが少なくないようである。
 たとえば,細網肉腫やエリテマトーデスに随伴する胸水が結核性胸膜炎とされたり,リウマチ性肺臓炎が細菌性肺炎と扱われたり,サルコイドージスが結核の治療を受けたりということである。これらの場合,われわれは肺という窓をとおして全身性病変の一部をかいま見ることになる。その変化は一過性のものも恒常性のものもあり,陰影の種類も,線状,索状,絮状,浸潤性,腫瘤様,液体と多種多様で,特異的に特定疾患と結びつくものは少なく,鑑別がむずかしいものが多い。しかし窓をとおしてよぎり去る一瞬の陰影から系統性疾患の存在やそのひろがりをみいだす機会をつかみうることもまた事実である。この機会を見逃がさずにとらえるためには,当然肺以外の一般内科疾患の知識が要求されるのは当然である。専門家として高く立つためには必然的にひろい裾野を必要とするわけである。過去の経験から気づいた点を以下にあげてみよう。

グラフ

農薬中毒—とくに皮膚および眼障害の実例

著者: 若月俊一

ページ範囲:P.326 - P.327

 私たちの実態調査によると,現場では,農薬散布に従事している農民の3割から4割が,ひと夏の間に多かれ少なかれ何らかの中毒症状を経験している,しかし,農民はよほどのことがない限り,医師を訪れない.ことに頭痛,めまい,吐き気などを主とする,急性中毒の一般症状などは,あまり気にかけない,百姓はガマンするのが当然と考えている.この2年半の間に私たちの病院を訪れた農薬中毒の臨床例は33例であつたが,そのうちで皮膚障害を主とするものが少なくない.その主なものを例示しよう.

オートアナライザー

著者: 後藤文男

ページ範囲:P.329 - P.333

 産業界をゆさぶるオートメーションの波は,医学の分野にも押し寄せ,いろいろな検査の完全自動化が行なわれるようになつたが,その一つにオートアナライザーがある。オートアナライザーは,化学分析における秤量,混合,透析,濾過,加熱,滴定,比色,?光分折,螢光分祈,電気泳動,記録などの装作を完全に流れ作業として自動化したものである。この装置は,いちじるしい時間と労力の節約をもたらすのみならず,人的操作上の誤差の混入を減らすので,病院の中央検査室のように,少人数で多数の検体を短時間に測定しなければならない部門では理想的な武器といえる。また本器により連続的化学分析が可能なので.たとえばin situにおける血中化学物質の時間的変化を連続的に追求するような研究がきわめて容易となる。われわれは本装置を用い,脳静脈血中のブドウ糖,乳酸アンモニアその他の連続記録を行ない,in situにおける脳代謝の研究に応用している。
 オートアナライザーで分析できるものは,理論的に,比色計,??光光度計,螢光光度計で測定できるほとんどすべての物質である。

ARTHUS現象のAUTORADIOGRAPHY

著者: 加来博

ページ範囲:P.334 - P.334

 3H-compound autoradiographyの組織形態学への応用は,細胞活性や物質の代謝,さらには細胞の動態の追求に新しい分野を開いた。この方法によると,一般に表皮下における炎症は,表皮細胞のDNA合成を促進し,細胞増殖を旺盛にすることが明らかとなつた1)。また,表皮細胞内でのRNAや蛋白の合成もいちじるしく活発になる。その結果,表皮細胞の交代は早くなり,Keratinの生成は増加し,表皮の肥厚,棘細胞層の増加,rete ridge延長,過剰角化,錯角化,落屑などの現象がもたらされると考えられる。アレルギー性炎症によるものでは,個体の側に,特定の刺激に対しての準備状態があるところが,単一的な原因による炎症の場合と異なつている。Arthus現象2)やDNCB感作3)による表皮の動態の研究は,このようなメカニズムを実験的に分析する手段として,アレルギー性皮膚疾患の病理を理解するうえに意味がある。

心電図講座・3

心雑音—先天性心疾患の心電図

著者: 難波和 ,   藤垣元

ページ範囲:P.407 - P.411

先天性心疾患の種類は非常に多いが,日常よくみられるおもなものは,チアノーゼのないものでは心房中隔欠損・心室中隔欠損・動脈管開存・肺動脈狭窄,チアノーゼのあるものではファローの4徴などである。これらの典型的なものの診断はけつしてむずかしくはなく,注意深い聴診所見と,心電図,胸部X線所見をあわせ考察すれば,心カテーテル法を用いなくても大部分は診断可能である。心電図は血行動態の異常を反映して変化するので,診断に役だつのみでなくその重症度もある程度推定できる。かかる見地からおもな先天性心疾患の心電図を解説するが,今回はもつともポピュラーな心房中隔欠損と心室中隔欠損につき述べる

他科との話合い

妊娠とウイルス疾患

著者: 森山豊 ,   藤井良知

ページ範囲:P.412 - P.418

 最近,妊婦の流感や風疹の罹患,また薬剤の使用による奇形発生の問題が一般ジャーナリズムを賑わし,いたずらに不安がられる傾向がありはしないか。最近わかつてきた風疹の実態,奇形児との関係などについて。

臨床病原徴生物学

ウイルス性発疹症の病原的分類

著者: 徐慶一郎

ページ範囲:P.419 - P.424

 ウイルス性発疹症の中には,臨床症状から容易に診断名のつくものも多いが,他面臨床症状が極めて類似しているため,実験室内でのウイルス検査により,始めて診断可能なものの存在が,近年幾種類も明らかにされてきた。そこで,ウイルス性発疹症を,病原的に眺め,系統だてて分類してみることが必要になつてきたと考えられる。

症例 全身性疾患と肺(Ⅲ)

悪性リンパ腫と呼吸器その1—胸部症状で発病した全身性リンパ肉腫症の2例

著者: 三上理一郎 ,   松下哲 ,   倉科周介

ページ範囲:P.425 - P.430

症例1 胸水および心膜液貯留で発病した白血病性リンパ肉腫症
 丸○宏○ 32歳,男子 会社員(NN 649)
 家族歴,既往歴(図1参照):特記すべきことはない。

心筋硬塞に合併したVanishing Tumorの1症例

著者: 高橋忠雄 ,   吉田昭 ,   関沢英一 ,   中塚喬之 ,   高橋淳 ,   村岡和子

ページ範囲:P.431 - P.435

 vanishing tumorはレ線上,肺腫瘍のごとき特徴的な陰影を呈し,鑑別診断上重要であり,近来わが国でもしだいに注目されるようになつてきた。われわれは心筋硬塞のrehabilitationの期間中に,うつ血性心不全の症状とともに葉間胸膜腔に限局性の胸水を合併し,いわゆるvanishing tumorと考えられる症例を経験したので報告する。

検査データ どう読みどうする?

γ-グロブリンの増加をみたら

著者: 柴田進

ページ範囲:P.321 - P.321

 血清蛋白の検査にもつとも広く使用されているのは濾紙電気泳動法であろう。最近はセルローズアセテート膜による電気泳動法も普及しつつある。さて電気泳動した濾紙片は通常デンシトメーターにかけて,アルブミン(Alb),α1,α2.βおよびγグロブリン(Glb)に分けて分画比率を測定するが,そうしなくても多くの場合濾紙片をながめただけでγGlbの変動は認識できる。ここではγGlbの増加だけをとりあげ,それに遭遇したとき,どんなふうに考えて検査を進め診断に到達するか,私たちが日常行なつている流儀を説明しようと思う。

この症例をどう診断する?・16

出題

ページ範囲:P.324 - P.324

■症例
  17歳 女性 学生
 主訴:左下肢運動麻痺と視力障害。

討議

著者: 日野志郎 ,   和田敬 ,   清水直容 ,   田崎義昭

ページ範囲:P.441 - P.444

原因をどう考えるか
 清水 これは一度発熱して,何日くらいつづいているのですか。
 田崎 熱は,最初は3月11日の夜,目がさめたときに,38度。26日に入院したときにも38度くらいですが,それからはしだいにさがつて,37度台の微熱です。この微熱はだいたい,1月半くらいつづいています。

統計

わが国の医師の現状

著者: 菅沼達治

ページ範囲:P.323 - P.323

 医師法にもとづき,皆様方から毎年12月31日現在で医師届出票を保健所に送つていただいておりますが,これは医療および公衆衛生行政の基礎資料を得るためのものであります。ここではその結果のうち一,二をご紹介いたしましよう。
 表のとおり,10年前は医籍登録者は10万人に達しませんでしたが,昭和34年には10万人をこえ,40年の末には約10万9千人となつています。これを国民10万入についてみますと111.3であり,医師1人について国民900人という割合です。医師の93.3%は臨床医であり,このうち医療施設の開設者は50.5%,勤務医42.8%であります。40年を10年前と比べますと,臨床医全体では18%の増加となつています。このうち勤務医の増加は17%ですが,開設者は24%と増加がめだつています。これは医療施設について,この10年間に病院は2千たらずの増加でありますが,一般診療所は1万3千もの増加をみせていることを反映しています。このような臨床医の方たちの増加に比べ,医療施設以外の従事者は21%も減少し,とくに医学の基礎研究,教育などにたずさわつている医師がその需要の増大にもかかわらず,実数にして千人近く,28%もの減少を示していることは重大な問題であります。また,衛生行政や保健業務に従事している医師も14%減少し,これは公衆衛生行政の立場から一考されるべき問題と思われます。

ルポルタージュ

人工腎臓,腎移植のメッカ—Cleveland Clinicをみて

著者: 三木信男

ページ範囲:P.438 - P.440

 Clevelandは1921年に4人の医師により臨床と研究とpostgraduateの教育を目的として始められたベッド数610の総合病院である。Cleveland Clinicが広く世界中に知られているのは,Dr. I. H. Page(いまでは引退している)とその門下による高血圧の研究と,Dr. W. J. Kolffを中心とした人工心臓の研究と,人工腎臓および腎移植の臨床である。私は66年の秋腎移植と慢性腎不全の長期透析のシンポジアム開催の機会に,人工臓器部で人工腎臓と腎移植の実際を見学することができたので,同部を中心に私のみたCleveland Clinicについて少し紹介したいと思う。

話題

日本小児科学会第69回総会印象記

著者: 今村栄一

ページ範囲:P.436 - P.437

臨床家のための学会も
 昭和40年に国際小児科学会議を東京ではなばなしく開催したあとを受けて,日本小児科学会第69回総会は中村文弥慶大教授を会頭に,東京文化会館で4月26日から28日の3日間開かれた。
 3種のパネルディスカッション(1.先天性糖質代謝異常,2.チアノーゼ型先天性心疾患に関する諸問題,3.小児肥満症)と223題におよぶ一般演題により,多大の成果をおさめた。

第1回日本肝臓学会西部会から

著者: 増田正典 ,   井上光

ページ範囲:P.382 - P.382

 第1回日本肝臓学会西部会は去る12月10,11日の2日間,京都府立勤労会館において,増田会長のもとに開催された。東海,北陸以西,鹿児島にわたる各地から約300人の会員が参加して行なわれた。今回の学会では1つのシンポジウムと2つのパネルディスカッションがとりあげられ,27の一般演題の発表が行なわれた。また新しい試みとしてラウンドテーブルディスカッションが行なわれた。これは各病院より提示された症例について場内の各方面の学者が長時間かけて討議を行なうという形式である。

臨床メモ

"下肢がだるい"

著者: 名尾良憲

ページ範囲:P.361 - P.361

 下肢が「だるい」と訴える患者は非常に多い。それにもかかわらず,その実態を把握することは,なかなかむずかしい現状である。長時間にわたる起立,歩行が下肢の「だるさ」を起こすが,これは生理的なもので,休息によつて回復する。
 下肢の「だるさ」を訴えたときには,まず発熱の有無をみて,発熱があればその原因を調べる。

乳児の便秘

著者: 毛利子来

ページ範囲:P.374 - P.374

 乳児の便秘は,つねに必ずしも病的ではない。
 機嫌がよく,食欲もあつて,排便時に泣くほど苦しむのでなければ,なんらかまうことはない。赤ちやんといえども人間だから,毎日きちんと適当な固さの便が適量出るとばかりはかぎらないのである。母親に心配のないことをよく説明して,そのままあわてずにようすをみればよい。そのうちに,便通は整つてくるものである。念のために,体重を測つて増えていることを確かめておけば申しぶんない。

不定の胃症状を訴える患者を診るとき

著者: 菅邦夫

ページ範囲:P.437 - P.437

 不定ということは,症状の種類や性質,初発時期,頻度,症状のつづき具合,おこるときの条件,中間期の状態などが,不明確だということである。不定の胃症状で多いのは,胃がもたれる,おされる,腹がはる,不定の痛み,きみず,むねやけ,むかつく,空腹感の不足,すぐ満腹する,背中や腰にひびく,舌の感じがわるい……などである。

診療相談室

運動時などに腹痛を訴える患者について,他

著者: 名尾良憲 ,   小野寺生

ページ範囲:P.445 - P.447

質問 運動時や急いで歩いたり走つたりしたときに腹痛を訴える患者につき,その原因と治療法をご教示ください。 (仙台・小野寺生)

今月の表紙

尿沈渣の染色所見

著者: 林康之

ページ範囲:P.345 - P.345

 尿沈渣の鏡検でも細胞を見やすく,見おとしをなくするためにいろいろな染色法が考案されている。図1〜2はミリポアフィルターに沈渣を集め,ホルマリン固定後組織切片と同様にヘマトキシリンエオジン染色を行なつたもの,図3はふつうの青インクとサフラニン0の染色,図4は血液染色用ギムザ液で染色したものである。図1は扁平上皮,図2は腎上皮細胞のスタンプ標本,図3は扁平上皮と赤血球,図4は赤血球,白血球とおそらく白血球に由来する円柱と考えられる。
 ヘマトキシリンエオジン法は時間がかかり,日常検査の目的には利用できないが,インクによる染色法やギムザ染色法は簡単に実施できる利点がある。インクのメチレンブルーやギムザ液のアヅール色素は細胞核を紫色(青色)に染め,赤血球はエオジンで赤色に,細胞原形質は淡赤色に染め分けられるので見やすいといえる。図4の円柱が白血球系でないかと前述したのは,同図にみられる赤血球の黄色調とまつたく異なることからの類推である。しかし,染色法はただでさえ不正確な尿沈渣の数量的観察を希釈によつていつそう不正確にすることは知らねばならない。全細胞をフィルターで集めてひとつひとつを精密に観察する必要でもないかぎり,たとえば腫瘍細胞の検索などの目的があればべつであるが,日常検査に染色法は必ずしもたいせつな検査とはいえない。

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医学教育の未来像をさぐる

著者: 石川誠 ,   山本敏行 ,   大原到 ,   立木蔚 ,   佐藤元

ページ範囲:P.385 - P.390

 矛盾をはらむ医療の現実と大学における医学教育の現状をかえりみて,臨床教育の今後のありかた,基礎研究部門の任務,大学と病院,基礎と臨床の結びつきなど,医学教育の未来像について欧米の事情にもくわしい同期の5先生に忌憚のない討論を願つた。

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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