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文献詳細

雑誌文献

medicina4巻5号

1967年05月発行

EDITORIAL

食事療法における香辛料

著者: 阿部達夫1

所属機関: 1東邦大・内科

ページ範囲:P.688 - P.688

文献概要

 香辛料は熱量源としての意義はほとんどなく,単にその香り,色,味などにより食事の風味を増し,また同時に食欲を亢進させる作用がある。したがつて食事療法において,食欲不振時などに香辛料を適当に使用できればたいへんありがたいことになる。ところがワサビやカラシがつんときて涙が出たりするところから,病人食事にはなんとなくあまり好ましくないように考えられ,ことに腎,肝,胃腸疾患などには禁忌とされているようである。かつて私は,はたしてそれほど害になるものかどうか臨床的ならびに実験的に調べてみたことがある。
 まず腎疾患であるが,ネフローゼの場合は問題ないとして,腎炎のさいはどうか。結論的にいつて香辛料の使用に対してあまり神経質になる必要はないということである。高血圧患者でも同様で,2週間にわたつて毎日1食はカレーライスにしてみたことがあるが,ほとんど悪影響はなかつた。シロネズミにいたつては,体重100gについて1gという大量のカラシを毎日強制投与1カ月におよび,そこで腎を組織学的に調べたがなんの変化もなかつた。もちろん悪食家のネズミとヒトを同日に論ずるわけにはいかない。またヒトに必要以上の大量を無理に与えるいわれもない。また香辛料が食欲を亢進させ,そのために肥満をまねいたり,口渇のために多飲になるようなことになれば有害である。ただ腎疾患や高血圧のさい食欲不振の対策として,あるいはときどき嗜好として適量の香辛料を用いることはなんらさしつかえはない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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