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雑誌目次

雑誌文献

medicina4巻6号

1967年06月発行

雑誌目次

Leading Article

第17回日本医学会総会を終わりて

著者: 日比野進

ページ範囲:P.793 - P.795

 まず,今回名古屋において催された第17回日本医学会総会の内容を記す。4月1日開会式,同3日閉会式,この日の3日間がこの総会の主要部分となつておる。この3日間に開会講演2題,総会講演57題,総会シンポジアム81題(夜間に行なわれた1題を含む),外人講演17題が行なわれておる。会場は名古屋市の名古屋駅前地区,名古屋都心地区,舞鶴地区,東山地区および一部は岐阜において催され,合計20数個所にわたつて一斉に行なわれた。なお3月30日より4月5日まで3会場で,午前,午後,夜間にわたつて学術映画が上映された。上映フィルムは国内のもの69本,米国よりのもの48本,欧州よりのもの25本,ソ連よりのもの19本,計161本である。学術展示はやはり3月30日より4月5日まで,テーマとして5,サブテーマとして32,パネルとして約300個となつておる。記念行事としては,4月2日の夜に一般公開シンポジアム2題,および病理と臨床に関係するシンポジアム1題,以上がこの3日間の大要である。
 さらに3月30,31日の両日には20分科会(臨床面は主として外科的方面)の総会,4月4,5日の両日には22分科会(臨床面は主として内科的方面)の総会がひらかれた。さらにそれに前後して各種の研究集会が数多くこの機会を利用して催された。

第17回医学会総会速報・2

総会をかえりみて—病気の新しい概念と診断法を中心に

著者: 梅田博道 ,   小暮哲也 ,   土屋雅春 ,   林康之 ,   田崎義昭

ページ範囲:P.862 - P.872

 「分化と総合」を主題とした第17回医学会総会は,現代医学の動向を把握する上で多くの成果をあげ,その幕を閉じた。しかし,現代医学の流れは,そのすべてを知ろうと思つても実際はなかなかむずかしい。その意味で本号では,今次総会で注目された新しい問題のいくつかを話し合つていただいた。

総会シンポジウムを聞いて

Iatrogenic Disorders

著者: 木島昻

ページ範囲:P.872 - P.874

なぜこのシンポジウムを選んだか
 狭い町内のホーム・ドクターを信条としている開業医の僕はいつたいなにが目的で医学総会に泊りがけで出かけて行くのか?自問自答を魁にしてみよう。まず,新しい医学にふれてみたい,新知識を少しでも獲得し学問に専念している人々がつくり出す雰囲気にあたつて,自分を啓発したいという欲望が第一。そして,千載一遇の機にもろもろの人々と旧交をあたためたいという浮き浮きした気持ちが第二として素地にある。だから総会プログラムが送られてきた日から,計画をねるのに楽しく忙しい。実際にはむだのない方法として,自分の立場で収穫の多いもの,理解できて,日常診療の患者たちに医院をあけた反対給付としてはねかえりのあるものを選ぼうという魂胆である。総会3日間,80題のシンポジウム中4題しか出席できないし,おまけに57題の講演やアドバルーンの昇る展示会会場をいれれば,"何を選ぶか?"はチャートを頼りに沈船の宝物を探すダイバーの心境にも似てはなはだ厳粛である。そうして,是が非でも出かけるという,行動があつたのである。

リハビリテーションを考える

著者: 芳賀敏彦

ページ範囲:P.874 - P.875

総合は患者治療のうえで
 分化と総合という今回の日本医学会総会の主題のなかで分化の面はたしかに医学の全分野にわたつてかぎられた日数のなかでできるかぎり細分化されてそれぞれの最先端の発表がなされた。たとえば循環器疾患にしぼつても16にわたる特別講演とシンポジウムがもたれた。そして少し専門をはずれる部門に出るともう理解するのに困難な新しい方法,考えかたで課題が研究されていた。さてこれらを総合する部分はどうであつたろうか。一つのシンポジウムのなかで主題がさらに分化され各座長の巧みな司会でその主題に関しては総合されていた。しかし医学全体のありかたを各分野を通じて考えてみることはあるいは不可能であり,またまとまりのないものに終わるかもしれないが,医学概論というのが現代社会における各疾患の医療のありかたを考える時と場所はわずかに開会式特別講演における前東大総長,茅誠司博士の講演と日本医師会長武見太郎博士司会による「医学教育から医療制度」においても主として医学教育の面からその一端をうかがう機会があつたにすぎない。もちろん今回の学会は医学会であつて各疾患を医療全体を通じて論じる場でないといえばそれまでであるが,分化した問題を各人に呈示してそれを患者治療のうえで総合するのはわれわれ参加者に与えられた宿題のように思われた。
 さてここで与えられた課題のリハビリテーションが本学会でいかに取り扱われていたであろうか。

開業医と医学会総会

著者: 家所節政

ページ範囲:P.869 - P.869

 名古屋に迎える初めての総会である。くいしんぼうな爺さんの町に,本場のバイキング料理屋が数多出張してきて,けんらん豪華なメニューを見せびらかしたみたいなものだ。味つけが高級すぎて,食べかたもろくにわからぬが,そこは盲蛇におじぬ押しの強さ。手当たりしだいに味わつてやろうと待ちかまえていた。
 ところが,今年は意外に診療に忙がしい日がつづいた。重症の患者があつて日曜日もだめ。夜のCPCも同窓会レセプションの幹事にかりだされてこれもだめ。せめて学術映画でもと立寄つてみると,ちようど見たいのがすんだところ。やつと手のすいたころは,学会行事はすべて終わりである。

100万人の病気

甲状腺機能亢進症—病因論と診断・治療の問題点

著者: 熊原雄一

ページ範囲:P.796 - P.802

 甲状腺機能亢進症は非常に古い疾患でありながら,新しい問題の多い疾患である。精細な機能検査法とユニークな治療法を有するとともに,研究的にみても非常に興味ある疾患である。成因,診断・治療の問題点について。

座談会

甲状腺疾患をめぐつて

著者: 七条小次郎 ,   里吉営二郎 ,   熊岡爽一 ,   藤本吉秀 ,   日野原重明

ページ範囲:P.804 - P.815

 内分泌疾患のなかでも古い研究の歴史をもつ甲状腺疾患の病因の究明は,最近とくに活発になつてきているが,残された問題も多い。その現状と,疾患の考えかた・診断・治療の留意点などをもつとも新しい観点からお話合い願つた。

診断のポイント

細菌尿と腎尿路感染

著者: 上田泰

ページ範囲:P.816 - P.817

 腎尿路感染症は一般感染症のうちでも呼吸器感染症とともにもつとも多く遭遇する感染症である。本感染症の診断拠点の重要な一つに正確な細菌尿の証明がある。また合理的な化学療法実施のうえにも細菌尿の証明は不可欠である。細菌尿の証明法として現在「尿中細菌定量培養法」が最良であることは常識になつている。
 以下「尿中細菌定量培養法」を中心に細菌尿と腎尿路感染症を診断の面から述べてみる。

いちじるしい体重減少の患者を診たとき

著者: 菅邦夫

ページ範囲:P.818 - P.819

診断の着手
 第1の問題は,特定の器質的疾患が伏在しているかどうかである。 体重減少の速度や程度が一応の参考になりそうだが,質的な判断に必ずしも役だつものではない。
 器質的疾患の有無について,二つの極端な例をあげることができる。一方の極端には,一次的に高度の体重減少をきたす器質的疾患の代表として,下垂体機能不全症(Simmonds病,Sheehan病)がある。他方の極端には,器質的疾患の存在を完全に除外された神経性食思不振症がある。しかもこの両者の鑑別はしばしばきわめて困難である。一つの時点での診断は想像の域を出ないことさえある。それほど両者はよく似ているのである。

内分泌と筋力

著者: 井形昭弘

ページ範囲:P.820 - P.822

 近年の骨格筋に関する研究の発展はめざましいものがあり,かなり詳細な点にまで検討されている。その代謝過程に対し各種の内分泌ホルモンがそれぞれ影響をもつており,種々の障害をおよぼし臨床症状を呈する。ここではホルモンが筋力におよぼすメカニズムとその臨床像について概説を試みたい。

治療のポイント

胆石症の食餌指導

著者: 吉岡昭正

ページ範囲:P.823 - P.824

治療方針
 胆石症の食餌療法については多くの成書に記載されており,べつに新しい論議が行なわれている問題ではない。しかし私は通常の成書の記載とやや異なる意見をもつている。というのは,原則的には厳重な食餌制限を行なわないのである。この理由を説明するために,まず胆石症の治療方針についての私の考えかたを述べる必要があろう。
 すでに私の胆石症の治療に関する考えかたについてはくりかえし発表しているが,一口にいえば積極的な手術論である。その理由はつぎのごとき臨床成績である。すなわち表は1958年より1965年までの教室の胆石症患者478例中,1966年5月現在の状態の判明せる380例について,その予後を分析した表である。このうち190例はいわゆる内科療法のみが施行され,他の190例は手術療法が行なわれた。この表から導き出されることは,

精神安定剤の使いかた

著者: 金久卓也 ,   吉牟田直

ページ範囲:P.825 - P.828

 向精神薬が出現した1950年からすでに十数年を経過し,その間に多くの精神薬が開発され,臨床各科にわたつて広く活用されている。
 ここでは,主として神経症,心身症,およびそれらの周辺疾患を対象にした場合,精神薬をどのように使いわけていつたらよいかについて考えてみたい。

期外収縮

著者: 五十嵐正男

ページ範囲:P.829 - P.831

 心臓のつまずく感じがあつて脈がときどき乱れると訴えて外来を訪れる患者はわりあいに多いが,これは多くは期外収縮による。心臓がつぎにくるべき周期よりも早く収縮するために起きるもので,早期収縮(premature contraction)ともよばれている。拡張期の途中に収縮が起きるために心室内には心房からの血液の流入が十分でなく,したがつてこの収縮に伴つて搏出される血液量は少なく,心音としては聴かれるが脈としてはほとんど感じられない。

扁桃炎の治療

著者: 巷野悟郎

ページ範囲:P.832 - P.833

 日常の小児科外来診療でみる発熱の原因のうちで,もつとも多いのが扁桃炎である。またわれわれの病院で,時間外診療で発熱を主訴とした患者は,小児患者の約34%であるが,そのうちで扁桃炎または急性上気道炎と診断されたものは約75%を占めている。
 小児の診療では「のど」を診ることを欠かすことができないが,このちよつとしたことで,高熱の原因を知ることが多いのである。小児の扁桃炎は発熱を主症状とし,そのほか腹痛や嘔吐,けいれんなどを伴うことがあるが,その治療はまず扁桃の炎症に対して行なうのである。

EDITORIAL

亜急性甲状腺炎

著者: 鈴木秀郎

ページ範囲:P.839 - P.839

 現在甲状腺炎のなかで,独立疾患であることが明らかにされているものは慢性甲状腺炎(橋本病)および亜急性甲状腺炎の二つである。亜急性甲状腺炎は1902年スイスの外科医DeQuervainによつて初めて報告された疾患で,中年の女性に好発し,発熱・有痛性甲状腺腫をもつて発病し,亜急性に経過し,完全に治癒する予後可良な疾患である。
 この疾患はいまなお原因が不明で,病理組織学的にも結核やRiedel型甲状腺腫と誤られ,種々の混乱をまねいてきたが,近年ようやく独立疾患として広く認識されてきた。日本においてこの疾患の正確な概念が理解されるようになつたのは昭和30年以後のことで,東大第2外科藤本吉秀博士の努力におうところが大きい。

臨床と健康管理

著者: 秋山房雄

ページ範囲:P.840 - P.840

 健康管理の重要性についてはいまさら述べるまでもない。わが国の健康管理はまず結核管理から始められ,輝かしい成果をおさめたが,つづいて循環器疾患,胃がんを中心とした消化器疾患,糖尿病に対する管理へと拡がつてきた。これらの疾患は,しのびよる疾患であり,その早期発見のためには,こちらから出向いての積極的な,そして定期的な健康診断の実施が要請される。早期発見,早期治療が医療の原則である以上,この領域は当然生まれるべき運命にあつたものといえよう。
 健康管理の特徴はこれだけではない。臨床が病人から出発し,その対象が,その個人の疾病におかれるに対し,健康管理にあつては,集団から個人を考え,その対象はむしろ,健康におかれている。もちろん,この場合にあつても,病人の発生が看過されるわけではないが,そのよつてきたる背景に注目し,また,その集団における位置づけと意味づけとが行なわれる。また,集団のなかには発病にいたらない多くの不健康者がおり,これらの人たちの状況さらにいわゆる健康者とはどんな状態にあるのかといつた問題は,正常と異常との限界のはつきりしない慢性疾患にあつてはとくに重要であり,この研究はむしろ今後のたいせつな問題であつて,健康管理はこの領域においても重要な役割をなすものと思われる。

グラフ

トキソプラズマとトキソプラズマ症

著者: 浅見敬三

ページ範囲:P.782 - P.783

 トキソプラズマが人の疾病の原因寄生虫として認識されたのは古いことではない.少なくとも数年以前に医学教育を受けた医師には学校では教えられることのなかつた耳新らしい寄生虫であるがために,トキソプラズマ症はまれな疾患と考えている臨床家が多いと思われる.しかしながら,本文中でも紹介したように,トキソプラズマに基因するリンパ腺炎や脈絡膜網膜炎は他の原因によるものに比べてむしろもつとも重視すべきものの一つであるし,先天異常の原因としても大きな意味をもつものである.
 このカラーグラフでは,トキソプラズマおよびそれによる疾患の概念を理解して,日常の診療にさいし本症に対しても眼を向ける上での一助となることを目的とした.(108頁参照)

オープンシステムの診断病院—板橋医師会病院

著者: 弓倉藤楠

ページ範囲:P.785 - P.790

 板橋区医師会では山田会長の強固な信念とこれを支持する会員の協力によつて昨年2月標題のような診断を主目的とするオープン病院と臨床検査センターを開設,ここに一年余を経過して輝かしい実績を記録したのである。
 医師会病院は開設者のヴィジョンや地域のニードによつてそれぞれの個性をもつているが,私どもはこの一年間,開放型病院としていかに向上させるかの問題と取り組んできた。

器具の使い方

骨髄穿刺針の選び方と使い方

著者: 天木一太

ページ範囲:P.893 - P.895

 骨髄の検査法はSeyfarth(1923年)によつて始められたので,それまでは血液疾患の診断は血液検査だけにたよつていた。白血病の場合の病的な細胞以外,幼若細胞を見ることさえできなかつたわけであるから,血球所見を勉強することも容易ではなかつたろう。Seyfarthの行なつたのは,骨髄の外科的生検に近いもので,普及しなかつたし,くりかえし行なうこともまずできなかつた。
 1927年になつてArinkinが胸骨の穿刺吸引法を考案してから,現在のように,いつでも,どこででも,容易に行ないうるようになつた。

心電図講座・6

心雑音—弁膜症の心電図

著者: 難波和 ,   藤垣元

ページ範囲:P.834 - P.838

 本号では大動脈弁狭窄・大動脈弁閉鎖不全,連合弁膜症などの心電図の特徴を述べる。心電図だけで弁膜症を診断することはできないが,病型の診断や重症度の判定に欠かせないものであるから,各疾患における心電図の特徴を十分理解して臨床に役だてていただきたい。

臨床病原微生物学

トキソプラズマとトキソプラズマ症

著者: 浅見敬三

ページ範囲:P.876 - P.880

 トキソプラズマ症は最近では内科,小児科,産科,眼科などでよくみられるようになつてきたが,臨床像が複雑なため,臨床所見のみで診断を下すことは非常にむずかしい。その感染径路,臨床像,診断方法などについて。
  感染症の歴史のうちでトキソプラズマ症のそれはきわめて新しいものの一つとしてよいであろう。もつともヒトのトキソプラズマ感染を最初に報告したのは1923年のチェコの眼科医Jankuのそれであるといわれているからさほど新しいものではないともいえるが,確実に病原体を患者から発見し,病因としてのトキソプラズマの意義を認めたのは1930年代末のWolfらの症例で,この時期にいたつてようやくヒトの感染症としてのトキソプラズマ症の存在が一部の研究者に知らされたのである。しかし,当時はまれな疾患と考えられていた本症が,第二次大戦後欧米で続々とみいだされるとともに,1948年にSabinらによつて色素反応とよばれる免疫反応が案出されて本症の抗体保有者がきわめて多いことが判明して,初めて本症の重要性が認識され,医学の研究対象となつた。わが国においても本格的な研究が開始されたのは1952年ごろで,その2〜3年後からヒトの症例がみいだされはじめ,こんにちでは内科,小児科,産科,眼科などの領域で,もはや珍しくはない疾患となつている。

症例 全身性疾患と肺(VI)

白血病と呼吸器—その2 肺真菌症を合併した急性骨髄性白血病の2例

著者: 三上理一郎 ,   衣笠恵士

ページ範囲:P.881 - P.886

症側1 急性骨髄性白血病に合併した限局性肺アスペルギルス症
 成○礼○郎 44歳,男子,教員(ON 7007)
 家族歴:特記すべきことはない。

成人粘液水腫3例

著者: 楠井賢造 ,   西川忠男 ,   西岡新吾 ,   西野伸夫

ページ範囲:P.887 - P.892

 最近経験した粘液水腫3例を記載し,若干の考察を加える。

検査データ どう読みどうする?

トロンボテスト延長

著者: 梅垣健三

ページ範囲:P.777 - P.777

 抗凝血薬療法のcontrolとして従来プロトロンビン(プと略す)時間が一般に用いられてきたが,第IX因子-PTC(FIXと略す)および第X因子-Stuart因子(FXと略す)の異常が注意されるにいたり,Owren(1959)はクマリン系抗凝血薬により抑制される外因性および内因性凝固系のプ,第VII因子(FVIIと略す),FIXおよびFXを綜合して測定でき,かつ従来の試験より鋭敏な方法としてThrombo test(TTと略す)なる試験法を発表した。これは試剤がひとつで,手技簡単,bedsideで行ないうる利点を有する。

トピック

ペースメーカー患者の長期管理—「友の会」発足にちなんで

著者: 堀原一

ページ範囲:P.898 - P.901

いろいろの原因によつて起こる心ブロックのうち,失神発作やけいれんを主徴とするAdams-Stokes症状群の頻発が患者を悩ますことがある。これは低心拍出量のための脳血行不全によるものであるが,脳だけでなく心臓自体の冠状循環や肝・腎など主要臓器の循環が阻害される
 こういう心ブロックに対して,近ごろ人工的な心臓ペースメーカーを長期あるいは患者の終生にわたつて心臓に植込み,電気刺激を心筋にパルスとして与えて心拍数の制御を行なおうとすることが,ほとんど常識となつて広く行なわれつつある。たしかに電極を心室壁に植込むには小なりとはいえ,外科手術を要するので,わが国においてはもちろん,外国においても従来は心臓ペースメーカーはほとんどすべて外科医の手中にあつた。しかし実際にこのペースメーカー植込みの対象となる心ブロックの大半は,むしろ内科的な疾患—多くは動脈硬化性病変の一部として起こるのであつて,ペースメーカーの歴史をみても,1954年に初めてこれを臨床的に着手したZollも,米国ボストン市Beth Israel Hospitalの内科医である。

統計

最近の赤痢について(1)

著者: 菅沼達治

ページ範囲:P.779 - P.779

 昭和41年の法定・指定伝染病数は78,876を数えますが,このうち82.8%の多きを占める赤痢について,最近の特徴を2回に分けてふれてみましよう。なお,アメーバ赤痢は41年には27にすぎませんので,これを含めて赤痢と記すことにします。
 表には赤痢罹患率の年次による動きを示しましたが,戦後最大の山は27年にみられ,この年は患者数11万2,000,罹患率も人口10万に対して130.1に達しました。その後の減少から31年以降はふたたび上昇に転じ,35年には第2の山をつくりましたが,翌年からは年々減少して40年には49.5までさがりました。しかし,41年には患者数は前年より1万3000近く増加して65,255,罹患率も65.9と上昇し,本年の動向が注目されます。

話題

これからの診断法—第6回ME学会総会から

著者: 金井寛

ページ範囲:P.780 - P.780

 東京大学において,5月14日に第6回のME学会総会が開催された。ME学会大会も第6回を迎えて相当に充実したものになり盛会であつた。その中で,特に内科に関連のあるものについて概観する。内容は大別して下記の通りである。
 1.新しい診断用測定器の開発

臨床経験より

腎血管性高血圧症の診断

著者: 飯田喜俊

ページ範囲:P.902 - P.904

 わが国における腎疾患の診断,治療の進歩は最近めざましいものがある。広い分野にわたつて多くの研究や臨床報告がなされているのであるが,これを米国で行なつているものと比べるとき,わが国ではとくに腎血管性高血圧症についてまだ遅れていることを知らされる。私が米国にいたあいだに実に多くのこの種の患者を経験したものであるが,わが国ではこれに比べてそれほど症例が多くないのが実情である。実際この疾患がわが国では少ないのであろうか,またあつても発見されないのか,少なくとも今後検査が広く行なわれるにつれて症例数も増えていくのでないかと考えられる。私のいた教室でもこの疾患の診断のために実に多くの検査がなされていた。たとえば経皮的にカテーテル法による選択的腎動脈撮影がしばしば行なわれ,まつたく日常茶飯時のことであつた。そしてたとえば,あるネフローゼ症候群を有する患者が受診したさいにも,その病歴,症状,検査所見などがふつうのネフローゼと異なる場合,というので,腎バイオプシーとともに腎静脈撮影を行ない,腎静脈に血栓症が発見されたこともある。その患者のネフローゼ症候群が血栓症によるものと判明し,手術が行なわれた結果,以前見られた著明な蛋白尿や浮腫も消失してしまった。

臨床メモ

水虫か,しつしんか,角皮症か—鑑別法と手当て

著者: 上田篤次郎

ページ範囲:P.880 - P.880

 何と言つても,われわれのみる皮膚疾患ではしつしんが一番多く,次が白癬菌によるもので,角皮症では婦人の進行性手掌角皮症がいくらかある程度である。
 しつしんか,水虫(汗疱性白癬)かの区別は鱗屑に10〜20%のNaOHを加えて鏡検し,白癬菌を証明できるか否かで確定できるが,多くの場合は皮疹の特徴で判断できる。

果糖の新しい利用法—果糖による高K血症の治療

著者: 飯田喜俊

ページ範囲:P.831 - P.831

 急性腎不全,あるいは慢性腎不全においてわれわれを悩ますものの一つに高K血症がある。高K血症の危険性はすでに以前よりいわれているところで,とくに不整脈や心不全をきたすので注意しなければならない。
 この高K血症の治療にはいくつかの方法があるが,従来よりブドウ糖とインシュリンの静注が行なわれてきた。この注射によりブドウ糖がグリコーゲンとなつて細胞内に移行するときもKと一緒に細胞内に移り,かくして細胞外のK,すなわち血清K値が低下することを用いたものである。

診療相談室

肝機能の好転しない患者の退院の時期,他

著者: 上野幸久 ,   石原生

ページ範囲:P.905 - P.907

質問 肝機能のなかなか好転しない慢性肝炎患者の退院の時期の選定はどうしたらよいでしようか。 (佐賀・石原生)

今月の表紙

PPLO

著者: 佐々木正三

ページ範囲:P.904 - P.904

 PPLOという略語は,Pleuropneumonia likeorganismsに由来するもので,その名が示すように牛肺疫とか羊乳塞症の病原体としてのPleuropneumoniaに類似の集落を作る一群の微生物で,人工無細胞培地上に小集落を作ると同時に,細胞濾過膜を通過する性質があつて,細菌とウイルスの中間を占めるものと考えられ,これらにMycoplasmaの名称が与えられている。
 人に対する病原性は,非りん菌性尿道炎の原因として注目され,多くの論議があつたが,原発性非定型肺炎の病原体として知られてきたウイルスが,実はMycoplasmaであつたことが確認されて以来,人に対する病原的意義が大きく浮び上つてきた。

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臨床検査センターと医師会病院の現状と将来

著者: 渡辺登 ,   野村実 ,   守屋博 ,   山田潤一

ページ範囲:P.841 - P.848

いく多の困難な問題を抱えて混迷する,わが国医療の現実の中で,臨床検査センターと医師会病院設立への動きは地域医療の向上にとつて一つの大きな光明を示すものとして注目されている。その実現の火ぶたが切られて,すでに数年を経ている浜松・板橋の両医師会病院などの現状と,将来像についてお話しただいた。(グラフ頁参照)

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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