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雑誌目次

雑誌文献

medicina4巻7号

1967年07月発行

雑誌目次

Leading Article

医療社会事業

著者: 金久卓也

ページ範囲:P.953 - P.955

 疾病の予防・治療・リハビリテーションを妨げ,困難にする社会文化的要因はいろいろと多い。
 まず経済の問題がある。貧困はしばしば疾病の母体となることはいうまでもない。また,家族内・職場内の人間関係の障害といつたストレス的生活場面は,神経症や精神身体症の直接原因となり,いろんな身体疾患の誘発・促進・延滞因子ともなる。それは人間が身体的-心理的-社会的な統一体であり,身体面の変化が心理面や社会面にすぐ波及していくだけでなく,社会面の変化は心理面に波及して心理障害を起こし,それがまた身体面に波及していくというふうに,人間のこの3つの側面の間には絶えざる相互作用が行なわれているからである。

100万人の病気

いわゆる肝炎の慢性化

著者: 太田康幸

ページ範囲:P.956 - P.963

 慢性肝炎という診断は近年非常に増えてきているが,その本態はかならずしも明らかではない。ここではこれを広く急性肝炎と肝硬変の中間に存在する疾患群としてとらえ,その判定基準,誘発因子,防止策などの面から"肝炎の慢性化"という問題を考えてみたい。

座談会

急死

著者: 鴫谷亮一 ,   小林太刀夫 ,   五島雄一郎 ,   川上保雄 ,   吉村三郎

ページ範囲:P.964 - P.974

 急死とはなにか。従来からの心臓病,脳出血を中心とする脳死から,近年注目されているポックリ病まで,循環器疾患の症例を中心に追及し,それらの予知・予防に触れる。内科と法医学の立場から。

診断のポイント

中間性冠状(動脈)症候群

著者: 本田正節

ページ範囲:P.975 - P.976

狭心症と心筋硬塞の中間型
 冠状動脈に起こる疾患の代表として比較的予後のよい狭心症と,冠状動脈の閉塞により心筋に壊死をきたして,重篤な症状と悪い予後とを示す心筋硬塞症とがあることは周知のごとくである。
 狭心症の症状は主として労作のさいに前胸部に痛みとか絞扼感が起こり,痛みは上肢のほうに放散するがこの発作の持続は15分以内であり,労作をやめて安静をたもつとかるくなるし,またニトログリセリンがよく奏効する。発作時には心電図でSTの下降がみられる。心筋硬塞症では痛みの程度が激烈であつて持続時間も長く,冷汗,嘔吐,血圧の急激な降下とショックとを伴う。痛みにはニトログリセリンは効かず,モルヒネを使用せざるをえない。心電図では硬塞に面した誘導でSTの上昇が起こり,ついで幅の広い深いQが出現する。また赤沈値の促進と血清GOTの著明な上昇,白血球増多をきたす。

梅毒血清反応陽性—どこまで治療をつづけるか

著者: 水岡慶二

ページ範囲:P.977 - P.978

 一時,その姿を消していたTreponema pallidum(TP)がふたたび日本に現われ,新鮮な早期顕症梅毒患者の増加を惹起していることは,多くの報告によつて明らかなことである。梅毒という病気をすでに忘れかけていた臨床医家も多かつたことと思うが,梅毒をいつも頭の隅に思いうかべながら患者の診察にあたらなければならないような時代がふたたびやつてきていることに注意しなければならない。
 ところで,梅毒と診断するのに欠かすことのできない検査法は,Wassermann反応という名前で総称されている梅毒血清反応Serologic Tests for Syphilis(STS)である。そこで,ここにはSTSが陽性に出た場合,その患者をどのように取り扱うのがよいかという点について述べてみる。

いわゆる頭痛もち

著者: 帯刀弘之

ページ範囲:P.979 - P.982

 いわゆる頭痛もちの頭痛とは数年以上よくもならずわるくもならず,消長をくりかえす,習慣性の慢性頭痛(あるいは頭重感)と考えてよかろう。
 この頭痛は鎮痛・鎮静剤を用いることにより一時的に緩解し,生命に対する予後もよいのでともすれば軽視され,病像の追求も中断されがちである。患者も頭痛に悩みながらも鎮痛剤を常用したり,慣れともあきらめともつかない日々を送つている。このような実態を反省しつつ,頭痛もち患者にどう対処すればよいか慢性頭痛の原因から考えてみたい。

治療のポイント

減塩食療法

著者: 小林快三 ,   加藤克己

ページ範囲:P.983 - P.985

 浮腫をきたす疾患は日常臨床上数多く認められるが,比較的しばしば遭遇し食事療法を必要とするものは心性,腎性,肝性に分けることができる。浮腫をきたすときその原因の如何にかかわらず一般に全体液量が増加しことに細胞外液量の増加がいちじるしい。これらに共通した事実はNaClと水の蓄積であつて,ここに減塩食療法の必要とされるゆえんがある。また浮腫をきたすNaCl,水の過剰を除くとき,原因となる代謝失調の是正をもたらし,原因療法となりうる可能性をみのがしてはいけない。たとえば軽度の心不全時に最初軽度の利尿をつけることにより心搏出量が増しそのまま利尿が持続し,心不全が解消することはしばしばみられることである。
 しかしこれらはもちろん心疾患に強心薬を,ネフローゼに副腎皮質ホルモンの使用などのごとく原因療法の重要性を損なうものではない。

「めまい」の治療

著者: 猪初男

ページ範囲:P.986 - P.987

 「めまい」はメニエル病を初めとして,各種の疾患のさいにみられるが,治療の根本は「めまい」の原因となる疾患の治療にあることはいうまでもない。しかしここでは「めまい」に対する対症療法について述べる。

ビタミンB2の臨床応用

著者: 武内俊彦

ページ範囲:P.988 - P.989

 ビタミンB2は呼吸酵素の代表的なものであるフラビン酵素の補酵素として生体内の酸化,還元に不可欠のビタミンでB1よりむしろ生命現象に直結したビタミンと考える。
 B2は生体内において付燐され,FMN(Flavinmononucleotide),FAD(Flavin adenine dinucleotide)となつて初めて補酵素としての意義をもち,さらに酵素蛋白と結合することによつて酵素を形成し,生理的な触媒作用を発揮するにいたる。生体内にはFADが大部分(80%前後)を占めており,FMNが10〜20%,残りの数%がFree riboflavin(FR)として存在している。

末期がん患者の痛み

著者: 清原迪夫

ページ範囲:P.990 - P.991

痛みの原因
 がんの痛みといつて,手のほどこしようもない症例にしばしば遭遇するが,がん細胞そのもの,あるいはその代謝産物が,痛みを起こす刺激になつているという報告はない。したがつて,がん患者で痛みを起こす原因は,がん組織による神経根や骨の圧迫,浸潤,神経や血管への細胞浸潤,内腔臓器の狭窄や閉塞と,それに伴う組織伸展や崩壊,機械的な血管の閉塞,リンパ管の閉塞による腫張,筋膜や骨膜への浸潤や腫張形成,壊死や感染,炎症などの合併などがかさなり合つて,がん特有の痛みを形成すると考えられる。しかも進行性がんの場合,上述の痛みを起こす原因が拡大転移し,相ついで痛みの性質が激化したり,拡がつたりする一方,あるとき突然に自発痛が消失してしまうような状態がくることがある。

ファースト・エイド

眼の異物

著者: 加藤格

ページ範囲:P.992 - P.993

まず注意すべきこと
 眼にごみが入つたという訴え,すなわち"眼の異物"といつてもさまざまである。かるいのは道を歩いていたら風が吹いてきて砂ぼこりが入つてしまつたというものから,おもいものは工場で鉄片がとんできて眼球を貫いて眼窩にまで達しているといつたものまである。軽重さまざまではあるが,いつたん"眼の異物"という訴えで診療にあたるさいにまず念頭においてほしいのはつぎの2点である。
 第1はその異物が眼球外壁(角膜,強膜)を貫いたいわゆる穿孔性異物ではないかということである。穿孔性異物は予後がたいへん不良で,これには異物の大小,患者の苦痛の程度はあまり関係しない。とくに一見して異物が見当たらないときには穿孔しているのではないかと疑つてかかることを忘れてはならない。

器具の選び方

聴診器のえらびかた

著者: 笹本浩

ページ範囲:P.994 - P.995

 聴診器は,有名なフランスの病理学者Dr. René Théophile Hyacinthe Laënnecによつて発明された(1819)。彼は,ジーナ・ロロブリジータ型のグラマーの患者に,従来どおり彼の耳を直接彼女の心臓部にあてることができず(気の弱いドクターよ!),紙巻き円筒を代用することによつて,かえつて心音をよく聴取できることを発見し,これからヒントを得て木製円筒を作った。これこそ世界最初の聴診器である。これは長さ約1フート,直径1.5インチで,携帯に便にするため,この木製円筒の中央部を切断してネジこみ式とし,胸壁側は1.5インチの深さのロート状とした。この型式の聴診器は現在でも,ときおり産科方面で用いられているが,内科方面ではTraube式としてかつて用いられたことがあるのみである。
 両耳用の聴診器は,その後,ニューヨークのDr. George Philip Cammannによつて1855年に完成された。この型式は現在用いられているものと,ほとんど同じで,耳側は外聴道にはめこむようになつている。

EDITORIAL

肝硬変—概念の変遷

著者: 高橋忠雄

ページ範囲:P.999 - P.999

 1813年,肝硬変が新生物という誤つた見解の下に,Laennecによつて記載されたところに,この疾患の今日までの混乱と謎とに終始している不幸が始まつたともいえるであろう。これとくらべると,そのすぐ後に,Cruveilhierの肝組織の一部の萎縮と残存部の肥大が肝硬変に至るプロセスであることの推察,またKiernanの結合織増生に早くも注目したことなどは,格段にすぐれた業績といつてよいと思う。
 その後半世紀ほどの間,肝硬変の形態学的研究と臨床的観察は,まず順調な歩みをつづけていた。この間Laennecの"萎縮性"に対立するかにみえたHanotらのいわゆる"肥大性肝硬変"(今日の考えでは,primary biliary cirrhosis)の提唱に,攪乱された無用の労力の浪費の1時代はあつたにせよ。この頃の病理学者の見解は,肝硬変の本質を炎症とするのが圧倒的であり(chronische,diffuse,interstitielle,produktive Hepatitis),やがてこれに反発する肝実質崩壊が先行してこれに炎性反応が伴うとする説との論争(いわゆるHepatitis-Hepatose Problem)がつづき,Rössleはこの対立を折衷した見解をとり,肝細胞だけでなく同時に血管その他の間質も侵すNoxeによつてのみ肝硬変が成立すると考えた。

小児の急死

著者: 馬場一雄

ページ範囲:P.1000 - P.1000

 症候群名の中には,早晩抹殺される運命を有するものが多い。小児の急死もしくは急死症候群(sudden death syndrome)1)を,「症状が軽微であつたために,あるいは,経過が急速であつたために,死の転帰を取ることの予測が困難であつた突然の死亡」という意味に了解すれば,急死症候群も,抹殺さるべき,もしくは抹殺を要する症候群の一つである。
 しかし,遺憾ながら,小児医学の現状が,この名称をまつたく不要とする段階に達しているとは考え難い。本症候群と判断された症例の多くは,剖検によつても死因となる病変が発見されないからである。

グラフ

皮疹のタッチ標本—Letterer Siwe病

著者: 西村昻三

ページ範囲:P.942 - P.943

 皮膚や粘膜に細胞浸潤をきたす疾患は少なくないが,もし浸潤細胞に一定の特徴がみられる場合には,これらの皮疹や粘膜疹を,それぞれに応じた適切な方法できずつけ,タッチ標本を作成すると,診断上有力な手掛りを得ることができる.タッチ標本は生検にくらべ,簡便で,はやく結果がわかり,細胞学的にもよりよい標本を作製しうるものである.
今ここに,その一例として示すものは,いわゆるReticuloendotheliosisの一つであるLetterer-Siwe病のタッチ標本である.本症は乳児にみられることが多く,図6に示すような特有の皮疹と,肝脾腫,リンパ腺腫,肺の浸潤,出血傾向,貧血,骨の病変,重症感染の合併などを主徴とする予後不良の原因不明の疾患であるが,これらの症状の多くはLetterer細胞とよばれる組織球の浸潤により惹起されたものである.本症の皮疹も組織球の浸潤よりなるため,皮疹のタッチ標本で多数の組織球の証明に成功すると診断上一つの有力な根拠となる.(本文111頁参照)

病院における自動監視装置

著者: 北村和夫

ページ範囲:P.945 - P.950

 最近はなばなしく登場した,俗にエレクトロニックナース,または,ロボットナース,などとよばれる自動監視装置は,その目的,用途によつて構造機能を異にする。現在,欧米あるいは,本邦で普及実用化されているものは,手術室,分娩室などで用いられる多要素記録,監視装置であり,ふつうは1人,たかだか数人の対象の生体情報を,特定時間,連続的に観察するものである。記録する情報は多要素(心電図,心音図,体温,呼吸,血圧,脳波,血流量,筋電図,etc)が望まれる。
 これに反し,ここに紹介する装置は,集中管理的に用いられるものであり,第1は検温,検脈の看護婦の日常業務を短時間に精確に機械に行なわせるもので,対象は数百床,計測する情報は体温,脈拍のわずか2要素であるが多数の病床を瞬時に計測し,これを記録し終わるまでの記憶回路(アナログ式のコンピューター)を内蔵する点が,前述の手術室などで用いられている多要素記録器と構造的に異なる。

心電図講座・7

狭心痛—ST降下のいろいろ

著者: 難波和 ,   藤垣元

ページ範囲:P.1023 - P.1028

 狭心痛は一般的には冠血行異常にもとつく心筋酸素欠乏によつておこるのであるが,心臓神経症においても軽度の心臓部痛がみられるし,心筋硬塞症におけるようなはげしい疼痛をうつたえるものもあり,これらの診断には,十分な問診,血沈,白血球数,血清GOTなどの臨床検査とともに心電図検査を欠かすことはできない。狭心症の心電図変化はST・Tの異常であるが,本号ではST降下のみかたを主として説明する。

他科との話合い

Banti病(Banti症候群)

著者: 鈴木忠彦 ,   山本祐夫 ,   中作修

ページ範囲:P.1029 - P.1034

 アメリカで「門脈圧亢進症」が確立されて以来,「Banti病」は次第に病名として使われなくなつてきつつあるようだ。しかしわが国の症例ではBantiが記載したような組織像・臨床症状は明らかに存在する。また欧米の症例をみても,病名は違つても明らかにBanti病と思われるものが少なくない。そこで本号では,Banti病の考え方を中心に,あわせて診断・治療などにつき触れてみた。

臨床栄養学

疾病と栄養

著者: 黒田嘉一郎

ページ範囲:P.1035 - P.1038

 栄養素の過不足はそれのみで,疾病の原因となりうる。数多くの栄養剤の市販されている昨今ではあるが,単にそれらを投与するだけでなく,広い意味での患者の栄養指導が,日常診療の一環として考えられる必要があろう。栄養と関連した疾病の考え方について。

症例 全身性疾患と肺(VII)

敗血症と呼吸器

著者: 三上理一郎 ,   北川正信

ページ範囲:P.1041 - P.1046

症例 1 多発性肺化膿症を惹起した敗血症
 桜○正○ 30歳,女子(NN 697)
 家族歴:特記すべきことはない。

比較的若年にみられた肝門部胆道癌の一剖検例

著者: 高橋忠雄 ,   伊豆蔵利明 ,   越川弘 ,   石川昭

ページ範囲:P.1047 - P.1051

 原発性の肝外胆道癌については,Durand-Fardel, Schueppel以来その報告は数多い。しかし観血的方法あるいは剖検による以前に明確な臨床的診断を下すことは困難な場合がかなり多いようである。ことにその病変が肝門部にある時は,部位的関係からみて観血的方法によつてさえ病変部位の確認が困難で看過されやすい。最近は肝門部胆道癌として肝内の太い肝管に原発する肝内胆道癌が注目されてきているが,著者らは最近,臨床経過の上からは良性の胆道狭窄を思わせる時期がかなり長く先行し,かつ,たまたまその病変が肝門部に限局した肝外胆道癌であつたために,観血的方法によつてもその病変部位を確認し得ず,診断に迷つた一症例を剖検し,興味ある二,三の知見を得た。

正常値

尿の比重と濃縮試験

著者: 前田貞亮

ページ範囲:P.996 - P.998

 尿の比重の変動が腎機能の状態を正しく反映しているのであれば腎機能検査としての意味がある。腎機能検査はいくつかに分けられる(表1)が,このおのおののもつ意味は異なつている。腎盂腎炎,間腎性腎炎やK欠乏症,あるいは糖尿病,内分泌疾患,浮腫消褪期などの特殊な場合をのぞいては,GFRと尿濃縮力との間にそれほど大きな差異は示さないので,実地医家にとつて尿の濃縮力を知ることは腎機能の概略を知りうることになる。

検査データ どう読みどうする?

混濁した髄液

著者: 祖父江逸郎

ページ範囲:P.937 - P.937

 髄液は正常では水様無色透明で,放置しておいても外観はなんら変わらない。混濁している場合は,いかに軽度であつても病的である。髄液が混濁するのは主として白血球,赤血球,細菌,細胞などが存在するためである。正常の髄液では1.0mm3中3〜5こ細胞があり,小淋巴球であるが,通常6こ以上の細胞数がある時は病的である。淋巴球だけが増加している時は液はほとんど混濁しないか,または透過光線でみると微細な混濁,すなわち微細浮遊物が認められる。白血球増加がある時には混濁が強くおこる。新鮮な出血では髄液は不透明で赤血球混入の多少によつて着色や混濁の度合いが異なる。
 混濁した髄液をみた時,考えられる疾患をあげると表のようなものがある。疾患によつて混濁の度合いや着色の有無が異なるので,外観だけからでも,まず大ざっぱな仕分けが可能である。脳出血,脳血栓,栓塞,クモ膜下出血では内容が主として赤血球で,着色しているので,他のものから区別される。このうちクモ膜下出血では赤血球数も多く,したがつて一般に不透明混濁度も強い。上清は脳出血,血栓,栓塞では黄色であるが,クモ膜下出血では黄桃色を呈する。脳腫瘍でも時に赤血球がかなり含まれていて,脳血管障害と類似の髄液外観を呈することがある。その他の疾患では着色していることはほとんどない。

この症例をどう診断する?・20

出題

ページ範囲:P.940 - P.940

症例
38歳 男 会社員
主訴:呼吸困難 発熱

討議

著者: 田崎義昭 ,   和田敬 ,   太田怜 ,   松尾裕 ,   菅邦夫 ,   光永慶吉

ページ範囲:P.1055 - P.1060

まず,アナムネーゼの検討から 一とくに発熱の原因をめぐつて
 菅まず,アナムネーゼからご討論願いましようか。
 田崎 9歳の時,関節リウマチとありますが,これはリウマチ熱というように,解釈してよろしいでしようか。

統計

最近の赤痢について(2)

著者: 菅沼達治

ページ範囲:P.939 - P.939

 前号に引きつづいて,最近の赤痢の特徴を次に述べることにします。
 赤痢の集団発生についての統計を示しましたが,昭和30年には集団発生による患者は,全体の10.6%にすぎなかつたのですが,34年には20%を越し,40年には37.6%の多きに達しました。これは最近は個々に発生した患者の届出がやや悪くなったことも考えられますが,集団発生による患者の比重が増したことは注目すべきでしよう。なお,集団発生1件当りの患者の平均は,毎年30名前後であまり変化はみられません。

トピック

結核検診フィルムを利用した肺癌の集団検診

著者: 鈴木千賀志

ページ範囲:P.1002 - P.1003

 今日でもわれわれのもとを訪れる肺癌患者は,早期のものが少なく,進行期ないし晩期のものが多い。したがつて現段階において肺癌のもつとも的確な治療法とされている外科療法も切除率が約30%,5年治癒率が20〜30%で,他臓器癌に較べて成績がかなり劣つている。
 肺は含気性臓器なので,末梢発生の肺癌でも中心性発生の肺癌でもわずか5mm径の大きさに達すると,X線写真に異常陰影を現わすので,われわれは肺癌の早期発見を目指してわが国で今日ひろく行なわれている結核集団検診フィルムを利用して,昭和27年〜41年,14年間連続して宮城県を中心に東北地方の18事業所および39住民集団について延215万9460名の肺癌検診を行なつた。

第一線の立場

結核集検時下着着用の許容とその問題点

著者: 藤田豊治

ページ範囲:P.1007 - P.1007

 私の知つている(関連のある集検を業とする団体を含めて)集検の場では胸部レントゲン撮影は上半身裸体でやつていますが,マイクロ・バスで巡回検診に行つたときにはつぎのような質問を事業所職員から受けることがあります。
  「地区の保健所では下着をつけたままでレントゲンがとれるのに,あんたのところでとらぬのはレントゲンの機械の性能が悪いのではないか」と。

診療行為と過失

著者: 臼田正堅

ページ範囲:P.1008 - P.1008

 近年一般に医学的思想の普及とともに診療行為に対する関心が高まり,ややもすれば患者は診療に少しでも疑いがあればただちに疑惑の目にて物事を考えると同時に法的手段に訴えるという傾向がみられる。そこで診療事故に備えていかなることが業務上過失とされるか,法的面よりこれを概念的に述べてみた。
 過失過失には刑事上の過失と民事上の過失があり,前者は行為者の加害再発防止の制裁が,後者は被害に対する損害の補填が目的である。民法第709条に不法行為の要件として故意と過失を規定しているが,その過失とは行為によつて違法な結果が発生することを認識していながら認識しなかつたことで客観的に事故発生の予見可能性があつたにもかかわらず怠つた,すなわち不注意のため事故発生を未然に防止し,または回避する義務を怠つたための事故—注意義務違反としての業務上の過失—である。また抽象的過失と具体的過失とに区別され前者は客観的に「善良なる管理者の注意」を後者は主観的で「自己のものと同一の注意」を怠つた場合である。民法上は抽象的過失を指している。そして過失と被害—結果的事故—との間につねに因果関係があることである。

臨床メモ

熱傷の処置

著者: 高島巌

ページ範囲:P.1054 - P.1054

 熱傷の重症度は,その深さと,範囲と,部位とによつて決定するが,深さから,表在性熱傷(紅斑性熱傷epidermal burnと水疱性熱傷で痛覚の亢進したもの,すなわちsuperficial dermal burn)と,深達性熱傷(水疱性熱傷で痛覚の消失したもの,すなわちdeep dermal burnと壊死性熱傷deep burn)とに分け(前者は瘢痕を残さず,後者はこれを残す),また診療上,重症度をつぎの2群に分かつのが好つごうである。
1)外来治療で十分の場合

診療相談室

腎盂腎炎の難治例,他

著者: 上田泰 ,   安藤生

ページ範囲:P.1061 - P.1063

質問 下記の症例についての治療法を。
症例:53歳男,40年来,糖尿病でインシュリンコントロールを行なつていた。

今月の表紙

膿・分泌液・痰のグラム染色標本

著者: 小酒井望

ページ範囲:P.982 - P.982

 細菌検査に際して,塗抹検査(染色標本による)で知りうることは,培養検査に比べてごく限られている。菌種の同定,感受性検査のためにはもちろん,材料中にわずかしかいない病原菌の検出には,培養検査を欠くことはできない。そうかといつて塗抹検査は省略するわけにはいかない。古典的なグラム染色による塗抹検査で,菌の種類が推定できる場合があるし,培養検査を進める上の大事な手がかりの得られる場合も少なくないのである。
 図1疾のCandida tropicalis。グラム陽性の酵母様真菌が多数みえる。塗抹検査だけでは種類はわからない。培養検査によりCandida tropicalisと同定された。本例は化学療法中の菌交代現象として本Candidaが増殖したもの。

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きのう・きょう・あした

著者: 本間日臣

ページ範囲:P.1001 - P.1001

1966年10月22日
 赤いさかづきわがしとね

Letterer-Siwe病と皮疹のタッチ標本

著者: 西村昻三

ページ範囲:P.1039 - P.1040

 Letterer-Siwe病は,組織球の増殖性の疾患であるReticuloendotheliosisのなかでもつとも経過の早い,そして予後の悪いもので,2歳以下の小児に起こることが多いとされているが,1歳以下の乳児の場合にはことに予後が悪く通常不治といわれている。また,まれではあるが,先天性のもの,家族性のもの,成人症例の報告もある。
 本症は,骨の好酸性肉芽腫,Hand-Schüller-Christian病などと病因上同一の疾患で,臨床像の差はおのおのの表現の差にすぎないとの考え(一元説)が一般に受けいれられるようになつてきている。すなわちReticuloendotheliosisのなかで本症がもつとも重症型で広範なひろがりをもつのに対し,骨の好酸性肉芽腫はもつとも軽症型で,限局性の病変を示すにすぎず,Hand-Schüller-Christian病は,両者の中間に位置するものとされている。Lichtensteinはこれらに対しHistiocytosis Xなる名称を用いることを提唱し,これを限局型,慢性汎発型,急性汎発型の三者に分けたが,これはそれぞれ骨の好酸性肉芽腫,Hand-Schuller-Christian病,Letterer-Siwe病に相当するものである。

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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