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雑誌目次

雑誌文献

medicina4巻8号

1967年08月発行

雑誌目次

Leading Article

医学部と大学病院と卒後教育

著者: 笹本浩

ページ範囲:P.1107 - P.1109

病院事業
 ある県立病院の新築落成式で,来賓の祝辞のなかに,「本院のいつそうの発展を祈る」旨の発言が多かつたが,これは,いいかえれば,その県に患者がたくさん発生して,県の保健衛生の低下を願うことと同意語である。
 また,県立や市立の病院,その他の公的病院の経営が思わしくなく,赤字を出そうものなら,院長は県会議員や市会議員その他の関係者から,尻をひつぱたかれるのがつねである。

100万人の病気

ネフローゼ症候群—ステロイド療法の問題点

著者: 古川俊之

ページ範囲:P.1110 - P.1117

 ネフローゼ症候群の治療効果は,ステロイド療法が行なわれるようになつてからいちじるしくよくなつてきているが,それにもかかわらず,この療法は今日一つの反省期にさしかかつている。ここではステロイド効果の長期追跡からみた反省と併用療法など効果改善の動向を紹介し,ステロイド剤が奏効するネフローゼ症候群について効果予測の方法,腎生検の価値を論ずるとともに,情報理論の必要性,多変量解析法の応用に言及した。

座談会

ネフローゼ症候群—考え方と治療のポイント

著者: 矢島権八 ,   東条静夫 ,   大野丞二 ,   前田貞亮 ,   加藤暎一

ページ範囲:P.1118 - P.1126

 ネフローゼ症候群はどの位の率でなおるのか,どの程度こわいものなのか,という問題は,臨床家が等しく関心をもつところにちがいない。本号では,特に病理学者もお迎えし,最近の知見を紹介していただきながら,特に治療の実際について,くわしくお話し合いいただいた。

診断のポイント

老人の息ぎれ

著者: 長浜文雄

ページ範囲:P.1127 - P.1129

息ぎれの一般的成因
 呼吸中枢は血液のわずかなCO2分圧の変動に敏感に反応して,健常な呼吸運動が営まれている。息ぎれ,すなわち呼吸困難(Dyspnoea;Atemnot;shortness of breathing or shortbreath)はこの呼吸中枢が異常に刺激されて起こり,その成因には
I 体液性呼吸困難:呼吸中枢を通る血液の

Cushing症候群

著者: 井林博

ページ範囲:P.1130 - P.1132

20,30代の女性によくみられる
 本症はいまからちようど35年前,Harvard大学,Peter Bent Brigham Hospital外科主任Harvey Cushing教授により"Pituitary basophilism"の名で発表された。近年各種合成皮質ステロイド剤の長期大量療法の副作用として外見まつたく似た臨床像がしばしばみられることから逆に本症が広く臨床家になじみの深いclinicalentityとなつてきた。本症患者の頭蓋レ線フィルムを凝視する白髪痩身長躯の同教授の肖像はいまもなお,同大学の重厚な灰色の医学図書館と,陽ざしのとどかぬ仄暗いPeter Bent BrighamのSeminar講堂にかかげられている。Cushing教授は当時すでに本症12例中剖検8症例の下垂体と副腎の病変,特に副腎についても8例中過形成6例,正常および小腺腫形成各1例と正確に記載しているが,現在では本症の病態生理はむしろ副腎皮質からのcortisol(Fk)過剰分泌によることが明らかにされている。したがつて現在では同教授の創唱した下垂体性のACTH分泌亢進による両側副腎過形成の症例(現在ではCushing病ともよばれる)のほか,副腎の腫瘍病変すなわち片側性腺腫やがんなどによるcortisol過剰分泌によつてもまつたく同様な、臨床像を呈し,一般にこれらを包括してCushing症候群とよばれている。

異型狭心症

著者: 太田怜

ページ範囲:P.1133 - P.1135

心筋硬塞,狭心症,異型狭心症の相違
 狭心症を,一過性冠動脈虚血であつて心筋になんら壊死を残さないものというように定義すれば,その的確な診断は,はなはだ困難なこととなる。なぜならば,ある狭心発作が心筋に組織学的な変化を残さなかつたという臨床徴候は,なにも見当らぬからである。したがつて,われわれは,臨床上ある基準をもうけて,狭心症と心筋硬塞とを区別せざるをえない。たとえば,前者では,狭心痛の持続時間が短いとか,心筋壊死を表わす血液化学的反応が陰性であるとか,心電図のST・Tの偏位が一過性であるとか,異常Q波がないとか,などである。
 心電図上の変化では,以上のほか,ST偏位の方向も問題となる。すなわち,狭心症では,主として心内膜下筋層が傷害を受けるので,その部に面した体表からの誘導で,ST低下がみられ,心筋硬塞は貫壁性の変化が多くみられるので,同部の誘導のSTは上昇する。したがって,ある狭心発作があつて,ST上昇のみられたときは,それだけで心筋硬塞と診断して,ほぼまちがいがない。すなわち,このようなST上昇は,狭心痛が去つたあともなお存続し,やがては,心筋壊死を表わす異常Q波がみられるようになるからである。

治療のポイント

慢性膵炎の食事指導

著者: 荻原洋三

ページ範囲:P.1136 - P.1137

 従来わが国では慢性膵炎は諸外国に比し少ないとされていたが,膵に関する病態生理の解明と,膵炎への関心がたかまるにつれて,近年しだいにその数を増してきたといわれる。しかし慢性膵炎という病気は定義自体にも問題があつてその概念に統一を欠き,また症状も多彩でありこんにちでも診断のむずかしい疾患の一つとされている。これらの点については本論からそれるので,べつの論文を参照されたい1)
 さて膵炎の原因または誘因として食事の重要性については古くから論ぜられ,大食,脂肪,肉食,アルコール飲用が重視されている。また栄養障害が膵機能または膵組織に与える影響についても有害性であると考えられている。慢性膵炎の治療,ことに食事療法には以上の点を考慮しながら行なう必要がある。

破傷風—その予防と治療

著者: 海老沢功

ページ範囲:P.1138 - P.1139

 「破傷風は予防の対象とすべき疾患で,治療の対象とすべき疾患ではない。」これは欧米の医師がもつとも頻回に公言する文句である。すなわち予防注射を指定どおりに行なえば絶対にかからない病気であり,しかもこの予防注射は副作用が少なく安価である。これに反し破傷風の治療は現在でも,もつともむずかしい手のこむ仕事であり,少なくとも3人に1人以上死亡するという労多くして功の少ないものである。そこで今回は予防の面から先に述べることにする。

小児湿疹の治療

著者: 小嶋理一

ページ範囲:P.1140 - P.1141

まず診断の確立を—みだらな外用薬使用は接触皮膚炎を起こす—
 小児湿疹の治療にさいし,特別な方法,あるいは「コツ」があるということはない。ご存知のように湿疹学というものは,皮膚科治療学の基礎をなすものであつて,湿疹の治療を一応マスターすることが,皮膚科臨床医として要求される最低の線と考えられている。このように湿疹治療学の重要性を強調するゆえんは,皮膚科外来患者の約半数が湿疹類に属するという,対象患者数のみから主張しているのではなく,皮膚科外用療法の基礎は湿疹の治療を会得することにあるということからである。
 古くよりいわれておるように,湿疹は一つの皮膚症候群とみることができる。皮膚病変は多彩であり,瘢痕,潰瘍,結節などの疹型は湿疹においては認められないが,その他のあらゆる原発疹,続発疹が現われてくる。これらの発疹の性格,部位,配列などを参考にして治療方針をたてる。治療方針をたてるということが,湿疹の治療にさいしてはもつとも重要なことであつて,方針の確立ということは,診断の確定であり,おのずとその個体の湿疹の予後を明確に説明できることになる。この診断の確立ということはいまさらここで述べる必要はないと思うが,現在,一般に行なわれている湿疹の治療をみると,診断の確立という点において,少しくなおざりにされている傾向があるように見受ける。

水溶性副腎皮質ステロイド剤の急性使用

著者: 佐藤光男

ページ範囲:P.1142 - P.1144

水溶性副腎皮質ステロイド剤の種類—長期投与には特徴をよくわきまえて
 われわれ麻酔科医が副腎皮質ステロイド剤を使用するときは,ショックや手術時血圧下降などの緊急時が大部分であるので,いきおい静注によつて与えることが多い。そのような目的にあう水溶性副腎皮質ステロイド剤として,日常用いている薬剤はつぎのごとくである。
 糖質ステロイド剤:ハイドロコーチゾン(ソルコーテフ;1バイアル中100mg相当を含有)。およびプレドニゾロン(水溶性プレドニンおよびプロゾリン;それぞれ1管中20mg相当を含有)。 鉱質ステロイド剤:デキサメサゾン(デカドロン;1バイアル中8mgを含有)。

目で見る神経病学・1

数分でできる神経のみかた

著者: 本多虔夫

ページ範囲:P.1150 - P.1152

 新しい薬剤の開発,外科技術の発達に伴つて神経疾患の治療法には近来長足の進歩があり,これら疾患の正しい診断は以前にもまして重要となってきている。しかるに神経疾患の診察は時間がかかると,つい敬遠されがちである。ただしこれは慣れの問題であって,一度会得されれば,短時間の簡単な診察によつて非常に多くのことを知ることができるのに驚かれると思う。
 当欄では今後数回にわたり,このような神経系の診察法を写真でご紹介する。忙しい大病院の外来でも,個人医院の診察室でも簡単にでき,これだけやればほとんどの神経疾患を見逃がさないということを主眼とした診察法である。

器具の使い方

血沈台,血沈棒のくふう

著者: 樫田良精

ページ範囲:P.1145 - P.1147

従来の血沈台の欠点
 血沈の検査は,どこの病院,診療所でも,主として看護婦によつて行なわれているが,医師が直接行なうことが少ないために,その改良は案外なおざりにされているうらみがある。
 市販の血沈測定台は,実際使う人の立場から設計されているものは少ない。1〜2本の血沈測定をする場合には,どんな方法をとつても差はないが1日に数十本も立てる場合には測定器の良否がその作業能率,および検査成績におおいに影響する。

EDITORIAL

ネフローゼ症候群

著者: 波多野道信

ページ範囲:P.1153 - P.1153

 最近腎生検の螢光顕微鏡的および電顕的観察が普及するに従い,Volhard,Fahrを初めとする腎疾患の分類を再検討すべきであるという考えが世界の腎臓研究家のあいだに起こりつつある。このような影響はネフローゼ症候群の種々の原因疾患についても同様である。すなわち従来は腎炎性ネフローゼ症候群とされていたもののなかに"Membranousnephropathy"と新しくよばれる疾患がかなり多くあることが判明した。このMembranousnephropathyとは,従来の腎炎とまつたく区別されたprimaryの腎疾患で,糸球体毛細管壁の特徴ある変性像を主体とした腎症である。臨床像としては高度の蛋白尿を主体とし,しばしば典型的ネフローゼ症候を示すものである。発症形式は潜行性で先行感染は証明されず,なんらかの機会に蛋白尿が証明されたり浮腫に気づいて医師を訪れる場合が多い。好発年齢は大部分おとなで,まれには子どもにみられるが,この点lipoid nephrosisとは異なる。臨床経過はlipoid nephrosisと異なり,ステロイド療法に対し反応性がまつたくないことが多く,ときには一時的に有効でも再発をくりかえす。この疾患は非常にゆつくりではあるが進行性で,増悪と緩解とをくりかえしながら,ついには腎不全,尿毒症へと移行する。また末期には高血圧症を合併するようになる。

臨床検査機械の進歩

著者: 樫田良精

ページ範囲:P.1154 - P.1154

 臨床検査法の最近の急速な進歩とこの新しい方法の日常診療への活発な導入は,いろいろな意味でこんにちの医療の姿を大きく変えつつあるが,このことは中央検査室システムや簡易検査法がまだ普及しなかつたころの状態をかえりみれば明らかである。しかしながら各種の臨床検査の日常化・集中化の発展は,たんに新しい臨床検査機器の開発にとどまらず,多量の検査を迅速精確に処理するために,さらに検査システムの自動化の方向に進んでおり,近き将来において臨床検査の機械化は医療施設近代化の大きな柱としていつそうの飛躍をとげるものと予想される。
 臨床検査機器は直接患者の身体に使う患者検査機器と,患者から採取した材料を扱う検体検査機器の二つに大別できる。患者検査用の代表例には臨床生理検査機器,内視鏡,重症患者や手術室用のモニターなどがある。エレクトロニクスやfiber opticusなどの新技術の導入により,これらの機器は画期的な進歩をとげつつあるが,また小型化,システム工学化も最近これらの機器の示す大きな特徴である。集積回路の急速な発達は今後の医用機器にも大きな影響をおよぼすものと考えられる。

グラフ

爪のみかた

著者: 西山茂夫

ページ範囲:P.1096 - P.1097

 爪の変化を全身性疾患の一つのあらわれとする考え方は,古くより認められているが,その診断的価値はまちまちである.すなわちある爪の変化は内臓病変と密接な関係があるとしても,合併頻度がきわめて少なかつたり,ある爪の変化は各種の異なつた内臓病変に伴つて出現したり,またある爪の変化は局所的な外因によつて発生したりして,その原因はさまざまである.しかしながら爪の変化を理解することは,全身性疾患ないし潜在性病変の1つの"道標"として,または不必要な検査を省く意味からも重要なことであろう.

ゼロラジオグラフィーの医学的応用

著者: 吉村克俊

ページ範囲:P.1099 - P.1104

 ゼログラフィーはべつの名を電子写真ともいわれ,従来の写真感光性物質の主流をなしてきたハロゲン化銀による化学的な湿式写真法とは根本的に異なり,まつたく物理的な方法によつて画像を作る方法で,乾式で水を用いないところに大きな特徴がある。この乾燥式ということが強調されてXerographyとかDryphotographyともよばれ,X線領域に用いられるときXeroradiographyとよばれる。この写真法はすでに1937年C. F. Calsonによつて考案され,医学に応用されたのは1955年で,1958年にはG.E社の製品が本邦で紹介され,1963年ごろには東芝が医学用ゼロラジオグラフィーとして製品化しすでに実用化されて乳房撮影をはじめ軟部陰影の撮影,骨部撮影などに応用されている。
 画質の大きな特徴として辺縁効果ないしedge effectという現象があり骨診断のさいに,骨梁が強調され骨折や骨にひびのはいつたさいに,その部が強調されること,わずかな透過差が鋭敏に濃度差として出てくる性質があるので,乳房の軟部組織内のわずかな差が影像として出てくるわけで,その細部構造の分析に有利である(図1参照)。

心電図講座・8

狭心痛—Tの変化を中心として

著者: 難波和 ,   藤垣元

ページ範囲:P.1175 - P.1180

 冠硬化の際にみられる心電図変化として,重要なものにT波の異常がある。ここでは狭心発作を有する患者にあらわれる二,三のT波の変化について解説した。

他科との話合い

パラメディカル・スタッフの現状と将来

著者: 芳賀敏彦 ,   大谷藤郎 ,   紀伊国献三 ,   神山五郎 ,   長沢泰子 ,   日野原重明

ページ範囲:P.1181 - P.1189

 近代医療を支える重要な柱としてのパラメディカル領域は,今後ますます専門化し,高度なものになつていかねばならないだろう。そのスタッフの養成は,特に欧米に比べて出発の遅れたわが国において,焦眉の問題であるともいえる。パラメディカル・スタッフ育成の現状と将来を,いずれも関係者としてベテランの先生方に語つていただいた。

臨床薬理学

日光皮膚炎の発生機構

著者: 荒木寿枝

ページ範囲:P.1190 - P.1193

 種々の薬剤によつてひき起こされる日光皮膚炎が問題になつている。日光皮膚炎の発生機構には光毒反応と光アレルギー反応によるものがあるが,ここではこの両者の化学反応のメカニズムと,原因薬剤との関係を臨床的にどう判定すべきかについて概説した。

症例 全身性疾患と肺(VIII)

腎疾患および肝疾患と呼吸器

著者: 三上理一郎 ,   柴田整一 ,   松下哲 ,   山口洋 ,   北川正信 ,   榊原譲

ページ範囲:P.1195 - P.1200

(1)腎疾患と呼吸器
 腎疾患と肺病変の合併するものとして,uremic pneumonitisとgoodpasture症候群がおもに知られている。

トリウム沈着を伴う腹膜中皮腫の1例

著者: 山際裕史

ページ範囲:P.1201 - P.1204

 Thorotrast(ThO2の25%溶液)は1925年,Egas Monitzにより放射線領域で脳血管撮影の目的で用いられたのが最初である。以来約25年間気管支造影,卵管造影,腎盂撮影等々,多彩な分野でひんぱんに用いられた。ところが1936年Rousy,Selbieらが実験動物で同物質による肉腫の発生を報告し,1947年にはMcMahonが70歳の男子で肝脾造影を行なって12年目に肝血管内皮腫の発生した例を記載して以来,すでにかなりの報告がある。一般に血管造影の場合は肝に,局所的注入の場合は同局所の腫瘍を発生する傾向がある。
 症例は臨床的にはThorotrast使用の有無を明確にされえなかったが,組織学的ならびにミクロオートラジオグラフィーにより腫瘍組織(腹膜中皮腫)中にトリウムの多量の沈着が証明されたきわめてまれな例である。

検査データ どう読みどうする?

小赤血球性貧血

著者: 日野志郎

ページ範囲:P.1091 - P.1091

定義上の問題点—球形赤血球症
 血液標本を漠然とながめていては赤血球の大小を判断しにくい。以前は,小赤血球性貧血というと,平均直径を測つて決めていたのだが,大変な努力を要するばかりでなく,検査者の手技や主観が影響するために,一般的な検査法にはなれなかつた。
 近ごろは主として,ヘマトクリット値を赤血球数で割つて平均赤血球容積(MCV)を出し,正常値より低い場合を小赤血球性(microcytic)といつている。しかし,小容積性というほうが正しい。小容積性だともちろん小赤血球性になるが,球形赤血球が多い場合,とくにそれが高度な遺伝性球形赤血球症(家族性溶血性黄疸)にあつては,正容積性であるにかかわらず小赤血球性になる。

この症例をどう診断する?・21

出題

ページ範囲:P.1094 - P.1094

56歳 女
 主訴:発熱,食思不振。
 既往歴:生来著患を知らず。嗜好 酒,ときに少量。肉,脂肪類は好まない。

討議

著者: 田崎義昭 ,   和田敬 ,   太田怜 ,   光永慶吉 ,   金上晴夫 ,   菅邦夫 ,   松尾裕

ページ範囲:P.1213 - P.1218

抗生物質の効果がなく,発熱と 黄疽で死亡した症例
 菅(司会) それでは松尾先生ご出題の症例のご討議をお願いします。
 田崎 簡単にアナムネーゼから説明させていただきますと,発熱と食思不振というものをハウプトクラーゲとしているので,なにかこれは消化器疾患を主にしたものを一応考えるわけです。嗜好のなかで肉とか脂肪類は好まないというのですけども脂肪類を食べるとお腹が痛いとか,そういうことがあつたんですか。

治療経験より

三叉神経痛の内服療法

著者: 清原迪夫

ページ範囲:P.1205 - P.1207

はじめに
 顔面痛の中でも,三叉神経痛の痛みは特に激しく,早期に十分な鎮痛処置がなされることが望まれてきた。最近新薬(テグレトール)の治験が重なつて,その効用が認められ,またペインクリニックの成果も注目されている。そこで,三叉神経痛について,われわれの知見をもとにして,必要な臨床事項を述べてみる(本文括孤内は,東大麻酔科外来資料による)。

統計

心臓病死亡の動き

著者: 菅沼達治

ページ範囲:P.1093 - P.1093

 わが国の心臓病死亡はこの10年近く死因順位の第3位を占めつづけていることは周知のとおりでありますが,ここでいう心臓病とは,表に示した範囲のもので,このほか死亡診断書にたんに心臓麻痺などと書かれたものはもちろんのこと,先天性や高血圧性の心臓病も含まれておりません。
 図には年齢別にみた心臓病の死亡率曲線を示しましたが,昭和41年についてみますと,5〜9歳が最低であり,以後年齢とともに上昇し,とくに40歳を過ぎると1.6倍前後というほぼ一定の率で増加していることが認められます。これを25年と比べますと,70〜74歳で両曲線は交叉し,41年は若い年齢層でいちじるしい減少がみられる一方,80歳以後では25年よりも増加しています。これはかつては感染性疾患などで死亡した人たちが多かつたのですが,最近はこのような死亡が少なくなり,寿命が延びて成人病で死亡するようになつたことも一因と考えられますが,つぎに記す病類構造の変化がおもな原因と思われます。

話題

中心は免疫とリウマチの関係に—第11回日本リウマチ学会から

著者: 佐々木智也

ページ範囲:P.1194 - P.1194

 日本リウマチ学会は日本医学会の分科会ではない学会の中で,もっとも大きなものの一つである。今年はその第11回総会が東京・虎の門の国立教育会館で開かれた。会長は東京女子医大整形外科,森崎直木教授である。
 この学会のように,取扱う範囲のあまり広くない会合では,演題も,また行なわれる討論もきわめて専門的であり,掘り下げ方が深い利点のある反面に,専門外の者には容易には理解し難い欠点もある。その難点を解決するために,日本リウマチ学会では二つの試みをしている。第1は,同じ会場の夜の部を利用しての公開講演会である。しやれた言葉でいえばセミナーとかレクチュアーとでも表現されるもので,会員の一部や会員外の多数の医師が対象である。今年は,会期第1日の5月24日午後6時から,

ルポルタージュ

個人病院と病院管理—麻田病院を訪ねて

著者: 今村栄一

ページ範囲:P.1157 - P.1159

 病院管理というと組織の整つた大病院を思いだす。たしかに組織的に合理的に運営するためには,ある程度の規模は必要である。しかし,病院管理の考えかたと手段は小病院にも応用できるのではなかろうか。麻田病院をそのような点で見学してみることにした。

第一線の立場

医師の階層分化,他

著者: 国見辰雄

ページ範囲:P.1160 - P.1162

 患者の苦訴にしたがって検尿する。尿蛋白陽性の場合ただちに「腎炎」と診断する医師はいない。そこを第2の起点とした鑑別診断の検査が出発する。
 「慢性腎炎」と診断された患者がいる。医師は入院させるべきか,通院させるべきか,安静,食餌の方法は……種々考えながら患者と話をする。対象となる患者には種々広義の治療方法の取捨選択を余儀なくさせられる。すなわち,性,年齢,職業,地域,経済状態,生活意識の程度,等々であろう。

臨床メモ

あせもの処置

著者: 船橋俊之

ページ範囲:P.1129 - P.1129

 「あせも」の発生機転のうち,とくに大きな役割をはたしているのは,皮膚の表面が汗でぬれていることである。これによつて表皮角層の浸軟膨化が起こり,汗孔を閉塞し,その結果表皮内に汗の貯溜をきたし,その刺激によつて起こる炎症が「あせも」の本態とされている。この汗貯溜現象には,このほかに細菌の作用が関与し,また増悪させる。
 したがつて「あせも」の処置は発汗抑制をはかることはもちろん,皮表の乾燥保持,清浄化の3つのことに意を用いればよい。ただし,すでに発生してしまつた「あせも」は湿疹性変化と同一と考えてよく,これに対しては湿疹と同じ処置をあわせ講ずればよい。

今月の表紙

腸内原虫

著者: 浅見敬三

ページ範囲:P.1180 - P.1180

 ヒトの腸に寄生する原虫としては5種のアメーバ,5種の鞭毛虫その他2種類があるが,そのうち,病原性をもつものの代表はここに掲げた赤痢アメーバとランブル鞭毛虫とである。一般に原虫類は検出鑑別の困難なもの,あるいはきわめてまれなものと考えられているが,少しの習練で,検出は容易となろうし,決して珍らしいものではない。ことにランブル鞭毛虫は小児では数%にも感染しているし,下痢特に夏期の原因不明の下痢症の原因ともなつている。この写真は慢性の下痢を訴えていた40歳の男子からのもので,治療剤の投与で,長年の悩みが解消した一例である。赤痢アメーバの病原性については付言を要しないであろう。
 写真はすべてHeidenhein鉄ヘマトキシリン染色法によつたものである。この染色法は虫体の同定鑑別には必ずしも必要なものではなく,普通行なわれる生鮮標本またはヨード染色標本が検査の目約にはもつとも適当しているが,これらの原虫の形態を知つていただくためにこのような写真とその模図を掲げた。

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きのう・きよう・あした

著者: 河盛勇造

ページ範囲:P.1155 - P.1155

1967.4.5
 午後5時半,3時間にわたるシンポジウムの司会を終わつたとき,一度に全身の力が抜けてしまつた感じがした。
 7日間つづいた医学会総会の最終日の,そのまたいちばんおしまいのプログラムになつた結核病学会のシンポジウムとしては,少々長すぎたと思う。しかし司会の私にとつては十分話し合う暇もないくらいに時間が速くたつてしまつて,なんとなくものたらなかつたのである。

爪のみかた

著者: 西山茂夫

ページ範囲:P.1148 - P.1149

爪の病変と全身性疾患の診断
 爪の変化を内臓病変の現われとする考えかたは古くより認められているが,その診断的価値については問題が多い。それは,ある種の爪の変化は内臓病変によつて生ずるほかに,局所的な原因(外因)によつても,同じかたちで生じうるし,またある爪変化は相関関係の少ない,さまざまの内臓病変のさいにみられるし,さらにはまたある爪の変化は内臓病変と明らかに関係があるとしても,発生頻度がきわめて少ないなどの理由によるからである。
 たとえば,爪のスプーン状の変化である匙状爪は鉄欠乏性貧血の一つの症状である場合があるが鉄欠乏性貧血のすべての患者にみられる徴候ではなく,むしろまつたく健康な人で,酸,アルカリなどの職業的接触によつて生ずることのほうが多い。古くより慢性の心肺疾患の徴候として有名なヒポクラテス爪は胸部疾患のほかにも甲状腺機能異常,肝硬変など種々の病的状態に伴つてみられ,さらには先天性家族性にも発生することは周知の事実である。またある種の爪の白い斑(Leuconychia)は,その発生頻度から,肝硬変と密接な関係があると主張する人もいるが,逆にそれをまつたく否定する立場もあり,診断的価値の評価はまちまちである。

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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