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雑誌目次

雑誌文献

medicina40巻1号

2003年01月発行

雑誌目次

今月の主題 内科医と虚血性心疾患 虚血性心疾患を疑うとき

心筋虚血を疑う症状・所見と病型診断

著者: 樫田光夫

ページ範囲:P.6 - P.8

ポイント

 ・虚血性心疾患には,症状がない無症候性心筋虚血発作も存在する.

 ・狭心症患者は,来院時には症状が消失しており,診断の第一歩は発作時の症状を丁寧に問診することから始まる.

 ・不安定狭心症は急性心筋梗塞に移行しやすい狭心症であり,その病態は急性心筋梗塞と同様であることから,急性冠症候群としてまとめられた.

虚血性心疾患と間違えやすい疾患と鑑別のポイント

著者: 小牧宏一 ,   斎藤穎

ページ範囲:P.9 - P.11

ポイント

 ・痛みの部位:虚血性心疾患は前胸部がほとんどで,時に放散痛があるが,他の疾患は原因疾患に依拠する部位に痛みがみられる.背部痛を伴うときは,大動脈解離に注意が必要.

 ・持続時間:原因となる病態が消失するまで胸痛が続くのが原則.労作性狭心症は1~15分.長い胸痛は心筋梗塞症,大動脈解離,心膜炎,気胸など.

 ・誘 因:呼吸で増強するのは心膜炎,胸膜炎,特発性肋軟骨炎.体位が影響するのは心膜炎.食事と関連があれば,上部消化管疾患の可能性あり.

 ・随伴症状・所見:肺・胸膜疾患は咳嗽や呼吸困難を伴う.不定愁訴を伴う場合や,訴えが一定でないときは精神疾患.

虚血性心疾患の臨床疫学―病歴からの確率論的アプローチ

著者: 野口善令 ,   松井邦彦

ページ範囲:P.12 - P.14

ポイント

【臨床疫学的診断思考(確率論的アプローチ)の基本的考え方】

 ・患者が疾患をもつ可能性を,確率として捉える.

 ・この確率は,臨床情報を得ることにより連続的に変化する.

 ・診断とは,何らかの臨床情報を得ることによって患者が疾病をもつ確率を修正し,治療開始閾値以上にまで引き上げること(確定診断),あるいは,さらなる検索を放棄してよいレベルまで引き下げること( 除外診断)である.

注意すべき重症心筋虚血のサイン

突然死から学ぶ―院外心臓性心停止例の重大性

著者: 長尾建 ,   飯田圭 ,   向山剛生

ページ範囲:P.16 - P.18

ポイント

 ・院外心停止の約50%は,心臓性心停止である.

 ・心臓性心停止は,高率に社会復帰が可能である.

 ・かかる心停止の救命救急集中治療の展開が急務である.

急性冠症候群症例から学ぶ

著者: 坂根健志 ,   住吉徹哉

ページ範囲:P.20 - P.24

ポイント

 ・急性冠症候群は,動脈硬化性粥腫の破綻により冠動脈内に血栓が生じ発生する不安定狭心症,急性心筋梗塞症などを包括した概念である.

 ・自覚症状,理学的所見,心電図を含めた検査所見などにより,短期的な生命予後のリスクを迅速に評価し,血行再建を含めた治療戦略を決定しなければならない.

 ・リスクや重症度を考慮した適切な治療方針を決定する際には,Braunwaldによる不安定狭心症の分類や,ACC/AHAの指針などが参考になる.

非観血的検査からどこまでわかるか?

病態による検査の進め方

著者: 高山守正

ページ範囲:P.25 - P.28

ポイント

 ・虚血性心疾患の患者は,心筋虚血疑い例から心原性ショックまでの広いスペクトラムに位置する.

 ・患者を診察したときの所見から病態を的確に判断し,検査・診断・治療をどのように進めるべきかを考える.

 ・トリアージの発想で,即治療群,後治療群(A.迅速入院,B.外来診断後入院),軽治療群と分けると,診断・治療へのプロセスを考えやすい.

 ・選別には初診時の症状,身体所見の評価が重要である.

心電図からどこまでわかるか?

著者: 小菅雅美 ,   木村一雄

ページ範囲:P.29 - P.32

ポイント

・心筋梗塞超急性期の心電図では,ST上昇に先行してT波の尖鋭・増高(hyperacute T)を認める.

・急性前壁梗塞で,左前下行枝近位部閉塞の心電図指標としては,下壁誘導のST低下が有用である.

・右冠動脈の近位部で閉塞し右室虚血を合併した急性下壁梗塞例では,右冠動脈の遠位部で閉塞した例に比べ,前胸部誘導のST低下はむしろ軽度である.

・胸痛があっても心電図で明らかな異常を認めないからといって,心筋虚血を否定するのは危険である.

心エコー図からどこまでわかるか?

著者: 芳谷英俊 ,   赤阪隆史

ページ範囲:P.33 - P.38

ポイント

 ・虚血性心疾患の診断には,心エコー図検査は有用な検査法であり,必須の検査である.

 ・急性心筋梗塞症例では,左室壁運動異常の評価だけでなく,合併症の有無も必ず評価する必要がある.

 ・狭心症を診断するには,運動負荷心エコー図法やドブタミン負荷心エコー図法が有用である.

 ・超音波装置の進歩により,経胸壁から冠動脈血流速度も測定可能になっている.

心筋シンチグラフィからどこまでわかるか?

著者: 近森大志郎 ,   山科章

ページ範囲:P.41 - P.43

ポイント

 ・心筋シンチグラフィにより,心筋虚血ばかりでなく,心機能・心筋viability・脂肪酸代謝・交感神経機能がわかる.

 ・虚血性心疾患の予後を予測し,治療方針を決定するうえで重要な情報が得られる.

 ・冠血行再建術に際して,心筋viabilityを評価するためには不可欠な検査である.

血液検査からどこまでわかるか?―生化学検査の立場から

著者: 春田昭二 ,   川名正敏

ページ範囲:P.44 - P.46

ポイント

 ・虚血性心疾患のうち,急性冠症候群に対する生化学的検査の重要性が増している.

 ・心筋マーカーのなかで,特にトロポニンTと心臓型脂肪酸結合蛋白(H-FABP)の迅速測定は急性冠症候群の高リスク症例の診断に有用である.

 ・不安定プラークには炎症機転が関与し,高感度CRP値は予後を反映する.

血液検査からどこまでわかるか?―血栓学の立場から

著者: 後藤信哉

ページ範囲:P.47 - P.49

ポイント

・心筋梗塞,不安定狭心症などの急性冠症候群は冠動脈の血栓性閉塞により惹起される.

・末梢静脈から採取した血液サンプルを用いて,冠動脈内の血栓形成の動態を反映する指標があれば,急性冠症候群の診断,予後の予測,治療効果の判定に役立つ可能性がある.

冠動脈造影検査の適応と限界

専門医へ紹介するタイミング―いつ冠動脈造影を考慮するか

著者: 勝木孝明

ページ範囲:P.50 - P.52

ポイント

 ・冠動脈造影は虚血性心疾患診断にゴールデンスタンダード.

 ・急性冠症候群の場合,できるだけ速やかに冠動脈造影を施行する.

 ・安定狭心症の診断に苦慮している場合でも,積極的に冠動脈造影を行ってもよい.

冠動脈造影でどこまでわかるか?

著者: 中川義久

ページ範囲:P.54 - P.56

ポイント 
 ・冠動脈造影検査は,虚血性心疾患の診断において“gold standard”として位置づけられている.

 ・侵襲的検査法ではあるが,広く普及し安全な検査となっている.必要な患者には,時機を逸することなく施行することが重要である.

 ・血管の内腔造影(luminogram)であり,動脈硬化巣自体の評価ができないことに限界がある.

冠動脈造影検査を補う検査―beyond angiography

著者: 平山篤志 ,   上田恭敬 ,   児玉和久

ページ範囲:P.57 - P.60

ポイント

 ・冠動脈疾患の病態の解明や治療法の開発に有用であった冠動脈造影は,影絵であることから,正確な狭窄度を評価をするには十分でなかった.

 ・しかし,血管内超音波法や血管内視鏡などの冠動脈イメージングに加え,冠予備能を計測しうる簡便なドプラフローワイヤーや圧ワイヤーの使用により,プラークの性状を含めた狭窄度の評価が可能となった.

虚血性心疾患に対する治療戦略―薬物療法から血行再建術まで

虚血性心疾患の治療方針のたて方

著者: 田口淳一

ページ範囲:P.61 - P.65

ポイント

 ・虚血性心疾患診断のポイントは「問診」と「疑うこと」.

 ・救急現場では,心電図とヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白(HFABP),トロポニンTのテストプレートが有用である.

 ・最低限の治療として,ニトログリセリンとアスピリンを投与する.

 ・組織プラスミノゲンアクチベータ(tPA)使用の場合には,チェックリストを使用する.

虚血性心疾患の薬物療法

著者: 林孝浩

ページ範囲:P.66 - P.68

ポイント

 ・虚血性心疾患の薬物治療の目標は,狭心症状の緩和と長期予後改善にある.

 ・β遮断薬とKチャネル開口薬は,抗狭心症作用と長期予後改善効果を併せもつ.

 ・Ca拮抗薬と硝酸薬の長期予後改善効果に関しては,否定的な意見が多い.

 ・アスピリンとスタチンは,虚血性心疾患全般にわたり,予後を改善させる.

 ・ACE阻害薬は,心機能が低下した虚血性心疾患症例の心事故予防に効果がある.

虚血性心疾患に対する経皮的冠インターベンション治療―適応と成績

著者: 平山治雄

ページ範囲:P.70 - P.74

ポイント

 ・経皮的冠インターベンション(PCI)の適応の原則は,虚血の原因となる高度狭窄で,潅流域が大きい冠動脈の中枢側の病変である.

 ・PCIの拡張器具には,バルーン,ステント,方向性冠動脈粥腫切除術(DCA),ロータブレータがあり,病変に応じて選択し組み合わせることにより,最適な治療効果を得ることができる.

 ・初期成功率と安全性は高いが,治癒反応による再狭窄は未解決である.PCIは虚血性心疾患の根本的治療法であるが,侵襲的治療であり,その適応は厳格に判定し,また十分なトレーニングを受けてから治療を行うべきである.

虚血性心疾患に対する冠動脈バイパス術―適応と成績

著者: 小林順二郎

ページ範囲:P.76 - P.78

ポイント

 ・冠動脈バイパス術の適応は,左冠動脈主幹部病変,3枝病変,左前下行枝近位部を含む2枝病変,経皮的冠動脈形成術(PCI)後再狭窄をきたした左前下行枝近位部1枝病変である.

 ・糖尿病患者,不安定狭心症患者,低左室機能患者では,冠動脈バイパス術の効果が高い.

 ・80歳以上,上行大動脈の高度石灰化やアテローム,慢性腎不全,高度頚動脈病変が,人工心肺を使用しない冠動脈バイパス術の適応である.

虚血性心疾患に対する生活指導

著者: 佐原真 ,   相良耕一

ページ範囲:P.80 - P.84

ポイント

 ・虚血性心疾患は生活習慣病であり,その予防には生活習慣を改善し,多数のリスクファクターを修正することが必須である.

 ・その基本となるのは,食生活の改善,適度な運動,禁煙であり,さらに適切な体重の維持や健全な精神衛生が求められる.

 ・冠危険因子である高血圧,高脂血症,糖尿病に対しても,まず食事改善,運動などの非薬物療法を徹底する.

虚血性心疾患の二次予防

著者: 本宮武司

ページ範囲:P.86 - P.88

ポイント

 ・虚血性心疾患の二次予防効果が確立しているのは,高脂血症治療薬のスタチンとアスピリンを中心とする抗血小板薬であり,β遮断薬にも有効性が認められる.

 ・ACE阻害薬は左心機能低下例で生命予後改善が証明されているが,再梗塞予防効果は確立していない.

 ・抗凝固薬は,アスピリン禁忌患者や血栓形成リスクの高い患者で限定的に適応がある.

 ・Ca拮抗薬,硝酸薬では,二次予防効果は証明されていない.

虚血性心疾患の病態と治療

労作性狭心症に対する治療の進め方

著者: 山根正久

ページ範囲:P.90 - P.92

ポイント

 ・労作性狭心症の治療法には内服療法,経皮的冠動脈形成術(PTCA),冠動脈バイパス術がある.

 ・ハイリスク群ではバイパス術が有利であるが,低・中リスク群ではPTCAもバイパス術と同様の効果をもつ.

 ・ステントを用いた現在のPTCAでも,術後の再狭窄(10~30%)が問題である.

 ・長期的には冠危険因子のコントロール,特に薬物療法によるLDLコレステロールの抑制が心血管事故のイベントを抑制する.

急性冠症候群に対する治療の進め方

著者: 中村正人

ページ範囲:P.93 - P.96

ポイント

 ・急性冠症候群の治療戦略は,持続的ST上昇の有無によって2つに大別される.

 ・ST上昇急性冠症候群は,迅速かつ確実な再潅流を得ることが治療の主眼である.

 ・非ST上昇急性冠症候群は,短期的なリスク評価によって治療方針が異なる.

 ・低リスク例は外来で治療可能である.

 ・高リスク例に対する治療戦略には,早期侵襲的治療戦略と保存的治療戦略がある.

虚血性心疾患における不整脈とその治療

著者: 白井徹郎

ページ範囲:P.98 - P.100

ポイント

 ・虚血急性期に生じる不整脈にはさまざまなものがあり,病態に応じ電気的直流通電(DC shock),ペーシング,抗不整脈薬治療を必要とする.

 ・虚血急性期の方針については,ガイドラインが参考となる.しかし,不整脈発生予防の基本は十分な抗心筋虚血治療である.

 ・虚血慢性期(陳旧性心筋梗塞)に認める非持続性心室頻拍の取り扱いについては,心機能,心室遅延電位などの検査結果を参考に,その後の方針を決定すべきである.

虚血性心疾患における心不全とその治療

著者: 塘義明 ,   後藤葉一 ,   野々木宏

ページ範囲:P.102 - P.105

ポイント

 ・心不全患者で虚血性心疾患を基礎とする場合は,拡張型心筋症と同様に,その生命予後は不良である.

 ・心筋虚血による急性心不全の発症や慢性心不全が急性増悪する機序には,その病態によりいくつかの特徴がある.

 ・虚血性心疾患における心不全治療は,冠血行再建が第一選択となる.

 ・血行再建・薬物治療以外に生活指導・疾病知識の啓蒙が重要であり,運動療法が奨励される.

 ・問診および検査で心不全悪化を見逃さず,迅速に対応することが必要である.

虚血性心疾患患者における他臓器外科手術・侵襲的検査のリスク評価と対策

著者: 鈴木洋 ,   片桐敬

ページ範囲:P.106 - P.109

ポイント

 ・虚血性心疾患患者が他臓器外科手術・侵襲的検査を受ける割合が増加し,その周術期管理が重要な課題となっている.

 ・虚血性心疾患を合併している他臓器外科手術周術期患者に対しては,β遮断薬の積極的使用が有用である.

 ・周術期患者における冠動脈血行再建の適応は,非心臓手術を行わないと仮定したときと同様の基準で考える必要がある.

虚血性心疾患治療―最近の話題

炎症としての虚血性心疾患とその治療戦略

著者: 相川眞範

ページ範囲:P.111 - P.114

ポイント

 ・炎症細胞に富み,コラーゲンに乏しい不安定な動脈硬化病変が虚血性心疾患の原因となる.

 ・コレステロール低下療法は,虚血性心疾患の発症を低下させる.

 ・コレステロール低下は,動脈硬化病変プラークの炎症や細胞活性化を改善する(安定化).

 ・スタチンには,コレステロール低下を介さない,抗炎症作用があるかもしれない.

再狭窄は克服できるか?―放射線療法と薬剤溶出性ステント

著者: 上妻謙 ,   一色高明

ページ範囲:P.116 - P.119

ポイント

 ・経皮的冠動脈形成術の最大の弱点は,再狭窄である.特に冠動脈ステント植え込み後の再狭窄は,むしろ難治性となることがある.

 ・冠動脈内放射線療法は,ステント内再狭窄の治療に有効なデバイスである.

 ・薬剤溶出性ステントは,初回治療の再狭窄そのものを抑制する.

心筋組織レベルでの血行再建を目指して―心筋梗塞とno reflow現象

著者: 伊藤浩

ページ範囲:P.120 - P.122

ポイント

 ・急性冠症候群のなかに,冠動脈インターベンションにより冠狭窄を解除したにもかかわらず,slow flow(TIMI-2)を示す症例が存在する.

 ・その機序として,①血栓やプラーク内容物による末梢動脈の塞栓と②心筋壊死部における毛細血管障害の関与が考えられている.

 ・その機序の解明には冠血流速波形の解析が有用であり,その結果を踏まえたうえで病態に合わせた治療戦略を決定する必要がある.

血管新生と心筋再生

著者: 牧野寛史 ,   森下竜一 ,   荻原俊男

ページ範囲:P.123 - P.125

ポイント

 ・血管新生療法には,①増殖因子をコードした遺伝子を導入し,局所で増殖因子を分泌させる遺伝子治療,そして②前駆細胞や幹細胞を移植する細胞治療があり,それぞれ臨床応用が実現している.

 ・心筋再生のアプローチとして,①心筋細胞の増殖能を再開させる,②非心筋細胞に心筋細胞の形質を獲得させる,③幹細胞を心筋に移植し分化誘導する方法が考えられている.

座談会

虚血性心疾患管理上の注意点―番外編

著者: 吉村道博 ,   西山信一郎 ,   伊苅裕二 ,   一色高明

ページ範囲:P.127 - P.141

 本特集では,典型的な虚血性心疾患について,診断・検査・治療のポイントと,疾患の予防について,各論文でご解説いただいた.

 そこで座談会では「番外編」として,特集では取り上げなかったが一般医がよく遭遇する異型狭心症,無症候性心筋虚血,高齢者の虚血性心疾患,合併症を有する虚血性心疾患について,病態・特徴から治療・管理上の注意点まで,臨床経験の豊富な3氏に伺った.

理解のための27題

ページ範囲:P.142 - P.147

演習・腹部救急の画像診断(7)

右側腹痛で救急外来を受診した53歳女性

著者: 舩津宏之 ,   八代直文 ,   葛西猛

ページ範囲:P.149 - P.155

Case

症 例:53歳,女性.

既往歴:以前に検診で左腎結石を指摘されたことがあるほかは,特記すべきことなし.

現病歴:昨晩からの右側腹痛を主訴に,救急外来を午前9:30に受診した.今朝,1回嘔吐.

身体所見:血圧118/47mmHg,心拍数83/min.グル音正常,平坦・軟.臍の右側に圧痛あり.反跳性圧痛なし.

検査所見:WBC10,700/μl,CRP7.8mg/dl,尿潜血+2.尿中白血球1~4個/1視野.このときのCT像を示す(図1).

救急神経症候の鑑別とマネジメント(1)【新連載】

頭痛のneuro-critical care(前編)

著者: 永山正雄

ページ範囲:P.156 - P.159

連載にあたって

 主に画像診断の進歩と新たな治療法の導入により,神経疾患の理解と管理は飛躍的に向上した.しかしいまだに多くの臨床医は神経症候の診療を苦手としている.一方,神経内科医であっても,脳卒中などの救急状態(いわゆる動のneurology)と諸種神経難病(静のneurology)の両面について十分な知識をもち適切な全身管理ができる者は国際的にもきわめて少なく,これが現在われわれが本邦へのcritical care neurologyの導入を推し進めている所以である1,2).もちろん良性あるいは慢性疾患の管理はきわめて重要であるが,critical care neurologyの主眼は,life-threatening diseaseを見いだし生命の危機から離脱させることにある.

 この立場から,本連載では臨床医が日常診療上しばしば遭遇する救急神経症候の鑑別とマネジメントの実際について,ベッドサイドでの指針となる新たな切り口から展望する.

カラーグラフ 手で診るリウマチ(1)【新連載】

レイノー現象,手掌紅斑

著者: 上野征夫

ページ範囲:P.162 - P.163

 「寒冷あるいはストレス暴露で,指先が白くなる.これをレイノー現象(Raynaud's phenomenon)という(図1).正式には,白,青(紫),赤の3色の変化をいう.色調の変化はこの順で起こる.白は血管の攣縮,青(紫)は血液の毛細血管,小静脈へのうっ滞,赤は反応性の血管拡張をそれぞれ意味する.

 3色変化のうち,2色以上みられることがレイノー現象の定義である.しかし白の1色変化でも,それが著明であればレイノーと呼んで構わない.

 レイノー現象は,何らかの基礎疾患に伴って起こってくることが少なくない(表1).20歳代の女性では全身性エリテマトーデス,40歳以上では,強皮症,Sjogren症候群,関節リウマチが多い疾患である.レイノー現象が一側性の場合,高安病などの血管炎,頚椎の疾患,肩・手症候群(shoulder-hand syndrome)なども考慮されねばならない.職業病として以前,電動チェーンソーを使って伐採に従事する人に起こり問題となった.薬剤ではβブロッカー,あるいは片頭痛治療薬のエルゴタミン服用者などにみられることがある.

連載

目でみるトレーニング

著者: 藤田浩之 ,   井関太美 ,   高島洋

ページ範囲:P.166 - P.171

内科医のためのリスクマネジメント 医事紛争からのフィードバック(10)

コメディカルとの連携

著者: 長野展久

ページ範囲:P.172 - P.176

検査所見の取り扱い

 一般外来では,容態が悪くなって受診した患者に対して,ひととおりの問診,バイタルサイン,各部位の身体所見,神経学的所見などをとった後,血液検査,尿検査,各種画像検査などの検査計画をたてます.その時点で,どれくらい緊急性があるかを判断し,検査にも優先順位をつけて指示することになります.そしてこれらの情報を総合したうえで,診断を絞り込み,適切な治療を導入するという手順で診察していると思います.

 しかし外来が混雑してくると,スムーズに検査を進めるのが難しくなることがあります.手間のかかる検査は予約がかなり先になったり,すでに施行済みの検査結果がなかなか手元に集まらずにイライラすることもしばしば経験します.なかには,血液検査の結果やX線写真がどこかへ紛れてしまい,ようやく届いた結果を見るとすぐに対処しなければならない異常データが含まれていて,あわてて対処したというような経験も決して少なくないと思います.

medicina Conference 解答募集・35

下記の症例を診断して下さい.

ページ範囲:P.160 - P.161

症 例:43歳,男性,無職.

主 訴:発熱,下肢のしびれ.

既往歴:交通事故,痛風(1989年),横行結腸憩室穿孔手術(1996年),右下腿潰瘍(1997年).

家族歴:特記事項なし.

生活歴:泡盛(沖縄の焼酎)3合/日(15年間),喫煙20本/日(15年間).ペット飼育歴なし.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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