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研修医から専門医へ
著者: 木崎昌弘1
所属機関: 1慶應義塾大学医学部内科
ページ範囲:P.56 - P.56
文献購入ページに移動 2004年からの新しい初期臨床研修制度が始まる.それまでもそうであったように,2年間の研修医過程が終了したならば,自らの歩む道を決めなくてはならない.臨床医への道,基礎研究者への道,環境や予防医学を選択する道などさまざまな選択肢があると思う.私は20年以上前に,大学での内科全般にわたる研修を終了した後,血液内科を専攻し,いまだにその道を歩み続けている.自らのsubspecialtyを決めることは,ある程度医師としての人生を決定することに通ずると思う.私の研修医時代,治療法としての骨髄移植やG-CSFなどの造血因子もなく,白血病は治癒の難しい病気であった.初めて,大学の血液内科をローテーションした際に受け持った急性骨髄性白血病の患者は,強烈な印象をもって私の心に残っている.内科全般の研修で多くの患者に接することができたが,種々の疾患を勉強すればするほど,何としても白血病を治したいという気持ちが強くなっていったのを覚えている.その後,血液内科の教室に入局し,血液学の臨床を学びながら,米国留学を通して,白血病や多発性骨髄腫といった造血器腫瘍の発症機構の解明や,それらに基づく新たな治療法の開発に関する研究に従事している.血液内科は全国的に不人気で,どこも入局者が少ないと聞いている.私の大学でも内科のなかでは希望者が少なく毎年苦労している.やはり,大変に厳しい臨床の現実が研修医に敬遠される要因であろうか.それでも,血液内科の門をたたいてくれる若者には,すがすがしい情熱を感じることが多い.血液学はおそらく基礎医学と臨床医学が最も接している分野ではないかと思う.基礎研究で明らかになったことが,臨床に反映されることはATRAやGleevecの成功をもってしても明らかである.私は,次世代の分子標的治療薬を開発し,少しでも白血病や骨髄腫の治療成績向上に寄与したいと願って,毎日を送っている.いまだ道半ばであり,到底道を究めるには程遠いが,日々の診療や研究のなかで情熱をもって努力したいと考えている.何やら血液内科の宣伝のようになってしまったが,今後,研修医の諸君が自らの道を決める際には,それまでの経験や感性を大切にし,自分が一生情熱をもってできる分野を選択してほしいと思う.6年間医学を学び,そして国を挙げての新たな臨床研修システムのなかで育つ研修医には,学んだことを社会に還元し,われわれとともに医学の発展に寄与する責務があると考えている.
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