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文献検索と症例報告
著者: 高田清式1
所属機関: 1愛媛大学医学部第1内科
ページ範囲:P.197 - P.197
文献購入ページに移動 最近,研修医に担当症例の疾患について文献を検索するように指示すると,医局にて苦労せずに短時間でインターネットにて検索して,その関連文献リストや要約をコピーしてくる.PubMed,MEDLINE,Entrezなどがその検索方法であり,24時間オンラインで使用でき,いわゆるキーワード入力にて,すぐさま多くの文献や情報が得られるようになっており,いたって便利である.自分自身が研修医であった20年以上前は,患者診療が終わった後(だいたい午後8時以降だった)大学の図書館にて,Index Medicusや医学中央雑誌を一冊ずつ調べていくのが常套手段であった.研修医なりに診療疲れで,眠い目をこすりうたた寝しつつ,文献名や雑誌名をノートに書き写し,図書館にある本なら医局に持ち帰りコピーし,また図書館にない文献は数日かかって取り寄せてもらっていた.比較的珍しい症例や示唆に富む症例を受け持った際に,その症例報告を論文として書こうとすると,まず行うことは何日もかけて図書館で文献検索することであった.これで比較的労力を使い,学会発表はかろうじてするものの,実際に症例報告を書くのがやや億劫になってしまっていた.あるとき,2年目の研修先の病院で,ある内科部長から「なぜ研修医が症例報告を書く必要があるのかわかるか」と尋ねられた.私が答えられずにいると,「それは,症例報告を書いてさまざまの文献を読むことで,受け持った患者の反省になるからだ」と指導された.甘かった自分の目が覚めた気がし,以後患者のためになるという信念で,研修先の病院にて患者の消灯後は真夜中まで図書館にいて文献検索をしつつ,多くの症例報告を完成させた.それらの蓄積が今でも自分の日常の診療や研修医の指導の際に,自分の経験例としてたいそう役に立っている.なお実際には,疲れて図書館でときどき朝までうたた寝していたことも幾度かあった.また図書館での夜間のクーラーの騒音が近所迷惑になり苦情が寄せられ,私が研修を終えた翌年からは夜9時以降は図書館が使用禁止になってしまった(後日,内科部長が苦笑いされてお話くださった).後輩の研修医には図書館が使いづらくなってしまい,大変申し訳なかったと今も反省している.
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