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文献詳細

雑誌文献

medicina40巻12号

2003年11月発行

文献概要

column

出血後Hbが下がるまでの時間

著者: 山田春木1

所属機関: 1社会保険中央病院

ページ範囲:P.443 - P.443

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 医師になって初めて看取った患者さんが私に教えてくれたのは,出血して1,2日経った後でさえもヘモグロビン値(Hb)が下がらない場合があることです.

 患者Hさんは,T大医学部絵画クラブの顧問をされていたご年配の画家で,学生たちやクラブOBからの人望厚く,連日医学部のエラい先生までがお見舞いに来ました.原病の血液悪性腫瘍に対する治療は一進一退で,吐・下血を繰り返すようになったあるとき,

「(こんなにひどく下血して)輸血をしなくてよいの?」

と私に尋ねたのは第3内科血液グループのM先生.夫は血液・免疫学M教授で,媒酌人をされたHさんの様子を毎日のように第1内科病棟に見に来られていたのです.

「しかし先生,今朝のHbはまだ下がっていません.輸血の予定はありません」

と答えた私が患者急変の知らせで呼ばれ,生まれて初めて“ご臨終”の声を居並ぶ先輩ドクターの前で絞り出したのは,それから半日も経たないときでした.病理解剖では腸管内に大量の出血を認め,直接死因は出血性ショックと診断されました.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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