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雑誌目次

雑誌文献

medicina40巻6号

2003年06月発行

雑誌目次

今月の主題 内科医のための皮膚科的スキル はじめに

内科医のための発疹のみかた

著者: 吉川義顕 ,   武藤正彦

ページ範囲:P.924 - P.926

ポイント

・視診の際には,明るい部屋で全身の皮膚をくまなく診察し,口腔内,爪,毛髪などの変化も見落とさないようにする.

・発疹は,その種類,数,形,配列,分布などを整理して記載する.

・触診は,皮疹の硬度,深さ,下床との連続性,圧痛の有無などに注意して行う.

・問診により的確な情報を得ることが重要である.また,問診中の患者の態度も注意して観察する.

よくみられる皮膚疾患-内科医ができるマネジメント

慢性蕁麻疹

著者: 森田栄伸

ページ範囲:P.927 - P.929

ポイント

・蕁麻疹は皮膚の限局性浮腫であり,1日以内に跡形もなく消褪する.

・発症後4週以上(欧米では6週以上)持続して繰り返し生じるものを慢性蕁麻疹という.

・原因検索は,感染,膠原病,異常蛋白血症を念頭に置く.

・薬物療法の第一選択は抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬である.

皮膚瘙痒症

著者: 江畑俊哉

ページ範囲:P.931 - P.933

ポイント

・瘙痒のみで原発疹がみられないものを皮膚瘙痒症という.

・限局性皮膚瘙痒症と汎発性皮膚瘙痒症がある.

・多くは乾皮症を基盤とした老人性皮膚瘙痒症である.

・背景に肝・腎・内分泌・代謝・血液・神経疾患,薬剤や悪性腫瘍が存在することがあり,特に難治性の場合に基礎疾患の検索が必要となる.

足白癬

著者: 加藤卓朗

ページ範囲:P.934 - P.936

ポイント

・足白癬はきわめて罹患率の高い疾患である.

・確定診断は臨床所見のみでは難しく,直接鏡検で行う.

・足白癬は趾間型,小水疱型,角質増殖型に病型分類される.
 
・足白癬の主要原因菌はTrichophyton rubrum(T. rubrum)とT. mentagrophytesである.

・治療に対する意識は患者により大きな差があるが,放置によりさまざまな問題を生じるのでより積極的な治療が必要である.

・治療の基本は外用治療で,用法は1日1回の塗布である.

・内服治療の適応は角質増殖型足白癬,難治性の病型で,テルビナフィンとイトラコナゾールの有効性が高い.

ざ瘡

著者: 豊田雅彦

ページ範囲:P.937 - P.940

ポイント

・ざ瘡は,性ホルモン,皮脂,毛包漏斗部の常在菌など多因子よりなる発症メカニズムと種々の増悪因子により形成される毛包脂腺系の慢性炎症性皮膚疾患である.

・臨床的には毛孔一致性の面皰,紅色丘疹,膿疱,囊腫および瘢痕などが種々の程度に混在してみられる.

・ざ瘡の発症要因としては,内分泌因子,角化因子,細菌性因子および炎症の4つが重要である.

・治療に際しては,主体となる皮疹の性状(炎症性・非炎症性)を正確に把握し,早期の適切な治療により瘢痕形成を未然に防ぐことが最も重要である.

帯状疱疹

著者: 安元慎一郎

ページ範囲:P.942 - P.943

ポイント

・抗ウイルス薬の早期の投与開始が皮膚病変,疼痛を軽減し,帯状疱疹後神経痛の残存を予防する.

・早期の治療開始のために,神経痛様疼痛を伴った皮疹の出現をみたら帯状疱疹を疑い,診断を早めに確定させることが重要となる.

・急性期からの疼痛の管理を行うことが患者のQOLを向上させる.

・外用療法としては一般に非ステロイド系消炎鎮痛薬が用いられるが,皮疹の状態によって適切なものを選択する.

急性発疹症

著者: 日野治子

ページ範囲:P.944 - P.948

ポイント

・急性発疹症は比較的急激に発症し,全身に発疹を生じる感染症をいう.

・ウイルスが原因の場合が多い.

・発疹は多彩であるが,おおむね,紅斑・丘疹がみられる疾患,蕁麻疹様発疹が好発する疾患,多形紅斑を生じる疾患,水疱を生じる疾患などに分けられる.

 1) 紅斑丘疹型は麻疹,風疹,伝染性紅斑,伝染性単核症などである.

 2) 多形紅斑型の原因はマイコプラズマ,単純性疱疹などが多い.

 3) 蕁麻疹型の原因はA,B,C型肝炎,CMVなどが多い.

 4) 水疱は単純性疱疹,水痘・帯状疱疹,手足口病などにみられる.

疥癬

著者: 夏秋優

ページ範囲:P.950 - P.952

ポイント

・疥癬は疥癬虫の皮膚寄生による感染症である.

・通常は人肌に直接触れる行為によって感染する.

・感染後,症状出現まで約1カ月かかる.

・夜に増強する強い痒みが特徴.

・疥癬トンネルは手首や指間部に多い.

・ノルウェ-疥癬では個室管理を要する.

・治療には徹底した外用療法が必要である.

・予防対策では医療スタッフの協力が重要である.

褥瘡

著者: 河合修三

ページ範囲:P.953 - P.956

ポイント

・褥瘡が難治性となる要因は,圧迫による血行障害を取り除きにくく,栄養状態も悪く,しかも,全層が阻血壊死となり深い潰瘍になりやすいためである.

・創傷の治療方法は,細菌を制御する感染期と,生体を増生させる再生期では異なり,創の状況に合わせて使い分けるべきである.

・褥瘡ダイアグラムは,褥瘡の発生から治癒するまでの主な経時的変化を表したものである.

皮膚科医から内科医へのアドバイス

足底の色素斑をみたら

著者: 斎田俊明

ページ範囲:P.958 - P.960

ポイント

・足底はメラノーマの最好発部位なので,その早期病変を見逃さないように注意する.

・メラノーマの早期病変も良性の色素細胞母斑も黒褐色斑としてみられるので,両者の臨床的鑑別点を理解しておくことが大切である.

・実地上は最大径7mm超の色素斑は切除生検するというガイドラインが有用である.

口腔内アフタをみたら

著者: 高濱英人 ,   溝口昌子

ページ範囲:P.962 - P.963

ポイント

・アフタは口腔内病変では最も頻度が高い.一症状であり,疾患単位ではない.

・粘膜における円形,境界鮮明な有痛性の小潰瘍で,紅暈を伴い偽膜を付着する.

・全身疾患の初発症状あるいは部分症状としてみられるものが含まれているため,診断にあたっては常に全身症状,皮膚症状などに留意する必要がある.

顔の黒色腫瘍をみたら

著者: 立花隆夫

ページ範囲:P.964 - P.966

ポイント

・黒色を呈する顔面の皮膚腫瘍には,老人性色素斑,脂漏性角化症,基底細胞癌,悪性黒色腫などがある.

・後二者の悪性腫瘍が最近増加している.

・基底細胞癌は転移することは稀でその進行も緩徐であるが,発症部位が重要器官に近いことが治療上の問題となる.

・悪性度が高い悪性黒色腫では,早期発見,早期治療が原則である.

皮膚MRSA感染対策

著者: 多田讓治

ページ範囲:P.968 - P.972

ポイント

・皮膚細菌感染症から分離される菌の約半数は黄色ブドウ球菌であり,その20~40%がMRSAで,なお減少傾向はみられない.

・皮膚病変からMRSAを検出した場合,それが感染症(infection)か定着(colonization)かの見きわめが最も重要で,定着の際はむやみに抗菌薬の投与は行わない.

・MRSA感染の伝搬経路として接触感染が最も重要であり,その防御対策には手洗い・手の消毒を徹底して行うことが大切である.

局所熱傷の正しい処置

著者: 鈴木茂彦

ページ範囲:P.973 - P.975

ポイント

・正確な深度判定を行う.

・受傷直後は30分以上患部を冷やす.

・Ⅱ度熱傷では水疱は温存するが,破れてしまった場合は創傷被覆材を使用する.深Ⅱ度熱傷で感染のおそれがある場合は,外用薬治療に切り替える.

・Ⅲ度熱傷では,壊死組織の早期切除を心がけ,壊死組織がなくなれば肉芽形成,上皮化促進効果のある外用薬を使用する.

発疹を読む

紫斑を伴う内科疾患

著者: 斉藤隆三

ページ範囲:P.977 - P.979

ポイント

・紫斑は出血傾向を示す症状であり,止血機構のどのような障害によるものかを検査する必要がある.

・紫斑の性状,分布などとともに,粘膜出血の有無も観察する.家族歴,既往歴に出血性素因があるかどうかも参考にする.

・全身的な基礎疾患の存在を見落とさない.

糖尿病を疑わせる発疹

著者: 末木博彦

ページ範囲:P.980 - P.982

ポイント

・皮膚病変は,自覚症状に乏しい糖尿病・耐糖能異常を発見する契機となることがあり重要である.

・皮膚病変のなかには糖尿病の重症度を反映したり,特定の合併症の存在を示唆するものがある.

・確定診断に皮膚生検が必要な疾患については皮膚科専門医に相談する.

本当の蝶形紅斑とは

著者: 池田高治 ,   古川福実

ページ範囲:P.984 - P.986

ポイント

・SLEの蝶形紅斑は,同一症例でも経過とともに性状が変化し,症例間でも多彩な性状の違いをみる.

・蝶形紅斑を呈する疾患は数多く,皮疹を理解することが早期診断に必要である.

GVHDの発疹

著者: 佐々木哲雄

ページ範囲:P.988 - P.989

ポイント

・骨髄移植後急性GVHDの発疹は淡い紅斑として始まり,紅皮症状態,水疱形成をきたすこともある.

・慢性GVHDの発疹は苔癬型と強皮症型に分類される.

・皮膚GVHDの組織所見は表皮基底細胞の空疱状変性と表皮細胞の壊死が特徴的で,薬疹や感染症に伴う発疹と鑑別される.

サルコイドーシスの発疹

著者: 岡本祐之

ページ範囲:P.990 - P.992

ポイント

・組織学的に3つの皮膚病変に大別される.結節性紅斑(肉芽腫陰性),瘢痕浸潤(肉芽腫+異物),皮膚サルコイド(肉芽腫陽性).

・頻度の高い病変は,顔面に好発する結節型および局面型皮膚サルコイドと膝蓋に好発する瘢痕浸潤である.

・組織診断されていない症例では微細な病変も見落とさないようにし,皮膚生検を行う.

TENに発展する発疹

著者: 北見周 ,   鈴木寛丈 ,   飯島正文

ページ範囲:P.993 - P.995

ポイント

・中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)といえども,発症直後の早期から症状が重篤であるとは限らない.

・Stevens-Johnson症候群(SJS)とTENは別症ではなく,一連の病態であると理解する.

・多形紅斑が高熱や粘膜症状を伴う場合には,重症化する可能性が高いと判断する.

・重症化の有無の判定には皮膚生検による病理組織診断が有用である.

・治療の第一選択は原因薬剤の中止である.早期であれば,ステロイド投与を行う.末期のステロイド治療の有用性は疑問視されている.

内科医が起こしうる皮膚疾患

薬剤誘発性過敏症症候群

著者: 藤山幹子 ,   橋本公二

ページ範囲:P.997 - P.999

ポイント

・薬剤誘発性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome)は,発熱,臓器障害(肝腎障害,白血球増多,リンパ節腫脹など)を伴った重症薬疹である.

・原因薬剤が限られており,抗痙攣薬,サラゾスルファピリジン,メキシレチン,アロプリノール,ジアフェニルスルホン,ミノサイクリンが原因となる.

・原因薬剤を2~6週間内服後に生じる.

・発症後2週目以降にHHV-6の再活性化を生じ,発熱や臓器障害の再燃を認める.

薬剤性光線過敏症

著者: 戸倉新樹

ページ範囲:P.1000 - P.1001

ポイント

・皮疹の分布が,顔面,耳介,項部,上胸部V領域,手背などの露光部位に限局している場合,光線過敏症を疑う.

・成人では内服薬剤が原因であることが最も多い.特にキノロン系抗菌薬,降圧薬,消炎鎮痛薬は要注意である.

・原因が内服薬と気付かず投薬を続行した場合,白斑黒皮症となることもあり治癒が困難となる.被疑薬の中止が最も重要である.

点滴漏れ皮膚潰瘍

著者: 田村敦志

ページ範囲:P.1002 - P.1005

ポイント

・皮膚障害を起こしやすい薬剤をあらかじめ知っておくことが大切である.

・点滴漏れによる皮膚潰瘍は一般に難治性である.

・外科的デブリードマンを必要とする例が少なくない.

ステロイドざ瘡

著者: 赤松浩彦

ページ範囲:P.1006 - P.1007

ポイント

・副腎皮質ホルモンの全身投与により生ずる.

・投与2~3週後より発生することが多い.

・顔面および前胸部などに赤色丘疹,膿疱が認められる.

・副腎皮質ホルモンの投与中止により自然に消退する.

コレステロール塞栓症

著者: 藤井秀孝

ページ範囲:P.1008 - P.1010

ポイント

・本症のほぼ全例に動脈硬化性疾患の合併が認められ,本症はこれらの動脈硬化性疾患の病態形成・進展に深く関与すると考えられる.

・血管内操作・血管造影や抗凝固・血栓溶解療法が誘因あるいは増悪因子となる.

・皮膚症状,腎症状,末梢血の好酸球増加が本症を診断する手掛かりとなる.

皮膚科発信の内科的トピックス

透析のかゆみとオピオイドペプチド

著者: 段野貴一郎

ページ範囲:P.1012 - P.1014

ポイント

・透析のかゆみに関与する中枢性のかゆみ制御因子には,3つのオピオイドペプチド(endorphin,enkephalin,dynorphin)が知られている.

・これらのオピオイドペプチドは,それぞれの特異的脳内受容体(μ,δ,κ)に結合し,かゆみを制御している.

・μ受容体とδ受容体はかゆみを増強し,κ受容体はかゆみを抑制している.

慢性蕁麻疹とH. pylori感染

著者: 塩谷昭子

ページ範囲:P.1016 - P.1017

ポイント

・H. pylori感染の診断および治療は,胃・十二指腸潰瘍に対してのみ,保険診療として認可されている.

・心血管疾患,自己免疫疾患,血液疾患,皮膚疾患などの全身疾患とH. pylori感染との関連性が報告されている.

・蕁麻疹に対する除菌治療の有効性が注目されているが,現時点では科学的根拠に乏しく,一定の見解が得られていない.

EBウイルスと皮膚悪性リンパ腫

著者: 山本剛伸 ,   岩月啓氏

ページ範囲:P.1018 - P.1021

ポイント

・EBウイルス関連皮膚NK/Tリンパ腫は特徴的な臨床/病理所見を示す.

・小児例ではEBウイルス関連の先行病変を合併することが多い.

・潜伏感染したEBVの同定にはEBER in situ hybridizationが有効.

・EBV感染細胞の腫瘍性増殖の確認にはEBV-TRを調べるsouthern blot法が有効.

・経過の把握にはReal-time PCR法を用いたEBV DNAコピー数のモニターが有効.

C型肝炎と皮膚疾患

著者: 梅本尚可 ,   出光俊郎

ページ範囲:P.1022 - P.1024

ポイント

・多彩な皮膚症状がC型肝炎に高頻度に併発する.

・扁平苔癬,クリオグロブリン血症性紫斑,晩発性皮膚ポルフィリン症はHCV感染との関連が強い.

・クリオグロブリン血症性紫斑,晩発性皮膚ポルフィリン症ではIFN療法により皮膚症状が改善する症例が多い.

・C型肝炎に伴う皮膚病変の発症機序はまだ解明されていない.

全身性肥満細胞症の内科症状

著者: 黒沢元博 ,   稲村弘明 ,   岡野昭

ページ範囲:P.1025 - P.1027

ポイント

・皮膚症状として一般に認められるものは色素性蕁麻疹である.

・皮膚病変部位を摩擦すると発赤と膨疹がみられるが,Darier徴候と呼ばれる.

・皮膚病変のない全身性肥満細胞症では,皮膚潮紅と熱感が最も重要な臨床症状である.

・消化器症状が一般的にみられる.

・およそ30%に血液学的異常がみられる.

・およそ70%に骨病変がみられる.99mTcによる骨シンチグラム所見が臨床的重症度をよく反映する.

鼎談「内科医のやってよいこと・悪いこと」

著者: 島津章 ,   三森経世 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.1028 - P.1040

 宮地(司会) お忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございます.今日は特集「内科医のための皮膚科的スキル」の鼎談として「内科医のやってよいこと・悪いこと」と題して,お二方の先生方からお話を伺いたいと思います.どうぞよろしくお願いします.

●「情報の宝庫」皮膚をみる

 宮地 最初に,「皮膚をみる」ということ,これは内科診断学のなかで基本中の基本だと思います.最近の若い先生方を拝見していますと,理学的な診察法が不得手で,コンピュータの画面ばかり見て,血液データ病診断の様相を呈しているような印象を受けるのですが,島津先生,いかがですか.

演習・腹部救急の画像診断(12)

乗用車で電柱に衝突し下腹部を打撲した45歳男性

著者: 稲葉彰 ,   三沢尚弘 ,   葛西猛 ,   八代直文

ページ範囲:P.1047 - P.1053

Case

症 例:45歳,男性.

主 訴:下腹部痛.

現病歴:飲酒後に乗用車を運転中,道路脇の電柱に衝突横転.ハンドルで下腹部を打撲し,救急外来を約3時間後に受診した.なお,受傷時に頭部打撲や意識消失はなかった.

理学所見:意識清明,バイタルサイン安定.腹部所見では臍部中心の広範囲に圧痛,筋性防御,反跳痛を認めた.図1,2に来院時の腹部CT像(画像表示:window 幅500HU,airが強調される設定)を提示する.

救急神経症候の鑑別とマネジメント(6)

全身痙攣・痙攣重積状態のneuro-critical care

著者: 永山正雄

ページ範囲:P.1056 - P.1061

 多くの全身痙攣発作は1~2分以内に終わるが,発作時の状況(運転中,入浴中)や誤嚥・窒息の合併によっては,生命の危険をきたす.さらに痙攣発作が30分以上持続する場合,あるいは意識回復なく30分以上反復する場合を痙攣重積状態と呼び,きわめて危険な状態となる.ICUでみられる神経系合併症としても,てんかん発作は代謝性脳症に次いで多く,その大部分は強直間代性の全身あるいは部分痙攣である.

てんかん発作・重積状態の分類

 大脳皮質神経細胞の過剰な局所性発射は,種々のてんかん発作を生じるが,その代表例が全身痙攣である.主なてんかん発作の国際分類を表1上段に,てんかん重積状態の臨床分類を下段に示す.単純部分発作では意識障害はないが,複雑部分発作では意識障害を伴う.また全身痙攣であっても,前兆(aura),局所性発症,Todd麻痺(発作後の一過性麻痺)がみられれば二次性全般化が疑われる.

カラーグラフ 手で診るリウマチ(6)

ジャクー関節炎(Jaccoud's arthritis),指の腫れ

著者: 上野征夫

ページ範囲:P.1064 - P.1065

 図1の手は,MCP関節(metacarpophalangeal joint)で屈曲し,PIP関節(proximal interphalangeal joint)で過伸展,DIP関節(distal interphalangeal joint)で屈曲している.いわゆるスワンネック変形である.これを見ると誰しもが関節リウマチを考える.しかし図2のX線写真を見ると,関節に著明な亜脱臼はあるものの,関節リウマチの骨破壊像がない.症例は,全身性エリテマトーデスのスワンネック変形である.

 1869年,フランスのJaccoudは,リウマチ熱の再燃を繰り返す29歳の男性患者に,手指の尺側変形とスワンネック変形が残ったことを観察した.100年以上経った1975年,今度はイギリスのBywatersが,全身性エリテマトーデスでも同様の手指変形が起こることを観察し,これをJaccoud症候群と呼んで報告した.

連載

目でみるトレーニング

著者: 玉井佳子 ,   貞森直樹 ,   古家美幸

ページ範囲:P.1068 - P.1073

問題 337

 症 例:32歳,女性.

 主 訴:皮下出血.

 既往歴:特記すべきことなし.

 家族歴:家族に出血性素因を認めず.

 現病歴:生来健康であった.第1子正常分娩(異常出血認めず)の約3カ月後に,下腿と腹部に直径3cm前後の皮下出血が出現.その2週間後には,誘因なく左下腿に腫脹・疼痛を伴う深部出血をきたした.その後も軽度の打撲や圧迫,運動などで広範な皮下出血を生じるため,精査目的に当科を受診した.薬剤服用歴なし.

新薬情報(29)

塩酸セベラマー(フォスブロック®錠250mg,レナジェル®錠250mg)

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.1074 - P.1076

適応■透析中の慢性腎不全患者の,高リン血症の改善.低リン血症や消化管通過障害のある患者・本薬にアレルギーのある患者では禁忌である.

用法・用量■通常,成人には,塩酸セベラマー(以下セベラマーと略)として1回1~2gを1日3回,食直前に経口投与する.なお,年齢,症状,血清リン濃度の程度により適宜増減するが,最高用量は1日9gとする.米国での同薬(Renagel®,1錠400または800mgの錠剤とカプセル)の添付文書では,血清リン濃度に対応した推奨初期投与量があり,6.5~7.4mg/dlであれば800mgを1日3回,7.5~8.9mg/dlであれば1,200mgを1日3回,>9.0mg/dlであれば1,600mgを1日3回としている.投与開始後,血清リン濃度,血清コレステロール値は2週間程度で低下するので,投与量変更はその結果を待って考えるとよい.また,炭酸カルシウム製剤からセベラマーに治療薬を変更する際には,炭酸カルシウム投与mgと同等のセベラマー投与量(mg)に変更して同等の効果が得られるとされている.セベラマーは,水溶液中でゲル状に膨化し,体積は約8倍も増加するため,服用時または前に錠剤を人為的に粉砕したり,かみ砕いたりしないよう,患者を指導すべきである.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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