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雑誌目次

雑誌文献

medicina40巻9号

2003年09月発行

雑誌目次

今月の主題 消化器疾患のエビデンスとエキスパート・オピニオン 食道・胃疾患

胃食道逆流症の内視鏡診断と治療方針

著者: 名越淳人 ,   原澤茂

ページ範囲:P.1472 - P.1475

ポイント

・内視鏡的に明らかな食道炎の所見がなくても胸やけはGER(gastroesophageal reflux)によって発生して いる可能性が高い.

・GERによる症状や頻度から食道炎の内視鏡的重症度を予測できない.

・GERDの初期治療および長期治療の基本は生活習慣の改善と酸分泌抑制薬である.

胃食道逆流症と呼吸器合併症

著者: 木下芳一 ,   足立経一 ,   天野祐二

ページ範囲:P.1476 - P.1479

ポイント

・気管支喘息例には胃食道逆流症(GERD)の合併が多い.

・GERDは気管支喘息の発症原因となりうる.

・気管支喘息例の一部は,GERDに対する治療を行うと症状は軽快し,肺機能検査での異常が改善する.

H. pylori感染の診断,治療対象

著者: 徳永健吾 ,   高橋信一

ページ範囲:P.1481 - P.1484

ポイント

・H. pylori診断,治療の保険適用となった疾患は,胃潰瘍または十二指腸潰瘍のみである.

・胃MALTリンパ腫,早期胃癌に対する内視鏡的切除術後胃,萎縮性胃炎,胃過形成性ポリープに対する除菌療法のエビデンスは集積されてきているが十分ではない.

・NUD,GERD,消化管以外の疾患に対するH. pylori除菌療法のエビデンスは十分ではない.

H. pylori除菌と胃食道逆流症

著者: 工藤欣邦 ,   児玉礼二 ,   藤岡利生

ページ範囲:P.1486 - P.1489

ポイント

・H. pylori除菌後の胃食道逆流症(GERD)発生の問題については,現時点では,H. pylori除菌後に「GERDが誘発されやすい」というより「誘発される患者が存在する」という表現が妥当である.

・H. pylori除菌後のGERDは,逆流に対する防御機能が低下した患者が,除菌により胃酸分泌能が回復したことにより,潜在していたGERDが顕在化したものと考えられる.

・除菌後のGERD発生の問題や除菌前に併存するGERDの存在は,H. pylori陽性潰瘍患者に対する除菌治療の妨げにはならない.

食道・胃静脈瘤の治療選択

著者: 熊本正史 ,   於保和彦 ,   豊永純

ページ範囲:P.1490 - P.1493

ポイント

・食道静脈瘤に対し内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)単独療法では再発率が高く,再発抑制のためにさまざまな地固め療法がある.

・EVL後の地固め療法は再発を抑制するが,EVL単独でも長期非再発症例が存在する.

・胃穹隆部静脈瘤出血に対してはcyanoacrylate系組織接着剤が有効である.

・胃穹隆部静脈瘤にはバルーン下逆行性経静脈的塞栓術が著効する.

NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)起因性潰瘍の予防と治療

著者: 太田慎一

ページ範囲:P.1495 - P.1497

ポイント

・NSAID潰瘍の治療にはNSAIDの中止,または中止できない場合はプロトンポンプ阻害薬あるいはPG製剤の治療が有効である.

・NSAID潰瘍の予防にはPG製剤,プロトンポンプ阻害薬,高用量ヒスタミンH2受容体拮抗薬が有効である.

・胃粘膜傷害の少ない消炎鎮痛薬として選択的COX-2阻害薬が期待される.

消化性潰瘍の再発予防

著者: 根岸道子 ,   鳥居明

ページ範囲:P.1498 - P.1500

ポイント

・H.pylori陽性潰瘍に対して除菌治療を行うことにより,潰瘍再発は著しく抑制される.

・H.pylori陰性潰瘍,または陽性でも除菌適応外の場合,プロトンポンプ阻害薬(PPI)が第一選択薬である.その後の維持療法は,胃潰瘍の再発予防には有効である.

上部消化管出血と緊急内視鏡

著者: 小林健二

ページ範囲:P.1502 - P.1505

ポイント

・緊急内視鏡検査および内視鏡的止血により,潰瘍からの再出血,緊急手術,死亡率を減らすことができる.

・潰瘍出血の止血に成功した症例に対して経過観察目的に行う再内視鏡検査の有用性は,ランダム化比較試験では示されていないが,高危険群に限って24時間以内に追加治療を行うアプローチは再出血予防に有効であるかもしれない.

・出血を伴わない露出血管の症例では,内視鏡的治療を行わない場合の再出血率が40%以上に及ぶため内視鏡的治療の適応である.

胃癌の内視鏡治療はどこまで可能か

著者: 安田一弘 ,   白石憲男 ,   北野正剛

ページ範囲:P.1506 - P.1509

ポイント

・早期胃癌の最も重要な予後因子はリンパ節転移である.

・リンパ節転移の危険因子は,深達度・腫瘍の大きさ・組織型・肉眼型・潰瘍の有無である.

・治療方針の決定は,リンパ節転移危険因子の正確な評価に基づいて行うことが重要である.

内視鏡的胃瘻造設術(PEG)の安全性

著者: 嶋尾仁 ,   森瀬昌樹 ,   黒山信一

ページ範囲:P.1511 - P.1513

ポイント

・PEGと経鼻胃管との無差別前向き試験の結果をみると,死亡率,栄養評価,栄養継続などの面からPEGが優れていた.

・外科的胃瘻造設術とPEGとの無差別前向き比較試験の結果では,合併症発生率では差がないが,費用に関しては外科的胃瘻造設術が1.5倍程度必要である.

腸疾患

過敏性腸症候群の病因・病態と治療

著者: 福土審

ページ範囲:P.1514 - P.1518

ポイント

・脳腸相関が病態の中心をなす代表疾患が過敏性腸症候群(IBS)である.

・IBSの病態は消化管運動異常,内臓知覚過敏,心理的異常からなる.

・粘膜炎症による神経の感作と遺伝要因の解明はIBSの本質に迫るものである.

・IBSの薬物療法と心理療法には新たな臨床エビデンスが蓄積されつつある.

C. difficile院内感染の予防と治療

著者: 菅沼明彦 ,   青木眞

ページ範囲:P.1520 - P.1522

ポイント

・C. difficileは消毒剤に強い抵抗性を有しており,有効な手指消毒剤がない.そのため十分な手洗いが手指衛生を保つうえで重要である.

・抗生物質の適正使用がC. difficile院内感染対策として不可欠である.

・無症候保菌者への抗生物質治療は現時点では推奨できない.

AIDS患者の下痢の診断と治療

著者: 吉田邦仁子 ,   岡慎一

ページ範囲:P.1523 - P.1527

ポイント

・サイトメガロウイルス腸炎・MAC感染症・クリプトスポリジウム症・赤痢アメーバ性腸炎などの頻度が高い.

・多剤併用療法(HAART)導入以降,プロテアーゼ阻害薬内服に伴う下痢の割合が増加傾向にある.

・HAARTによる免疫能の回復により,症状軽快が期待できる病態が多い.

虚血性腸炎の病因・病態と診断

著者: 櫻井幸弘

ページ範囲:P.1528 - P.1530

ポイント

・虚血性腸炎には急性と慢性があり,急性のなかで壊死型虚血性腸炎の診断は臨床的に重要である.

・上腸間膜動脈に閉塞のない非閉塞性腸管虚血の存在に注意し,的確な診断を必要とする.早期診断にはCTが有用である.

・一過性虚血性大腸炎は若年発症があり機序は不明である.また医原性(iatrogenic)な虚血性腸炎も注目されている.

潰瘍性大腸炎の病態と治療

著者: 船越信介 ,   長沼誠 ,   日比紀文

ページ範囲:P.1531 - P.1533

ポイント

・潰瘍性大腸炎の緩解維持療法は,5-アミノサリチル酸製剤と免疫抑制剤が主体であり,臨床的な有用性が証明されている.

・副腎皮質ステロイドは緩解導入に使用されるべきであり,その副作用のため緩解維持には適さない.

・白血球除去療法は,その安全性より今後緩解維持効果の成否を検証する必要がある.

Crohn病の病態と治療

著者: 松本誉之 ,   押谷伸英 ,   中村志郎

ページ範囲:P.1534 - P.1537

ポイント

・Crohn病の難治例,特に外瘻例や栄養療法の有効性が確実でない大腸病変例では抗TNF-α抗体が有効である.

・抗TNF-α抗体による治療の後,維持療法を併用しないと再発率が高い.

・維持療法としては,一定量以上(少なくとも1,200kcal/day,可能なら30kcal/kg/day以上)の栄養療法が有効だが,QOL上の問題を伴うことがあり,その場合には間欠的投与も良い.

・維持療法としての免疫抑制剤などは,欧米でのエビデンスがあるが,本邦では保険適用外であるなどさらに検討を要する.

大腸ポリープの治療と大腸癌の予防

著者: 松本主之 ,   飯田三雄

ページ範囲:P.1539 - P.1541

ポイント

・内視鏡的ポリペクトミーは大腸癌の予防効果がある.

・低脂肪食,繊維,ビタミン,カルシウムの投与による大腸腺腫新生抑制効果は一定していない.

・アスピリンによる大腸腺腫新生抑制効果が確認されている.

・家族性大腸腺腫症では非ステロイド性抗炎症薬で腺腫の退縮はみられるが,腺腫新生は抑制されない.

大腸癌スクリーニングとその成果

著者: 三原修一

ページ範囲:P.1542 - P.1544

ポイント

・便潜血検査による大腸癌検診は大腸癌死亡抑制効果があり,その効果を高めるためには,検診受診率の向上と精度の高い検診を行うことが重要である.

・検診後の精密検査や有症状者・高危険群に対するスクリーニング検査は,全大腸内視鏡検査が望ましい.

・施設検診においては,S状結腸内視鏡検査(+免疫便潜血検査)によるスクリーニングを導入する意義は大きいと思われる.

早期大腸癌の治療と経過観察

著者: 遠藤俊吾 ,   工藤進英

ページ範囲:P.1545 - P.1547

ポイント

・早期大腸癌の深達度診断は,治療方針決定のうえで,重要である.

・深達度診断を行う際には,拡大内視鏡によるpit pattern診断が有用である.

・sm癌のリンパ節転移は7.0%で,sm1c以深の癌に認められた.

・大きな表面型腫瘍の内視鏡的摘除にはEPMRが有用であるが,再発率が高く,早期の再検査が必要である.

肝疾患

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の診断と治療

著者: 西原利治 ,   小野正文 ,   大西三朗

ページ範囲:P.1548 - P.1549

ポイント

・非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は1998年に疾患概念が確立された新しい疾患で,肥満・高脂血症・糖尿病などを合併しやすく,生活習慣病の側面を有する.

・診断には肝臓の組織学的検索が必須で,高度の脂肪肝を背景に,風船様肝細胞やMallory体をしばしば伴い,特徴的な線維化像や炎症細胞浸潤が認められる.

・NASHはしばしば肝硬変をきたし,肝細胞癌の発生母地となるので,脂肪肝を良性の疾患として看過してはいけない.

自己免疫性肝炎(AIH)の診断と治療

著者: 森實敏夫

ページ範囲:P.1551 - P.1553

ポイント

・AIHの診断は除外診断と臨床検査,肝組織像によるが,ほとんどの場合肝生検が必要である.

・AIHの診断には国際自己免疫性肝炎グループの診断基準によるスコアを参考にする.

・ステロイド応答例の一部では,投与中断を試みる価値がある.

原発性胆汁性肝硬変(PBC)の診断と治療

著者: 宮川浩

ページ範囲:P.1554 - P.1556

ポイント

・血清学的診断として抗ミトコンドリア抗体を感度,特異性の高い検出系で測定する.

・肝組織学的に本疾患に特徴的所見(CNSDC,肝内胆管の消失,肉芽腫)の見きわめが必要である.

・ウルソデオキシコール酸が現在のところ,本疾患の肝機能改善の第一選択薬である.

・そう痒,骨粗鬆症,自己免疫性肝炎との併発,早期進展例など個々の病態の相違に応じた対応が必要である.

B型肝炎の治療

著者: 柴田実

ページ範囲:P.1557 - P.1559

ポイント

・B型肝炎の制圧は輸血液のスクリーニングおよびHBワクチンによる予防と抗ウイルス薬による治療で行われる.

・WHOは世界中の新生児を対象としたUniversalワクチン接種を勧告している.

・ラミブジンはB型慢性肝炎,肝硬変,化学療法後重症肝炎の治療に有用であるが,生命予後をエンドポイントとしたランダム化対照試験は存在しない.

C型肝炎の診断と治療

著者: 山田春木 ,   三浦英明

ページ範囲:P.1560 - P.1562

ポイント

・まだ多くのC型肝炎ウイルスキャリアが放置されている.彼らに必要なのは直ちに薬を出すことではなく,教育とフォローである.

・イントロンA®+レベトール®併用療法は,インターフェロン単独より有効だが,つらい治療である.

・アドバフェロン®のつらさは従来のインターフェロンと同等である.対象者,期間を含め今後有効性の検討が必要である.

劇症肝炎の治療

著者: 内藤智雄 ,   森脇久隆

ページ範囲:P.1564 - P.1567

ポイント

・劇症肝炎と診断された場合,成因に対する治療や免疫抑制療法に加え血液浄化療法が実施され,同時に合併症対策の治療も行われる.

・肝移植適応ガイドラインで死亡と判定された場合は,生体部分肝移植を考慮する.

・急性肝炎重症型のうち約30%が劇症肝炎に移行する.

・劇症化を防ぐ治療体系は確立されていないが,早期集中治療の実施は予後向上に貢献する.

肝細胞癌の低侵襲治療と予後

著者: 髙塚健太郎 ,   金原猛 ,   岩渕省吾

ページ範囲:P.1568 - P.1570

ポイント

・現在の肝細胞癌に対する経皮的局所治療には,PEIT,RFAが主に行われている.

・3cm以下3結節以内という適応範囲において,肝切除術と同等の治療成績である.

・効果を増大させる目的で血管内治療との併用も試みられている.

肝膿瘍の治療選択―どのような症例で穿刺およびドレナージ治療が適応となるか?

著者: 六倉俊哉

ページ範囲:P.1571 - P.1573

ポイント

・肝膿瘍の治療は抗生物質の投与と経皮的ドレナージが基本である.

・30mm以上のものに関しては単発,多発を問わずドレナージを施行するべきである.

・小さなものに関しては抗生物質の投与のみ,あるいは穿刺排膿による治療でも有効である.

・敗血症,多臓器不全を合併しているものの予後はきわめて不良であり,躊躇することなく速やかにドレナージを行うべきである.

・胆管炎など原疾患に対する治療も併せて行わなければならず,PTCDないしERCPに関連した技術が診断ならびに治療において非常に重要である.

・アメーバ性肝膿瘍はメトロニダゾールの内服のみでも有効であるが,鑑別困難なときや複合感染もあるのでドレナージを躊躇するべきではない.

・悪性腫瘍との鑑別が困難な場合や排膿がみられない場合には,穿刺時に吸引細胞診を施行する.

・出血,腹膜炎,チューブの事故抜去など合併症については十分に留意する必要がある.

胆・膵疾患

総胆管結石症とその合併症に対する治療

著者: 松浦広 ,   松川雅也 ,   橋本直明

ページ範囲:P.1575 - P.1577

ポイント

・閉塞性化膿性胆管炎に対する抗菌薬は胆汁移行性のよいシプロフロキサシンが有効である.

・重篤な胆石膵炎は緊急ERCP(ES)の適応である.

胆囊ポリープの経過観察と治療適応

著者: 板倉勝 ,   西崎泰弘

ページ範囲:P.1578 - P.1580

ポイント

・胆囊ポリープは腹部超音波検査で見いだされる胆囊の異常所見のなかでは最も頻度が高い.

・胆囊ポリープの多くはコレステロールポリープと腺腫であり,稀なものとしては炎症性ポリープ,過形成性ポリープなどがある.そのほかの胆囊隆起性病変には腺筋腫症があり,いずれも癌との鑑別を要する.

・癌以外の胆囊隆起性病変は,無処置で経過観察が可能である.

・良性胆囊ポリープと胆囊癌との鑑別には,超音波検査で明らかになるポリープのサイズ,形態,内部構造の把握が重要である.

急性膵炎の診断と治療

著者: 丹藤雄介 ,   柳町幸 ,   中村光男

ページ範囲:P.1581 - P.1583

ポイント

・急性膵炎は,成因や重症度などバリエーションが多い疾患である.

・重症急性膵炎の死亡率は約20%である.

・診断後は経時的に重症度判定を行い,重症化例では集中治療室での管理もしくは特殊療法が可能な高次医療施設への搬送を考慮する.

・重症急性膵炎は厚生労働省の「特定疾患治療研究事業の対象疾患」であり,申請による公費医療費給付制度がある.

膵頭部領域癌の診断と治療

著者: 税所宏光

ページ範囲:P.1584 - P.1586

ポイント

・膵頭部領域癌の早期診断には,黄疸以外,上腹部や背部の疼痛や不快感,食欲不振などの一般症状にも,平素,目を向け,超音波検査によるスクリーニング実施が肝要である.

・治療予後の不良な浸潤性膵管癌(いわゆる膵癌)を胆管癌,乳頭部癌と鑑別する標準的検査と手順を理解する.

・膵癌の治療選択にあたっての基礎知識として,進行度別切除成績を理解する.

理解のための31題

ページ範囲:P.1588 - P.1594

救急神経症候の鑑別とマネジメント(9)

慢性期脳梗塞のneuro-critical care

著者: 永山正雄

ページ範囲:P.1596 - P.1604

 慢性期脳梗塞例の病態は,発症1カ月以上経過しても持続する脳血流・代謝の広範な低下と血栓・塞栓再発準備状態に要約できる1).多くの例が重症化のpotentialを抱えており再発率も想像以上に高い.本稿では,脳卒中治療ガイドライン2003(作成委員長:篠原幸人,事務局:筆者)2)および平成14年度厚生労働科学研究班(脳梗塞班)報告書3)の意図を踏まえつつ,臨床病型,機序,責任血管などを考慮した脳梗塞慢性期の治療指針(私案)を述べる(表1).

成因の把握およびその再検討

 脳梗塞例では,経過観察中に新たな危険因子を合併したり,再評価により成因評価が変わることも少なくない.例えば諸種先天性血栓性素因や発作性心房細動の検出,弁膜症を伴わない心房細動〔非弁膜症性心房細動(NVAF),孤立性心房細動(lone AF)〕や内頸動脈病変の合併などである.したがって,特に原因不明例・若年例・非定型例・家族発症例や多くの危険因子を有する例では,継続的なwork-upが必要で,時には血縁者の検索も必要となる(本誌40巻7号参照).以下,便宜上各危険因子を動脈硬化性・塞栓性・血栓形成性・その他の4群に分けて,その管理の実際および最近の話題を紹介する.

カラーグラフ 手で診るリウマチ(9)

CREST症候群の石灰沈着,小児皮膚筋炎(childhood dermatomyositis)の石灰沈着

著者: 上野征夫

ページ範囲:P.1606 - P.1607

 強皮症(sclerodermaあるいはsystemic sclerosis)には大ざっぱに分けて2種類ある.1つは,皮膚の硬化が指より始まり,次第に上行して四肢の遠位・近位,顔面から体幹の皮膚にまで及ぶもの.もう1つは,硬化性病変が四肢の遠位部に限られ,顔面皮膚も硬くなることがあっても,体幹部には病変が進行しないタイプである.前者を広汎型強皮症(diffuse scleroderma),後者を限局型強皮症(limited scleroderma)と呼ぶ.限局型強皮症では,しばしばCREST症候群と称される特異な臨床像を伴っている.CRESTとは,calcinosis(石灰沈着),Raynaud's phenomenon(レイノー現象),esophageal dysmotility(食道蠕動の異常),sclerodactyly(指硬化),およびtelangiectasia(毛細血管拡張)のおのおのの頭文字をとったものである.

 図1は,手のひらの皮膚毛細血管拡張を示している.毛細血管拡張の好発部位は,手,顔面,口腔,前胸部などである.口腔粘膜に出現している場合,Osler-Weber-Rendu病に似る.

 図2(UCLA, Daniel Furst氏提供)は,示指先端の皮下石灰沈着を示している(図2矢印).石灰沈着の最好発部位は手で,73~86%は手に認められ,しかも指先端の橈側部に多い.大きさは,点状のものから結節状のものまでさまざまで,沈着部位は皮下組織,関節滑膜,時に腱鞘である.また,皮膚の表面に露出してくることもある.組成はハイドロキシアパタイト(カルシウムリン灰石)よりなっている.

連載

目でみるトレーニング

著者: 松村正巳 ,   西田隆 ,   林道夫

ページ範囲:P.1611 - P.1617

問題 346

 症 例:54歳,男性.

 主 訴:倦怠感.

 既往歴:高血圧症.

 家族歴:特記事項なし.

 現病歴:2年前から高血圧症の治療を他院で受けていた.最近,腎臓の機能が悪いといわれ,大きな病院で診察を受けるように勧められていた.数日前から倦怠感を自覚しており,当院を受診した.内服薬はベシル酸アムロジピン(アムロジン®)10mg/day,ロサルタンカリウム(ニューロタン®)100mg/dayである.

 身体所見:身長158cm,体重58kg,血圧152/77mmHg,脈拍68/min・整,体温36.2℃.眼瞼結膜に貧血を認める.胸部・腹部に異常なし.足背に浮腫を認める(+).神経学的に異常なし.

 検査所見:尿蛋白3+,尿糖-,尿潜血2+.

血液検査の結果が出る前に,心電図(図1)をとった.

新薬情報(32)

ミカファンギンナトリウム(ファンガード®点滴用50mg,77mg)

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.1620 - P.1621

適応■アスペルギルス属およびカンジダ属による,深部真菌感染症のうち真菌血症,呼吸器真菌症,消化管真菌症.

用法・用量■成人のアスペルギルス症には,通常ミカファンギンナトリウムとして50~150mg(力価)を,1日1回点滴静注する.重症または難治性の場合には1日量300mgを上限として増量可能である.成人のカンジダ症に対しては,通常ミカファンギンナトリウムとして50mg(力価)を,1日1回点滴静注する.重症または難治性の場合には1日量300mgを上限として増量可能である.体重が50kg以下の患者では,体重当たりの投与量が6mg/kgを上限とする.点滴に際しては,注射用蒸留水は溶液が低張となるため使用は不可であり,生理食塩水,5%ブドウ糖注射液,電解質補液に溶解し(等張となる),一回投与量75mg以下では30分以上,75mgを超える場合は1時間以上かけて点滴投与する.この薬物は溶解時に泡立ちやすく,消泡しにくいのでバイアルを強く振盪しないよう注意する.また,光により徐々に分解するので,調整後使用までに時間がある場合には,点滴ボトルを遮光するべきである.また,バンコマイシン,アルベカシン,ゲンタマイシン,トブラマイシン,ジベカシンなどと混合すると濁りを生じ,アンピシリン,ST合剤,アシクロビルなどと混合すると力価が低下するので,他の薬物と点滴ボトルで混合する場合には,添付文書にて配合禁忌を確認するべきである.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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