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今月の主題 高血圧診療のエビデンスと個別的治療―主治医の役割とジレンマ Controversy 70歳以上の高血圧患者の収縮期血圧降圧目標は140mmHg以下とすべきか?
否定的立場から―老年者では必ずしもthe lower,the betterであるとは限らない
著者: 松岡博昭1
所属機関: 1獨協医科大学循環器内科
ページ範囲:P.119 - P.120
文献購入ページに移動疫学研究では,血圧(収縮期および拡張期ともに)の上昇とともに心血管イベントの発症率と死亡率が高くなる.しかしながら,超高齢者においては血圧値と死亡率の関係は直線的ではないことが示されている1).Framingham研究では,収縮期血圧は加齢とともに上昇するが,血圧と全死亡および心血管死亡リスクは非直線的であり,各年齢層における血圧分布の70%値を超えるとリスクが上昇すると報告されている2).例えば,45~54歳男性における70%値は140mmHgであるが,65~74歳男性の70%値は160mmHgになり,70歳男性では,収縮期血圧は160mmHg以上から死亡リスクが高まるということになる.
確かに,70歳以上の老年者高血圧を対象とした大規模介入試験において,降圧薬治療の有用性が認められている3)が,治療群で得られている収縮期血圧値は140mmHg以上である.また,60歳以上の老年者高血圧を含めた多くの介入試験においても実薬群で得られた収縮期血圧値は図1に示すように143mmHgが最低である.高血圧患者の降圧目標値を決定するためには,異なる降圧目標値を設定して無作為に患者を割り付け,どの降圧目標値群で最も心血管イベントの発症率が低いのかというエビデンスが必要である.そのような目的で行われた試験はHOT研究4)のみである.しかしながら,HOT研究も降圧目標値は拡張期血圧にのみ設定されている.HOT研究では目標拡張期血圧を3群(80mmHg以下,85mmHg以下,90mmHg以下)に分けて行われたが,3群でイベントの発症率に差はないことが示されている.また,主要な心血管イベントの発症率は収縮期血圧139mmHg,拡張期血圧83mmHgで最低であったとされているが,患者の平均年齢は62歳である.
確かに,70歳以上の老年者高血圧を対象とした大規模介入試験において,降圧薬治療の有用性が認められている3)が,治療群で得られている収縮期血圧値は140mmHg以上である.また,60歳以上の老年者高血圧を含めた多くの介入試験においても実薬群で得られた収縮期血圧値は図1に示すように143mmHgが最低である.高血圧患者の降圧目標値を決定するためには,異なる降圧目標値を設定して無作為に患者を割り付け,どの降圧目標値群で最も心血管イベントの発症率が低いのかというエビデンスが必要である.そのような目的で行われた試験はHOT研究4)のみである.しかしながら,HOT研究も降圧目標値は拡張期血圧にのみ設定されている.HOT研究では目標拡張期血圧を3群(80mmHg以下,85mmHg以下,90mmHg以下)に分けて行われたが,3群でイベントの発症率に差はないことが示されている.また,主要な心血管イベントの発症率は収縮期血圧139mmHg,拡張期血圧83mmHgで最低であったとされているが,患者の平均年齢は62歳である.
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